Fate/the Atonement feel 改変版   作:悪役

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幕間 戦争の一幕
猛犬と武■


 

 

長閑な空の上で一台の車が道路の上を走っていた。

天井が無いタイプのスポーツカーであり、欧州の道路交通法に沿った速度で走られている為、結構な速度で駆け抜けている。

左右にブドウ畑を挟み、走る姿は日本人等からしたら中々見応えがあるような風景であろう。

まぁ、車の中にいる者からしたら同じ景色が続いている、で終わるかもしれないが。

 

 

 

「……なぁ、バゼット。暇だぜ」

 

「煩いですねランサー。暇なら運転を変わってくれませんか?」

 

 

スポーツカーに乗っている人間は二人。

片方はスーツを着たショートヘアの麗人であり、運転とスーツを着こなす姿には貫禄があり、見た目では20代過ぎの女性のように見えるが、実際に目の前で会話すれば別の印象を受けるやもしれない女性であった。

ワイン色のショートヘアを揺らす女性は逆に言えば、それ以外特徴が無いともいえるかもしれないが………一つだけ目に見える特徴的な物があった。

彼女は運転に片方の腕、左腕を使っていないのだ。

腕が無いというわけではなく、しっかりと腕としては存在しているのだが……左腕は一切動かずに片腕のみで運転している。

動かない腕を、女性は気にした様子はなくジト目で隣に座っている男を見る余裕すらあった。

 

 

 

「冗談。これはこれで面白ぇんだろうけど……どうせならバイクっていう奴の方が性に合うさね」

 

 

もう一人は酷く珍しい青い髪を後ろに束ね、細くして流している男であった。

赤い目と野性味がかかった精悍な顔つきをした男はやや眠そうに欠伸をしている。

同じスーツ姿ではあるのだが、こちらは女性と違って適当に着崩しているのだが……男の顔つきと引き締まった肉体が逆に男性的な色気を出しているのだが、それに関しては両者とも一切気にしていない。

 

 

 

「全く……サーヴァントなのですから暇なら霊体化でもしていればいいじゃないですか」

 

「おいおいバゼット。何時何が起きるか分からねぇから常在戦場の心地で居てくださいって言ったのは誰だよ。いやまぁ、規模を考えれば同感だけどよ」

 

「なら、そのだらけ切った弛みを取ってくださいランサー。そう出会う物じゃないとしてもアサシンでも出たら事ですよ」

 

「よく言うぜ。そんな風に言うアサシンを()()()()アンタが言う事か」

 

「あ、あれは……ほ、ほら、見事にこう拳が吸い込まれたというか……な、何ですかその不愉快な顔はっ! どこぞのシスターみたいな皮肉気たっぷりな笑みを浮かべて………!!」

 

「べっつにぃ……まぁ、その負けん気の強さは十分に俺好みでありがてぇってくらいだ。生前から良い女とは縁が無かったのにねぇ……」

 

 

ニヤニヤと笑いながらランサーと呼ばれた男は走りながら食べれるように買っておいたポテトを摘まみ喰う。

全く、と運転席で憤慨する女、バゼットと呼ばれた女性も怒りはしても本気で怒っていないのだろう。

直ぐに切り替えて前を見ながら運転し……しかし、今度は真剣な顔で会話を続ける。

 

 

「──貴方に戦場の事で説教なんて釈迦に説法なのでしょうが……しかし本当に気を付けてください。今回の聖杯戦争は本当に何もかもがおかしい」

 

「……ま、戦場なんてどれもきな臭いもんだが、確かにこれは一等きな臭い聖杯戦争だろうな」

 

 

バゼットとランサーは今回の聖杯戦争における異常を大体把握している。

まず一つ目は単純に戦争の範囲と数だ。

バゼットがランサーを召喚して既に複数のサーヴァントと交戦しているが、当然だがもう7人以上の相手と戦い、更には同じランサークラスとも交戦している。

そして範囲だが、最初はバゼットは自身の故郷であるアイルランドから参戦していたが、その後、今はフランスにいるのだがそこでも一騎と交戦した為、本当に戦争の範囲が全世界であるのか、と信憑性を得ているのだ。

 

 

 

「戦場は何時の世でも行われるっつても度というものはあるな。俺が言うのもなんだがサーヴァントがこうも跳梁跋扈してんのは()()()()()()()()()の問題な気がするがね」

 

「サーヴァントという現象だけではなく抑止力の後押しがあるかもしれない、と?」

 

「さぁな。どちらにしろ情報が足りなさ過ぎる……っつーか、そういう事は生者の役目だろマスター」

 

 

むっと呻く女魔術師も自覚はあったのだろう。

まぁ、それに関してはランサーも特には気にしない。

何せ一番の問題は

 

 

「行く先があんまり変わらない街並みっていうのがねぇ……旅だからある種しょうがねえが、も少し違う街並みとか見れんのかね」

 

「しょうがないでしょう? ヨーロッパは広い分、街に入らない限りは長閑なものです。これが日本ならとても狭いですけど……狭すぎて逆に街並みが変わりませんが」

 

「二ホン、ね。俺らがフランスくんだりに来たのもそれが理由だったよな」

 

 

ええ、と頷く女丈夫は少しだけ視線を遠くに向ける。

 

 

 

「かつて私が迷っていてくれた時に立ち上がる為の時間をくれた恩人達。その息子がフランスで見つかった、との事です。息子さんがどのような考えで家を出たかは分かりませんが………仮に再び家を出るにしても親と子が互いに納得し得るものになって頂ければ………」

 

 

言葉は憂いと同時に達成しなければいけない、という気概を持っていた。

ランサーからすれば悪くない、と口を歪ませるモノであり、しかしバゼットにとってはそうでは無かったのか。

少しだけバツが悪そうな顔になり

 

 

 

「………貴方を私情で連れ回すのは申し訳ないのですが………」

 

「………はっ」

 

 

マスターの言葉にランサーは何を言うか、という意味で笑う。

ランサーは戦士だ。

戦う事に高揚し、生と死の狭間にて勝利の為ならば死を選ぶろくでなしではあると自負しているが

 

 

 

「──どんな恩があったかは知らねえが、アンタにとっては殺し合いの最中であっても返せなければいけない程の恩なんだろ? 命を、否、魂を救われる恩であるなら返さねえのは恥だ。んで、俺はお前のサーヴァントだ。サーヴァントはマスターの命には従うものだ。一々気を使ってんじゃねえよ」

 

 

戦士は戦士でも誇りを以て戦士となったと自負しているランサーにとっては気にする事ではない。

それが現代にも残る赤枝の騎士の末裔であるならば猶更に。

 

 

「お前さんが気にする事があるとすれば、どうやってその餓鬼を見つけるかって事くらいだ」

 

「……そうですね。考え事は幾つもありますが、まずは目の前の事から、ですね。聞いた話では息子さんも聖杯戦争に参加しているようですし」

 

「おいおい。じゃあ出会ったらまずは殺し合いが始まるんじゃねえか?」

 

「聞いた話によりますと息子さんはどちらかと言うと非戦主義らしいですよ。貴方が暴走しなければ相手のサーヴァント次第では会話が出来ると思いますが」

 

