Fate/the Atonement feel 改変版   作:悪役

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序章 敗北の少年
始まりは苦しみから


 

よく人は自身の事を、才能が足りなければ失敗作だ、と自嘲する。

それに関しては、もしかしたらそうなのかもしれない、と俺も思いはする。

何も出来ない事、何も成し得ない事に怒りを覚え、歯噛みする。

経験や運は補える事があるが、才能だけはそう簡単に補う事は出来ないだろう。

だから、天才と呼ばれる人間は凡才、と言われる人間から嫉妬やら憎悪を受ける責任がある、という事なのだろう。

凡人ではない俺からしたら、その仕組みを納得や理解を示せるわけでは無いが、そういうものだ、というのは知っている。

 

 

 

その上で(・・・・)

 

 

俺は凡人である人に、曰く天才である俺に言いたい文句が一つあった。

もしかしたら、凡人所か、同じ天才ですら文句を言いかねない感想なのかもしれないが、それでも俺には言わざるを得ない文句があった。

 

 

 

 

最悪な程の天才は(・・・・・・・・)、そんじょそこらの失敗作よりも最悪な失敗作である(・・・・・・・・・)、と

 

 

はっきり言わせて貰おう。

天才が素晴らしい、美しい、輝いていると思っている人間に対して勝手に言ってくれると本気で思う。

天才であれば思うがままに生きれると思っていると?

ああ、それはそうかもしれない────が、その思うがまま(・・・・・)を突き詰めた結果など、それこそ同類くらいしか知るまい。

 

 

 

 

そうだ、こんなもの………こんな光景(・・・・・)を見るのに比べれば、凡才である事なんて天国だろうに………!!

 

 

歯噛みと共に意識の視界が見るのは、余りにも荒涼な砂漠であった。

否、砂漠という表現も実際には正しくないのだろう。

 

 

 

これは何かではない(・・・・・・)

 

 

物質所か、魔力的なものですらない。

ただ、あくまで人間である己の脳でも処理できるようそう見えるだけの、見たくもない■■の欠片だ。

 

 

こんなものを羨ましい、と思う人間がいるのかと思うと絶望する。

こんなものを妬ましい、と思う人間がいるのかと思うと自殺したくなる。

 

 

こんな■■を見せられて、一体、何が嬉しいと言う。

より幸福である姿を、より不幸である姿を延々と見せつけられて、何がいいのか、さっぱり分からない。

だから、今、ようやく意識がこの砂漠の形をした恐怖から逃げようとしている事に心底からホッとする。

そうやって、何度目かの逃避を行いながら、己は思うのだ。

 

 

 

才能なんて要らない。欲しければ幾らでもやるし、無料でやる

 

 

 

だから、凡人という者が謳歌している"普通"というものを与えて欲しい、と。

そう、心底から願う。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

「────っ! はぁ…………」

 

 

目を覚ました直後に、まるでフルマラソンを走り終えた直後のような疲労感に襲われ、自分は息を荒げる。

狭い個室に最低限の荷物のみを広げた空間で、俺は震える体を抱き締めて、生の実感を得る。

いや、得られたのは生の実感ではないかもしれない。

生の実感を得るには対極の死の実感を得なければいけない。

だけど、自分を包もうとした恐怖は決して死ではない。

そんな冷たくも、終わり上がるようなあっさりとしたものではない。

それを良く分かっているからこそ………シンは何もかもから逃げ出し、そして今も負け犬のように震えている。

無様だと誰もが言うのだろう。

だけど、俺からしたら知った事か、という所だ。

逃げて逃げて逃げ続け、最後はあっさり死ねれば、最高の人生だ。

他人の文句何て聞いてられる余裕なんて俺には一切ない。

 

 

 

 

※※※※

 

 

 

アメリ―・ランベールという少女は手鏡で自分の今の状態をチェックしながら、ある人物を待っていた。

己はフランス人の容姿からそう外れた姿から外れず、多くはいないが決して少なくはない金髪の青目で、まぁ、自慢するわけでも無いが、容姿もまぁ、悪くはないのではない、はず。

