アクセルワールド ~加速世界の金獅子と銀鴉~   作:ゆきラテ

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SUNRISE
Acceleration1 転入生


ニューロリンカー。

 

それは首回りに装着する量子接続通信端末。民生用第一世代機は当時の大手機器メーカーである《レクト》と《カムラ》により、2031年4月に発売された。ネットに接続して脳細胞と量子レベルでの無線通信を行うことで、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)といった技術が容易に実現でき、仮想の五感情報を送り込んだり現実の五感をキャンセルしたりすることができる。この端末は携帯電話やパソコンといった従来の一般的な電子機器、財布(電子マネー)、さらには眼鏡などの視力矯正器具の代用にもなり、第一世代の登場から15年が経過した現在では、国民ひとりに一台と言われるまでに普及した。

 

また、ニューロリンカー用家庭ローカルネット、ホームサーバーもある程度普及しているほか、学校の授業でも黒板への板書や教科書・ノートをARに置き換えるなど、教育の場にも導入されている。

 

 

東京都杉並区にある私立梅郷中学校、いや大抵の中学もニューロリンカーを学校のローカルネットに接続し使用している。

 

その中に最近、復活したネガ・ネビュラスのレギオンマスターであり加速世界一の裏切り者にして【純色の七王】、黒の王《ブラックロータス》である黒雪姫は今日、特別に警戒していた。

 

黒雪姫は《ブレインバースト》、と言うゲームをダウンロードしている。ブレインバーストとはニューロリンカー用アプリケーションで、正式名称《Brain Burst 2039》。略称は《BB》。正式名称にもあるように、2039年4月に正体不明の製作者によって東京都心在住の小学一年生100名に配布され、時折アップデートも行われている。以後の配布はユーザー間でのコピーによるもので、コピー元のユーザーは《親》、コピー先のユーザーは《子》と称される。ただし現在はコピー回数制限がかかっており、1人のユーザーが《子》にできるのは原則として1人のみである。

 

インストールするとソーシャルカメラの映像から再構成された加速世界で現実を舞台にした対戦格闘ゲームが出来るようになる。インストールするには適合条件が2つあり、生誕後まもなくからニューロリンカーを使用していること、大脳応答に適性を持っていることである。この条件から、2031年4月以降に産まれた者にしか適性がない。1から10までのレベル制で、レベル9まではバーストポイントを消費することでレベルを上げることができ、レベルアップ時にはステータスが上昇するだけでなく、ボーナスが発生する。バーストポイントを全損するなどして、一度システムから強制アンインストールされると二度とインストールできなくなり、自らがこのゲームに参加していた記憶さえも完全に消去される。

 

黒雪姫は最近、バーストリンクをダウンロードでき、バーストリンカーになれる資質があると見込んだ有田ハルユキを《子》として、コピーダウンロードした。

 

ハルユキの幼なじみであるタクムであるシアンパイルとの一件が解決した後、加速世界にて後輩である1年生の有田ハルユキを新生ネガ・ネビュラスの結成を宣言。

 

レギオン同士の領土戦にも参加するようなった日常の中、突如黒雪姫のクラスに今日転入生が来るとのこと。そうなった場合懸念されることはひとつ。その転入生がバーストリンカーであること。

 

都内に1000人ほどの人口しかいないバーストリンカーだが、可能性がない訳では無い。対戦は拒めばいいかもしれないが、気をつけなければいけないのはリアル割れだ。

 

「おはよう」

 

「「「「「おはようございます」」」」」

 

「昨日も言った通り、今日からこのクラスに新しい仲間が入る」

「入ってくれ」

 

担任が一言言うと、1人の男がクラスルームに入室してきた。艶やかな黒髪、真っ黒な瞳、高い鼻、170後半であろう高身長。一般的にはイケメンという部類だろう。

 

(だが、ハルユキ君の方がカッコイイか…。━━━━━━━…うん、タクム君もイケメンだがね)

 

勝手に心中で自身の《子》であるハルユキ君の方がカッコイイと惚気けるが、タクムのこともしっかりとフォローする。

 

転入生を改めて見ると、左顔の目上と左端、髪に隠れているがひどい火傷の痕が見えた。だからといって醜い訳では無いが痛々しい。そんな視線を向ける周りに男は微笑みながら挨拶をした。

 

「ええっと、今日からこのクラスになりました天野太陽です。特技は料理、好きなことは運動と読書です。何人かは気づいた人がいると思うけど、事情により顔と首から背中に火傷の痕があります。ただの痕なので気にしないでください。これからよろしくお願いします」

 

「よし、じゃ席は窓際の1番後ろにとりあえず座っといてくれ」

 

「おっと、先生、この学校のローカルネットの個人アカウントのデータを貰えますか?」

 

担任の男はすまんすまんと言いながら虚空を指でなぞる動きをし、こちらに何かを投げつけた。

 

受け取った太陽が席に着いたのを確認し、ホームルームを終えた瞬間に黒雪姫は唱えた。

 

「バースト・リンク!」

 

バーストリンクは通常の加速コマンド。もっとも基本となる加速コマンドで、バーストポイントを1ポイント消費し、思考を1000倍に加速させる。持続時間は現実時間で1.8秒、体感時間で1800秒(=30分)。

 

「バースト・アウト」コマンドで任意に解除することもできる。発動中に肉体を自由に動かすことはできないが、ソーシャルカメラの視界内であればアバターを介して周囲を視認することは可能。この際ソーシャルカメラの映像から形成される世界は《初期加速空間(ブルーワールド)》と呼ばれている。

 

現実とあまり変わらないアバターになった黒雪姫はマッチリストを見るとリンカーの名前が4人載っていた。自分である《ブラックロータス》、ハルユキの《シルバークロウ》、タクムの《シアンパイル》。

 

懸念したことがまさかの当たりで、面倒なことになったと思い、新たな4人目のリンカーの名前を見て私は、驚愕した。そこにはこう記されていた。

 

 

《Sunshine Leone》level4、と。

 

 

 




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