勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある?   作:社畜のきなこ餅

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かなり短めですが、これ以上内容を膨らませられる気がしないし変にこねくり回す前に投稿をするのであった。
後半デボラさん視点盛り込んだのですが、デボラさん節ちょうむずい……。
口調がキツキツで、実は~ってタイプだから猶更でした。


18

 

 

ポートセルミ→ルラフェン 〇日

 

 

 二日酔いにより丸一日ポートセルミの宿屋でダウンした後、西へ向かってチロルとシャドウを連れて出立しようとしたところで、当たり前のようにデボラが旅支度を完了していた。

 話を聞いてみると手がかりも見つかった事だし、実家へ帰るための護衛を俺へさせるつもりらしい。この女、人をこき使う事に躊躇の欠片もありゃしねぇ。

 

 ちなみに余談だが、オラクルベリーで買った馬車と馬はラインハットに預けてきた、そんなに荷物持ち歩かないしな。 

 

 

 ともあれ、真っすぐサラボナへ行かないかもしれないが、文句言うなよと溜息を吐けば。

 何やら自らの体を庇う仕草と共に私を連れまわして何をする気よ、とか半目で睨まれたので鼻で笑ったところ全力でケツを蹴られた。痛い!

 

 

 まぁ旅は道連れ世は情けと言うし、問題もないだろ。

 二日酔いの時に言われたあの言葉が、未だに心の中で違和感を伝えてくるから若干顔を合わせづらかったのは内緒だが。

 

 しかし当のデボラはあっけらかんとしたもので、ラインハットの騒動や帰参した姫……ヘンリエッタとの関係についてニマニマ笑いながら話を振ってくる。

 一々言葉尻がキツイ女だが、まぁ、気が紛れるし悪い気分じゃないと思った。

 

 

 

 そうやって旅を進める事しばしの事、背後から走ってくる足音が聞こえたので後ろを振り向く。

 デボラは最初気付いてなかったが、俺につられて振り返っていたが、互いの視線の先にいたのは囚人服に身を包んだ男達だった。

 どうやら、俺ラインハット救国の英雄と判明した時のお祭り騒ぎの際に脱獄し、俺達を追いかけてきたらしい。

 

 見たところ俺が一撃でノした頭は居なかったが、全員が剣呑な形相をしてる事から物騒な事だろうなと思ってみれば。

 思った通り、俺のせいで捕まった挙句、自分達を庇って罪を一身に被ったこいつらの頭が縛り首になったことに腹を立て、俺に一矢報いようとやってきたらしい。

 

 

 変に手心を加えず、皆殺しにしておけばよかったと後悔した。何事も中途半端は良くないな。

 身を屈めグルルと唸っているチロルとシャドウに、カボチ村の時と同様にデボラの警護を頼んでホークの剣を抜き放つ。

 剣からは、本当に良いのか?と問いかけてくるような意思を感じるが、ここで始末しておかないと次は何をしてくるか解ったものじゃない。

 

 せめてもの情けだ、一撃で苦痛のないよう殺してやろう。

 そう思い、俺の安眠の為に死ねとばかりに、半竜形態にならず追いかけてきた男達へ斬りかかろうとする俺に、デボラが声を荒げて呼びかけてきた。

 

 一体何だろうと、男達から注意を逸らすことなくデボラへ顔を向けると何故か一瞬怯まれた。解せぬ。

 しかしすぐに、その目を吊り上げて俺へ足音荒く近寄ると、何事かと問いかける前に思いきり頬へビンタされた。

 一連の流れについてこれず茫然とする男達、ついでにいきなりのビンタに思わず首を傾げる俺。

 

 そのままデボラは、呆けたままの俺を放置して男達へ怒鳴り散らし、あんたらの大事な頭はこんな事させるために罪被ったわけ?と底冷えするような声で問いかければ。

 男達は膝から崩れ落ち、おいおいと顔中から液体を垂れ流して号泣する。なんだこれ。

 

 

 結局男達は自らの意思で改めて投降し、俺にロープで両手を縛られようとおとなしく連行された。この後結局ポートセルミへトンボ帰りである。

 

 道中、デボラへ連中の為に啖呵を切るとは、中々に優しいなと話しかけたのだが。

 連中やアンタの為じゃないわ、ムカついただけよ。とぶっきらぼうに吐き捨てられた。

 連中はともかく、何故俺まで含まれていたのだろう。解せぬ。

 

 

 

 

ポートセルミ ■日

 

 

 あの後結局ポートセルミへ戻り、男達を衛兵へ引き渡した後、太陽も傾いていたのでポートセルミで一泊したのだが……。

 そこで、衛兵とは違う意匠の鎧に身を包んだ兵士に声をかけられた、なんでもグランバニアの兵士でパパスさんの命令で俺を探していたらしい。

 その言葉にじんわりとした温かい気持ちになるのを実感しつつ、すぐにグランバニアへ使いを出すのでこの町でゆっくりしていてくださいと言われた。

 

 しかしまぁ、当たり前だがグランバニアから迎えが来るのに一か月単位で時間を要すらしいので。

 とりあえずデボラをサラボナへ送り届ける案件も請け負ってしまってるし、ルラフェンに野暮用もあるのでそれらが片付いたら戻ってくると伝える。

 

 

 

 兵士の人は意味深にデボラを見ていて、何やら重い溜息を吐いていたのだが、なんか勘違いされてる気がする。

 

 

 

 

 

ルラフェン 〇日

 

 

 この前と違い、道中特に問題もなく夕方頃にルラフェンへ到着。

 町の入口から大きな煙を吐き出す家が見えたので、門番に聞いてみるとベネットという研究者の爺様の家から出ている煙で火事じゃないらしい。

 なんでも古代の呪文を研究しているが、煙で近隣住民から苦情を受けたりしている爺様らしい。

 

