[フィールド:古典]
2-F 坂本雄二・・・211点
2-F 吉井明久・・・69点
VS
3-F 緑川罪 ・・・375点
3-E 潮村渚 ・・・64点
罪「あらら、今回は調子悪かったみたいだ。運だけはよろしいようで、お二人さん(笑)。」
雄二「はっ、そんなこと微塵も…思ってない癖に。」
罪「いやいや、調子が悪かったのは事実さ。元々国語とか古典とかは苦手な方でね。だけど、この学園のレベルなら、400点くらい常にとれるようじゃなきゃ、僕の望む『モノ』は得られないからねぇ!」
緑川先輩の不意打ちから幕を開けた四回戦。その後の試合は、最初のいざこざが無かったかのような、普段の試召戦争と変わらない展開になった。
とはいえ、緑川先輩の点数が姫路さんに匹敵するくらい高いのはちょっと気がかりだ。なんでこんな先輩がFクラスに……って思ったけど、僕のクラスも姫路さんや近衛さんがいるからなぁ……。姫路さんみたいに途中で退席しちゃったのか、近衛さんみたいに望んでFクラスに行ったのか……。どちらにしても、他のクラスに文句は言えないや。
明久「……潮村先輩。どうして、あんな先輩と一緒に大会に参加してるんですか?」
それよりも、潮村先輩のことが気になる。あんな外道の極みみたいな振舞いをする緑川先輩と一緒になっているなんて、まともな手段で組んでいるが全くしない。
渚「……君達と同じだよ。シン君は僕の友達だから。……ただ、向こうがそんなこと、欠片も思ってないことは、重々承知している。君の学友を傷つける行為を見て見ぬふりしてたことも……。」
そう話している間も、雄二が戦っている方向からクナイの様なものがこっちに飛んできている。
渚「それでも、僕がシン君を見捨てるわけにはいかない…!シン君は先生達を信用していない…。同じ学年の人はもちろん、後輩からも恨みを買っている…。僕までシン君を見捨ててしまったら、シン君は独りになってしまう……。誰かが……。そう、誰かがシン君を受け止めてあげないといけないんだ!」
なんて気迫だ…!αクラスで一緒に勉強している時は、いつも何かに怯えるような、物腰の低い先輩という印象しかなかった。相方の先輩のためなのか、勝負ごとになると性格が変わる人なのか、そこまでは分からないけど、こっちだって負けられないんだ。
けれど、何度か木刀を叩きつけても、その度にサバイバルナイフで的確に防がれる。おかしいな……。近衛さんからは、『僕より召喚獣の扱いに秀でる者はいない』ってAクラスとの戦いの前に言われたけど、それって僕ら2年の中だけの話で、先輩相手だとそうでもなかったのかな…?
渚「もしかして……疑問に思ってる?僕と君の実力が同じくらいってことに。」
明久「え……!?」
渚「顔に出てるよ。……でも、今このカラクリを教えることはできないよ。僕にとっても、君にとっても、大事な試合だ。……ここから先は、無駄話一切なしで行かせてもらうよ!」
その言葉と同時に三度、ナイフが振られる。けど、潮村先輩も認めた通り、僕と先輩の実力はほとんど同じ。だとしたら、潮村先輩に出来て、僕に出来ないことがある訳がない!
ガッ ガガッ
渚「……やっぱり、対応できるよね……。だけど、それでも負けるわけにはいかないんだ!」
……よし!何とか対応できた。
それから数分後。
[フィールド:古典]
2-F 坂本雄二・・・211点→戦死
2-F 吉井明久・・・69点→53点
VS
3-F 緑川罪 ・・・375点→140点
3-E 潮村渚 ・・・64点→戦死
なんとか潮村先輩は倒せた。その代わり雄二もやられちゃったけど……後は緑川先輩だ。点数差は約3倍…。Bクラスとの戦いで既に経験している!この勝負、希望が見えてきた…かな?
罪「あーらら。やられちゃったの?数学と英語以外は相変わらずポンコツだねぇ。」
渚「……ごめん。吉井君を止めきれなかった。」
罪「大丈夫大丈夫。君がいなくなっても、僕ならここから巻き返せるからね。」
雄二「思っているより削れなかったな……。けど明久なら問題ない。コイツの大事な大事なお姫様を泣かせたんだ。」
なんか、雄二がおかしなことを言っているけど、今はそんなことを気にしてもいられない。ここからが正念場だ。
罪「へえ……。この状況でも諦めないって言うのかい?なら、奥の手を切らせてもらうよ。」
そう言うと、先輩は召喚獣を、自らの方へと走らせた。走らせて……先輩をすり抜けて……後ろの方へ隠れた?
罪「フフフ……君が相手だからこそ、できる戦い方があるのさ。……例えばこういう風にね!」
ヒュヒュヒュッ
明久「う、うおおお!?」
この先輩、本来召喚獣が現実に干渉しないのをいいことに、自分の体を目隠しにして投げナイフが大量に飛ばしてきてる!それにしても、潮村先輩と戦っていた時から思っていたけど、この人の召喚獣はどこにこんな大量の武器を抱えているんだ!?全然弾切れする様子がみれないんだけど!
罪「……ふう。いくら馬鹿でクズな劣等生相手とはいえ、流石にこれだけ戦っていると、疲れてくるねぇ…。ちょっと休憩休憩…。」
と、思っていたら、いきなり攻撃が止んだ?しかも、どこからか水筒を取り出し、トクトクと水を注いでいる。正直、訳が分からない……。でも反撃に転じるなら今がチャンスだ!
