バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問12-F 表で働く策略

雄二「明久!作戦はさっき伝えた通りだ!しくじるんじゃねえぞ!」

 

明久「それはこっちのセリフだよ!」

 

 準決勝第一試合。雄二の作戦はいきなり出鼻をくじかれ、ほとんど万策尽きたような状態だった。それでも、何とか雄二は策を捻り出してくれた。

 その作戦とは、僕が木地先輩を抑えてる間に、雄二が青葉先輩を倒す!

 ……うん、雄二にしては、らしくない大雑把な作戦な上に、僕の負担がメチャクチャ大きい気がする。

 

 けれど、これが正しいのかもしれない。雄二は代表だから、DクラスやBクラスとの戦争では後ろで指揮をしていたし、雄二が戦うほどの接戦にもならなかった。Aクラスの戦争では、テストの点数を利用した変則的な勝負を仕掛けていた。結局のところ大会が始まるまで、雄二は召喚獣を使ったことがほとんど無いんだ。そのため『観察処分者』の仕事や戦争の前線にいることの多かった僕と比べて、細かい操作は雄二にはできない。

 

 だからこそ、僕が点数の高い先輩の相手をする。できれば狙うのは、各個撃破だ。それができなくても、青葉先輩との勝負で疲弊した雄二でも相手できるように、点数を削っておく。それが僕の役割だ。

 

標示「……なるほど、坂本さんが実力の拮抗した部長の相手をし、召喚獣を操作に長けたあなたは私の足止めにまわる…。実に合理的です。ですが……。」

 

 途端に先輩の召喚獣の腕が輝く。…って、まさか腕輪!?なんとかして避けないと、マズい…………!

 

 

[フィールド:保健体育]

2-F 吉井明久・・・104点

 

2-F 坂本雄二・・・177点→138点

 

 

VS

 

 

3-C 青葉文 ・・・153点→111点

 

3-A 木地標示・・・306点→286点

 

 

 …………って、あれ?何も起きない?

 

文「あやああああっ!隙ありですよぉーっ!」

 

 って、青葉先輩が突っ込んで来た!?しかも何故か味方であるはずの木地先輩の方に。だけども、すぐに態勢を立て直して、こっちに向かって来た。たまらず、こっちも応戦する。

 

明久「……って、あ、あれぇ!?」

 

 召喚獣が思った通りに動かない!?いや、動いてはいる。けど、青葉先輩を迎え撃つはずが、その脇を素通りしていった。

 

文「もう一度言いましょう。隙ありですよ!」

 

明久「ぐへっ!」

 

 そのままガラ空きの背中に蹴りを入れられる。幸い点数差がほとんどなかったから、召喚獣へのダメージは軽微だ。それでも背中の痛みはそれなりにあるけど……。それ以上に頭に違和感があったような……。

 

文「あーやややややっやぁーっ!その程度でわたしを……いえ、わたし達を止めるなど笑止!身近に『腕輪』を使える人がいるせいで、2年生(そちら)だけの特権とでも思ってましたぁ?」

 

 うわあ、青葉先輩の言い方が、めちゃくちゃ小物臭いんだけど……。

 そもそも、腕輪は僕ら2年でも使える人は少ない。零次をはじめとして、僕の周りに腕輪を使える人が多いから勘違いしやすいけど、Aクラスだって上位10名の規格外な生徒を含めても、平均点は200点程度。ほとんどの生徒が腕輪を使えないのは、学力最高クラスのAクラスも同じだ。

 

雄二「……明久、大丈夫か?」

 

明久「うん。ちょっと頭がおかしくなってた感覚があったけど、もう大丈夫。」

 

雄二「お前の頭がおかしいのは、いつものことだろ。」

 

 え、ひどくない?バカは散々言われてるし自覚もあるけど、今のは普通に悪口でしかないでしょ。

 

標示「余所見とは随分余裕ありますね。」

 

文「さあ、第二ラウンド開始と行きましょうか!」

 

 しまった!さっきの攻防で隙ができたせいで、対戦相手が入れ替わってしまった!

 

[フィールド:保健体育]

2-F 吉井明久・・・104点→97点

 

2-F 坂本雄二・・・138点

 

 

VS

 

 

3-C 青葉文 ・・・111点

 

3-A 木地標示・・・286点

 

 

雄二「おい明久ァ!全然削れてねぇじゃねぇか!」

 

明久「そういう雄二だって、青葉先輩を抑えられてなかったじゃないか!」

 

 

 

・・・

 

 

 あやや……、やはり、こうなりますか。木地君の読みは本当によく当たりますね。

 

 木地君の予測では、まず、初撃は科目が保健体育であることを利用して、土屋君でこちらの不意をついての殲滅、もしくは一人を倒して有利な状況にする作戦とのこと。予測を的中させたことで、相手の出鼻を大きく挫くことに成功しました。

 

 そして失敗した場合は、各個撃破に切り替える可能性が高いとのこと。

 点数はそれなりにあるけど、召喚獣の操作経験が人並みしかない坂本君。その相方は、召喚獣の操作に秀でているけど、点数はお世辞にも高いとは言えない吉井君。互いが互いの弱点を補い合っている良い組み合わせに見えますが、その実態は真逆。連携しようにも、操作経験の乏しい坂本君では吉井君の動きについていけない。

 それ以前に、二人の仲も良好とは言い難いと、私も木地君も判断しています。一部の界隈では、『二人はデキている』とか不穏な噂が流れていますが……。話が脱線するので、個人的見解はまた別の機会にでもしましょう。とにかく、二人の仲が良いとは言えないのは事実。

