勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある?   作:社畜のきなこ餅

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炎のリング回収!終わり!閉廷!解散!(は許されませんでした)

前回ドレイクに助けられた商人や荒くれが、色々やってるらしいですよ。
怖いですねー。


21

 

 

死の火山 〇日

 

 

 一体全体、何を思ってこんなところに炎のリングを安置したのだろうかと問い詰めたくなるぐらい熱い。暑いじゃなくて熱い。

 半竜半人状態の俺ですらこうな以上、なし崩し的に同行する事となったアンディは突入時点で汗まみれだ、気の毒な。

 お誂え向きに、ここへ向かう途中魔物を薙ぎ払ってくる中で使えるようになった、つめたいいきをひんやり吹きかけてみれば多少元気を取り戻すが。

 男に息を吹きかけられるのはなんだか複雑だねとはアンディの言葉である、はははコヤツめ。

 

 まぁそんなこんなで、アンディ自身もヒャドを使えるようなので、魔力を節約しつつ俺のつめたいいきやアンディのヒャドで迫りくる熱波へ対抗しつつ突き進んだのだが。

 途中から往ったり来たりが面倒になったので、アンディ了承の下肩に担いで助走をつけて溶岩地帯を翼による滑空で飛び越えたり、燃え盛る地面を駆け抜けたりして突き進む事にする。

 

 多分俺の体は溶岩にも耐えられそうだが、さすがにそんな実験する気にはなれないし何より荷物と服が燃え尽きるから安全策大事なのである。

 というわけで到着するは最深部、俺ですらキツイ温度の中アンディの顔は死にそうな顔になっている、つめたいいきでも正に焼け石に水状態だ。

 いったん引き返すかと聞いてみれば、力なくも首を横に振る。その心意気と意地に、俺は再度アンディを肩に担ぐと一気に炎のリングがありそうな最奥部めがけて走り出す。

 

 

 そして台座に安置されていた炎のリングを手に入れ、がっつり熱を持って溶けた鉄かと言わんばかりの熱さにアツゥイ!などと叫びつつ回収。

 にょろりと出てきた溶岩原人は、ピオリムを使った高速戦闘で一瞬でカタをつけてわき目も振らず全力疾走で死の火山から脱出し。

 外でアンディへ応急処置を施すと、ルーラでサラボナまで飛ぶのであった。

 

 

 

 

サラボナ ◇町

 

 

 アンディを担ぎ人間状態になってサラボナの町へ到着した俺だったが、町の人からの視線は敵意と恐れに満ちていた。

 ヒソヒソと聞こえてきた言葉から察するに、どうやら俺が魔物じゃないかと、そんな雰囲気らしい。

 まぁある意味合ってる話だし、心が痛むのも事実だがそんな事は重要じゃないとばかりに、担いだままのアンディに確認してアンディの家へグロッキー状態のアンディを配達する。

 

 扉を叩いて現れたのは、初老へ差し掛かり始めた男性。俺の肩に担がれているアンディに驚愕すると事情説明を求められたので応じる。

 その内容に男性は溜息を吐き、願うならばアンディにはフローラは諦めて新たな幸せを探してほしい、という愚痴を呟きつつアンディを受け取ってくれた。とりあえずコレでひとまずは安心だろうか。

 

 その後はルドマンさんの屋敷へ向かったのだが、俺の姿に気付くと人々はそそくさと逃げるように立ち去って行ってはヒソヒソと話し始める。

 犠牲者を出さない為にとあの姿で戦った事に後悔はないが、結局ルドマンさん達に迷惑をかけた事による申し訳なさの方が辛かった。

 

 溜息一つで思考を切り替えて歩き、ルドマンさんの屋敷へ到着。

 炎のリングを確保したことを手近なメイドさんに伝えると、表向きだけなのかはわからないが態度が変わらないメイドさんに案内されてルドマンさんが接客対応中の広間へ案内される。いいの?入って。

 

 そして入った先では、口角から泡を飛ばす勢いでルドマンさんへ詰め寄っていた、あのキメラの群れへ襲われていた裕福そうな商人だった。

 俺が入って来た事に気付いてないのか、あんな化け物などフローラさんの婿に相応しくない、どうせ財産目当て、デボラさんも騙されているに決まっている。等々いっそ笑えてくるぐらいの罵詈雑言である。

 あの化け物は私も襲うつもりだったに違いない!とまで言い出す商人、失礼な。襲うメリットも殺すメリットも無い人間を殺すほど見境ない男じゃないわい。

 

 その商人の言葉を腕を組んだまま聞いていたルドマンさんと不快そうに聞いていたフローラであったが、俺に気付くと嬉しそうに首尾はどうだったかと聞いてきたので。回収してきた炎のリングを取り出して見せる。

 そこで初めて商人は俺に気付いて椅子から転げ落ちると、止めて殺さないでとみっともなく喚き始める。失礼な。

 そんな商人を横目に眺めていると、ルドマンさんからコレの言葉は本当かと聞かれたので。キメラの群れに襲われて死にそうになったから助太刀しただけさ、不要だったみたいだがね。と返しておく。

 

 俺の言葉に商人は顔を赤く染め、この化け物風情が何を言う!とか喚きだすも、俺の心の中はやっぱり助けない方がよかったかなー。いっそどこかで始末すべきか、という思考へスライドしつつあった。

 しかし、そんな中フローラが口を開き。ドレイクさんに助けられておいてその言い草を恥ずかしいと思わないのですかと、貴方みたいな方との結婚など私は絶対に嫌ですとピシャリと宣言。

