茜「ハァ……。チクショウ、負けだ負けだぁ。」
[フィールド:古典]
3-A 東堂茜 ・・・414点→戦死
2-E 戸祭太子・・・ 58点→戦死
VS
2-A 双眼零次・・・402点→94点
2-F 近衛秋希・・・394点→96点
こうして召喚大会の四回戦は無事に終わりを告げた。
色々とトラブルや番狂わせのあった第一試合と第二試合とは打って変わり、第三試合と第四試合は特にそういったものは無く、文月学園生徒の大半が想像する対戦カードとなった。……一部、俺が準決勝までコマを進めることを非難する奴がいそうなものだが……、きっと近衛が一人で勝っているものだとして無理矢理納得しているんだろうな…。
「サーセンッ!ジブンの力及ばず、先輩を優勝まで導けずに……。」
茜「あぁん?何に謝ってやがるよぉ。アタシはアンタと一緒に参加したかったからぁ、そうしたまでだ。それに、アンタは必死にアタシをサポートをしてくれたじゃあねえかい。アタシのためを思ってさぁ、頑張ったことはよ、決して無駄にはならねぇからよぉ。」
確かに、戸祭は俺達の動きをよく観察していたし、戦死したあとはより的確に俺達の行動を東堂先輩に伝えていた。
Eクラスは2年で唯一、まだ試召戦争を経験していないクラスだが、負けてなお東堂先輩の腕輪の能力が十分に輝いた試合だった。このことを考えると……、俺に勝つには
もっとも、Eクラス代表に教えてやるつもりは毛頭ないがな。
秋希「うんうん、東堂先輩の言う通り。ここまで私達を追い詰めたのは、先輩が持っていた『入替』の腕輪だけじゃない。それをどのタイミングで使うべきか、戸祭さんが見極めてたから、この惜敗となったのよ。」
確かに近衛の言う通り、ここまで接戦になったのは初めてだな。これまでの戦いは、相手が早々に勝負を諦めるか、近衛の琴線に触れたかで、どちらにしろ一瞬で試合が終わったからな。
さらに試合を難しくしていたのは、東堂先輩の召喚獣が持つ『入替』の腕輪だ。能力は単純明快。自分と相手の立ち位置を入れ替える、それだけだ。それだけなんだが……、だからこそ実に厄介な代物なのだ。
相手に攻撃される瞬間に使えば、敵と入れ替わり同士討ちを狙えるし、他の味方と入れ替わることで身代わりを立てることもできる。単純に攻撃してくる相手と入れ替わって、回避することもできるし、他には敵が密集している地点に『入替』を使って、奇襲を仕掛ることもできるな。
そんな感じで、『入替』の腕輪は単純な能力故に、応用が利きやすい能力と言えるだろう。先輩は今まで、回避目的でしか使っていなかったらしいが、今回の大会で戸祭のサポートを受けたことで、他の使い方にも気づけたそうだ。
茜「ともかく、アタシ達に勝ったアンタ達なら、優勝間違いないだろ。それに、これでアタシ達は明日は祭りの運営に全力を注げる。そっちも、全力で祭りを楽しめよ!」
そう言って、晴れやかな顔で、二人はフィールドを去っていった。
そして、これで準決勝のメンバーが出揃ったな。
準決勝 第一試合
2−F 吉井明久
2−F 坂本雄二
VS
3−C 青葉文
3−A 木地標示
準決勝 第二試合
2−F 近衛秋希
2−A 双眼零次
VS
3−A 常村勇作
3−A 夏川俊平
そう言えば、俺達の対戦相手って、昼食時に俺達の店で問題を起こして、東堂先輩に連行された奴らじゃなかったか?どうやって先輩の監視下から抜け出して、準決勝までコマを進めたか疑問に残るが、次の試合も勝って、もう一度東堂先輩に突き出せばいいか。
・・・
…さて、召喚大会の今日のプログラムが、残るは準決勝のみとなったわけだが……。
?「オーホッホッホ。こんな所で何ボーっと座っているのかしらぁ?双眼零次君?」
零次「…………そちらこそ何しに来たんですか、
その女性のことを俺は知っている。七天八刀の副リーダーが一人、九条院
単「何って、あなたが文化祭に参加すると聞いて、『組織』の視察を午前中に終わらせて、飛んできた次第ですわ。もちろん、リーダーと
マジか。七天八刀のTOP3が揃いも揃ってこの文月学園に来るとは…。というか、あの二人はどうかは知らないが、こんな異様な装いをした人が堂々と入れるって……、この学園のセキュリティはどうなってんだ?