 

雄二「だいたい、目の前の敵を素通りしていく奴がいるか!」

 

明久「だから、気づいたら木地先輩を狙ってたって、言ってるじゃないか!」

 

 現に二人は、互いに私達を追い詰められなかったことを言い争っている最中ですしね。

 

文「あややや、いつまで無駄話をしてるのです?味方と小競り合いしながらでも倒せると思ってるのなら……、流石にそれは舐め過ぎです…よ!」

 

明久「くっ…!」

 

 回避に防御に、時に撹乱。召喚獣の操作に慣れている吉井君相手に、一対一を維持し続けるのは結構ハードモードではありますが、それでも坂本君を倒せと言われるよりかはマシですね。

 点数に経験、それから頭の回転。どれを取っても、木地君が上。戦ってきた数で言えば、不良で有名な坂本君の方が上かもしれないけど、その経験を召喚獣に転用できていない現状では、何ら脅威ではありませんからね。

 

文「……と、あやや?」

 

 

[フィールド:保健体育]

2-F 吉井明久・・・97点→74点

 

2-F 坂本雄二・・・138点→77点

 

 

VS

 

 

3-C 青葉文 ・・・111点→91点

 

3-A 木地標示・・・286点→178点

 

 

 妙ですね……。木地君の点数の減りが私達より早いなんて……。召喚獣のステータスって、召喚者の点数に依存するんじゃ無かったんですか?それとも木地君がヒョロガリだから、Aクラス上位でも、大して強くなかったとか……?

 

標示「部長、何やら失礼なことを考えていませんか?」

 

文「イイエー、マサカマサカー。」

 

 本当に木地君は時折こちらの心を見透かしてくるので怖いんですよね……。エスパーなの?読心術使えんの?

 

標示「……単純にこちらの想定より操作が上手いって話ですね。吉井さんにでも習いました?それとも…………まさか三回戦で時間がかかった分、コツを掴みやすかった…とか、でしょうか。」

 

 三回戦といえば、この二人の相手のうち一人は木地君のクラスメイトでしたね。確か美術部の部長で、一番仲の良い後輩を誘って参加したんでしたっけ?独特の美学を持っていて、それ故に周りから距離を置かれていて、同じ理由が当てはまるか知らないけれど、召喚獣の操作も周りより抜きん出て上手い……というのが、木地君の話でした。

 その技術の高さがどれほどかは調査中ですが、木地君が其処まで言うということは、もしかしたら今目の前にいる『観察処分者』に匹敵すると考えるのが妥当……ですかね。

 

雄二「まあ、そんなところだな。意外か?」

 

標示「ええ…。ですが、それならもう一度あなた達のリズムを狂わせるだけです。」

 

 そう言うと、再び木地君の腕が光る。ただ最初に発動した時は腕をあげていたのに対して、今回は坂本君の拳を止めるために、前へ手を突き出している。

 でも、そうするということは、必然的に坂本君と距離が近くなるわけで…………。

 

 

[フィールド:保健体育]

2-F 吉井明久・・・74点

 

2-F 坂本雄二・・・77点

 

 

VS

 

 

3-C 青葉文 ・・・91点

 

3-A 木地標示・・・178点→158点→149点

 

 

 まあ、そこそこのダメージをもらうのも当然ですね。

 そして、私のやることはさっきと同じ。『坂本君』の方へまっすぐ突撃していく、吉井君を後ろから突き飛ばしつつ……。

 

 

 

 ………………あや?坂本君の方へ?

 

 

 

明久「くたばれえええええ!」

 

雄二「……!なるほど、『そういう』能力か!」

 

 あやや!?もしや木地君の能力を見破ったのですか!?しかも坂本君の召喚獣は、いつの間にか空いた片手のメリケンサックを外し、木地君の召喚獣の首を掴んでいる。これは……木地君、やっちゃった?

 

[フィールド:保健体育]

2-F 吉井明久・・・74点

 

2-F 坂本雄二・・・77点

 

 

VS

 

 

3-C 青葉文 ・・・91点

 

3-A 木地標示・・・149点→戦死

 

 

標示「…………お見事、です。」

 

 あやや、やはりそうなっちゃいますか。坂本君はうまいこと木地君の召喚獣を盾にして、吉井君の渾身の一撃は、そんな木地君の召喚獣の頭へと吸い込まれていった。無防備な頭に強い衝撃を受けるわけですから、そりゃあ、耐えられませんって。

 

明久「……ってあれ?なんで僕、雄二を狙ったんだ?」

 

雄二「やはり、な。木地先輩の腕輪の能力は『攻撃を1体の召喚獣に集中させる』能力だろ。だから、明久の認識にもズレが生じたんだ。……もっとも今の攻撃は、本当にズレが生じてたか疑う殺意の高さだったがな……。」

 

 その後、私一人で戦況をひっくり返せるわけもなく、何も語れる要素も無いほどにボッコボコにされました。

 まあ、元々私達は決勝は勝つ気が無かったですし……。そんな人達が勝つより、優勝を目指しているペアが決勝に進んだ方が、盛り上がるでしょう。

 

 もしかしたら、あの二人が優勝する、なんて大どんでん返しが見れる可能性も無きにしも非ず、でしょうし。もしその時は、大々的にうちの文学(ふみがく)新聞の一面、飾ってもらいますよ。

 

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