勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある?   作:社畜のきなこ餅

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戦闘シーン、凄い難しい……書いても書いても納得いく出来にならない。


30・中

 

 闘いの口火を切ったのは、漆黒のオーラに包まれ苦痛の咆哮を上げる巨竜からであった。

 巨竜は、その巨体を翻して圧倒的質量と速度を持つ尾撃を、逃げる気配の見せない人間と魔物達へぶつけようとし……。

 

 

「ゴレムス、アンクル、お願い!」

 

「ゴッ……!!」

 

「心得た!」

 

 

 しかし、巨竜の動作から次の行動を予測したリュカが、自らの傍にグランバニア兵長であるパピンのみを傍に控えさせ。

 毅然とした声音で、すかさず配下のモンスター達へ指示を出し。力自慢であり、そのタフネスに定評のある巨体を持つゴーレムとアンクルホーンが、彼ら専用に誂えられた武具を構えながら迫る尾撃の前に躊躇することなく、その体を投げ出す。

 空気を震わせるかのような轟音と共に、巨体を誇る二匹の魔物が武具を砕かれながら地面に跡を作りながら後ろへと押し出されるも、満身創痍でありながら2匹は健在。

 

 そこにすかさず、リュカとマリアが回復呪文を飛ばす傍ら、前のめりになったゴレムスの体を足場にパパスが一足飛びにその体を駆け上がり、白刃を煌めかせながら巨竜を包むオーラを深く鋭く切り裂く。

 思わぬ反撃に巨竜は忌々しそうに唸り、切り裂いた勢いのまま地面に着地したパパスへ、その剛腕による鉤爪を叩きつけようと振り上げる。

 

 

「やらせないよパパ! ソラ、合わせて」

 

「うん……!」

 

 

 シャドウの背に跨ったまま、片手で保持したビッグボウガンでテンは狙いを定め、巨竜が振り上げた腕めがけてその矢を放ち。

 ほぼ同時のタイミングで、半ば目くらましのようにソラがイオナズンを巨竜めがけて投射する。

 

 イオナズンによって生じた爆発と衝撃、だが爆発呪文の究極系と言えるソレを受けてなお巨竜は身じろぎする事はなく。

 だがしかし、ソレによって生じた一瞬の目くらましによってテンが放った矢は巨竜の手へと、甲高い衝撃音をたてながらぶちあたり。その衝撃によって巨竜の鉤爪はパパスに当たることなく、地面を抉る。

 

 

 臆することなく浴びせられる猛攻、しかし巨竜も負けてはおらず。

 人間だった頃からの得意技である思考加速と反応加速を行い、即座にその巨体を後退させると共に息を大きく吸い込み、煉獄と形容すべき灼熱の吐息を浴びせてくる。

 

 

「くそっ、やらせっかよ!」

 

「お兄様!援護します!」

 

 

 巨竜の脛へ渾身の一撃を叩き込む隙を狙うも、それどころじゃない状況にコリンズは悪態を吐きながらドラゴンシールドを構えて迫りくる火炎の壁の前に立ち塞がる。

 その姿に、ポピーは慌てながらフバーハを唱えて味方全体を護る結界を展開すると共に、ポピーを追い抜いた全身鎧の男、ヨシュアがコリンズの隣で盾を構え……灼熱の吐息による被害を、全身に火傷を作りながらも最小限に抑える。

 コリンズも軽くない火傷を負ってはいるが、天空の鎧による防護でそれほど影響は大きくはなく、ヨシュアへ声をかけながらコリンズは一旦後方へと下がっていく。

 

 その間も他の面々が何もせず見ていたわけがなく、マヒャドやヒャダルコによるブレスの相殺を行っており。

 そして今も、チロルに跨ったビアンカとタバサが、回避や進路をチロルに委ねて巨竜めがけて立て続けにメラゾーマを放ち続ける事で、巨竜を包む漆黒のオーラを削っていく。

 当然巨竜もまた、やられるばかりではなく再度薙ぎ払おうと尻尾を振るい、その衝撃でサンチョが吹き飛ばされたり、衝撃を抑えきれなかったモンスター達が吹き飛ばされて一時的に戦線離脱をしていく。