明久「いけっ!」
僕の召喚獣は先輩と違って、物理干渉能力がある。だから、壁となっている先輩を迂回することになるけど、今先輩の意識は謎の水筒の方に向いている。倒せるとは思わないけど、一撃くらいは…………。
罪「フフ…。お~っとぉ~、手ぇ~が滑っちゃったぁ~(笑)。」
と、いきなり会場に木霊する嘲笑う声。それから召喚獣に降りかかる水筒の液体。そして、僕の身体に突如襲い掛かる、焼き付くような激しい痛み…………!
明久「ぐ、ああああああああああああああああああああああ!」
雄二「あ、明久!?」
なんだコレ!?水じゃ……ない……!?
罪「アレ?アレ?アレレレレレ~?なぁ~んで、君が痛がっているのさぁ~www。」
しかも、さらに水筒の残りも全部召喚獣に降り注いでいく……。それに応じて体の痛みも、どんどん深くなっていく……。もう立ち上がることも……出来ない……。
罪「そうかそうかぁ。君は『観察処分者』だっけなぁ~www。召喚獣が受けたダメージの何割かを自分も受けることになるんだっけねぇ~www。」
雄二「おい…先輩…まさか…!」
罪「ハハハハハハハハハハハ!これが君達に……いや、『観察処分者』のクズ相手に用意した秘策だ!対人同士での加害行為は、試召戦争のルールで禁止されている!でも、人が召喚獣をボコボコにしても何も問題ない!」
そう言いながら、さらに執拗に召喚獣を踏みつけていく。踏まれ蹴られから来る激しい痛みが、謎の液体を召喚獣にかけられた時の、焼けるような痛みに重なって襲ってくる。
[フィールド:古典]
2-F 坂本雄二・・・戦死
2-F 吉井明久・・・53点→52点
VS
3-F 緑川罪 ・・・140点
3-E 潮村渚 ・・・戦死
罪「さらにぃ!人が与えた攻撃だと、点数もなかなか減らないんだよねぇ!だから、こうやってぇ!サンドバックにすることも可能なんですよぉ!」
ダメだ……。もう……意識が……。折角…ここまで来たのに……。こんな奴に……ボコボコに……されて…終わるなんて……。
「や…やめなさい!緑川君!これ以上は反則行為として、失格処分にしますよ!」
罪「…………。」
今…先生の声が…聞こえた……?よかった、流石に先生にまで言われれば、先輩も踏み止まるはず……。ようやく…この……地獄から開放され……。
ガァンッ!
明久「ゴヘアッ!」
先輩…!ついに、水筒まで投げつけてきた…!
罪「やめる…?反則…?なぁに言っているんです?話を聞いてましたぁ!?人が召喚獣を痛めつけたところで違反にはならないんですよぉ!所詮、召喚獣は立体映像!踏もうが蹴ろうが、召喚者本人は痛くも痒くもない!……この現実に干渉できる唯一の召喚獣を持つ、そこで死にかけている『観察処分者』は別だけどねぇ!」
そうだ……!
罪「それに……、私は今まで
「んな…!」
罪「それとも、『
まさか……噓だろ……!いくらここまで非道な行いを繰り返してきた先輩でも、『ソレ』をやったら、一線を越えてしまう…!
雄二「や……やめろ!ここまで明久を痛めつけることに何の意味があるんだ!」
罪「召喚獣を失って何もできない負け犬は黙って見ていろよ!それに意味ならある!俺の望む『モノ』が学園の底辺一人を生贄に手に入れることができる!それを止めたければ止めればいいさ!俺に手を出した時点で、お前達は反則負けになるけどねぇ!」
この先輩……どこまで狂っているんだ……。DクラスやBクラスに宣戦布告に行った時のことが、よっぽどマシに思えるなんて……。
罪「さあ……。くたばれ、吉井明久ァ!」
ドゴッ
罪「ゴ…ガハッ…。どういう……つもりだよ……渚……。」
渚「これ以上は止めよう、シン君。」
な、何がどうなってるか分からないけど……。とりあえず、助かった…………?
罪「何……言ってるんだよ……。」
渚「僕達の悲願は『大会優勝』じゃなかったの!?こんな所で後輩を痛めつけて……。『賞品を手に入れて学園に恩を売る』って、僕に言っていたのは、嘘なの!?」
罪「……ああ、その話……かい?それは例えばの話だったろ……。…………学園に人生を……滅茶苦茶にされた、この僕が……そんなこと……本気で……思うわけないだろ……!!」
……何の話だ?学園に人生を滅茶苦茶にされた……?この先輩に……一体何があったって言うのさ……。
罪「目的が……早くに達成できるなら……さっさと片付けて……次の準備をするのは…………ごく自然の行動だろう……?そして、君がやるべきことは……『友達』として、僕のサポートをすることだろ……!」
渚「……それは違うよ、シン君。僕は君の力になりたい…。僕に出来ることは全力で成し遂げて見せる…。そこに噓は何一つないし、今日のように大会のパートナーを頼まれて参加したのも、その一つだ。だけど、もし君が狂気に呑まれて、人としての『心』が無くなりつつあるなら…、僕は全力で君を引き戻す。それが…僕の『友達』としての在り方だ!」
潮村先輩の…言葉に……もう一人の先輩は俯きながらも…、会場を走り去っていった。
渚「……そういう訳なので先生、僕達は棄権します。……坂本君……ですよね?これから時間…ありますか?」
とにかく……僕達の…………勝ち………………なのか……。
先生の宣言を聞いて、それを確信してから僕は……………………意識を手放した。