バカと無情の試召戦争   作:Oclock

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小問13-F 『七』つの天を統べる者

雄二「…ふう。何とか決勝に進めたな。」

 

 本当に接戦だった。まさにどっちが勝ってもおかしくなかった勝負だった。

 

明久「それにしても、まさか雄二の策が読まれるなんて思わなかったよ……。」

 

雄二「ああ……流石三年の先輩、そして広報部の部長・副部長コンビだ。本気でかかってきたら確実に負けてただろうな……。」

 

 え?アレで本気じゃなかったって言うの?

 

雄二「俺が副部長……木地先輩、だったか?あの人が俺を本気で倒そうと思えば、いくらでもそのタイミングはあった。あれだけ俺達の盤外戦術の対策を念入りにしていたのに、試合そのものの対策はまるでしていないというのは考えにくい……。」

 

明久「……単純に試合の対策をし切れなかった、というのは?」

 

雄二「…………召喚獣の練度不足を敗因にするなら、その通りだろうな。というより、あの二人は明らかにお前の方に注目を向けていた。俺の方は眼中に無い、とは言わなくても、少なくともお前より警戒されている感じはなかったしな……。」

 

明久「……もしかして僕、褒められてる?」

 

雄二「…………。」

 

 結局、雄二から答えを聞くことはできなかった。だけど、雄二が顔を背けたこと、その時に苦虫を噛み潰したような表情をしていたことから、とりあえずポジティブに受け取ることにしよう。

 

雄二「……ところで姫路や島田はまだ教室にいるのか?」

 

 あ、ごまかされた。

 

明久「確認はしてないけど、いるんじゃないの?」

 

雄二「多分、そろそろ仕掛けてくるはずだと思うんだが……。」

 

 雄二が不穏な言葉を口にする。仕掛けてくるって……。例の妨害かな?でもあの先輩達って、Aクラスの出し物から逃げ出す時に、『東堂』って、怖い先輩に連行されていったし、チンピラもその先輩が制圧したって、雄二から聞いている。他に僕らの邪魔をするような人なんて、想像もつかないんだけど……。

 

康太「…………雄二。」

 

雄二「ムッツリーニか。何かあったのか?」

 

康太「……ウェイトレスが連れていかれた。」

 

 教室の前まで戻ってくると、ムッツリーニが駆け寄って、そう伝えてきた。なるほど、ウチのクラスのウェイトレスが連れ……て……?

 

明久「…………ええ!?姫路さん達が!?」

 

 最初はクレーマーによる妨害。次はチンピラの襲撃。挙句には姫路さん達が拉致された!?次から次へとトラブルが起こりすぎでしょ!

 

雄二「やはり俺や明久と直接やり合っても勝ち目がないと考えたか。当然と言えば当然の判断だな。」

 

 雄二の呟きが聞こえてくる。直接やり合うって喧嘩の事?だとしたら、確かに雄二に敵う相手なんてそうはいない。勉強をサボりまくって、その分身体を鍛えまくってたそうだし。

 

明久「ってそんなことより、姫路さん達は大丈夫なの!?どこに連れて行かれたの!?相手はどんな連中!?」

 

?「……その質問、坂本雄二君に代わって、私が答えてもよろしいかしら?」

 

 僕が慌てていると、後ろから聞き慣れない声がした。そこにいたのは、ゴスロリっぽい服を着た女性だ。……衣装が所々黒ずんでいるのは、元々そういうデザインなのだろう。そういうことにしておこう、うん。

 

雄二「お前は……九条院!?お前がここに来てるってことはまさか……!」

 

?「ああ……、俺達も来ているぜ、坂本。」

 

?「…………。」

 

 再び前を向くと、今度は近くの階段を上ってくる足音がした。まず姿を見せたのは、零次と同じくらいの背丈の学ランを着た男性。そのすぐ後ろから、スキンヘッドに黒スーツ、サングラスと、いかにもその人の護衛をしているような男がやって来た。

 

?「坂本以外は初めまして、だよな?俺は(もげき)一壱(ひといち)。そっちの女は九条院(くじょういん)(ひとえ)。後ろの寡黙な奴は(おう)十三代(とみよ)だ。……まあ、詳しいことは、このメンバーカードの方を見てくれ。」

 

 

『第漆天[紫頂星]所属 七天八刀 団長 十一壱』

 

『第漆天[紫頂星]所属 七天八刀 副団長 九条院単』

 

『第漆天[紫頂星]所属 七天八刀 副団長 王十三代』

 

 

 名刺を渡すような形で受け取った『メンバーカード』には、名前の他に顔写真や連絡先と思われるメールアドレスに携帯番号、それからグループの勲章なのか、ゲームでよく見るような剣に、『7』を組み合わせたマークが書かれていた。