 

へいへい、と苦笑しながらマスターのメンタルが上向きに上がった事を悟る。

軽口を言えるのは余裕の証拠。

何も生真面目な性分が悪いというわけでは無いが、何事もメリとハリがあった方がいいのが人生という奴である。

それに女運が悪い自分にしてはマジでいいマスターに巡り合えたもんだ、と珍しく運の強い自分に感謝し──六感に近い感覚が脳と体を貫く。

 

 

 

「──バゼット」

 

「──ええ。私も感じました」

 

 

言う前からブレーキを踏み、車を止めているマスターの判断力に口笛を軽き吹きながら、前方を睨む。

恐らく自分からも感じられるであろう力の圧。

サーヴァント特有の圧力を感じ、ランサーは喜悦を口元に表す。

 

 

「向こうさんもこっちを気取っている癖に隠す気はねえようだな。三騎士か?」

 

「かもしれませんね………ですが、その割には気配が近寄って来ませんが……マスターの方針でしょうか?」

 

「ぐだぐだここで管撒いてもしょうがねえだろ──で、どうする? マスター。やるか?」

 

「──そのやる気のある顔を抑えてから質問しませんか」

 

 

よく言う。

お前さんもお前さんで軽く笑みを浮かべている癖に。

ああ、ほんと──いい女に出会うっていうのはそれだけで幸運である。

お陰様で先程からストレスを溜めに溜めに溜めまくっている()()()()()が麗しくて溜まらない。

同じ霊体だからこそ分かる嘶きにランサーは獣の如き笑みを苦い笑みに切り替える。

 

 

「まだテメェらを使うか決まってねえんだから落ち着けよ──あ!? んな不満そうに吠えてもしゃあねえだろうが! お前ら俺以上に我慢しねえんだから!!」

 

尚も不満そうに脳内で吠える馬鹿共には流石に最後まで付き合わない。

大体、俺が槍働きをしてからがお前らの出番である。

雑魚を相手にする程、こいつらも安くねえし。

 

 

 

「で、どうする? マスター」

 

「戦意の無い相手ならば無視します──が、それも相手次第ですね。貴方には失礼な事態になるかもしれませんが」

 

「はっ、だから細けぇ事は気にすんなっつってんだろバゼット。それに──」

 

 

今、感じる気配は途轍もなく強大だ。

まるで目の前に巨大な岩石が存在しているかのような威圧感を放っているというのに、ただ圧倒するのではなく清澄な鋭さも纏っているようにも思える。

この手の気配は余り生前に感じたものではないが……様々な戦場を疾走したランサーには勘で理解する。

この相手は相当に使う相手だと。

だが──

 

 

「では、車はここに置い──」

 

「いやバゼット。このまま行っても問題無いと思うぜ」

 

 

は? とこちらに問い返すバゼットに対して俺は先程までの笑みを抑え、結構本気の敵意を発しそうになるのを堪えながら、その疑問に答える。

 

 

「バゼット。さっきからこの気配、少しだけだが離れている。多分だが徒歩だろうな」

 

「………確かに。ほんの少しだけですが離れていますね……それは単に戦う気が無いだけでは?」

 

「なら何故逃げねえ。気配が消える様子も無ければサーヴァントの能力で逃げる素振りもねえ。かと思えば敵意も無しと来てるんだぜ?」

 

 

恐らく距離は2.300mちょい。

戦闘系ではなく文化系の英霊であるならば気づかない可能性もあるが、この敵からはしっかりと血の匂いがする。

で、あるならば今の状況は──()()()()()()()()()()()()という素敵(怒り)タイムでは無いだろうか、と思うと今度は口元が殺意に歪む。

屈辱はこの上なく甘美だ。

後にその喉に牙を突き立てれば屈辱を薪にした歓喜が燃え上がる。

故に俺は敢えて車で移動する事を提案する。

 

 

 

 

「仮に虚仮脅しであるならば無視すりゃいい──が、俺を見て尚、無視するなら──」

 

 

存分にその心臓を貰い受ける、と殺意の微笑を浮かべる。

俺の笑みにバゼットの背筋が震えるのを感じ取るが………その後直ぐに笑みを浮かべるのだから最高だ。

 

 

 

「──ええ。その時は存分に魅せて下さい。我ら赤枝の騎士の誇り、クランの猛犬の呪いの朱槍を」

 

 

了承の笑みを浮かべながら、賽が振られた事をランサー──ケルトの英雄、クー・フーリンは戦の予感に身と心を震わせる。

例え肉体と魂が仮初の物であったとしても、槍を握る感触、心臓が鼓動する感覚さえあれば己は最後まで自分こそがクー・フーリンだと叫べるであろう、と考えながら前を見る。

今はまだ視界には収まっていない敵に最大の期待を送る為に。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

果たして、ランサーの言う通りに敵をバゼットは見つけた。

車で一分も掛からない内にサーヴァントと思しき相手とマスターを見つけたのだ。

道路の傍をゆっくりと歩く二人連れの姿。

一人は少年と思わしき年頃の少年と凡そ180ちょっとはあるだろうと思われる立派な体付きをした男の後姿。

その上で二人は中華風の衣装を着ている事からどちらも中華縁にある人間か………あるいは持っている衣装を着ただけか。

が、それはそれとして一目見て分かる事がある。

それはどちらがマスターでどちらがサーヴァントなのか。

 

 

 

答えは奇を衒わずに長身の男の方

 

 

未だ背中しか見えないが、それだけで分かる程の肉体の完成度。

荷物を手に抱えて歩く、という仕草を見ているだけで自分の首が滑り落ちていきそうな感覚。

敵意も闘気も殺意も無いというのに、既に刃を見ているような感覚。

バゼットもまた戦う者であるからこそ理解出来る境地。

あそこにいるのは間違いなく武を以て人理に己を刻んだサーヴァントであるという事。

その事実に唾を飲みながら、バゼットは車を止めて、ゆっくりと車から出る。

先程まで饒舌であったランサーが沈黙する程の相手に一挙手一投足しっかりと注意しながらだが……もしもあのサーヴァントがその気になれば意味がないのだろう、と冷や汗を流す。

マスターの方はちらちらとこちらを見て、恐怖を感じているようだが隣に侍る男のせいで全く気にしていられない。

だが、男も車を降りた自分達を見てようやく構う気になったのか………ゆっくりと足を止め

 

 

 

「ふむ。無視するのであればこちらも無視しようと思ってはいたのだがな……戦を所望するか何処かのランサー」

 

 

酷く厚みのある男の声。

威厳と重みを感じる音だが、逆にそんな声なのに意外と若々しい声である事にどうでもいい驚きを得るが………それ以上に

 

 

 

「………へぇ、何で獲物も構えていないのに俺がランサーだと分かったんだい?」

 

「経験と勘」

 

 

さらりと告げる言霊には余計な言葉も無ければ思い上がりのような上擦りも無い。

 

 

 

──何て恐ろしい言葉だろう

 

 

この男は今、己の蓄積する殺し合いの数と筋道が立っていない閃きを躊躇う事無く信じ抜いていると告げたのだ。

あるいは最も英霊らしい答えだと言ってもいいのかもしれないが………その上で私の隣にいるランサーはへぇ、と笑う。

 