 

 

 だがそれでも、集まった人々の目には絶望も恐れも、欠片も存在はしていなかった。

 攻撃を受け、漆黒のオーラを削られる度に苦痛の叫びをあげる巨竜に心を痛めながらも、巨竜の家族と友人達は全力で攻撃を続ける。

 

 

「テン君、ソラちゃん!これを!」

 

「ありがとう、アンディさん!」

 

「ありがとう……」

 

 

 時折ベホマラーを広範囲の味方へかけ、補助呪文をかけて回るテン。そしてモンスター達に庇ってもらいながら、イオナズンを撃ち続けるソラへアンディが背嚢から取り出した薬を投げ渡す。

 薬の中身は、エルフの飲み薬と呼ばれている魔力を即座に回復する貴重かつ高価な一品。そしてそれ以外にも様々な薬品や道具をルドマンは搔き集めてアンディへ託してきたのだ。

 

 

 それらを少年と少女は即座に飲み干し、小さく吐息を漏らしてから戦線へと戻り、入れ違いとばかりに回復呪文を唱えすぎて魔力を切らしたポピーを肩に担いで、鎧のあちこちに罅が入ったヨシュアが後方へ下がってくる。

 そのような状況を巨竜は見逃さず、炎すらも凍らせる輝く息を吹きかけようとするも、パパスとレックスが連携して斬りかかる事でブレス動作を強制的に中断させられ……。

 

 

 デボラの振るったグリンガムの鞭と、フローラのベギラゴン、そしてヘンリエッタが振るった剣の一撃で、薄まってきていた巨竜を包む漆黒のオーラにほころびが生じる。

 それに伴い、巨竜の動きが止まり。再度頭を両手で抱えるように蹲り、一際大きい苦痛の咆哮を上げ……。

 肩で息をする人々は、やったか? と期待を込めながら、巨竜を見詰める中。

 

 

 

 プサンは、目を見開いて叫び。

 ソレと同時に、漆黒のオーラを結晶化させたかのような鱗に身を包まれた。黒銀色の巨竜が翼を広げて天に向かい、終末を告げるかのような咆哮を上げ。

 巨竜から立ち上った膨大な魔力が天に放たれ、赤黒い銀色の雷光が雨あられとばかりに人々へ降り注ぐ。

 

 

「いかん!全員身を守れぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 その逼迫した叫びに、パピンが君主の娘の身を守る為にその体を盾にするかのように投げ出し。

 少し離れた所でチロルに跨っていたビアンカ、タバサを抱えるように……全身に傷を作ったゴレムスが2人と1匹を庇うように身を丸め。

 一際近い場所にいたレックスとパパスを、サンチョが得物を放り投げて2人同時にかき抱いて庇い。ヘンリエッタとマリアとコリンズを庇うべくヨシュアが傷付いた体に鞭打って、大盾を咄嗟に構え……。

 アンディがフローラを庇うべく背負った背嚢の影にフローラを隠してその上に身を被せ、ポピーとデボラをアンクルが抱き抱えて庇い。

 テンがシャドウをすかさず走らせ、天空の盾を掲げて自分とシャドウ……そしてソラを守るべく備える。

 

 

 そしてその次の瞬間降り注いだ破壊を具現化したかのような雷光の雨は、人々やモンスター達の体を情け容赦なく打ちのめし。

 其の身を盾に、庇った者達は未来と勝利を信じて、祈りながら地に伏せていく。

 

 破壊の雷光は大地に膨大な爪痕を遺し、下手をしなくても命に関わるほどの破壊力を持っている事が抉れた大地の痕から見て取れた。

 だがしかし、この雷光によって命を落とした人物は誰一人居なかった。

 

 

 

「こっからが本番ってワケね、上等よ。やってやろうじゃない」

 

 

 漆黒のオーラに包まれていた時のような、緩慢な動作は最早見て取れない状態となった巨竜を見上げ、デボラは闘志を燃やして口角を吊り上げて笑いながら見上げる。

 辛うじて誰も死んではいない、しかし戦闘続行は困難な状況。だがソレが諦める理由にはなることはなく。

 

