勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある?   作:社畜のきなこ餅

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畜生!とうとう!とうとう日付を跨いでしまった……!!


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グランバニア  ♪日

 

 

 色々と言いたい事、ぶちまけてやりたい事、様々あったが結局鉄拳一発で全てを済ませた親父との再会を終え。

 俺達の状況が落ち着くまで見守っていた天空人の女性のとりなしで、俺と親父の会話が始まった。

 

 まぁ、言う事と言うか頼む事といえば聞き耳を立てている気配がないのを確認した上で、ゲマが俺の体に施した進化の秘法を何とかする知恵を貰う事なんだけどな。

 気配で若干察してはいたらしいが、俺の口からハッキリと出てきた進化の秘法という言葉に、親父は顔を凍りつかせつつ少し診させてほしいと告げてきたので。素直に任せる事にする。

 親父は瞳を閉じ、何やら唸りながら集中したと思うと、その目に慙愧の念を湛えながら口を開く。

 

 どうやら、俺の体に施されたブラックドラゴンを触媒にした進化の秘法は、俺の肉体どころか魂にまで根付いてしまっているらしい。

 怒りや憎悪、絶望と言った負の感情を増幅させて施術対象の心を……竜の力を使う度に体を捻じ曲げる、悪意が凝縮されたかのような代物だそうだ。

 

 

 何やら自責の念にさいなまれている親父に、俺がもし子供を作ったとして、子供への悪影響はあるかと問いかける。

 突然の言葉に親父は驚きながらも、ドラゴンの力が多少発現する事こそあれども、魔物として産まれたり魂が汚染されたりする心配はないらしい。

 

 そうか、ならばよし。と言い切った俺に、親父は掠れた声で、それでいいのか……?などと問いかけてきたので、躊躇う事なく頷く。

 まぁ、子供に不思議な力とかが受け継がれるのは苦労を背負い込ませる原因になるかもしれんが、この世界において力はあって困るもんじゃないのだ。

 そして、俺にのみ影響がある代物なら、俺が頑張れば良い。

 

 

 その上で親父に無理を承知で……最初で最後の頼みをする。

 親父が本来の力を取り戻せるまでの時間ぐらいは、妻達がいるからきっと大丈夫だから……。

 

 もしも……俺が負の方向に傾いて狂った時は、親父の手で終わらせてくれ。と。

 

追記

 

 この日から一週間後の夜、ド直球にエッチな下着を身に着けた4人に迫られた。

 なんでも、グランバニアの秘宝である下着と同じデザインのものを、城下の下着職人に作らせたらしい。

 

 

 

 

グランバニア  ◆日

 

 

 早いもので、親父に頼み、そして嫁達に子孫を残せる事を報告してから三カ月が過ぎていた。

 アレから俺はエルヘブンに顔を出し、母がエルヘブン出身である事。そしてかつて母の一族の始祖が着用していた外套を守護していた事を知ったりしつつ、ゲマ達の駆逐を遂行すべく動き回っていたのだが……。

 

 サラボナの街の時みたいに、アイツらの影すら掴むことが出来ず、後する事と言えば親父にかつての力を取り戻してもらって大神殿へ殴り込むぐらいなのだが。

 いかんせん、妖精の里を探そうにも俺達では見つける事が叶わなかった、というか親父も見つけられないという事実に少しだけ笑ってしまった事は内緒だ。

 

 

 じゃあ、グランバニア北にあるデモンズタワーを何とかすればよいかもしれないが……そうも言ってられない問題もある。この問題が妖精の里探しローラー作戦を決行できなかった理由でもあるのだが。

 あそこを完全攻略するには、遠目に見ただけでも数日がかり、下手をすると数週間かかりかねないのだ。最速で頂上まで突破するなら必要最低限で済むかもしれないけど。

 だが、どこに隠れ潜んでいるかわからない連中を燻り出すのに速度優先して見落としては本末転倒、されども時間をかけて俺が離れているとゲマ共が何やらかすかわからない。

 

 

 そんなわけで、現状割とやりようがない。

 更にリュカ達の懐妊が判明したから猶更だ、嬉しい反面気が抜けない。

 

 だが俺は父親になるのだ、だから何としても妻と子供たちの未来を勝ち取らねばならない。

 差し当たり、孫息子が産まれたらトンヌラと名付けようとするパパスさんと、ドランと名付けようとするクソ親父を止める所から始めよう。

 

 

 

 

グランバニア  1年目

 

 

 俺が気を揉んだり、父親に必要な事についてパパスさんに教えを乞ったり、リュカ達が産気付いた瞬間大慌てしてサンチョさんに一喝されて冷静さを取り戻したりしてる間に。

 子供達は無事生まれ、出産祝いのお祭り騒ぎも特にトラブルが起きる事無く、翌朝を迎える事が出来た。

 厳密には全員が同時ではなく、若干前後しつつでこそあるが、まぁ大体は同時期に産まれた辺り、どれだけハッスルしたのか周囲にバレバレな気がして少々気恥しいのは内緒である。

 

 リュカとヘンリエッタ、フローラが男の子を。ビアンカとマリアにデボラが女の子を母子共に健康な状態で産んでくれた。

 ちなみにパパスさんは、諦めずに孫息子にトンヌラと名付けようとしたが、リュカに笑顔で却下されて凹んでいた。

 

 

 暫く、義母になるマーサさんを救出に動けなくなることをパパスさんに詫びるも、パパスさんは笑顔で気にするなと肩を叩いてくれた。

 むしろここで、孫をほっぽって助けに行ったら、自分が妻に叱られるからなとまで言ってくれたパパスさんはとても輝いていた。だけどもトンヌラはさすがに断っておく。

 