 原作通りなベネット爺さんの様子に安心し、そうと決まれば話が早いと向かうも……歩き出して数十分。見事に俺達は迷子になった。

 デボラのジト目が俺に突き刺さるのを感じつつ、どうしたものかと腕を組んで考えていると……シャドウがちょいちょいと俺の足を前脚で突いてきた。

 お前、もしかして道がわかるのか?と聞いてみるとにゃーといつもの呑気な鳴き声を上げた後走り出すシャドウ、とりあえずもう暗くなってきたしデボラの機嫌もヤバイので一抹の望みをかけて走り出す。

 

 結論から言うと、走り出して10分も経たぬうちに俺達は煙を吐き出す家の前に立っていた。シャドウすげぇ。

 

 ともあれ、こんなとこに何の用よとジト目を向けてくるデボラをごまかしつつ、扉をノックして老人ことベネット爺さんへ迎え入れられる俺達。

 研究者特有の長い話の末に、失伝した呪文であるルーラの復活を目指していると言われ、後はとある草があれば行けるはずなのだが取りに行く暇がないというので、二つ返事で了承。

 デボラからはブーイング、そんな与太話信じてるの?という辛辣な言葉までセットで飛んできたが、黙殺する。してたら脛を蹴られた。

 

 

 結局、デボラは美容にも悪いし一足先に宿屋で休んでるわと言う言葉と共にシャドウを伴ってベネット爺さんの家を出ていった。

 若い女性には少々退屈じゃったかのう、などと悲しそうなベネット爺さんの肩を叩いて慰めつつ、夜にしか光らないというルラムーン草の回収へ乗り出す。俺とチロルだけで。

 

 

 

 口やかましいし騒々しいが、居なくなるとデボラの賑やかさが無い事が意外と寂しい事を再発見しつつ、ルラムーン草を回収した俺は明け方にルラフェンへ帰還するのであった。

 

 

 

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 今、私の前でベネットとかいう胡散臭いお爺さんとドレイクが、馬鹿みたいにはしゃぎながら何やら大釜の前でごちゃごちゃやってる。

 何よアイツ、普段は死んだ小魚みたいな目してる癖に、シャドウやチロル相手以外にもあんな目できるのね。

 

 

 私とアイツが初めて出会ったのは、あの時私を庇って魔物相手に残った付き人の情報を探しに行った、ポートセルミだったんだけど。

 長い間サラボナに居ても情報がなかったものが、ポートセルミで見つかるわけがなく、ムシャクシャしてたら農夫のおじさんをいじめている荒くれが居たから、それを庇った時に出会ったのよね。

 

 最初の印象は、顔が整ってるけど辛気臭くて気味の悪い男だと思ったし、荒くれを蹴散らしたらそのまま何も言わずに立ち去ろうとしたから腹が立ったのよね。

 ソレでちょっと挑発してみたら、雰囲気通りの辛気臭い言葉返してきたもんだから、私は怒っても許されると思う。 

 

 それでまぁ、勢いに任せてお酒を奢ってみたら、付き人の恩人だって言うからびっくりしたわ。

 元気にやっているし自分も助けられたって嬉しそうに言うアイツの顔は、まぁ整った顔に相応しい程度に生気に満ちてたから。

 そこで少し見直したのよね、辛気臭いけど人間らしいところあるじゃないって。

 

 

 その後は、少し気に入ったしアイツを見極めてやろうって思って無理やり気味に旅についていったんだけども。

 

 回復呪文があるからって怪我をするような動きで敵を倒したと思ったら、えげつない脅しで降伏させたり。

 チロルやシャドウへ笑いかけながらブラッシングをして、あの子達の腹毛を撫でまわしたりしたかと思ったら。

 辛気臭い顔が標準になるぐらい、無理をしてるって自分で気づいてない。とんでもなく歪な男だって事が見えてきた。

 

 

 挙句にトドメとばかりに、仕返ししようと追いかけてきた男達へ、俺の安眠の為に死ねなんて言いながら襲い掛かろうとする始末。

 思わず呼びかけたら止まったけど、振り返った顔は正直こわ……いや気持ち悪かったわね。

 人間を殺そうとしようとしているって言うのに、鬱陶しい羽虫を潰そうとしてるような顔してたんだから。

 

 正直、ちょっとは見直してたところでそんな顔するもんだから、我慢できずに引っ叩いちゃったんだけど。私は悪くないわ。

 ソレもこれも、全部アイツが悪いのよ。少しはその極端から極端に走るのやめなさいっての。

 

 

 

 

 しっかし、長いわね……そのくせ臭いもきつくなってきたし、服に臭いつく前にこの家出ておこうかしら?

 ……気のせいかしら、なんか大釜から聞こえてくる音大きくなってきたわね。

 




なおこの後、例の大釜からの大爆発に巻き込まれてデボラさんキレてドレイクとベネット爺さんに蹴りぶちこんだ模様。


【今日のリュカちゃん】
「何とかポートセルミへ着きましたね、お嬢様」
「うん……あれ?あそこの人が詠ってる詩って」
「どうやら坊ちゃまの活躍を詠ってるようですね、大人気みたいです」
「うふふ、お兄ちゃんだもん。当然だよー」
自分がヒロインじゃない事に不満はあるが、ドレイクの活躍が知れ渡ってる事にリュカちゃんご満悦。
この後、パパスさんの命で常駐してた兵士さんから、ドレイクが美女を連れていた事を聞いて、リュカちゃんの笑顔は引きつったらしい。
(なお、画面外でホークの事はヘンリエッタ達から聞いてます)

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