 

 

「いい答えだ。と、なるとお前さんも三騎士………セイバー、かランサー(同輩)か」

 

「如何にも。此度の召喚ではランサーとして召喚された……とは言っても私の武器は槍でも剣でも無いがな」

 

 

肩を一度小さく竦めた後、男は振り返った。

黒くとまでは行かないが日焼けした肌に、堂々とした面構え。

特徴的な美しい髭を生やした姿が男の精悍さを際立たしており、正しく戦士の相と言わんばかりの出で立ちにバゼットですら一度小さく吐息を吐いてしまう程であった。

ランサーもそういう意味では負けてはいないのだが、男はランサーとして神秘的な物は感じ取れず、どこまでも人間的であるからこそ逆に驚くのだ。

 

 

 

人間とはここまで戦士という概念に染まれるのか、と

 

 

そのまま男は自分の荷物をマスターに預け

 

 

 

奉星(ほうせい)。下がっておれ」

 

「は、はい!!」

 

とマスターの名前……恐らく中国人と思われる名を出し、マスターもまた急いで一礼し、下がって行った。

それを敵のランサーと名乗った男は見届け………こちらに視線を向けた。

 

 

「そちらのランサーのマスターとランサーよ。一つ約定をして貰いたい」

 

「………約定?」

 

「左様」

 

 

一つ頷くだけで喜びのような喜悦を与えてくる英霊がいきなり殺し合いの前に交渉をしてくるとは思ってもいなかったが………彼女もまた殺し合いにも、サーヴァントにも慣れた女だ。

ランサーと一度視線を交わし

 

 

「内容によります」

 

「単純な事だ──どのような結果になろうとも私のマスターに手を出すのは止めて頂こう。代わりに私もまたマスターである貴殿を狙わぬ事をこの身と名と我が義兄弟(きょうだい)の誇りに懸けて誓おう──というのも奉星は成り行きで私を召喚した者でな。魔術師でも無ければ殺し合いに勤めれる程の能も才も無い」

 

 

 

………つまりはサーヴァント同士の一騎打ちを、という事だろう。

 

 

成程、これは正しく三騎士らしい正々堂々とした取引の典型例とでも言うべきだろう。

自らの技と力に自信があるからこそ真っ向から打ち勝てる事を疑ってすらいない。

そして恐らくだが、言っている事も正しいのだろう。

離れて行ったマスターは隠しようのない恐怖で体を震わしているし、魔力もそう大した物ではない。

出会った頃の士郎君とマシか同じかレベルの位階だ。

これで私が典型的な魔術師であるならば受ける気が無いか、あるいは逆に受けた後二裏切るかの二択をする所であるが

 

 

 

「バゼット」

 

「分かっています」

 

 

もう顔が任せておけ、という形になっている事くらいよく分かっている。

昔の私ならば非効率的だと思って言葉を濁していたかもしれないが

 

 

 

──あの繰り返す4日間は見事にバゼット・フラガ・マクレミッツという人間の機能を壊してしまったようだ

 

 

それを呆れた笑みで受け入れながら

 

 

 

「──構いません。勝つのは私の槍ですから」

 

 

ほぅ、と感心したかのように私の言葉を受け止める中華風の男。

無言だが、隣で小さな笑みを浮かべているクランの猛犬。

その事実に少しだけ首を傾げていると男達が勝手に喋り出した。

 

 

 

「実に良きマスターだ。主従の縁に恵まれたようだな」

 

「おうとも。ま、いい男にはいい女がつくって事だな」

 

 

軽口と共に槍兵は本来の戦衣装を纏う。

青いボディスーツに、鳥の羽のような物を付けられた酷く短いマント。

更には全身のボディスーツに刻まれたルーンの加護。

これがクー・フーリン。

 

 

 

冬木の聖杯戦争では目にする事が出来なかった彼の本来の姿。

 

 

そしてランサーである以上、彼の手にはこの世とは思えない禍々しい朱槍。

何度見ても惹かれそうになる程の呪いの槍。

 

 

 

ゲイボルグ

 

 

一棘一殺の呪いの槍。

影の王国で彼が師であり女主人であったスカサハから貰った確殺の槍。

ただそこに居るだけで誰しもに英雄という物がどういうものであるかを知らしめるケルトの大英雄がそこに居るという事実にバゼットはこれから先何度も感じるであろう熱を胸に刻まれる。

 

 

 

「そら、構えろよ同輩。それとも無手があんたの流儀か?」

 

「生憎そんな奇を衒った物ではない」

 

 

苦笑と共に中華風の男もまた獲物を具現化させる。

どんな槍が出るかと思ってバゼットはそれを注視し

 

 

 

「──は?」

 

 

絶句した。

何もとんでもない兵器が出た、とかではない。

あるいはとんでもないとんちきな武器が出て来た、とかでもない。

 

 

 

 

むしろある意味で敵にマッチしていると言えるだろう──何せ彼が具現した武装は()()()()()なのだから

 

 

 

中華の衣装に青龍偃月刀。

世界に伝わる程の星座となったヘラクレスやオリオンと同じくらいに世界に名を刻んだ大英雄。

中華の大地で様々な英雄が跳梁跋扈していた戦乱期に置いて尚、煌めく星として称えられ、その在り方から後に神として称えられた英雄の名を一瞬で脳内から浮かべ、思わず呟く。

 

 

 

「……もしかして……関羽雲長……?」

 

 

疑問を浮かべるのは余りにもあからさまだったから。

中華の衣装に青龍偃月刀なんて余りにもらし過ぎる。

今は更に彼本来の武装と違って皮鎧も追加されているが、そうであったとしても真名を大っぴらに明かし過ぎだ。

逆にここまで開けっ広げだと疑いにかかる本能に抗えない。

しかし

 

 

 

「如何にも。真名を関羽雲長と言う。どれ程の付き合いになるかは良しなに」

 

 

本当に一切、気にせずに彼は己の名を告げた。

その在り方に私が何かを言う前にランサーが目を細める。

 

 

 

 

「へぇ……心の芯まで真っ向勝負って事か──か、それとも……俺を舐めているのか?」

 

 

最後の一言に空気が死んでいく感覚をマスターであるバゼットですら感じる。

主人の殺気に共鳴するかのように朱槍が震えるのを見る。

それを一身に受け止めている筈の相手は………しかし呆れたような顔を浮かべながら

 

 

 

「ああ、真名隠蔽の法であるならば当然、儂も知っている──が、その戦略の妥当性も含めて()()()()()()。たかが()()()()()()()()で有利不利と右往左往する等、余りにもみっともない。大体──己が名を晒すことがまるで()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

答えられた言葉に唖然とするべきか感心するべきかを悩んでいるとランサーが噴き出す。

 

 

 

「くくく……そうだな、そりゃそうだな! 自分の名を晒すことが恥な筈なんてねえな!」

 

「応とも。生前に関しては醜い罪や……未練は多々あるが、この関羽雲長。誰が相手であろうとも名を晒す事に一切の躊躇いなし」

 

 

殺し合う前だというのにまるで友情を育むかのような光景だが……ランサーの生き方を知っている以上、呆れるだけで終わるし……ついでにこの先の展開も読めたから覚悟が出来た。