 でも、結局この人達は何者なの?雄二のことを知っているようだけど……。

 

康太「……雄二、知り合いか?」

 

雄二「…………『七天八刀』。この辺の中学・高校のチンピラや不良共を纏め上げた巨大組織。そして…………、姫路達を拉致ったグループの正体だ。」

 

 何だって!?姫路さん達を連れて行った人達の仲間……!?つまりこの人達は、僕らを足止めしに来たってことか……。ついでにさっきの口振りからするに、姫路さん達の居場所も知っていそうだ。

 

単「坂本君?言い方に棘がありませんこと?」

 

一壱「……否定はできないな。事実、そのことを伝えるために、ここに来た訳だからな。……それは置いといて、だ。吉井明久ってのは、君か?」

 

明久「…………そう、だけど。」

 

 リーダーを名乗る男が僕の名前を呼んだ。一体何の用だと言うんだ?

 

一壱「……すまなかった。君にはこれで都度、2回迷惑を掛けたことになる。」

 

 え?ええ!?いきなり頭を下げられたんだけど!?

 

雄二「ああ…。そういや、明久を襲ったのも『七天八刀』の連中だったな。」

 

一壱「そういう事だ。俺が直接彼らに指示を出した訳では無いが……。動向を把握し切れなかった点では、完全にこちらの監督不行き届きだ。」

 

単「こちらが確認しているだけでも、今行動を起こしている連中の大半は、一度『組織』のルールを破って『堕天・刀狩』された人達ばかり。一度はリーダーの温情と主義と恐怖で許されたとしても、流石に二度目は厳正な処罰を下さねばなりませんわね……。」

 

一壱「とにかく、下の者のやらかしは、上の者も責任を取らねばならない。『七天八刀』の解体……は流石に無理があるが、君達と連携して、奴らを掃討することくらいは可能だ。」

 

 何やら不穏なワードが聞こえてきたけど……。要は僕達に協力してくれる、ってこと?姫路さん達を連れて行った人達のリーダーを名乗る人が……?

 イマイチ信用はできないけど……、あまり悪い人ではなさそうだ。

 

明久「え、ええと……、ごめんなさい……。僕はてっきり……その……姫路さん達を助けに行くのを邪魔しにきたと、思って……。」

 

一壱「……坂本に喧嘩を吹っ掛けるなら、まだ話は分かる。だが、君達が俺達に何をした?今回のいざこざが発生するまで、俺は君の名も、顔も、何もかも知らなかったし、それは君も同じだろう?そんな人相手に、警察沙汰に発展するレベルの騒動を指揮する程、『七天八刀』は人も時間も持て余しちゃいない。」

 

単「それに、坂本君を標的にするなら、クラスメイトよりも誘拐相手に適した人物がいるでしょう?……誰のことかは、親友である貴方達なら、言わなくとも分かりますわね?」

 

 ……もしかして霧島さんの事かな?雄二を誘き寄せたいなら、彼女の方が狙われそうだ。

 零次の目を盗んで、そんなことができる人がいるのか、と聞かれたら首を横に振るしかなさそうだけど。

 

一壱「そもそも、坂本はこの件を想定していたろ?」

 

雄二「ああ。もう一度俺たちに直接何か仕掛けてくるか、あるいはまた喫茶店にちょっかいを出してくるか……。どちらかで妨害してくることは予想できてたからな。」

 

 それでウェイトレスを連れ出して喫茶店を妨害した、ということか。確かにそんなことをされれば、売上に影響が出るだろう。

 

明久「なんだか随分と物騒な予想をしてたんだね。」

 

雄二「引っかかることが随所にあったからな。」

 

 そういえば、最近の雄二は何か考え事する素振りを見せていたような……。まさか、この時からこの事態を想定していたってこと?

 

康太「……行き先はわかる。」

 

 そう言って、ムッツリーニが取り出したのは何かの機械。

 

単「あら、何かと思えば、それは九条院家の傘下に作らせた、盗聴器の試作品ですわね。一般では流通させずに『組織』でも悪用しないと信頼できる者のみに渡している代物を…………あなた、ソレどこで手に入れましたの?」

 

 それを見た途端、『七天八刀』のメンバーの顔色が急変した。

 ……いや、顔がメチャクチャ怖い!これがここら一帯の不良達を纏めた人達の本当の顔なのか…!

 

康太「……こ、近衛から……今日、渡されたものだ……。自前の物を仕込む時に『こっちの方が性能良いから』と、勧められて……、半ば押し切られる形で付けたものだ。」

 

 え、近衛さん、僕らの知らないところでそんなことしてたの?ってか、近衛さんの名前を出したところで、この人達に伝わる訳……。

 

単「ああ……、そういえば、貴方達は近衛秋希さんの御学友でしたわね。なら渡された、という話も、あながち嘘ではないのでしょう。」

 

 ええ……、あっさり信じた…。一体近衛さんって何者なの?