 

 

 

グランバニア  2年目

 

 

 あの日子供たちが生まれてからかれこれ1年が過ぎ、息子と娘達は健やかに成長している。

 途中でラインハットの政情も安定した事から、ヘンリエッタとマリアがこちらに合流する事になったが、グランバニアの貴族も住人も特に何も言ってくることはなかった。

 むしろ、やっとか。という視線まで感じたほどだ、なんかこう申し訳ない。

 

 コレは、ゲマ達に子供達が攫われるのを防止する為でもあるのだが、妻達はむしろ喜んでくれた事がどこか申し訳なかった。

 何のかんの言って妻達の間は悪くなく、子供達も仲良しなのが救いと言えるだろうか。

 

 

 だがしかし、ああしかしだ。

 子供と言うのは本当に可愛い、なんでもしてやりたくなってくる。だからそこのクソ親父とパパスさん、後ルドマンさんにダンカンさんよ。

 誰が先に子供達にじいじと呼ばれるかを、競い合って白熱するのはやめたまえ。

 なんでダンカンさんとルドマンさんもいるかって? たまにルーラで子供達を連れて会いに行ったり、爺さん同盟とやらを結成してて4人を集めるためにルーラで拾いに行ったりしているからだ。

 

 

 

 

グランバニア  4年目

 

 

 体がなまらないよう、パパスさんやリュカのモンスター達を相手に鍛錬をしつつ、子育てに精を出す日々である。

 子供達が生まれてからかれこれ約3年が過ぎたが、子供達も色々おしゃべりするようになり……それぞれの特徴的なものが顕著になってきた。

 

 リュカとの子である、レックスは割とやんちゃだが同時に温厚で人見知りをせず、どんな人間や魔物にも物怖じせず接する肝の太いところがある息子だ。

 髪の毛の色は俺と同じ灰色なのだが、目付きはリュカ譲りのクリっとした顔付きである。将来の夢は大工さんか細工師らしい、切っ掛けはリュカが大事にしてた一角ウサギ家族を見て自分も作りたいと思ったからだそうだ。

 

 ビアンカとの子のタバサは、おしゃまなところがありつつもしっかり者だ。良くチロルとシャドウの間に埋もれたままのレックスを引っ張り出したりしている。

 髪の毛の色は金髪、ちょっと強気な面を見せるところもあるが、とても優しい娘だ。そして母親であるビアンカの手伝いをしたがる可愛い娘だ、嫁には出さん。

 

 ヘンリエッタとの子のコリンズは、好奇心旺盛なやんちゃ坊主という言葉がしっくりくるが、兄弟達を守ろうとする親分肌的なところが強い。

 ヨシュアによく懐いており彼と顔を合わせるたびにチャンバラごっこをせがんでいる……のだが、どうせなら剣とかに興味を示してほしいのだが、一番興味のある武器は斧や槍らしい。ちょっとお父さん悲しい。

 

 マリアとの子のポピーは、のんびりぽややんとした心優しい子なのだが、この年でホイミを唱えられる天才肌とも言える子だ。

 ただこう、少々感性が独特と言うか母親のマリア譲りというか、英雄譚とかが大好きで将来は素敵な勇者様を見つけて傍で支えたいと今から言い出している。お父さん許しませんよ。

 

 フローラとの子のテンは非常にのんびり屋で、チロルとシャドウの間に挟まって昼寝するのが大好きなマイペースな息子だ。

 その気質からか、子供達の間でちょっとした玩具の取り合いや喧嘩が起きたら、真っ先にほんわかした調子で割って入り仲裁する姿がしばしば見られる。将来苦労人になりそうな気もするが頑張れ息子よ、お父さん応援してるぞ。

 

 そして最後になったが、デボラとの子のソラは、ルドマンさんも呆気にとられるぐらいおとなしく人見知りのする娘だ。しかし芯の強いところもあるから、やはりデボラの娘なのだ。

 この子は少し不思議な力があり、第六感とも言うべき感覚が優れている上に6人の子供達の中で一番お絵描きが上手く、また書物への興味が強い。将来は美人で頭の良い学者さんになると、お父さん大はしゃぎです。

 

 

 

 

 何だかこう親バカ全開で記した気もするが、反省も後悔もしていない。

 

 

 この子達と妻達の未来を護れるのならば俺は、神にも悪魔にもなって見せる。

 




投稿速度優先で書いたので粗があるかもしれないけども……。
ドレイクの人生の中で非常に平和で、そして穏やかな時間が流れてました。
そして次回から、クライマックスへ駆け抜けていきます。

追記
プサンとドレイクは、時間の合間に二人で墓参りをしています。
そのエピソードを挟む時間が、無かったのだ……


子供達の特性と名前の元ネタは以下の通りです。

レックス:攻防、回復万能タイプの勇者系(元ネタ:王子デフォルトネーム)
タバサ:メラ系が得意な攻撃呪文のエキスパーツ(元ネタ:王女デフォルトネーム)
コリンズ:重装備可能かつ素早さも高めな、ローレシア王子系戦士(元ネタ:原作DQ5のヘンリー息子から)
ポピー:回復呪文、バフ重視の戦線維持のエキスパート(元ネタ:小説版DQ5の王女の名前)
テン:直接戦闘と回復魔法をこなす、神官戦士系。別名クリフトタイプ(元ネタ:漫画版DQ5天空物語の王子の名前)
ソラ:攻撃呪文、回復呪文双方を高いレベルで使いこなす賢者系(元ネタ:漫画版DQ5天空物語の王女の名前)

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