………もう少し胸の辺りに肉が来てくれないか、と歯ぎしりする事はあれど、不満に思う事は特にない人間だ。

しかし、まぁ、やはり女として男の目の前では、よりマシな自分でありたい、と願うもので、それがまぁ、うん…………好いた相手なら猶更だろう、と脳内でつい自己弁護する。

落ち着け―落ち着け――、と今の内に深呼吸をしていると

 

 

 

「────んぁ。アメリ―か………相も変わらず律義だな…………」

 

 

若干眠たげな声を持って話しかけてくる声に従い、振り返るとまぁ、見事な少年がいるのだから。

女の私ですら羨む赤毛の髪を無造作に背に流しながら、中性的な、しかし酷く整った顔を欠伸で歪める姿は最早、完璧である。

彼はシン・カヤマ。

日本から来た留学生であり、日本人の呼び方に則れば、カヤマシン。

別に特に珍しくない存在ではあるのだが…………ここまで何か文句を言いたくなるような容姿をしていると、勝手にスペシャル感が出てしまうものである。

日本人は童顔だーーってよく聞くけど、若さだけで得れるようなものじゃないだろ、と何か理不尽に突っ込みたくなる。

 

 

 

「………そのだらしなさと対比したら、誰も彼もが律義に見えるんじゃないの、シン」

 

「さぁ? 少なくともただ近所で、留学生であるだけで、こんな風に待ち合わせして面倒を見るような人間は日本ではお人好しって言うけど」

 

 

しかし、見た目の割には男性的な声で、その上で口が回る相手にうぐぐ、と少し唸りながら、しかし、ふん、と鼻を鳴らして歩き出す。

流石にそんな事は百も承知だ。

私だって、こんな行為、物好きな人間がやるような行為でしかない、という事は自覚している。

実際、物好きなのだろう────まさかこんな留学生に、一目惚れするなんてアメリ―・ランベール。一生の不覚である。

しかし、だからと言って、後悔するのも柄ではない。

してしまったものは仕方がない。

取り返しが効かないのならば、もう後は手に入れるだけだ。

恋愛シュミレーションの経験値はほぼ0ではあったが、要は戦争だ。

外堀中堀全て埋め尽くし、城主をとっちめれば勝ちになるのだから、責め続けるのみ、と思い、恥を忍んでこうして会いに来ているのだが

 

 

 

迂闊…………私が距離感に甘えるとは…………

 

 

全世界の人間は間違いなく、今の自分の状況に対してヘタレ、という感想を抱いただろう。

というか私が遠慮なく言う。

このヘタレ。

おっかしいなぁ…………私ってそこら辺、思い込んだら後悔するよりも早くはい、アクション! それからのやっちまった! の筈なんだけど、恋愛だけ奥手とか乙女か…………乙女だね、現状。

はぁ………と朝から溜息を吐いてしまうが、自業自得である以上、どうにもする事が出来ない。

 

 

「とりあえず、行きましょう。貴方、毎回ギリギリに起きてくるのだから」

 

「朝は弱いって毎回言ってるだろ? 早起きなんて俺からしたら怪異だよ怪異」

 

「馬鹿な事言ってないで早く歩きなさい。朝っぱらから怒られたら余計に気が重くなるでしょうが」

 

馬鹿な少年に朝のジャブを入れながら、私は歩き出す。

───私の背に、下らないモノを見るような瞳を向けていることを知らないまま。

 

 

 

「……全く。これだから悪趣味なのは嫌なんだ」

 

 

 

※※※

 

 

アメリーと一緒に難なく学校に入り、教室に入り、席に座る。

場所は教室の端。

最も、中心から遠く、最も人からの視線を外しやすい場所だ。

───そこに座れるように多少、色々と手を使ったが、シンとしてはそれが都合が良かったのだ。

お陰で、誰からも話しかけられる事がない。

まるで、世界から忘れられているような感触が、自分にとっては他のどんな贅沢よりも嬉しかった。

アメリーの事だけが、例外でまぁ、別に不愉快ではないのだが……それでも見ていてむかむかしてくるモノがあるが、自分の存在を考えれば、仕方がないのだろう、と我慢している。