 

康太「……そういえばこの盗聴器、『七天八刀』に返却し忘れていた、と近衛は言っていた。」

 

一壱「それはこの一件が終わるまで持っておけ。そうだな……確か、大会の決勝戦は明日の午後行われるんだったか?その時には、俺達は大会を観るつもりだし、俺達側の仲間も何人か零次や君達のクラスに配備するつもりだ。だから、そこで返してくれればいい。」

 

 どうやら、その機械に関しての話はまとまったみたいだ。

 

雄二「話が逸れたな。ともかく居場所がわかるなら、簡単だ。かる〜くお姫様を助け出すとしましょうか、王子様?」

 

明久「そのニヤついた目つきは気に入らないけど、今回は雄二に感謝しておくよ。姫路さん達に何かあったら、召喚大会どころの騒ぎじゃないからね。」

 

単「……むしろ、それが犯人の目的ではなくって?」

 

 …………え?

 

一壱「ともかく、今は君達の助けるのが先決だ。」

 

雄二「そうだな。ムッツリーニはタイミングを見て裏から姫路たちを助けてやってくれ。」

 

康太「…………わかった。」

 

単「では、私達は相手の退路の妨害に回りましょうか?……久しぶりに私の右ストレートを全力でぶちかましてやりましょう……!」

 

雄二「お、おう……。頼んだ。」

 

 その場でシャドーボクシングをはじめる九条院さん。彼女から放たれた拳からは大きい風切り音が聞こえる。両手に高そうな指輪を沢山着けているのもあって、当たったらケガどころじゃ済まなそうだ……。

 

明久「それで雄二、僕らはどうするの?」

 

雄二「王子様の役目なんざ、昔から決まっているだろう?」

 

 茶目っ気たっぷりの目をこちらに向けてくる。

 

雄二「お姫様をさらった悪者を退治することだ。」 




〜後書きRADIO〜
零次「……さて、久方ぶりの後書きRADIOだ。」

秋希「今回で25回目ね。そして、やっぱり期間が開く……。」

?:全くダ!おかげデ、俺の出番ガ減るジャナイか!

零次「……久しぶりだな。天鋸江≪あまのこえ≫。」

天:久しぶり、ジャネーヨ!俺が前に呼バレタのはイツだと思ってンダ!!

秋希「…………もう調べるのも面倒くさくなるくらい、ゲストで呼んでないね……。」

天:クソォッ!なら、次回も俺ヲ呼ベ!俺は基本、この場所でシカ、存在デキナインダからナ!

零次「そんな天鋸江に悪い報せだ。次回投稿もだいぶ先になると予想される。」

天:ムガァァァァッ!!

秋希「まあまあ。今は落ち着いて、後書きを進めていこうよ。グダグダ言っていると、余計呼ばれなくなると思うし……。」

天:……一理アルナ。進めてクレ。

零次「今回は、明久達が準決勝を終えて教室へ戻るところだったな。」

天:原作ダト、霧島と木下姉トノ勝負ダナ。随分ト、セコイ戦イで勝って、坂本が霧島にお持ち帰りされるところダッタっけか……。

秋希「本作では三年の先輩……広報部の部長・副部長コンビとの対決になったね。原作では一瞬で終わったけど、そこまで親交が深くないのと、土屋君の不意打ちに冷静に対処されたせいで、随分と時間がかかったね。」

零次「ま、そのおかげ……という言い方は、やや不適切に思えるが、そのおかげで、姫路達は攫われてしまったわけだな。」

天:その後ノ展開ハ原作通りだナ。合間合間に『七天八刀』が割り込ンデたけどナ。

零次「今回の話で書きたかったのは、明久と『七天八刀』のメンバーとの顔合わせだ。ぶっちゃけた事を言ってしまえば、後々彼らが学園に大きく関わってくる伏線だな。」

秋希「それにだいぶ本作オリジナルの展開が続いたから、ここらで原作の展開を挟みたかった、という意図も…………作者にはあったのかも。」

零次「基本的に原作と変わらない部分は省略するか、俺達側の視点で描いているが、そればかりだと、構成を考えて、文章化するのが大変なんだよな……。投稿頻度が悪い原因の一つだな…。」

秋希「コレ、さ……。今後、完全オリジナルの展開があることが確約してるんだけど……。大丈夫?今より投稿の間隔空かない?」

零次「……モチベーションと時間次第だろうな……。」

秋希「…………と言ったところで、今回の後書きも終わりにしようか。」

天:次回コソ…………次回こそは……、キチンと爪痕ヲ残してヤル……!

零次「そ、それじゃあ……。」

「「次回もよろしくお願いします!!」」
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