零次「ま、去年はクラスの連中から追い出されて、変装して祭りの巡回をしていたからな……。今年は店番としてクラス内の役割を貰えただけマシだろう。」
単「そのようですわね。……まあ、それはそれとして、ここに来た目的は他にもありますわ。一つは緑川君に『例の事件』の真相を話しに。この学園の関係者から有益な情報を受け取りましたのでね……。」
そう言いながら二本指を立てて、彼女は語りだす。
……そう言えば、緑川先輩も『七天八刀』のメンバーだったか。確か
正直言って、どこのチームに異動になったかまでは、覚えていないんだ。はっきりしているのは、組織で問題を起こした人達で構成されたチーム、『陸奥守』『七ツ星』『八握剣』のどこかに行った、それだけだ。
そんな緑川先輩が関わっている『例の事件』についてだが……。これまた俺は詳しいことは知らない。というのも『例の事件』が起きたのは、今から3~4年前。あまりにも凄惨な事件故に、当時中学生だった俺達には情報規制が敷かれ、『組織』の独自調査に関わることも許されなかったのだ。
そして高校生となった今では、最初は百人規模だった『組織』の調査団も徐々に解体され、『例の事件』に関して未だ積極的に真実を知ろうと躍起になっているのは、十リーダー・九条院先輩・王先輩のTOP3含む十数名となった。
単「あまり鵜呑みにも出来ませんが、その者の目は私達と同じ……。自らの理念に反するものを許さない、と訴えるような目をしていましたわ。だからこそ、私達はその方を信じ、その情報を彼にも託しましたわ。」
零次「そうですか。正直、俺にはあんまり関係ない話ですがね。」
単「フフフ……。それもそうでしたわね……。」
そう言って指を一つ曲げ、九条院先輩はもう一つの目的を話し始めた。その顔からは呆れと怒りの二つの感情が混ざっているように感じた。
単「もう一つは、ここの教頭に破格の報酬をチラつかされて、それにホイホイ乗せられたおバカさん達を回収しに来たのですわ。近衛秋希から『七ツ星』の
つまり坂本達が襲われたのは、竹原教頭が仕向けたものだったから、ということか。だが、目的はハッキリとしないな。坂本の『悪鬼羅刹』の噂は、俺の『死神』と同レベルくらいは広まっているし、入学早々に明久共々悪目立ちしているわけだからな。そこらのチンピラ相手じゃ話にもならんだろう。……それとも、そうやって問題をわざと起こさせて、その責任を坂本に押しつけるつもりか?現状これが一番しっくりくるな。実際、別の教師に同じことを、俺はされたしな。
そういえば、宝は東堂先輩に捕まっていたはずだよな。もしかしたら、話を聞けば、教頭の目的が見えるかもしれない……。
単「事情を聞いたところ、近衛秋希の報告と一致したため、写真は押収しましたわ。どうやら、報酬に目が眩んだおバカさん達は、私達に今回の件を報告しなかったうえに、勝手に金まで貰っていたようですわね………!」
『七天八刀』にはいくつか『絶対厳守のルール』と呼ばれるものがある。
・組織外から受けた依頼は、所属チーム及び『七天』に必ず共有すること。
・報酬が発生する場合は、原則依頼を完遂の後、受け取ること。絶対に依頼締結と同時に報酬を受け取ってはならない。
実際はもう少しニュアンスが違ったかもしれないが、少なくとも、今回教頭に加担した奴らはこの二つのルールを破っていることになる。まあ、『絶対厳守のルール』とはいっても、破ったところで、組織から即追放……なんてことは余程のことが無ければない事だが、今回事を起こしたのは、揃いも揃って組織でも問題視されている人達ばかりだ。流石にリーダーの堪忍袋の緒が切れるのではなかろうか。
それにしても、近衛は一体いつの間に情報を渡しているのやら……。それにもう一つ気になることが。
零次「……そういえば、教頭が黒幕だってのは、どこからの情報だ?」
流石に近衛と言えど、今回の件を、教頭のせいだと言い切るのは無理があるはず。俺の知らない場所で明確な証拠を見つけていたなら、まだ納得できないことはないが。
そして先輩は、その答えをにこやかに話してくれた。
単「あなたが『蒼魔王』の次期リーダーに任命した、白崎輪護ですわ。正確には、その友人が彼の前でベラベラと喋りすぎただけなのですが……。あなたが見込んだ後輩は本当にいい仕事をしますわね。」
俺は文月学園に入学するにあたって、十リーダー達と話し合い、しばらく『七天八刀』と距離を置くことにした。その際俺は『蒼魔王』のリーダー、そして『死神』の二つ名を白崎に譲り渡した。
