零次「またまた久しぶりだな。双眼零次だ。結局、月一投稿に戻るのは、もうしばらく先になりそうだな…。今回の話はタイトル通り、裏で暗躍している者達の話だ。彼等が表舞台に出てくるのは、まだまだ先になるが…。一応、今後の話の流れを決めるためにも書いている。それでは、本編を楽しんでくれ…………。」
第四回戦 第一試合 終了直後。
学園のとある部屋。そこには、先程の試合の一部始終を端末越しに見ていた人影があった。
?1「あららら……。やってくれちゃったね……。このままじゃあ、文月学園は終わりじゃないですか?」
?2「…………そうですね。これだけの観衆の前で一人の生徒を意識不明にまで追いやったのです。説明責任は免れないでしょうね。……どうやら彼の学園に対する恨みは、私が思うよりも深く、大きいものだったようです。」
そう言って一つの『影』は困り果てたように、目頭を抑える。
?1「……どうします?『彼女』に頼りますか?」
?2「そうしたいのは山々ですが……。『彼女』の能力を利用するということは、緑川君を『消去』する必要があるのでしょう?彼にはまだ利用価値があります。それに、都合が悪くなったからと言って逃げに走る、あなたのその姿勢を、私は称賛しませんよ。世の中には、自分の利益になることばかりを享受して、害になることは周りに責任を転嫁する人もいるようですが……。成功も失敗も、両方を経験しなければ、人としての本当の成長はあり得ませんよ。」
?1「…………なるほど、身に染みる言葉です。しかし、残念ながらあなたの説教も『彼女』にとっては馬の耳に念仏でしたね。」
そう言って、見せた端末の画面には、『彼女』なる存在が既に動いた後であることを示すメッセージが表示されていた。
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?2「なるほど…。初めから私に選択の権限は無いということですか。」
?1「まあ、安心してくださいよ。緑川君……でしたか?彼が『消去』されることは無いですから。そもそも、毎回毎回そんな手法を使うのは合理的でないことくらい、『彼女』も理解していますしね。」
?2「……それならば、まあ、良しとしましょう…。それでも、『彼女』の行動は理解できませんがね。……ところで、『彼女』の存在は試験召喚システムに最初からあったのですか?」
?1「……………………ええ。それがどうかしました?」
?2「……今までも、学園の生徒が問題を起こすことが多々あったというのに、その時は『彼女』が何かしら行動したらしき形跡は何も見当たらなかったのですよ。それが今になって活動的になっているのが不思議でしたので…。」
?1「まあ、流石に『彼女』の堪忍袋の緒が切れたのでしょう。システム導入から四年経って、どんどん学園内の風紀が悪くなってきているでしょう?去年なんかは特に酷かったと、裏で報告を受けてますよ?……証拠が手元に無いので、こちらからは特に何もしませんが。」
?2「…………本当にそれだけか、非常に疑わしいのですが……。まあ、いいでしょう。私は、これから緑川君の所に向かうとしましょう。本当に無事か、この目で確かめておかないといけませんからね…。」
?1「そうですか。では、話の続きは、またの機会にでも。…………■■先生。」
そう言って、一つの影が部屋から出ていったのであった。
?1「…………しかし、相変わらず言語がおかしいことになってますねぇ……。どれだけ『デバッグ』や『学習』を重ねても治る様子がないということは……。『彼女』の茶目っ気だと……信じたいですねぇ……。」
【
・・・
同時刻。
罪「クソッ!クソッ!クソッ!」
俺の苛立ちを表すように歩く靴音が辺りに響き渡る。
