勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある? 作:社畜のきなこ餅
今回はちょっと、他者視点話の構想に難儀したので、日記描写のみです。
プロット上では嫁達のお茶会だったんですけど、コレ番外編で書いた方が楽しそうだなってなったのが悪い。
※また作者のガバにより、最期の鍵さんの出番が紛失。
次回、グランバニア宝物庫を空ける際に出番がある、はず。
サラボナ→テルパドール ●日
爛れに爛れた新婚旅行を終え、サラボナへ戻った俺達はそのまま旅支度を整えた末に。
天空の兜を安置してるという話の、南の国テルパドールへと向かっていた。
ちなみにメンバーは俺とリュカにビアンカ、チロルとシャドウ、そしてデボラとフローラにサンチョさんである。
ソレと追加として、何故か妙にフレンドリィなリュカ配下のモンスター達という、大所帯で移動中である。
デボラとフローラにはサラボナで待っていてほしい所であったが、デボラよりアンタがこれ以上女引っかけないか監視しないと気が気でないという有難いお言葉をいただいた。
思わずフローラへ視線を向けてみれば、あいまいな笑みでデボラの言葉に同意を示された。ある意味嫁の信頼があるというべきかないというべきか。
ベッドの上だとしおらしいのにな、と思わず呟いてしまえば、顔を真っ赤にしたデボラからド級の破壊力の踵落としを脳天へ叩き込まれた。
思わずフローラとリュカへ回復を願うも、ぷいっと顔を背けられた。
サラボナ→テルパドール ◆日
結構長い期間船に揺られ、ようやく南の大陸に到着したのだが。
ものの見事に砂しかない、ついでにギラギラ照らしてくる太陽が中々に自己主張が激しい。
ラインハットに預けたままだった馬車へ乗っている嫁達が大丈夫か、覗き込んでみたところ……。
つめたい息を吐けるモンスターが、適度にエアコンじみた働きをしていたようで地味に快適そうであった。ならばよし。
折角なので、気合十分に砂漠を走ろうとしていたがあっという間にバテたシャドウと、暑さがきつそうなチロルも中へ入れておく。
馬車を引く馬を見てみればそこそこきつそうだったので、時折つめたい息を吐きかけて水を与えつつ先へ急ぐ。
そして日が暮れれば急速に冷え込んでくるので、サンチョさん指導の下砂漠でも過不足なく夜を過ごせるテントを張って野営を行う。
しかし、サンチョさんも俺と一緒に日中殆ど外で歩きづくめだったというのに、息一つ切らせていないとか中々に化け物だよな。
そうしていれば、火の番と見張りは私がしておきますから、坊ちゃまはお休みくださいとサンチョさんは朗らかな笑顔で話してくれる。
食い下がってみたモノの、彼にとって俺は相変わらずてのかかるヤンチャ坊主でしかないようで、おとなしくテントへ入る事となった。
……のだが、テントへ入ったら丁度、ビアンカがその大きめの胸を露出し、水で濡らしたタオルでその体を拭いている所であった。
思わず、無言でテントへ出直そうとするも、その前にビアンカに呼び止められ……結論から言えば、ビアンカの背中をタオルで優しく拭いたりなんやりする事となった。
途中でリュカが乱入して、色々とアレな事になったのは言うまでもない。
テルパドール 〇日
数日かけ、ようやく砂漠の王国テルパドールへ到着した。
モンスターを率いるような形になっている関係上、国の人間にはぎょっとされたものの天空の鎧と盾を装備している俺に衛兵は気づいたようで。
平伏せんばかりの勢いで俺に最敬礼を送ると、この国の代表である女王の下へ案内してくれるそうだ。
衛兵の人曰く、ラインハットやサラボナでの俺の活躍と英雄譚が、遠く離れたこの地にまで届いてるらしい。 届いてしまってるらしい(震え声)
言葉を話せるスライムナイトのピエールに、チロルとシャドウを代表としたモンスター達を頼むと、俺と嫁達の5人で城の中へと進んでいく。
そして、城の中の長い階段を降りればそこは、外とは雲泥の差と言わんばかりの楽園じみた光景が広がっていた。
フローラが綺麗、と呟く言葉に同意を示しつつ、周囲を見回していると……冠を被った美しい女性が、人を伴い俺達へ近づいてきた。
俺達を案内してくれた衛兵が慌てて跪くところを見るに、彼女がこの国の女王らしく。彼女は俺の正面へ立つと、この国の女王であるアイシスだと名乗り。
この時を一日千秋の想いでお待ちしておりました、天空の竜騎士様。と告げられた。
天空の竜騎士、誰が?と思わず問い返せば貴方様です、と女王にっこり笑顔で答えてくれた。
いや、それもうアレじゃん。天空の竜王の関係だと勘違いされかねないだろ、と思わず呟けば。あら違ったのですか?とニコニコ笑顔の女王である。
畜生!言い逃れが出来やしねえ! 背後からの嫁達の視線から、後でしっかり説明させるぞ。という鉄の意思すら感じるわ!