ランサーは直ぐに朱の槍を一度回し、大地に石突きを着け

 

 

 

「我が名はアルスターに響かせた赤枝の騎士が一番槍、クー・フーリン。師より得たゲイボルグを以て今生の貴様の心臓を貰い受ける」

 

 

戦士としての礼を略式ではあるがありったけに積んだそれを前に関羽雲長は一度目を少しだけ大きく開き、彼もまた青龍偃月刀を地面に突き刺し、右の拳を左の手で包む拱手をランサーに向けてする。

全く作法は違うが、互いが互いに礼を尽くした殺人許可証を交換し合い──同時に己の獲物を構えた。

ランサーは豹の如きの前衛姿勢。

宣言通りに心臓を抉り取るという進撃の体勢。

関羽雲長はランサーとは逆に槍の無構え。

ゆるりと槍の柄の中程を握り、自然体の構え。

対照的な構えを取りながら、放つ気ですら違う。

 

 

 

クランの猛犬が放つのは殺意

 

 

目の前の獲物を噛み殺したくて溜まらない、という餓狼の気概。

敵対者を殺戮する猛犬の威勢。

 

 

 

関羽雲長が放つのは闘気

 

 

敵対するのであれば打ち砕く、という戦士の気概、

敵対者を打ち倒す人の気勢。

封印指定の執行者であるバゼットですら精神防御に罅が入りそうな死闘の予感を感じ取り……瞬きをした瞬間、それは始まった。

 

 

 

 

※※※

 

 

一瞬で間合いを詰めるは青い槍兵。

呪いの朱槍を以て宣言通りに心臓を穿つ一棘をくれる。

無論、この程度で終わる男とは思ってはいないし、フェイクも何も無い一突きだが……音速を軽く超えた最速最高の一突きだ。

クー・フーリンの槍を受けるとはつまり絶命の一撃を受け続けるという事を刻ませる、という殺意でありながら親愛のそれ。

並みの英霊であるならば、それだけで勝負を決めかねない一撃に

 

 

 

「──」

 

 

──目の前の光景に眼を剥く自分をクー・フーリンは自覚する。

 

 

弾かれる、絡めとられる、躱される、あるいは何かしらの神秘の加護による何かが起こる事までは全て想定していた。

しかし、しかしだ。

 

 

 

このクランの猛犬の槍が、まさか敵の青龍偃月刀の()()に止められる光景だけは流石に想定していなかった

 

 

一瞬にして己の速度に対応し、流麗な動きを以て己の偃月刀の刃先を以てゲイボルグの刃先に合わせ、後は踏ん張りと肘を軽く曲げるだけで全ての衝撃を受け流し、停止させる。

余りにも鮮烈な神業。

あるいは、本来ならば己が他の誰かにもしてもいい絶技であっただろう。

しかし、それをまさか自分が誰かにされるとは思ってもいなかったという空白が

 

 

 

「っしゃああーーー!!!」

 

 

体を停止させる前に即座に槍を突くのと同じ速度で引き戻し、再度突き穿つ。

突き穿つは腹の中央。

腸事抉ろうかとする螺旋は、しかし再び止められた。

先程と同じように──しかし今度は石突によって魔槍の刺突は再び止められた。

戦場に置いて敵対者の悪夢であり続けた魔槍がまるで雑兵の槍の如く止められる光景に、さしものランサーも連続に見せられ、数瞬、意識が止まる。

 

 

 

ほんの刹那

 

隙というには余りにも短い刹那

 

 

 

──絶技を以て超人に至った男にとっては欠伸が出るくらいの長い刹那

 

 

ほんの小さな力を持って石突に抑え垂れた呪いの槍を弾く。

それだけだというのに槍とランサーの上体は軽く上向きに弾かれ

 

 

 

「──」

 

 

風のように滑らかに突き穿とうとする偃月刀の先を見、自分の心臓が穿たれる未来をランサーは幻視し──全力で両足を駆動させた。

 

 

 

※※※

 

 

 

「………ふむ」

 

 

関羽は軽くではあるが、必殺を予感した偃月刀を引き戻す。

槍の先は何時も通りの刃物の煌めきを見せる。

つまり、血は一切無し。

躱されたのだから当然血が付くわけない。

 

 

 

「成程。随分とはしっこい」

 

 

視線を前に向けると豹の如き青い槍兵が憤怒の表情でこちらを睨んできている。

最早、物理的な圧力と化している殺意はそれだけで地表に亀裂を刻んでいるのだが、関羽からしたら軽く流せる圧だ。

 

 

 

「生憎、生前から儂には青龍偃月刀(これ)しかなくてな。故に極めただけよ」

 

 

孔明等が使う魔術とやらはどうやら才能が無い処か資格すら無いとの事だったから返って開き直って武に時間を注いだだけである。

それで文武のどちらも納めている輩に負けては余りにも情けないというもの。

 

 

 

ランサー、クー・フーリン

 

 

けると、とかいう場所で猛犬と呼ばれた男。

何でも影の王国という場所で槍や魔術を収めたのだというのならば、せめて槍くらいは己が勝たなくてはいけないであろう。

無論、向こうからしたら後発に矜持を折られたと思うかもしれないが、流石にそこまで付き合う気はない。

戦場にて心が折れ砕けたのならば後は手折るのみだ、と思い、改めて男の顔を見ると──そこには怒りではなく雄々しい笑みが浮かんでいた。

 

 

 

実に見覚えがある顔。

 

自分の義弟が時折、強者を相手にした際、浮かべる事があった獣の如き笑み

 

 

己の中の警戒心が一瞬で数倍に膨れ上がる中、男は遂に口まで笑いを表現し始めた。

 

 

 

 

「………くっ、く、くくく………」

 

 

笑いを浮かべながら男は空いた手を以て自分に何かを刻み始めた。

指先から何らかの紋様と思わしき物を体に刻んでいく行為を見て、知りもしないのに脳内でルーン魔術という単語が頭に思い浮かぶが、一々聖杯に与えられた知識に踊らされるのも癪である。

自身の利になる情報であると分かった上で関羽は敢えてその知識から意識を逸らし、偃月刀を構える。

これから先の展開など読むまでも無い。

 

 

 

ああなった漢を相手にするのであれば、どんな相手でも命懸けの殺し合いになるのだから

 

 

 

 

※※※

 

 

関羽雲長の思考の通りであった。

ランサー、クー・フーリンの心にあるのは清々しい程の敗北感と──燃え上がる様な闘争心であった。

 

 

 

認めよう──確かに槍兵クー・フーリンは今、槍の技において関羽雲長という男に負けたのだと。

 

 

自分の槍に勝てる人間等、己の師であるスカサハ以外では在り得ぬと思っていたが……まさか後発の、それも純粋な人間に負けるなどとは!