俺の計画は完璧だったはずだ。渚と『観察処分者』の相方の召喚獣が不自然に戦死しないよう立ち回り、俺と『観察処分者』との勝負になったら、隙を見て『とある細工』が施された水をぶっかける。これを浴びた召喚獣は四肢の機能が通常の1%程まで鈍くなる仕組みが組み込まれている。そうして弱った召喚獣を介して『観察処分者』を痛めつけ、最後に大きい一撃を与えることで、過剰なダメージのフィードバックにより、『観察処分者』に重傷を負わせる。
その一部始終を大衆に見せることで、この学園に蔓延るいじめの現状を伝えられるし、彼らを利用してこの学園を潰せると、俺は考えた。
聞いた話だと『観察処分者』は現在一人暮らし。家族の中での扱いも良くはないらしいが、流石に自分の子供がこれだけの被害に遭えば、親は学園を問題視せざるを得ないはずだ。
この学園に投資している、スポンサーの重役とかが見てくれていれば、なおの事良かったけど……、いなくともインターネットが世界中に張り巡らされ、ある意味インターネットに支配されたこの時代だ。いずれ上の人間の耳にもこの惨状は入る。情報規制する
罪「クソッ……渚…どうして、アイツは邪魔をした…!今まで俺のやることを強引に妨害することはなかっただろ…!」
だけど、その作戦の仕上げにかかるところで、相方である渚に止められた。腹を殴られる形で。
今まで俺が喧嘩をしようが、他人に罵詈雑言を浴びせようが、アイツは言葉で諌めるだけで、直接手を出してくることはなかった。
罪「強い者が弱い奴を掌握し、嘲笑うのが、この学園の本当の姿だろうが……!数学が俺より…いや、誰よりも博識だからって、それで自分が『強者』になったつもりかよ…、潮村渚ァ……!」
思えば、俺のクラスの代表も、俺と似た事情でFクラスに堕とされた二人も、俺に対して反抗的な態度を見せてたな…。どうして俺の周りには、学園の風潮に逆らう奴しかいないんだ……!俺と似たようなことをしている奴なんて、探せば他にいくらでもいるだろう…!ソイツらには怯え、縮こまるクセに、『歳上』のはずの俺には食って掛かる。まるで、奴らに反発できない鬱憤を晴らすかのように。
それからも、しばらく叫び続けた。逃げている最中、見つかる訳にはいかなくても、積もり積もった怒りを発散せずにはいられなかった。
罪「ハァ…ハァ………、フゥ……。」
苛立ちが落ち着いて、辿り着いた先は部室棟の一部屋。使用している部活動の名前が書かれたプレートや、それに類するものが見当たらないところから、空き部屋だろうと思った。…まあ、扉を開けたら案の定、空っぽの棚に、埃を被った長机と、全然手が付けられていないのが、バカでも見て分かる様だった。
罪「…さてと、これからどうするかねぇ……。戻るにしたって、途中で先生に捕まるだろうしなぁ……。」
仮に先生に見つからなかったとしても、今頃さっきの試合で起きた出来事は祭りに参加している一般の客に知れ渡っているだろう。腕に自慢のある人が犯人確保を名乗り出る可能性も考慮すると、校舎の方には、まず戻れないだろう。
「…………シン?そこにいるのか?」
そんなことを考えていたら、何者かの声が聞こえてきた。もう、ここまで捜索の範囲を広げてきたか……。
そう思ったが、壁から覗き込んできた顔を見て、ひとまず安堵した。
罪「おじさん…おばさん…。来てたんだ……。」
「当たり前だろう?シンの晴れ姿をみたいというのは、親として当然のことじゃないか。」
「それにしても、大変なことになっておるのぉ…。お前さんがその身を挺して学園を良くするために動いているというのに…。その邪魔をするとは……。」
罪「…僕でも分かっているさ。今回はちょっとやりすぎた。だけど、アレくらい目に見える形で、この学園が一人の生徒に対してのイジメを半ば容認していることを示さないと、誰も動かないと思ったのも事実さ。」
一人の生徒がを気を失うレベルまで痛めつけたんだ。もうこれ以上大会を続けるのは不可能だろう。もし、強引に続けるつもりなら、それこそ学園の人間の正気を疑うね。