そして、女王に案内されて天空の兜の安置場所へ赴き、女王と嫁達が見守る中被ってみれば、すっぽりと収まった上に凄くしっくり来る感覚を覚えた。
女王曰く、天空の兜は俺を主として認めたらしい。鎧や盾に比べてえらくスムーズに認められた気がする。
その後は、女王から英雄の子をとか際どい発言が、抱き着かれつつ耳元で囁かれたりしたが。そっと紳士的に女王を引き剥がして丁重にお断りする。
俺にはもう、勿体なさすぎるぐらい出来た嫁さんが6人もいるのだ、これ以上はバチが当たるさ。と答えれば、残念ですと悪戯っぽく笑い素直に女王は引き下がる。
その日の夜、俺は4人の美しくも激しい嫁達にベッドの上で追及を受けたのは言うまでもない。
とりあえず、多分恐らくだが竜王マスタードラゴンが俺の血筋に関わっているっぽいとだけ、嫁達には教える事となった。
チゾット 〇日
大きく時間が飛んだ気もするが、テルパドールを出発した俺達はサラボナへルーラで戻り補充と休養を済ませてから、グランバニアめがけて出発した。
その前に、一人でこっそりとラインハットへルーラで飛び。うまい具合にラインハット城のバルコニーへ降りた俺は、衛兵へ軽く挨拶しつつヘンリエッタとマリアに顔を見せ。
少しの休憩をした後サラボナへ戻り、逢瀬に気付かれた結果一日出発が延期される羽目になった。脛と腰が少々痛むが、これも幸せな痛みと思おう。
まぁ、そんなしょうもない夫婦の力関係事情は横へ置き、船にてネッドの宿屋付近に接岸した後は一泊。
そのままの勢いで、チゾットの参道越えを敢行。しかしオルテガの行方を捜すべく鍛えたデボラや、山奥の村で元気に過ごしてたビアンカ、何度も山道とグランバニアを往復していたリュカと違って。
最近はそこそこ鍛えられてきていたとはいえ、深窓の令嬢であるフローラに山越えは難儀だったようで、チゾットの村で足元がおぼつかなくなってしまっていた。
もしや出来てしまっていたか、と色んな意味で血の気が引きつつ、一晩チゾットでゆっくりしたところ……どうやら疲労だったらしい。
念の為数日間チゾットで休息を取り、シャドウがつり橋から落ちたりしないようチロルやモンスター達へ、監視を強くするように言い含めたりしつつ。
フローラをマッサージがてら、お腹をそっと擦ったりしたが程よくスラリとしたお腹のままだった、これで赤ちゃんが入っていますって言ったら詐欺レベルと判断出来たのできっと大丈夫であろう。
なお、そうやってマッサージをしていたらデボラに見つかり、丹念に太ももからふくらはぎまでのマッサージをさせられた。
いたずら心がわいたので、足の裏を指先でつつーっとくすぐったら可愛らしい声を出した後、見事な踵落としが俺の脳天に突き刺さるのであった。
グランバニア 〇日
そんなこんなで、ゆっくり休息をとった俺達は下り道と化した山道を慎重に進んでいく。
時折魔物達が姿を見せるも、リュカの姿を見つけた瞬間まるで女王へ平伏するかのような態度で、道をそっと空けて立ち去っていく。
思わずリュカを見るも、俺の左腕にひっついたまま小首をかしげるリュカからは特に話はなかった。しかし可愛いなホント。
そうしてる間に山道を無事通過、出番が無い事に俺の背中に背負われたままのホークの剣が不満そうにカタカタ自己主張している。おとなしくしてなさい。