もっとも、そうしたところで、俺に対する文月学園の評判が変わるわけでもないことは重々承知の上だ。だが、『七天八刀』としては、俺は『組織』を抜けた扱いになっている。そんな現状にある俺に勝負を仕掛けることは、『組織』の外の人間に危害を加える行為に等しいものと、解釈される。もちろん、これも『絶対厳守のルール』と呼ばれるものの一つだ。俺へのリベンジを目的に『七天八刀』に加入した者には、少々申し訳ないことをしたがな……。そういう奴らが、これまで律儀にこのルールを守っているのを考えると、あの三人の酷さがより際立つな…。
零次「それは嬉しい限りだな……。それで、肝心の白崎は一緒に来ているのか?」
単「いいえ、今日はバイトだと聞いてますわ。……まあ、祭りは明日もやるのでしょう?あなたが望むのなら、後で彼に言っておきますわよ?」
どうするかな……。俺の立場上、『七天八刀』に口出しすると、余計な連中までオマケで付いてくる可能性が拭いきれない。
単「フフフ……いくらでも悩んでくれて構いませんわ。私達はあなたが元の鞘に収まる時を待っていますの。あなたとしては、あと二年ほどすればまた戻ってくるおつもりでしょうけど……、そこまで気の長い人間は、ウチの『組織』には少なくてよ?」
確かに俺はこの学園を卒業したら、また『七天八刀』に戻る。それはほぼ確定事項だ。リーダーは俺のことをちゃんと見てくれた。処暑中学にいたころ、まだ何の力もなく、いじめられていた俺に手を差し伸べて、居場所を与えてくれた。不良を束ねるリーダーではあるが、どこか悪になりきれていない。かと言って、正義のヒーローを気取る訳でもない。だが、リーダーは常に自分に正直に生きている。だからこそ、憧れる者が多いと、俺は思っている。
単「……と、それでは、私はあなたのクラスの出し物を楽しんで参りますわ。リーダーも十三代も、今はどこかで遊んでいるでしょうしね……。私も羽を休ませていただきますわ。」
そう言って、九条院先輩は教室の方へ歩を進めていった。
今のところ、怪しい来客はクレーマーの先輩くらいだが、もしかしたら祭りを続けられないくらいの騒ぎになる可能性が出てきた。今日のプログラムもそろそろ大詰め。気を引き締めなければならなそうだ……。
~後書きRADIO~
零次「…さて、後書きRADIOの時間だ。」
秋希「今回で23回目……。いくら不定期と言っても、流石に間が開きすぎでしょ。」
零次「前回が……第50話。1年以上期間が空いていたか。更新頻度が遅くなっているとはいえ、もう少し頻繫に開催すべきだな……。」
秋希「というわけで、リハビリがてら、今回はゲストは無し!本当は東堂先輩を呼びたかったけど……。それは次回で!」
零次「今回は久しぶりに感想をもらったからな……。それの解説でもしよう。」
秋希「えーと……。ああ…潮村先輩達の名前の由来か。」
零次「ああ。それについて二つほど話したいことがな。まず一つ。……実は潮村先輩の名前のベースになったのは暗○教室の主人公だけではないんだ。」
秋希「そうなの!?」
零次「……作者が愛読している小説の主人公が、もう一つのモデルだ。理系科目が消えた日本で、理系関係者達がテロを起こしたために、数学を愛する少女が警察らと協力し、それを止める物語だ。」
秋希「大分ザックリした説明だけど……。あらすじとしては間違ってないか。」
零次「主人公の名前が同じ『渚』ということでな。二人の名前を組み合わせた。作中では恐らく明記していなかったから、ここで言わせてもらうが……。潮村先輩の得意科目は、英語と数学。それ以外は軒並苦手科目だが…、特に壊滅的なのは、物理や化学、それから日本史だな。」
秋希「ああー……。得意科目と苦手科目は両方の設定を踏襲しているのね。」
零次「もう一つは、こういう他作品から命名のヒントを貰っているのは他にもいくらかいるってことだな。一例を挙げると、この4人かな。」
3-A 東堂茜
3-C 青葉文
3-E 磯野悠宝
3-E 後川夜斗
秋希「3-Eの二人に関してはなんとなく分かったわ。」
零次「まあ…………『3-E』だからな。」
秋希「ついでに言うと、東堂先輩はモデル元のキャラクターに性格が……似てるわね……。」
零次「腕輪の能力も似せているな。色々と違う部分はあるが。」
秋希「…………長くなりそうだし、この辺にしましょうか。」
零次「そうだな。次回からは準決勝だ。こうしてみると、まだ一日経ってないんだな…。」
秋希「それでは……。」
「「次回もよろしくお願いします!!」」