バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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~前書きRADIO~
秋希「どうも~、近衛秋希で~す。相変わらず不定期更新が続いて、すみませんね……。今回は吉井君達の戦いの裏で起こったもう一つの戦いの話よ。……それと一応、宣言しておこうかしら。次話の投稿は6月10日を予定しているわ。なるべく月一回投稿のペースに戻せるよう、努力する……ともね。それじゃあ、本編始まり始まり~。」


小問8(2) 少女たちの戦い 

 これは、吉井君達が大会会場に向かったほんの少し後のこと。

 

美波「ちょっと!どこに連れていくのよ!」

 

瑞希「近衛さん!離してください!」

 

 そう喚く彼女達の声を無視して、二人を空き教室の方へ引っ張っていく。

 ほんの数時間前に吉井君が襲われかけた所へ連れていくのは、少々後ろめたいけど、出入口は一つしかないのだから、私一人でも何とか対処することは出来る。

 

秋希「……さて、お二人さん?さっさと教室に戻るか、吉井君達の応援に行きたいというなら、あなた達の考えを聞かせてもらいましょうか。」

 

瑞希「……?何の話ですか?」

 

秋希「ああ、そうね……。いきなりこんなこと言われても、自分がどんな理由で怒られているか、分からないか。いや、ねぇ。私達も進級して一ヶ月。Fクラスになって。坂本君の指揮の下、いきなりいろんなクラスに勝負を吹っ掛けて。…………無謀にもAクラスにまで挑戦して、学習環境が悪化しちゃって。」

 

 この一ヶ月で起きたことを一つ一つ思い浮かべる。正直、私にとっては、試召戦争関連のもの以外はロクな思い出がないけど。

 

秋希「だから、さ。そろそろハッキリさせておきたいの、色々とね。そのためにも、君たちにはいくつか質問をさせてもらうけど……。正直に答えてくれるかしら?」

 

 私に気圧されて頷く二人……。でも、私にはなんとなく分かる。二人は『噓は吐かない』だろうけど、『本当のことも話さない』って。

 

秋希「じゃあ、いきなり核心を突く訳だけど……。あなた達って、吉井君のことが好きなの?」

 

瑞希「ふえぇっ!?え、えっと、よ、吉井君のことは……その……///」

 

美波「べ、別に、『アキ』のことは……好きって……訳じゃ……///」

 

 吉井君の名前を出しただけで、この反応。二人が彼を好意的に見ているのは確定だ。にしても『アキ』ねぇ……。その呼び方は私の名前と被ってるんだけど。まあ、島田さんは私のこと『近衛さん』とか『近衛』って呼ぶから、ややこしくはならないけど……。

 

瑞希「……………………そうです……。好きですよ、吉井君のことが。」

 

美波「み、瑞希…………?」

 

 先にカミングアウトしたのは姫路さんだ。これはまあ、想定の範囲内。彼女の方が自分の気持ちに素直だから、島田さんより先に心に秘めた思いを打ち明けてくれるだろうと、思っていた。

 

美波「そうね…………。ごめん近衛、ウソついて。ウチも、本当はアキのことが好き。去年の頃から……ずっと…………。」

 

秋希「………………なるほど、ね。」

 

 ……島田さんの口からも、やっと聞けた。なんだかんだで、はぐらかされるかと思ってたけど、姫路さんだけでなく、それに触発される形で島田さんも胸の内を明かしてくれるとは。本人達なりに『覚悟』を決めたのでしょうね。二人の言葉に『嘘』はない。

 

秋希「それじゃ、次の質問。……………………()()()()()()()()()()?」

 

 ま、それを『信じる』かは、また別の問題だけどね?

 

美波「ちょっと!何よ、その質問!?」

 

瑞希「私達は何も噓を吐いてないです!」

 

秋希「私『達』、ねえ……姫路さん。自分が噓を吐いていないって、主張するのは百歩譲って理解できるわ。でも、島田さんが噓を吐いていないって、主張できる根拠は何なの?」

 

 気の知れた友人だろうが、寝食を共にしてきた家族だろうが、身も蓋もない言い方をすれば、結局のところ『他人』以外の何者でもない。

 それなのに、自分と吉井君に向ける思いが同じという、ただそれだけのことで、まるで『自分』を重ね合わせるように島田さんの代弁をする、姫路さんの言い分が気に食わない。

 