見れば分かる。

マスターとしての眼を使わずとも、この男からはサーヴァントである以上の魔力を感じれない。

少なくとも自分に比べれば、神秘という格では大いに劣っている英霊である。

で、あるのに……否。で、あるからこそ男は技に拘り技のみで己に打ち勝ったのだ。

こうも見事に捌かれれば畏敬の念と共に賞賛をするしかない。

 

 

 

──だからこそクー・フーリンは笑った

 

 

快活に、獰猛に笑った。

クー・フーリンには聖杯に懸ける願い等存在しない。

求めるのは勝ち残った先にある結果ではなく経過。

己の血を沸かせる闘争を……より強者との殺し合いにこそ求めるモノは有り。

ならば、俺は今、笑わなければならない! 

目の前に己よりも武に置いての強者であるならば猶更に笑え!

 

 

 

此処に今こそ望んだ死闘が在り!!

 

 

肉体に賦活と強化のルーンを存分に刻む。

此処より先に安心も安全も無い。

この漢を相手に命を懸けない等出来ない。

クー・フーリンの全てを注がなければ勝てない、と納得したが故に死力。

全身の筋肉が膨張する、魔力を込めていないというのに呪いの朱槍が鼓動を刻む。

未だ顕現していないのに、どこかからか二つ程の凶暴な気配が主の歓喜に呼応して強烈な嘶きを発する。

全ての準備を完了し、待っていてくれた漢の方を見やる。

相手も俺の闘気に反応したのか、先程以上に鋭い視線でこちらを睨んでくれる事にクー・フーリンは最早、愛すら感じれる。

 

 

 

 

ああ、やろう。直ぐにヤろう。今直ぐにその心臓を抉る為に駆け抜けよう

 

 

生前の狂気が愛おしくすら感じる中──今こそ最速の槍兵が獲物に向かって駆け抜けた。

 

 

 

※※※

 

 

「──ぜぇああああああああああ!!!」

 

「──」

 

 

青い槍兵の口から放たれる叫び声よりも早く肉体が加速し、朱槍が煌めいた。

先程よりも数段早く、その上で強く鋭い一刺しが関羽雲長の喉元にまで迫っていた。

関羽雲長の眼からしても何時の間にかそこに現れたというレベルの疾走。

神代の英霊によるルーン魔術による強化の疾走は中華において武神と持て囃された男の眼すら欺いた。

しかし

 

 

 

「──戯けぇ!!」

 

 

超至近距離の槍を前に関羽は吠え、その上で()()()()()()()

偃月刀が間に合わないのであれば別の物で代用すればいい、と言わんばかりの態度にクー・フーリンは音よりも速く笑う。

技の冴えだけ所か、そんな野蛮なやり方も弁えている事に嬉しくなり──即座に槍を引き

 

 

 

「っしゃあああああああ!!」

 

 

ゲイボルグによる連続刺突が再開される。

脳天、心臓、胴体、膝、股間、袈裟、脇腹、あるいは偃月刀自体と一瞬一息による刺突が煌めく。

どれも先程よりも更に強化された一刺しであるというのに──関羽はその全てに対応した。

脳天に迫る突きを首を捻って躱し、胴体を吹き飛ばそうとする暴威を偃月刀の柄で弾き、膝への一突きをステップで躱し、股間への一撃を柄尻で弾き、袈裟蹴りを偃月刀自体で切り結び、偃月刀自体への攻撃を力づくで弾き返される。

この間、2秒にも満たない攻撃を全て的確に弾き返し、

 

 

 

「しぃぃぃ!!」

 

 

その上で偃月刀を手元で回転させ、力をいなした瞬間にクー・フーリンの顔面に斬撃が飛んでくる。

それを皮一枚で躱──そうとして即座に飛び退く。

眼前に迫りくる偃月刀が皮一枚で躱そうと思っていた角度に軌道変化するのを見て取ったからである。

間違いなく最速の動作とタイミングで躱した筈なのに、額の上を削られるのを感じ取る。

飛び退き、一度呼吸をし、ようやく全身の激痛と額から血液が流れるのを感じ取る。

表面上はともかく内部は既に肉は千切れ、骨が軋んでいる状態だ。

その激痛と躍動を感じ取りながらも、クー・フーリンが得た物は興奮であり感謝の念だ。

 

 

 

己の全力を受け止める猛者がそこに立っている

 

 

これに興奮せずして何が聖杯戦争、何がクランの猛犬だという。

おぉっ、という唸り声と共にそこから槍を放り投げる。

真名解放ではない、ただの投擲だが……英雄の投擲はそれだけで都市すら破壊する天の一撃だ。

一瞬で音速を突破し、熱を帯びる朱槍はそのまま関羽の心臓部を狙うついでに全身を抉り取らんと飛翔する。

 

 

 

 

「──」

 

 

その光景に関羽は強烈な意気を発揮させる。

ミシリ、と青筋は立ち、青龍偃月刀を握る右腕はクー・フーリンに劣らないレベルで筋肉が膨張している。

物量すら感じる圧力を吐き出しつつ、人のまま武神と成った男は立ち振る舞いとは別に清涼さすら感じ取る程に滑らかに偃月刀を構える。

その構えには投擲された槍に対し、逃げよう、躱そう等といった弱さが微塵も感じ取れない。

刃先を飛んでくる朱槍に真っすぐ向ける姿勢のまま微動だにしない。

 

 

 

 

その結果、起きるのは三度起きる神業

 

 

わずか数ミリの誤差も許さない──刃先を以て投擲された槍の方向を逸らすという偉業を関羽雲長は汗一つ掻かないままに達成する。

技もそうだが、一切揺るがず己の業に命を預ける精神力もまた他の追随を許さない。

──故に次の連撃にも対処出来る。

 

 

 

「──戻れぇ!!」

 

 

関羽雲長の()()()()()()()から発せられる主の声に呪いの朱槍は即座に応える。

投擲の速度を落とさぬまま、槍は物理的に曲がる。

今直ぐに主の下に帰参せり、という意思があるかのように槍はそのまま物理法則すら乗り越えて主の下に馳せ参じる。

愛槍の帰還に投擲と同時に跳躍し、追撃するつもりだったクー・フーリンは亀裂のような笑みを浮かべながら眼下にいる男と対峙する。

態勢を崩す為の投擲であったが、あれ程の神業を再びされては意味がない。

完全完璧な姿勢でこちらを待ち構えている。

 

 

 

ぞくり、と背筋を震わす悪寒にクー・フーリンは凄絶に笑う

 

 

ああ、そうであろうとも、とクー・フーリンは笑う。

このクー・フーリンが槍に於いては劣ると自覚させられる英霊だ。

槍の技だけで戦い続ければ、自分が負ける事は必定だ。

 

 

 

──故に、ランサーではなくクー・フーリンとして貴様を超えてくれよう

 

 

魔力が全身から駆け巡る。

己の意気に応じてマスターから魔力を送られるのを感じ取り、更に最高の気分に昇華される。

最高の好敵手に、いい女のマスター。

これだけの最高の状況を前にすれば、己の幸運のステータスは嘘偽りではないかと笑い捨てれそうだと感謝し

 

 

 

「──()()

 

 

──切り札の一つを開帳する。

 

 

かつて冬木のサーヴァントでも呼ばれていたクー・フーリンだが……日本における彼の知名度は致命的に低い故に様々な能力が欠けていた。

無論、そうであっても彼は己が弱いと思う事もなければ、槍と敵さえいれば十分であると思っていたかもしれない。

しかし、此度の聖杯戦争に於いての彼は違う。

 