その間俺が何をしているか?そりゃもう、馬を引いて先頭を……なんてことはなかった。
最初はそのつもりだったのだが、サンチョさんが馬車の中でお嬢様達の相手をしていてください、と笑顔で俺を馬車へ押し込んできたのだから。
そんなわけで、シャドウをリュカやビアンカと一緒にもふりたおしたり、フローラに膝枕されたり、デボラにマッサージさせられたりと充実した道中でした。
というワケで、ようやくたどり着いたグランバニア城。
サンチョさん曰く、町が全てこの城の中へ納まっているらしい、拡張工事も人口増加に応じて都度都度行われるそうだ。
これも全てはこの周辺の魔物に対抗する為の措置らしい、しかしサンチョさんの家は何故外に……と聞いてみれば、そうは言っても外で警戒する人物も必要だろう。という判断でサンチョさんは外に住んでいるそうだ。
思わず、サンチョさんも体を大事にしてくれよと言うも、坊ちゃま程無理はしておりませんから大丈夫ですよ。と朗らかに返された。解せぬ。
ともあれ、先触れとしてサンチョさんがちょちょいと知らせてくる、とグランバニア城の中へ消えていったので。
とりあえず、馬車の外に出て待つ事数分。
改めて城門が開くと、そこには王家の衣装に身を包んだパパスさんが立っており、何も言わずに俺へ駆け寄るとそのまま抱き締めてくる。
パパスさんは、良くぞ生きていてくれた、そして頑張ったなドレイク。と優しく告げてくれ……俺は奥歯を噛み締め涙を堪える事に必死で、ただ頷いて返す事しか出来なかった。
そして、パパスさんは父親の顔から執政者としての顔になると、数人の屈強な兵士に鞘へ入ったままの剣をこちらへ差し出させてきた。
何でも……パパスさんが旅をしている時に見つけた天空の剣らしい、鎧に盾、そして兜に認められたお前ならば天空の剣を抜けるはずだと。
俺は、手を震わせている兵士達から羽根のように軽く感じる天空の剣を受け取ると、パパスさん……そしていつの間にか集まっていた群衆の前でゆっくりと天空の剣を抜き放つ。
その眩く感じる清浄なオーラは、人の悪意すらも浄化しそうなほどに澄んでおり、その刀身に思わず見とれていると、背中に背負ったホークの剣からの意思が俺に伝わる。
ホークの意思が導くまま、俺は両手で天空の剣を高く掲げると、背中に背負っていたホークの剣から何かが外れたような音と共に漆黒に輝くオーブが空へと飛びあがり。
オーラを放つ天空の剣へ、ゆっくりと穏やかに融合していく。
そして、融合が終わった瞬間。白金色の光が場を照らし出し、光が止んだ俺の手元には。
緑色だった天空の剣の取っ手部分が深い藍色へと変わっており、ドラゴンの翼を模していた飾り部分は深い藍色の翼へと変貌していた。
目の前で起きた光景にパパスさんは驚きを隠せずにいたが、すぐに気を取り直すと。
天空の剣は当代の勇者を認め、その手に相応しい姿へと生まれ変わったのだな。と、自分では抜く事すらできなかった天空の剣を見つつ苦笑いを浮かべた。
ホーク「というわけでお邪魔しまーす」
天空の剣「」
ホークは、兄弟と共に最後まで戦うために天空の剣へお引越ししました。
天空の剣さんは、受け入れたモノのここまでモデルチェンジさせられたのは予想外だった模様。