秋希「それに、今日一日のことだけでもいいから、自分達の行動を振り返ってみなさいよ。自分に都合のいい解答を求めて『彼』を問い質して詰め寄る。坂本(親友)の冗談を信じて『彼』に謂れのない属性を付与する。子供()の戯言を真に受けて『彼』を傷つけようとする。……そんなことをする人間が、その人のことを好きだと言って、誰が信じるのかしら?」

 

 ついでに言えば、どれもこれも自分の感情任せか、他人の言い分を鵜吞みにしているだけ。本人の言葉を聞き入れる素振りも全くなかった。

 

秋希「ま、あなた達の今の言葉が『噓』なのか、今までの行動が『噓』なのか……。どっちにしてもあなた達の言葉と態度、2つの辻褄が合わないことに変わりないわ。…………さて、一体どっちがあなた達の『本心』で、どっちが『噓』なのかねぇ……。」

 

 『好き』だと口では言うのに、その行動はどう見ても『好意』を寄せる人のソレに見えない。そこが私が引っかかる部分だ。

 

美波「そ、そんなの……!」

 

瑞希「美波ちゃん、今迂闊に答えるのは良くないです。確証はないですけど……、私達が何か言えば言うほどこっちが不利になる気がします。」

 

 島田さんが何か言いかけたけど、何かを察したのか寸前で姫路さんに止められた。そりゃあ、そうよね。

 『言葉』を嘘にしたら、仮に二人が吉井君に告白したところで、信じてもらえなくなる。

 『行動』を嘘にすれば、本音を隠して他人に暴力を振るうことを正当化することになる。

 どちらにしても、二人の立場が悪くなるのは、確実だ。

 

秋希「……まあ、いいわ。これは警告よ。もしあなた達が今の態度を改める気がないのなら……、今以上の危害を吉井君に加えようとするのなら…………。私はあなた達を消し去るようなことを何の躊躇いもなく出来るわ。社会的な意味でも、物理的な意味でも、ね。」

 

 零次にも負けずとも劣らない圧を放ち、話を締めに入る。一応、休憩と言う体で秀吉君から時間を貰っている。正規の接客班が彼しかいない以上、あんまり店を開けておけない。

 

秋希「……言っておくけど、私は別に吉井君に恋愛的感情は持ち合わせていないから。ただ、学園の環境を良くするために、自分が手を付けられる部分だけでも手を加えておきたかった。そのうえで、吉井君(観察処分者)の存在が都合がよかっただけ。」

 

瑞希「そ、そんな理由で…………。」

 

秋希「そう。それだけよ、理由なんて。環境を変われば、人の成りも変わってくる。そして人が変われば、それに応じて環境も変化する。この堂々巡りだったら、自分達人間が、環境を良くするために動くのが最善。そして、零次が既存の環境を『上』に立って破壊するなら、私は『下』にいる存在を引き上げることで変えてやるわ。」

 

 『バカの代名詞』という分かりやすい侮蔑の対象である『観察処分者』。

 それに学園で初めて選ばれてしまった吉井君の成績が良くなれば、『観察処分者より下位に落ちるのは嫌だ』と思う集団は、今以上に勉強を怠れなくなるはず。……もし、これで吉井君の妨害に走ろうとする奴がいたら……その時はもう、この学園は終わりだ。

 

秋希「……二つ目の警告。これは他のFクラスの連中にも言えることだけど、いつまでも『観察処分者』が下にいるから自分はまだマシだ、なんて思わない方がいいわよ。吉井君は私達の『想定通り』に成長を遂げて(点数が上がって)いる。来年には学年トップ……は流石に無理だけど、Aクラスに入れる見込みはつくでしょうね。」

 

美波「……あのバカがAクラスに入れる訳ないじゃないの。」

 

秋希「そう思っているなら、今まで通り自分の主張を押し付け続けてればいいわ。……だけど、好意を持たない私が『出来る』と信じて、好意を寄せているあなた達が『不可能だ』と否定する。この状況を…………周りはどう思うのかしらね。」

 

 とにかく、私はもう、二人のことは信用できなくなってきている。姫路さんはFクラスの雰囲気に染まりつつあるし、島田さんはツンデレの一面があるけど吉井君へ向ける言動は、それで済ませられるレベルを越えている。

 

 私のとれる行動は二つ。彼女たちを更正できる余地があると『信じ続ける』か、どれだけ言っても無駄だと『見捨てる』か、果たしてどちらに転がるべきか……。二人の今後を憂いながら、私は空き教室をさっさと後にするのだった。

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