直接、何かをされているわけでもないし、何もしなければ何も起きないだろう、と思い、黙認している。

その思考に至った時、自分も立派な悪趣味野郎か、と自嘲したが、事実である以上、否定知る気も起きない。

 

 

 

「────」

 

 

逃げて逃げて逃げ続け、ここまで逃げて、更に逃げる。

臆病者らしい生き方にシンはおかしくなりそうだ。

自分を囲む世界は幸せそうに、退屈そうに笑い合っている。

きっとそれは当たり前の日常で、当たり前の人間の営みなのだろう。

全ての人間が享受する事は出来ずとも、大抵の人間は謳歌している平凡なサイクル。

 

 

 

 

────その輪に入れる人間を、シンは心底から恨めしかった

 

 

 

 

※※※

 

 

あっという間に授業が終わり、自然とアメリーの目線は少年が座っている座席に向かい、声をかける覚悟を作って───少年の姿がそこにないのを理解し、思わず体を突っ伏した。

 

 

速い……

 

 

あっという間の逃亡である。

本当にそういった部分は不思議だ。

あれ程、存在感がある容姿をしているくせに、どうしてそこまで気配を消して動くことができるのだろうか

拙い知識で手品の誘導などに使う、ミスディレクションという技能があるのは知っているが、そんな技があったとしても、あの容姿と独特の存在感を隠し切れるのだろうか。

現実に起きたことを疑っても意味ないわねー、と吐息を漏らして起き上がろうとして

 

 

「なーーに突っ伏しているのアメリーー」

 

「ひあーーーー!!?」

 

 

唐突に諸に両胸の辺りに背後から手が伸ばされ、覆われ、掴まれた為、素っ頓狂な悲鳴を上げる。

クラスに残っていた女子は何やってんの? という目を向け、男子は羨ましい……!! と野獣のような視線をこちらに向けて来たので慌てて両手を撃退した。

 

 

「何すんのよ! この色情魔!」

 

「その二つ名、嫌いじゃないZE」

 

クラスメイトのムードメイカー担当がこちらの怒りに躊躇わずに親指立てて笑顔を向けるので、殴り飛ばそうか、と本気で考える。

が、した所でギャグによる攻撃に対しては耐性があるか……と思い、断念する。

これだからボケ属性はいけない。

そんな風に憤る私に、友人の一人である少女は指を適当に振り回しながら

 

 

「どしたのーー?」 

 

「……まぁ、魚を逃しただけよ」

 

流石に人前だから大っぴらには言いたくないので口を濁す。

しかし、ムードメイカー故に察しがいい友人だ。

あーーー、と呟きながら視線が彼が座っている座席の方に向くのを見て、誤魔化し切れないか、と一息吐く。

 

 

「よくやるねぇ」

 

 

その間に貰った一言に、変な言い回しを感じる。

感嘆の一言に聞こえるが……それ以上に、何というか呆れの響きが多分に込められている。

いや、確かに現状を鑑みれば呆れられても仕方がないかもしれないが、この友人はそこまで皮肉を効かせるような友人ではないから、少しだけ眉を顰めてしまう。

 

 

「まぁ、遠回りしているのは私も分かるけど……」

 

「あーー………」

 

 

私の言葉に、友人も言葉が足りない事を察したのか。

ぼやきながらも、言葉を探すように視線を彷徨わせる。

周りにいた人がほとんどいない事を確認した後、観念するかのように溜息を吐き

 

 

 

「いや、まぁ………何と言うか……よくまぁ、アメリーはあんなに怖いの(・・・)に近づきに行くなぁって」

 

 

不穏当な言葉に、流石にアメリーも驚いて友人の方に視線を強く向けるが、向けられた本人は告げた言葉に対する罪悪感は感じても、撤回する気はないみたいだ。

再びあーーー、と枕を置きながら

 

 

 

「いや、うん。別にシン君が悪い人とかヤンキーだ、とか言ってるわけじゃないんだよ? 話しかければ普通に答えるし、消しゴム落としたら拾うくらいはするし、特に場や雰囲気を乱すような人間じゃないっていうのは分かってる」