 

 

ここに存在するは最盛期にして最高の状態で召喚されたアイルランドの大英雄クー・フーリンの真の現身である。

 

 

故に彼が手に持つは槍だけに非ず。

あらゆる戦場に於いて彼と一緒に駆け巡った彼の戦友。

その名は

 

 

 

 

蹂躙せよ鏖殺戦馬(マハ・セングレン)--!!」

 

 

 

宝具の開帳(主の叫び)に呼応し獰猛な獣が二匹空間を破砕しながら唐突に関羽雲長の眼前に現れる。

 

 

 

「むぅっ……!?」

 

 

さしもの関羽ですら思わず呻く程の圧。

彼の眼前に現れた存在は戦馬──であるにしても余りにも血腥かった。

巨大な青い装飾と色で飾られた人一人が乗るにしては少し長大で巨大な戦車を引き摺りながら現れた二匹の馬は見事に馬というには余りにも巨大にして威圧的であった。

二匹は灰色と黒色に分けられていた。

灰色の馬は黒色に巨大ではあったがしなやかであり、その上で力強さを忘れていなかった。

しなやかといっても細いというわけではなく気品のようなものであって決して弱さの象徴ではない。

その全てが戦場にて煌めき、邪魔をするものを跳ね除け、轢殺する為の躍動感である事を悟ると気品さや美しさが全て死神の鎌の如き悪寒を感じさせる。

全身に漲る筋肉と大地を蹴る姿には関羽は生前に見た汗血馬ですら駄馬に見えかねないと思う程であった。

 

 

 

──一瞬、某滅茶苦茶に暴れまわる奇天烈な馬の事を思い返したが、アレは比べるのが失礼なので即座に候補から消した。

 

 

もう一匹の黒色の馬は灰色と比べればよりがっしりとした上で瞳には動物であるとかを度外視した暴力性を感じ取り、正しく暴れ馬の呼称に相応しき災害の如き怪物馬である事を予感させた。

暴れ尽くす、轢き尽くす、鏖殺せしめんと全身から殺意を発っせられており、つまりはどちらも同レベルの怪物だ、と認識した。

それらが恐ろしい事に先程までのクー・フーリンと同じ──否、それ以上に速く突撃(チャージ)してくる光景というのは関羽をして悪夢染みた光景であった。

直ぐ様に感じた脅威に蓋を閉め、どう対処するかを考える。

 

 

ただ躱すだけでは足らぬ。

 

 

あの馬は恐るべき戦馬だ。

自身とて足に自信が無いわけでは無いが、この馬と空から睨みつけてくる猛犬を相手にするとちと分が悪い。

で、あるならば迫りくる両馬を斬り殺すか?

それも悪手。

宝具と宣誓された以上、この馬は己が知るよりも遥かに濃い神秘より生まれた奇跡の一つだ。

馬だからといって甘く見るわけにもいかない。

なら、踏み越えるか?

迫りくる馬を跳躍して乗り越えるか、あるいは戦車に乗るという手がある。

しかし、そうすると今度は空から落ちてくる男への対処に遅れる。

速度だけで言えば関羽を軽く置き去りにする大英雄だ。

戦車の上だからといって……否、己の戦車の上だからこそ地の利を得てしまう。

 

 

 

 

──ならば、と思って思考した策に苦笑する。

 

 

やれやれ、隠さない苦い笑みを浮かべながら、関羽は一度青龍偃月刀を()()

クー・フーリンが瞠目しているが、無視して関羽は自分の心に過った言葉をそのまま口に出す。

 

 

 

「全く……こういうのは愚弟の十八番であろうに」

 

 

過去への郷愁を覚えながら──関羽雲長は真っ向から鏖殺戦馬と激突した。

 

 

「──なんだと!!」

 

 

もう直ぐ地上に降りる寸前の光景にクー・フーリンはこの戦闘に於いて何度目かの驚愕を露わにする。

何せあの漢は真っ向から蹂躙せよ鏖殺戦馬(マハ・セングレン)の突撃を()()()()()()()()()()()()()()()

無論、それは完全には上手く行っていない。

 

 

 

「むぅ……!!」

 

 

突撃を受け止めた関羽雲長は一瞬で鏖殺戦馬に押され、地面に爪痕のような足跡と全身の血管が破裂し、流血が漏れる。

宝具の一撃を、奇襲だから速度は未だ乗っていないとはいえマハとセングレンの突撃を受けたのだから当然の代償──なのだがまだ生きているという事はつまり

 

 

 

「──噴!!」

 

 

マハとセングレンの鼻頭を掴んでいた男は一瞬の筋肉の膨張と共に………信じられない事に戦車事、鏖殺戦馬が持ちあげられている光景がそこにあった。

 

 

 

「──!!」

 

 

信じられない、と叫ぶようにマハとセングレンの嘶きが響く。

自分達の巨体もそうだが、それ以上に自身を御せる者など主以外存在しないとあらゆる戦場、あらゆる英雄と出会った上で認識した事実を目の前の男は何の神秘も使わずに否定していく。

空中を飛翔する事も出来る鏖殺戦馬は目の前の光景に衝撃を受け、回避する事も出来ずに大地に激突する。

その光景を、クー・フーリンは歯を食いしばって見る事しか出来なかった。

 

 

※※※

 

 

 

「……ほぅ」

 

 

全身を流血に染めながらも、激突した馬が決して悲鳴を上げなかったことに関羽は感服の言葉を呟く。

倒れ伏し、衝撃を受け止めた後でも戦馬の瞳に宿る物は殺意であった。

許さぬ、認めぬ、我らを凌駕して良い存在は猛犬を置いて他ならぬ、と告げる瞳は危うく戦士として惚れこみそうになる程の戦意であった。

故に何一つ容赦せずに戦馬の方に視線を向けながら心臓を抉ろうと槍を手繰る男の顔面に青龍偃月刀の柄をめり込ませた。

一種のカウンターの如く振るうというより来る位置を予測して適切な速度とタイミングで置いた柄は相手の速度を含めて見事に鼻の骨を砕く感触を自身の手に寄越した。

無論、そこで手は抜かない。

クー・フーリンも鼻の骨が砕けようと構わず槍でこちらを抉ろうとしている。

この手の男は心臓を失っても動いて殺し回ることを経験として理解している。

故にそのまま突き穿とうとうとする槍──の持ち手を狙って軽く押すと槍兵の突きは簡単に逸れ──そのまま膝を鳩尾に抉りこませた。

 

 

 

「ごっ……!」

 

 

自動的に猛犬の喉から息が漏れるのを聞き取りながらも、そのまま空いた偃月刀の柄で相手の足を引っかけ無理矢理に倒す。

そのまま即座に腰辺りに乗りかかり馬乗りになり、青龍偃月刀を再び消し

 

 

 

「──ふん!!」

 

 

