バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問8(1) 二人の少年の戦い・開戦

雄二「……そろそろ時間か。明久、準備はできてるか?」

 

明久「…………うん。バッチリだよ。」

 

 時計が午後二時くらいを指す頃。召喚大会の四回戦が始まろうとしていた。そのトップバッターが僕達だ。

 

雄二「まさか、姫路達が負けるとはな……。折角、ここでFクラスの中華喫茶を大々的に宣伝できると思ったんだがな……。」

 

 正直、今回の戦いは苦戦を強いられる。なんせ、今回は雄二の作戦や事前の準備が全部パーになっちゃったからだ。

 というのも、四回戦の勝負科目は古典。美波が最も苦手とする教科だ。雄二もこの日のために勉強してきたし、僕も名前の書き忘れだったり、解答欄がズレていたりといったポカをやらかしてさえなければ、実質2対1も同然……だった。

 

 だけど、姫路さん達はまさかの敗北。二人の口から聞かされた時は耳を疑った。

 だって、信じられると思う?相手は先輩とはいえ、所属はFクラスとEクラス。潮村先輩に関しては、αクラスの活動で英語が得意科目だと知っているけど、Aクラスの平均よりちょっと上程度。姫路さん相手では正直勝てるとは思わない。

 だからこそ、近衛さんから試合映像を見せられた時は目を疑ったよ。緑川先輩の点数。一方的な試合展開。そして……、試合の最初から最後まで姫路さん達に浴びせかけられる暴言の数々。見れば見るほど、ただただ辛い映像だった。

 

 そんな先輩が、僕らの四回戦の相手だ。今回ばかりは何があっても絶対に負けたくないし、負けられない。

 

雄二「……明久、お前の気持ちもわかるが、緊張しすぎだ。あの映像を見た限りだと、『シン』と呼ばれていた方の先輩は、相手の心の隙に付け込む戦い方をするようだ。そんなガチガチだと、真っ先に狙われるぞ。もう少し、リラックスしろ。」

 

 そう雄二に言われて、ゆっくりと深呼吸する。……うん、少し落ち着いたかな?だけど、雄二が僕のことを気遣うなんて……、明日雨が降らなきゃいいんだけど。

 

『それでは四回戦を始めたいと思います。出場者は前へどうぞ。』

 

 審判の先生に呼ばれ、僕たちはステージを上がる。三回戦までは学園生だけで、まばらだった観客席の様子も、来客用に増設された席までほぼ満席といった状態になっていた。

 対する相手側はというと……。

 

罪「へぇ、次の相手はまたFクラスのコンビ?しかも一人は『観察処分者』だっけ?わざわざ戦わなくても、結果は分かりきってるのにさぁ。やる必要ある?」

 

渚「……確かに僕達の勝率はほぼ100%だよ。でも、それは相手が無策で挑んできた場合の話。この大会に出た以上、そしてここまで勝ち上がってきた以上……。」

 

罪「何かしら策があるだろう、って?ハハハ、無い無い(笑)。二回戦で無様な負け姿を曝した『あの二人』と同じクラスの連中に、そんなこと考える脳味噌なんてあるわけないじゃんか(笑)。」

 

 うわあ、あからさまに僕達のことを見下しているなぁ……。

 

雄二「よう、センパイ方。二回戦はウチのクラスが世話になったな。」

 

罪「……何のことかな?俺さ、敗けた相手のことなんて一々記憶してないんだよねぇ(笑)。」

 

明久「……!!」

 

 思わず殴りかかろうになったところを、雄二に抑えられた。さすが雄二だ。この程度の挑発は慣れているのだろう。

 

雄二「……惚けるなよ。姫路達を終始笑い者にして、一方的に蹂躙する試合をしておいて、『忘れた』なんて言わせねぇぞ?」

 

 ……いや違う。よく見ると雄二も、手は震えているし、相手を睨みつける目も普段よりギラついているような気がする。少なからず頭にきているのは僕と同じなんだ。

 

渚「あ、あの。シン君が失礼な態度を取ったみたいで……。そ、その、ごめんなさい。」

 

明久「え、あの、潮村先輩が謝る必要はないですよ!」

 

罪「そうそう、俺の問題をわざわざ君が肩代わりする必要ないって。……まあ、コイツら相手に下げてやる頭なんてないけど(笑)。」

 

 ……この先輩、味方であるはずの潮村先輩すらも下に見ているのか……!?

 

『四人とも、そろそろ良いですか?』

 

 その様子を見かねてか、先生は苦笑いをしていた。

 

明久「あ、はい。それじゃあ……。」

 

「「「試獣召喚≪サモン≫!」」」

 

 僕ら四人の声に反応して、それぞれの足元に魔法陣が形成される。

 この様子だけでも、観客席から小さな歓声があがる。確か3ーCで召喚システムを利用した出し物をしているって、耳に挟んだことはあるけど、この試合から見始めた人にしてみれば、これだけでも十分物珍しい光景なのだろう。

 そして、本命である召喚獣の姿が現れる。僕らは何度も見慣れている、デフォルメされた愛嬌たっぷりの見た目だ。その姿が特設された大型のディスプレイに一人一人映されるたび、あちこちからさらに女子と思われる黄色い歓声があがっている。

 

『それでは、四回戦を……。』

 

雄二「ちょっと待ってください。すいませんが、少しマイクを貸してください。」

 

 審判の先生が開始宣言をしようとしたところで、雄二がそれを止める。そして、先生の返事が返る前にマイクを…………!

 

明久「雄二、危ない!!」

 

スコーンッ!

 

雄二「おい、明久。いきなりどうした…………って、なるほど、そういうことか。」

 

 あ、危なかった……。もう少し判断が遅かったら、雄二がいきなり退場することになってたよ……。

 そう思いながら、雄二と同じ場所を見つめる。そこにはさっき僕が間一髪で弾き飛ばした投げナイフが落ちていた。

 

罪「あーらら。防がれちゃったかぁ(笑)。」

 

 そして、ナイフを飛ばしてきた当の本人は、あっけらかんとしていた。

 

雄二「そういや、そうだったな。そうやって、島田を倒してたっけな、先輩は。大衆の面前で随分卑怯な手を使うじゃねぇか……!」

 

罪「何を言うのさ。敵が目の前にいる。戦いの舞台は整った。それなのに、目の前の敵以外に意識を向けている都合のいい『的』があるんだから、狙わない方がおかしいじゃないか。」

 

渚「……シン君に全面的に同意するつもりはないけど……。宣言するよ。『この勝負、一番最初に油断した人が負ける』って。どちらにしても、言いたいことがあるなら、僕らに勝ってから言いなよ。」

 

 こうして、僕達の負けられない戦いが、今幕を開けた。

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