 

 

続けられた言葉に、彼に対して悪意を持って見ているわけではない、という証明の意を持たせた友人の言葉に、自分も頷く。

頷くが……しかし、逆に言えば、悪意や偏見を持っていないのに恐怖を抱えるというのはどういう事だろうか? と胸の内に生まれた疑問に対して、友人も再びあーー、と前置きをしながらも律義に答える。

 

 

「何て言えばいいのかなーー? 居なくなりそう? いや、うーーーん………そうじゃなくて………何と言うか、そこに居るんだけど、空けてるみたいな?」

 

「何それ。幽霊みたいって事?」

 

「違う違う。幽霊っていうのは死んでるっていうより、もう形がないものでしょーー? シン君は何か、そこに確かに居る筈なのに(・・・・・・・・・)、ふと近付けば、あっという間に消える(・・・・・・・・・・)感じなの」

 

 

一瞬、硬直するが………しかし後に沸き上がった気持ちは強烈な納得だった。

言い得て妙とは正にこの事だ。

確かに少年を見ているとその手の不安に駆られることは有り過ぎる。

そこに確かにいるのに、ふと視線を向けるとあっという間に消え去る蜃気楼のようなあわい。

近付けば近付くほどに、少年の現実感は離れているような感覚を、一体何度感じた事か。

まるで、鏡合わせの鏡像だ。

鏡に映った彼に触れても、触れられるのは鏡であって少年ではない。

本当の彼はまるで合わせ鏡の中のどこかにいるような………映っている以上居る筈なのに、触ることができない幻のような彼。

 

 

「………そんな不確かさを感じるから怖い?」

 

「まぁ、それもあるんだけど………ほら、私、そんなに彼と話していないのに、こんなにもこう、違和感感じてしまったの」

 

 

それが一番怖い、と。

特に深く接したわけでもなければ、何かを知っているわけでもない。

なのに、まるで捻じ込むように刻まれる少年のイメージ。

獅子を見れば、それだけで凶暴で人単独の力では打ち勝てぬ、と確信するかのような在り方を、同じ人間がしている事が怖いのだと。

 

 

 

「………」

 

 

それを責めることはアメリーには出来なかった。

当たり前だ。

同じクラスで、特に親しくない少女が得たという事はより親しい自分にはよりはっきりとその印象が脳内に刻まれている。

何時か消え去る蜃気楼のような儚さと終わりを内包した少年。

それはそう────まるで四月に降る雪のような不確かさな形であった。

だから、私は彼女を責めることも、同意する事もしなかった。

アメリーは笑みで気に死ななくてもいいでしょ、と笑いかけ、カバンを持ち、帰ろうとする。

そんな自分の背に、友人は何か思う事があったのか。

ねぇ、と小さく私に呼びかけ、

 

 

 

「どうしてそうなったの?」

 

 

酷く遠回りでありながら、直接的な言葉。

隠されている意味をしっかりと認識したアメリーは唐突でありながら、よく考えれば問われても不思議ではない言葉に、そんなの、と脳内からその理由を取り出そうとして────

 

 

 

 

───■まって■るじ■ない

 

 

 

「────秘密」

 

 

流石にそれを教室で言うのは恥ずかしい。

幾ら少年が何か違うのであったとしても、私の気持ちは他の特別なモノと違いなどない。

そういうのは胸に秘め続けるものである………と思う。

だから、アメリーは颯爽と教室から去る。

 

 

 

 

 

────そこに不自然さはなく、少女は当たり前のように自分の気持ちに正直にいた

 

 

 

 




はい、どうも初めましての方は初めまして。
悪役のFateの改変版を投稿する事にしました。


大分、以前とは違う感じになってますが、まず始まりは冬木からではなく、そもそも日本ではない、フランスの郊外の町からスタートです。
そして同時にシンの設定が、前作よりもネガティブになっています。
そんな風に以前とは違う所も多々ありますが、出来る限り以前とは変わらぬFate愛で書いていくつもりなので、どうか見守っていただければ幸いです。


感想・評価など宜しくお願い致します。
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