拳をそのまま勢いよく顔面に叩きつけた。

技も何も無い力任せの一撃をそのまま何度も何度も浴びせる。

一撃目は砕けた鼻の骨を更に砕かせた。

二撃目は頬の骨を砕かせた。

三撃目以降はひたすらに肉を穿ち、骨を拉げさせ、皮を切らせた。

精悍な顔つきをしていた男の顔面があっという間に青紫色に染まっていくが………瞳に未だ輝くような戦意を光らせている男に手加減する心も意志も持ち合わせていなかった。

最後にハンマーの如く両手を合わせた拳で頭蓋を叩き潰そうとし

 

 

 

 

「──うぉぉぉぉぉおおおぉっぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

獣の如き遠吠えが目の前で響く。

血だらけの顔の中で尚も輝く紅い瞳に一瞬気圧された瞬間、関羽は腰に足が撒かれたのを悟るが──瞬発力だけならば関羽を圧倒するクー・フーリンに勝つことは出来ず、そのまま足の力だけで体を持ち上げさせられ、地面に激突させられた。

 

 

 

「ぐ、む………!」

 

 

受け身は取ったというのに全身が骨まで殴打された感覚に少し呻くが、直ぐに意識を取り戻し、追撃避けに一回転地面を転がり立ち上がると既にクー・フーリンは槍を手に立ち上がっている。

所か

 

 

 

「──」

 

 

鋭い呼気と共に放たれるのは呪いの域に達した殺意。

クー・フーリン自身ではなく、彼が握る魔槍ゲイボルグから放たれる寒気に関羽ですら足を止めざるを得なかった。

 

 

 

一刺一殺の呪いの槍……必ず心臓を破る槍と伝え聞くが………

 

 

伝承と事実がどこまで同じなのかは知らないが………もしも伝承が事実であるのならばあの槍程恐ろしい存在は中々無いだろうと思われる。

無論、流石にそうなるには何かしらの条件があると思いたいが………仮に槍技であるのならば隙を作ってしまえば終わりと仮定すると宝具を発動させる余裕を生まなければいいのだが………

 

 

 

「………」

 

 

背後には振り向かずに感覚だけで知覚すると背後から大きな金属音と共に何かが立ち上がる音が聞こえる。

先程の戦馬であろうと思うが、最早何と評していいか分からぬ戦馬だ、と溜息を吐きたくなる。

幾ら巨大な馬とはいえ、それだけで繋がれた戦車事立て直せるのかと文句を言いたくなるが、神代の馬だとそういう事も普通に有りなのかと思うと仕方がない。

問題はこの3匹の猛獣を相手に凌げるかという事だが

 

 

 

………不可能だな

 

 

敵手は既に命という戦士にとって最も有用で価値のある道具を使用している。

常に死を差し出すかのように戦う相手は更には一つの国、一つの時代に於いて最強と称された英傑の一人なのだ。

その命を前には如何に関羽雲長の武があるといえど隙程度幾らでも得る事が出来よう。

 

 

 

──で、あれば関羽もまた切り札を切らなければいけない。

 

 

宝具とは英霊の象徴。

当然、関羽雲長にも形も用途も違えど宝具を持っている。

しかしながら、関羽雲長の宝具は()()()()()()

切り札としては立派に機能するのだが、そう易々と切るに切れない事情がある。

だが、虎の子を温存したまま死ぬわけにもいかない。

 

 

 

自分には──()()()()()()()()()()()事があるのだから

 

 

宝具の開帳はマスターから事前に必要な時なら何時でもいいです、と許可を貰っている。

故に覚悟するはここで敵を殺すという意志。

蒸気の如く立ち昇る関羽からの殺意を感じ取ったのであろう青い槍兵は酷く嬉しそうに笑う。

その事実に関羽もまた同じような笑みを浮かべそうになり……しかし直ぐに自粛し、踏み出そうとした一歩。

 

 

 

 

──唐突に感じ取った自分達以外の膨大な魔力反応に同時に動きを止める事になった

 

 

 

 

※※※

 

 

人間であるバゼットにすら感じる強力な魔力反応が全身を貫き、無意識にそちらの方に拳を構えた。

そこまでしてその魔力反応がここから遠くは無いが、肉眼で見るには少し遠い場所であるという事を悟る。

この状況で起り得る異常現象の引き金等一つに決まっている。

 

 

 

「………サーヴァント!」

 

 

途轍もない魔力反応は間違いなく戦争を起こしたという証明であろうし………この魔力量を考えたら最悪、隠蔽等考えずに激突している可能性がある。

正気か、と思わず答えなど無いのに問いかけたが、同時に理解もしている。

これだけの規模の聖杯戦争だ。

マスターが何も魔術師ばかりというわけではないだろう。

中にはド素人の魔術師………それどころか魔術師ではない人間が不運にも巻き込まれたケースも0では無い筈だ。

そんな人間がマスターであるならば神秘隠匿の義務等知らないだろうし………マスターがしっかりしていたとしてもサーヴァントが暴走する事もある。

どちらにしろこれだけの魔力を一騎で出しているのだとすれば間違いなく大英雄の類だ。

 

 

 

 

正直、バゼットとしては関羽雲長との戦いを切り上げてでも向かいたい所なのだが………

 

 

そんな都合のいい願望を思い浮かべていると………こちらのランサーが先に槍の先を挙げた。

 

 

「ちっ……白けちまった。おい、そっちのランサー。今回はここらで切り上げねえか?」

 

「ふむ……正直こちらとしては有り難い上に白けたという感想には同意だ」

 

 

唐突に互いが互いに燃え上がった戦意を即座に納めるのだから困惑する。

未だに自分のランサーを含めてサーヴァントの行動というのは読み辛い。

聖杯に望む願いなど無く、ただ己が熱狂できる相手との死闘をこそ願望にしているというのに、ただ場が白けたという理由だけでその願望をいとも簡単に断ち切るのだから読み辛い。

何時の間にかランサーが出した鏖殺戦馬も霊体化しているのを見る所、主人が主人なら馬も馬なのだろうか。

 

 

 

「叶うならテメェとの死闘を最後に聖杯戦争を終えたいもんだが……流石にそりゃ高望みかね」

 

「さてな。何せ互いに首の価値が高い。お互い闇討ちで消えたくは無いものだ」

 

「はっ! そりゃそうだ!」

 

 

戦士達の友情は決して矛盾を起こさない。

今のように軽口を叩き合う関係も真であり、先程の互いに殺し合う関係も真だ。

敬意を抱きながら槍を構え、殺意を向けながら友愛を向ける。

普通の人であれば多分に破綻した関係であるが……戦士という人間にとっては破綻せずに許容される関係である。

現代の人間であるバゼットでは流石に全てを理解するのは難しいが……自身のサーヴァントがそういう性質である事は流石に理解している。

全ての英霊がというわけではないのだろうが、大抵の英霊は暴れ馬のようなものであるという理解が無ければマスターとサーヴァントの関係は拗れる。

それを理解しているマスターは少ない。

 

 

 

何故なら魔術師にとって英霊とは道具であり使い魔だ。

 

 

過去に偉業を成した大英雄であったとしても、己の魔力で召喚し、御している以上、魔術師はサーヴァントを相手に無駄に遜る事はないだろう。

 

 

 

……そのせいで共食いしている組みも多かったですが

 

 

