零次「どうも、双眼零次だ。そして………………、」
秋希「近衛秋希でーす。」
零次「今回は前回の話の続き、つまり、Fクラスの話だ。」
秋希「………………あれ?今回の話数、『小問4ーF』じゃないの?」
零次「あー……。そういう話は後書きRADIOでしようか。」
秋希「え?まあ……………、いいけど。」
零次「では、本編をどうぞ!」
雄二「……んで、話って?」
福原先生が教卓を取りに行っている間に、『僕』はクラスの代表になった『雄二』を廊下に連れ出した。今からする話は、あまり人に聞かれたくないからね。
明久「この教室についてなんだけど……。」
雄二「Fクラスか?想像以上に酷いもんだな。」
明久「雄二もそう思うよね?」
雄二「もちろんだ。」
明久「……Aクラスの設備は見た?」
雄二「ああ。凄かったな。あんな教室は他に見たことがない。」
そうだよね。僕もAクラスの設備を見てきたけど、壁全体を覆うほどの大きさのプラズマディスプレイや、リクライニングシート。エアコンは各人に一台備え付けで、あの設備の数々を思い出すたび、自分達がこれから一年暮らしていくであろう、Fクラスの教室の酷さに虚しさを覚えてしまう。
でも、僕たちには、こんな状況をひっくり返せる手段がある。
明久「そこで僕からの提案。折角二年生になったんだし、『試召戦争』をやってみない?」
雄二「戦争、だと?」
明久「うん。しかもAクラス相手に。」
?「それは聞き捨てならないよ、吉井君。」
・・・
秋希「それは聞き捨てならないよ、吉井君。」
教室のドアを開け、廊下に出て、ドアを閉める。この一連の動作をしつつ、『私』はそう言い放った。
雄二「近衛、お前どこから聞いてたんだ?」
秋希「えーっと……。君たち二人が廊下に出て……、坂本君が『んで、話って?』って言った所から。」
雄二「最初からじゃねえーか!」
秋希「それはともかく。吉井君………………じゃなかった、ダージリン君って呼んだ方がいいかな?自己紹介の時そう言っていたし。」
明久「いや、紅茶の名前で呼んでほしいなんて言ってないよ!あの時は『ダーリン』と呼んでって……、いや、それでも呼んでほしくないから!」
雄二「お、明久。ダージリンが紅茶の一種だって、よく知ってたな。」
明久「さすがに、それくらい知ってるよ雄二!」
秋希「………ボケた本人が言うのもなんだけど、いったん落ち着こうか。本題に入るよ。」
吉井君を軽く睨みつける。ここからは、私のターンだ。
秋希「吉井君。君は何で、Aクラスに『試召戦争』をしようとするの?」
明久「いや、だってあまりにひどい設備だから。」
雄二「嘘をつくな。全く勉強に興味のないお前が、今更勉強用の設備の為に戦争を起こすなんて、あり得ないだろうが。実際、お前がこの学校選んだのは『試験校だからこその学費の安さ』が理由だろ?」
秋希「それに、君の言い分が本当だとしても、キツイ言い方になるけど、そんなくだらない理由で『試召戦争』をしないでほしいな。そんなに酷い設備で暮らすのが嫌なら、去年のうちから勉強して、少しでも上位のクラスに行けるように頑張ればよかったのよ。」
明久「うぐぐ……。」
秋希「………………で?本音は?」
これで吉井君が『試召戦争』をしたがる本当の理由を聞ければいいけど、そう簡単にはいかないだろうね。
明久「あー、えーっと、それは、その……。」
現に、吉井君はなんとか言い訳を考えようとしている。
雄二「……もしかして、姫路……と近衛の為、か?」
明久「!!(ビクッ)ど、どうしてそれを!?」
雄二「本当にお前は単純だな。カマをかけるとすぐに引っかかる。」
………本当に分かりやすい。坂本君が私の名前を後付けで言ったのは、私がこのクラスに入った理由が姫路さんと違うからだろう。姫路さんが学校の規則で『仕方なく』Fクラスに入ったのに対し、私は『望んで』このクラスに来たわけだからね。
秋希「…………なるほど、そういうことね。」
明久「いや、別にそんな理由じゃ……。」
秋希「そう?これは、あくまで私の予想だけど、『自分や雄二はともかく、姫路さんがこの教室で過ごすのはどうなんだ?確かに姫路さんは本番で実力を発揮できなかった。体調管理も実力のうちかもしれない。けど、それだけの理由でFクラスに落とされるのは気に食わない。もうちょっとチャンスがあってもいいじゃないか。こうなったら、彼女のためにも、まともな設備を用意してあげないと。できれば、実力に見合ったAクラスの設備を。』って、君は思っているんじゃないかな。」