 

 

 まるで、戦闘不能になった人々を退避させる時間を作るかのように、黒銀の巨竜は翼を広げて佇む。

 まだ何とか動けるゴレムスとアンクルが、戦闘不能者を抱えて戦線離脱し。未だ立っている2人の父親と6人の妻、そして6人の子供と2匹の魔物が決意を込めて巨竜を見上げる。

 姿を消して逃げ回っていたベラも何とか無事だったらしく、戦闘不能者の傍に近寄り。必死に回復呪文をかけ続けている。 

 

 

 

 そして、死闘が始まった。

 

 

 漫然と腕や尻尾を振るい、灼熱の吐息や輝く息を吹きかけてくるだけだった黒銀の巨竜の行動は大きく変化し、巨体に見合わない俊敏な動作で追い詰めていく。

 しかし、未だ立っている者達もまた、追い詰められるだけではなく……。

 

 パパスとレックスが、致死の爪撃を嵐のように叩き込んでくる巨竜の懐へ潜り込み、愛用の剣と天空の剣を振るって巨竜へダメージを与えていき。

 モンスターへの指示を出す必要が無くなったリュカが、バギクロスを放ちながら戦況を見渡して危険な所へ即座に回復呪文を飛ばしていく。

 

 更に攻撃を続けようと、コリンズとヘンリエッタが武器を振るい飛び込もうとしたところで、巨竜は翼を広げて無数の光球を作り出すと。

 無差別に追尾する光球で、蹂躙すべく攻撃を仕掛け。それらをデボラが鞭で払い落とし、先ほどの雷光の雨でビッグボウガンを損傷し投げ捨てたテンが、シャドウに跨ったまま天空の盾を構えて自ら光球を迎撃していく。

 一方、攻撃呪文を放つタイミングを計っていた後衛に殺到した光球は、ビアンカとタバサが阿吽の呼吸で断続的に放つメラやメラミで次々と撃ち落され、翼を広げたままの巨竜の体にフローラが放ったベギラゴンが、ソラが放ったイオナズンが直撃する。

 そして、迎撃しきれなかった光球による傷を、マリアとポピーがすかさず回復呪文を唱えて癒していき、戦線のほころびを即座に修繕していく。

 

 

 プサンは、今もドラゴンオーブを握りしめて念を送り続けている、巨竜の中であがき続ける息子へ声と想いを届ける為に。

 皆殺しに出来たはずの雷光の雨で、辛うじて手加減を行った心優しい息子を呼び戻し、そして連れ帰る決意を込めながら。

 その体のあちこちには火傷が出来ており、衣服はところどころが破れているが、それでもプサンはしっかりと二本の足で大地を踏みしめていた。

 

 

 彼は予め伝えていたのだ、何があっても自分は決して倒れないから、自分達とドレイクを取り戻す事だけに専念してほしいと。

 マスタードラゴンとしての力は殆ど無い状態であるが、それでも彼が立ち続けて居られるのは、偏に父親としての意地であった。

 




前回、良いセリフが浮かばず台詞がないまま戦闘参加してたパピンさん、リュカを庇い台詞ないまま退場。
すまぬ、すまぬ……。


ちなみにゲーム的にいうと、ドレイク(巨竜)戦ではHPが2以上あれば。一撃で死亡させられる事はありません。
毎ターン2回行動してくる系ボスですが、2連続でブレスを吐いたり。集中攻撃しないので対策立てたら戦いやすいボスです。HP半分切るまでは。

HP半分以下に追い込んだら、拘束を振り払ったお空のプロバハよろしく。本気モード入ります。
半分以下になった次ターン、雷光の雨でパーティ全体を壊滅状態に追い込んだ後、ガチで殺しに来ます。
2回行動でブレス吐いたり、1手番チャージして放つ全体物理攻撃の光球攻撃や、痛恨率の高い物理攻撃をガシガシしてきます。酷いボスだな。



このルートでドレイクを取り戻した場合、このスペックのドレイクが仲間に再加入します(小声)

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