強烈な個と覆る事が無い個同士が接している以上、何かしらが違えたマスターとサーヴァントが行きつく先は当然自滅だ。

そういう意味では聖杯戦争の業というべきだろう。

こう言うと酷く俗な言い方になるのだが……人間関係であると理解した上で英霊と接しなければいけないのに当たり前の魔術師からしたらその人間関係であるという理解を得る事はまず無いのだから。

そういう時の為の令呪があるのだが、令呪も絶対というわけではない。

 

 

 

……と今それを考えている場合ではありませんね

 

 

 

自分の肌に突き刺さる感覚を信じる限り、そう遠くない。

欧州とはいえ車を使えば約8.9分ほどの距離だろう。

こっちは連戦になるが、こればかりはどうしようもない。

幸い使った宝具は鏖殺戦馬であり、彼ら自体も宝具ではあるが真名解放には程遠い使い方だったので問題ない。

槍ならばもっと扱えるだろうし、負傷も既にほぼ治療済みだ。

搦め手が無い相手だからこそ連戦が可能という形だが……逆に言えば搦め手無しでクー・フーリンをこうも押していたという事実は空恐ろしい。

流石はあらゆる英雄による群雄割拠の時代で尚、武神として祀り上げられた男と言うべきだろう。

 

 

 

槍だけでこれならば宝具を明かせば如何程か……

 

 

冷や汗を隠すのに努力がいる想像だが、しないわけにはいかない。

この規模の聖杯戦争である以上、再戦が出来るかどうかは不明だが……未来を見るのから逃避した者こそが脱落するのが戦争の常だ。

意志があれば全てが解決するわけでは無いが、一歩を踏み出す意志が欠ければ挑む事も出来ないのも事実なのだ。

 

 

「おい、バゼット。ちんたらしていいのかよ?」

 

 

思考を回していると何時の間にかランサーが傍に来ている。

……ランサーの願望は知っている。

彼の願いは全力の闘争。

聖杯に願いを託すのではなく、その経過で命を燃やす事こそを願う戦士の願望。

そういう意味では正に関羽雲長は相応しき相手というのに、白けた、というが……私への気遣いがある事を見抜けない程の鈍感さはもうない。

感謝の言葉を伝えるには時間がない今を呪いながら、私は彼の言葉に応える。

 

 

 

「ええ。行きましょうランサー」

 

 

───故に応えるは言葉ではなく行動。

今の私は聖杯に願いを懸ける事も無ければ、ただ職務に忠実の人形でもない。

 

 

 

サーヴァントを相手と共に戦うマスターだ。

 

 

故にこちらを見送る形となる敵のランサーに対しても警戒はしても一切の気後れもせずに背を向ける。

敵を信じているからではなく、味方の英霊をこそ信じているが故の行動。

 

 

 

───そして仮に背後から仕掛けられても問題はない、という覚悟の現れだった。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

「成程。マスターもまた中々に手強い女丈夫よな」

 

 

関羽雲長は去っていく猛犬の主従を髭を撫でながら見送る。

必殺のタイミングだったが、はてさてこれは運が悪かったのか良かったのか───どうにもあのマスターからも必殺の気配を感じ取れたからなんとやら。

命を拾ったのは自分の方かもしれないと思った方がいいだろう。

それはつまり現代の魔術師も油断は出来ないという証左。

現代の身体と魔術はサーヴァントに比べれば稚拙などと言われているが、どうやら全く鵜吞みに出来ない事柄のようだ。

魔術に関しては生前才能が欠片も無いが故に余り詳しくは知らないが、ある種の呪い───つまり特異を扱うという事。

特異である以上、如何なる常識をも食い破れるという事があり得ると考えるべきか。

 

 

 

「最も、言うほど容易い程ではないのだろうが」

 

 

そう考えると成程、聖杯戦争というのはよく出来た構造だ。

単純なサーヴァント同士の激突に見えるが、その実、主流はマスターでもある。

現にこれが普通の戦場であれば、私のマスターは容易くあの女に打ち破られていた可能性が高いのだ。

サーヴァント同士での戦闘が対等であっても決して気が抜けず、さりとてサーヴァントを捨て置いて良い事も無し。

 

 

───更にはサーヴァントには当然だが固有の人格がある。

 

 

思想と思考が噛み合わない場合、力だけが噛み合っている主従は内から潰れる場合もある。

特に魔術師というのはよく分からんが気位が高い人間が多いとの事。

そしてサーヴァントはサーヴァントで英霊になる程の伝承を持つ個我の持ち主。

詰まる所、召喚するマスターとサーヴァントの相性も勝ち抜くには必要となる。

 

 

 

「存外俗……否、戦争と明記されているなら人間らしい宿痾か」

 

 

悩ましいが深く気にしてはいけない。

幸い自分は他のサーヴァントと違ってある種燃費がいいサーヴァントだ。

何せ生前から孔明辺りに”いやはや、その無才振りで天に至るとは少々矛盾を極め過ぎかと”等と褒められてるのか貶されているのか謎の言葉で言われている故に偃月刀を振って魔力を消費する能力は持ち合わせていない。

ただしマスターとの人間関係は……と視線を向けると少年が青ざめた表情で、しかしこちらが生き残った事にほっとしている私のマスターがいた。

 

 

 

……人柄はともかく戦となるとちょいとな……

 

 

我がマスター閻 奉星は自らマスターになったのではなく巻き込まれてマスターになった口であるが故に殺し合いにおいてはマスターの楔である以上の何かを成し得る為の願いや狂気、あるいは度胸がちょいと足りない。

贅沢を言ってる状況では無い以上、奉星との二人で挑むしかないのだが。

 

 

 

「………だが」

 

 

決着が先伸ばした原因。

先程の膨大な魔力を感じ取った方角に視線を向ける。

今尚肌を突き刺すような感覚を与えてくる剥き出しの魔力は膨大だ。

更にはどう見ても隠す気が一切無い。

魔術には詳しく無いが、知っている事とすれば隠匿する事が第一という事。

魔術世界では間違いなく禁忌とされる事を行っている筈だから間違いなく様々な思惑が入り乱れるし、民草を巻き込むとなると自分も行くべきなのだが……

 

 

 

「ううむ……」

 

 

どうにも嫌な予感が己の足を止める───あそこは()()()()()()()()()()、と。

生前ならいざ知らず死後の今となるとこの手の勘が如何に信じられるかを知っているが故に嘆息するしかない。

勝ち目が無いとは言わないが、何でも己でしなければいけないとも思わない。

故に今回は静観すると決めるが……さてこの場にあの義兄がいればなんと言ったものか……。

 

 

 

「………決まっているか」

 

 

"なんとかならねぇかなぁ関さん"

 

と酷く困った風に真摯に頼んでくるに違いない。

嗚呼、全く力の上限は必ずあるものであると悟っているし、把握しているというのに……その嘆願に何度頭を悩まされ、そして叶えてやれない事に無意味であると分かった上で嘆いてしまった事か。

 

 

 

生まれる時代を間違えた我が愚兄よ。どうか待っていてくれ

 

 

この戦争に勝利し……誓いを語ろう。

青臭くも信念を語り合ったあの桃園の誓いを。

 

 

 

───同年同月に死する事を守れなかったことを

 

 

 

 




こそこそ


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