罪「何なら、二人が一部始終を動画に収めたのを匿名でネットにバラ撒いてくれても良かったんだけど。俺の晴れ姿を見たいっていうくらいだから、撮ってるんでしょ?」
「もちろんさ。それなら、今その動画を送るよ。私らには、マスコミの知り合いなんていないし、ネットのことは、シンの方が詳しいだろう?」
…………ヨシ。これでこの学園は本格的に終わりだ。目の前にいる二人には大分世話になってきたけど、元々『本当の親子』ではないんだ。正直、未練も後悔も…、何もない。俺を見守ってくれた恩はあるけど、それももう少しで終わりをむかえる。
罪「…………あれ?何だこれ。」
……はずだった。
「どうしたんだい?大会の映像って、それで合っているだろう。」
罪「ああ……、間違ってない。間違いなく、さっきの試合だ。けど……なんで、
貰った動画には確かに先程の試合が映っていた。対戦相手も相方も科目も点数も何一つ俺の記憶と変わりない。
違うのは試合の展開だけ。『映像の中の俺』は、『観察処分者』とその相方(名前は忘れた)を一人で相手にしていた。先にその相方を処理し、『記憶の中の俺』と同じ方法で、『観察処分者』を弱らせていた。だけど、そこから痛めつけようとした瞬間、ずっと後ろで待機していた渚が俺の召喚獣の首をはねて、決着となっていた。
これじゃあ、『いきなり苦しみだした観察処分者』という不可解な絵面ができただけで、学園からしてみれば何の痛手にもならない……!
?「あら?こんなところにいましたのね。そして…………貴方達が
「だ、誰じゃ!?」
俺が記憶と映像の矛盾に頭を悩ませていると、ドアの開ききったこの部屋に新たな来客が現れた。
現れたのは、ゴシックロリータ風の衣装を身に纏った女性だ。首元のネックレスをはじめ、腕や指に付けた装飾品から高貴な雰囲気が醸し出されている。それに対して、黒を基調としてなお目立つほど、あちこちが赤黒く変色した衣装からは、潜り抜けた戦場の数と、洗浄しきれない程深く染みついた血生臭さが感じ取れる。
その身は高貴でありながら、隠しきれない狂気も持ち合わせている。敵か味方か問われれば、誰がどう贔屓目に見ても、敵側・悪役がしっくりくるのだが、その女を俺は知っている。
?「失礼しましたわ。
『第漆天[紫頂星]所属 七天八刀 副団長
七天八刀。この文月学園がある市内全土を主に活動拠点とする不良集団の名前だ。そのナンバー2にして、経理のリーダーを務めているのが、今目の前にいる九条院だ。
単「緑川君、貴方の目論見はどうやら失敗したようですわね。けれど、潮村君には感謝しなさい。貴方に犯罪者の烙印が押されるのをギリギリで防いでくださったのですから…。」
罪「…………そんなの既に押されてるよ……。」
単「それは『偽り』の印でしょう?それを貴方自身の手で、『本物』に変えてどうしますの?それこそ、他人の人生を私怨で潰して、のうのうと人生を謳歌している連中の思う壺ではなくて?……もっとも、あの連中は貴方のことなど、微塵もおぼえていないでしょうけど。」
それを言われると、ぐうの音も出ない。俺は『文月学園への復讐』という目的を意識しすぎたがために、手段を全く選ばなかった。それが巡り巡って、過去に俺を貶めた奴らが行ったレッテル貼りが成功してしまうことに、彼女に言われるまで、全く考えに至らなかった。それに気づかされた俺は俯くしかなかった。
「……それで、九条院さんとやら。儂らに何か用でもあるのか?」
単「当然ですわ。貴方達も……いいえ、むしろ貴方達の方が
そうして一息入れてから彼女から告げられた言葉は、俺が……いや、俺達がずっと求めていたものだった。
単「ようやく見つけましたのよ……。緑川君のご友人であり、そして何より、貴方達の一人娘である『
その言葉を聞いたとき、俺の中で止まっていた歯車が狂ったように動き出す感覚を覚えた。