 フローラの言葉に商人は顔を真っ青にし、必死に言葉を取り繕い弁解しようとするもルドマンさんの合図で入って来た衛兵達に商人は両腕を掴まれて引きずり出されていった。正直ちょっとスッキリした。

 

 引き摺り出されていく商人を不快そうな目付きで見送った後、ルドマンさんは俺へ深々と頭を下げる。

 私の催しのせいで、君の名誉を下げる事になってしまったと言われたので慌てて否定。俺がやりたいからやっただけだと返し、まぁアレには不要だったみたいだがなと苦笑して返しておく。

 どうやらルドマンさんの話によると、俺に助けられたっぽい商人や傭兵、荒くれが昨日から俺の事を吹聴して回ってるらしい。ライバルを蹴落とすにしてはどうなんだろうか、ソレをやってもお前達が炎のリングを手に入れられるわけじゃないと思うのだが。

 

 まぁしょうがないさ、と肩を竦めてルドマンさんに気にしないでほしいと伝え。ここに居たら迷惑かかるから次は何をしたらよいか確認してみると、やっぱり水のリング回収らしい。

 じゃあ泳いでいくかと呟いたらルドマンさんにありえないナマモノを見る目された。解せぬ。

 どうやら船を貸してくれるらしい。有難い。

 

 消耗品や食料も船に積み込み済みらしいので、休憩を取らずにそのまま向かう事にする。

 覚悟してたとはいえ、敵意の視線に囲まれてたら休むモノも休めないしな。とかそんな事を思ってサラボナを出ようとしたら。

 ダークマンモスの群れに追いかけられていた荒くれを筆頭にした、荒くれの群れに絡まれた。解せぬ。

 

 彼らの言い分は、どうせズルをして炎のリングを手に入れたのだろうから。今回の花婿レースから辞退しろという内容だ。

 ズルという言葉に心が軋む、実際問題原作知識というズルをしたのは事実だ、だがこいつらにフローラを守れるとは思えないので相手をする事なく脇を通り過ぎようとする。

 しかし、無理やり肩を掴まれた上に殴られた、どうやら実力行使に出るつもりらしい。    いっそ、殺すか?

 

 殴られた俺を見て下品に笑っていた荒くれ達が、急速に羽虫の様にしか見えなくなってきたので、どう始末したらルドマンさんやフローラに迷惑がかからないか考えつつ荒くれ達を見る。

 ざっと見た感じの肉付きから普段は肉体労働で賃金を得ているように見えるが、こうやって徒党を組んで絡む手口に慣れている事から普段から似たようなことをしているのだろう。

 

 ならば、このまま路地裏や街はずれへ挑発しながら誘い出せば、そのまま消せそうだと判断。

 そして実行へ移そうとしたところで、とても懐かしい声がした。

 

 

 思考を中断し、そちらへ振り向いてみればそこに居たのは紫色のターバンをし見覚えのある顔立ちの美少女、そしてその隣にはチロルとシャドウにつけられたハーネスから伸びた紐を手に持ったサンチョさん。

 二人の様子に、俺は荒くれ共を無視して軽く手を振り、二人の無事と再会を喜ぶ。何か喚いている荒くれが居たが煩かったので顔面を掴んで手頃な壁へ、殺さない程度の力で叩きつけておく。

 

 サンチョさんに俺の所業、というより変貌なのだろうか。それに痛ましい顔をさせてしまった事を後悔していると、紫色のターバンを巻いた美少女が俺に抱き着いてきた。お胸のスライムが大きいな。

 どうやら、美少女はリュカちゃんだったらしいので、無事を喜び抱き着いてきた彼女の背に手を回して抱きしめてやると。リュカちゃんは嬉しそうに俺の胸元にマーキングするかのように顔を擦り付けてくる。可愛い。

 

 

 そして胸元から俺を見上げたリュカちゃんの目を見て、俺は気づいた。

 かつてのリュカちゃんの目は、慈愛と未来への希望の光に満ちたモノだったが……今のリュカちゃんの目は、どろりとした情念じみたものが渦巻いている事に。

 

 え?お兄ちゃん結婚するの?いやいや、色々諸事情あってお手伝いしてるだけだから。ほんと、ほんとだよー。

 そんな事言っていつも無茶してるんでしょ?ちがうよー、そんなことないよー。

 

 

 え?ラインハットでヘンリエッタとマリアちゃんと会った、そっかー、え?モテモテなんだねーお兄ちゃん?ハハハ、そんなことないさ、きっとそうさ。

 

 だからリュカちゃん、あの頃の君の笑顔を浮かべて、そっと離れて堂に入ったローキック構え取らないで……って、いってぇぇぇぇ!?




濁り始めたところでリュカちゃん再会、リュカちゃんは再会の喜びの中でも濁りは気づいてましたが、それ以上にお兄ちゃんとの再会が嬉しくてしょうがありませんでした。
一方サンチョは、あの頃のドレイクからの変貌がとても悲しく、同時に街の中で情報収集で動いていた事で、自分勝手に喚いて吹聴する連中へ怒りをさり気なく抱えてました。


次回の水のリング回収、ビアンカと合流です。
図らずも、かつての思い出のメンバー(+チロルとシャドウ)で行くこととなる冒険。
果たしてどうなることか。



商人さんと荒くれが醜すぎる?
このままだとドレイク勝っちゃうからね、勝ちの目を遺す為なら何でもするしかないからね。しょうがないね。

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