明久「君はエスパーか、何かかい?」
秋希「ということは、姫路さんのためってことは認めるのね?」
明久「………………。」
黙る、ってことは事実みたいだ。
雄二「ま、気にするな。お前に言われるまでもなく、俺自身Aクラス相手に試召戦争をやろうと思っていたところだ。」
秋希「君もなの?…………一応理由を聞かせて?代表なんだから、ちゃんとした理由なんでしょうね?」
雄二「世の中学力が全てじゃない、そんな証明をするためだ。」
秋希「要は、最低クラスの意地を見せつけたいの?」
隣で吉井君が頭に『?』を浮かべている中、私は坂本君に聞いた。
雄二「まあ、そんなところだ。」
秋希「ふーん。ま、坂本君がもともとやる気なら、これ以上私からは何も言わないや。」
ここで私が反対したところで、代表は坂本君なのだ。彼がやると言ったら、皆やる気になるだろうし、そうなったら、もう止められない。
秋希「………いや、二つだけ言わせてもらうよ。坂本君、私『個人』としては、君たちに協力する気はないけど、『Fクラス生徒』の私としては協力してあげる。」
雄二「?どういうことだ?」
秋希「『試召戦争』になれば分かるよ。あともう一つ。私の悪友の言葉を君に送るよ。」
雄二「な、なんだ?」
秋希「………………………世の中は、力が無ければ生きていけない。……力が無ければ、誰も守れない。………………そのことを覚えておいて、坂本君。」
そう言って教室に戻った。福原教諭が戻ってきたのは、その30秒ほど後だった。
~後書きRADIO~
零次「第3回!」
秋希「後書きRADIOの~?」
ゲスト「………………………え?これ、僕も言うの!?」
零次「というわけで、改めて後書きRADIOだ。今回はゲストに吉井明久を呼んでいる。」
明久「ええと……、これ、どういう状況?」
零次「考えるな。感じろ。」
明久「いや、わけわかんないよ!あと、零次の隣に置いてあるスピーカーは何?」
零次「ああ。コイツは前回来てもらったゲストだ。とある事情で、途中で帰ってしまったので、今回も続投という形になっている。それではどうぞ。」
?:皆様、お久しぶりです。ワタクシ、天鋸江≪あまのこえ≫と申します。
秋希「誰!?この前と声は同じだけど、性格変わり過ぎでしょ!?」
明久「そうなの?」
天:はい。前回は非常に不快な思いをさせてしまい、近衛秋希様、本当に申し訳ありませんでした。
零次「コイツの性格は毎回変わるからな……。前回の後書きRADIOの後、スピーカーを起動して話したが、その時はオネエ口調だったぞ。」
明久「うわぁ………………。」
秋希「あ、危なかった………。その性格で出てきてたら、スピーカーぶっ壊すところだったよ。」
零次「さて、そろそろ本題に入ろうか。」
秋希「まず、前書きRADIOでも言ったけど、今回の話数は、『小問4ーF』って表記じゃないの?」
天:そういう話題でしたら、ワタクシから解説致します。前回までの『小問2』『小問3』では、それぞれ『Aクラス視点』と『Fクラス視点』で同時刻で話が進んでおりました。今回は、『同時刻』における、Aクラス視点の話がありませんので、『小問4-F』と、クラスを表す符号がついていないのです。
零次「この時間帯は、普通に自己紹介していただけだからな。特に面白くもないし、近衛みたいに、他のAクラスの奴らと接点があるわけでもないから、カットさせてもらう。」
天:では、次は吉井明久様達の話題に入りましょうか。
明久「よかった………。どんどん話が進んでいくから、忘れられたかと思った。」
零次「それはスマン。ところで明久、くだらないこと聞くがいいか?」
明久「え、何?」
零次「振り分け試験で倒れたのが姫路じゃなくて、例えばそうだな………………久保とかでも、同じ行動をとるのか?」
明久「え?どうだろう………………。たぶん、とるんじゃないかな。」
零次「島田なら?」
明久「………………………………きっと、とっていたと思う。」
零次「若干迷いがあったな。最後に坂本なら?」
明久「絶対助けない!(ニコッ)」
秋希「満面の笑みで言ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
明久「で、結局のところ、何が言いたかったの?」
零次「最初にも言ったが、考えるな、感じろ。」
明久「またそれ!?」
零次「というわけで、今回は、ここで終わりだ。」
秋希「最後は吉井君も一緒に。せーの………。」
「「「次回もよろしくお願いします!」」」