辛くも大きな犠牲は避けられた共和国軍。
ロブ基地へ帰還してくるゾイド達。
「まったく、お前は熱くなりすぎなんだよ!もし遅れてたらどうしてくれんだよ!」
「まあまあ大尉。少尉が駆けつけてくれたおかげで、基地の被害も最小限に済んだんですから」
パリスをなだめる兵士たち。
「いやー、すいません大尉。まあでも結果オーライですよ。これからは気を付けますけど」
「いいか、もしまた帝国の奴らが来たら今度は独り相撲すんなよ!ここには強化型や最新のゾイドがたくさんあんだからな!リニアレールガン装備したウルフやらなんやら、いろいろあるんだぜ!」
デューを叱るパリス。
そこへ、
「マリン ブルーガー曹長、帰還しました。なんとかこちらも帝国軍を食い止めました」
「ご苦労、ブルーガー曹長。あの格納庫のゾイド、ハンマーヘッドで良くやってくれた。これで一安心だぜ」
周りでは緊張から解放された兵士たちが談笑している。
「聞いたか、ニューヘリックの戦闘では、マウントオッサを爆発させて、それで帝国軍を撤退させたんだと。ドクターDの案らしいぜ。それでプロイツェンに対して大統領が強気になり戦闘の中止を求めたんだと。さらにダメ押しでルドルフ皇太子の停戦勧告だ。プロイツェンもざまあないな!」
「それと、火山を爆発させたのがクルーガー大佐のプテラスらしいが運び屋の女が助けたんだと。さらに護衛としてシールドライガーが関わったんだが、それに乗ってたのが白いオーガノイドを連れたガキだってんだ」
「そいつって、レッドリバーでも俺たち共和国に協力した奴だろ。ドクターDが今回力になってくれたのもそいつのおかげらしい」
兵士たちが話すマウントオッサでの出来事に、パリスが
「なんだ、マウントオッサがどうしたってんだ?」
「あー、パリス大尉。実は・・・・」
兵士たちより、火山の爆発と白いオーガノイドを連れた少年に関する話を聞いた、
「なるほど、そいつがねー。ロブの兄貴たちが頼んだんだろ。詳しいことは兄貴に聞いてみるか」
一方、撤退する帝国軍。
「サーベラー少佐、なぜプロイツェン閣下は今回の作戦を実行されたのでしょうか?しかも、エインガング中尉よりPK師団がロブ基地へ向かったと知らせがありましたが、彼らには何か理由があるのでは?」
「さあな、ノグチ。だがロブ基地には強力な共和国ゾイドが揃っていた。プロイツェン元帥の目的はそれなのではないのか?」
愛機を進めながら今回の戦いに疑問を抱く二人の兵士。一人は老齢の男で、パイルバンカーを装備した黒いレブラプターに乗り、ハインケル サーベラー。もう一人の若い男は、キャノリーユニットを乗せた緑色のモルガを愛機とする、ヤース ノグチ中尉。
「このまま戦争が終わってくれればいいんですが、プロイツェン閣下が中枢にいる限り、まだまだ一波乱が起きそうな気がしますよ」
「うむっ、元帥は油断ならないなあ。だが皇太子であるルドルフ殿下は幼少ながら、聡明なお方だ。殿下が御即位なさればこの大陸、いやこの惑星から戦火は消えるだろう」
別の隊では、
「中尉、今回も熱くなってたわね。どうだったの、結果は?」
「いやー、ゴジュラスを本気で怒らせてしまったわー!!あいつ、あそこまで起こるとは、闘争心の強い奴だぜ、まったく」
「それはお互い様でしょ」
ベレッツァにゴジュラスとの対決を語るエインガング、
「うーん、しかし解せん、解せんわ!なぜPKの奴ら勝手な真似を!?奴の、プロイツェンの目的は一体?」
「そうね、怪しいわね彼ら。でもルドルフ殿下がこのまま即位されれば、共和国との和平も不可能ではないかもよ。そうなれば彼らの企みも明らかにできる。そう願いたいわ」
帝国国防軍のほとんどは、プロイツェンに忠誠を誓っている。その中にはベレッツァの直属の上司でもあるガイツ少将もいる。しかし、彼女やハインケルのように、彼に疑いを持つものも少数ではあるが存在する。その代表が、第一装甲師団大隊長、カール リヒテン シュバルツだ。マウントオッサ要塞の戦いでは、共和国の罠にいち早く気づき、自軍をできるだけ多く撤退させた。一方で、先行突撃した部下のマルクスは溶岩に巻き込まれ死亡した。プロイツェンへの忠誠をなによりも優先させたのだ。
「彼のために、これ以上犠牲が出るのは避けるべきだわ。なんとしてでもね」
帝都ガイガロス
「くっ!あと少しのところで共和国を攻め滅ぼせたものを、停戦勧告とは!共和国のゾイドコアを一気に多量に手に入れられたというのに。レイブンの集めたものではまだ足りない。あの死にぞこないの病弱皇帝め、こんな時に死ぬとは!覇王と呼ばれた兄とは違って傀儡にはできたが、あそこまでひ弱とは!」
悔しがるプロイツェン。
そこへ、
「そろそろ我々テラガイストの出番では、閣下?」
「バイパーか?お前たちの手で再び共和国との戦争を起こせるのか?」
プロイツェンにそっくりの長髪の男、バイパーが話しかけてきた。
「えー、共和国にも我が同志が潜伏しております。彼らの協力も得れば可能です。ぜひ我々にお任せください」
「よけいなお世話、と言いたいとこだが、まあいい。お前たちの手で共和国との戦争を起こしてくれ」
テラガイスト
ゼネバス帝国復活を目論む、プロイツェンの私兵集団。しかし、PK師団とは違い、表向きはテロリストということになっている。
「では、さっそく手はずを整えます」
そう言って、バイパーはその場を去った。
そしてバイパーと入れ替わるように、一人の老人がプロイツェンのもとを訪れた。
「閣下、来てくださいませ。あの本体とは別に、まったく新しいゾイドが生み出されました。こんなことはめったにありません。まだ未完成ですが、見ていただきたいのです」
「ほうっ!それは興味深いな。では今から見に行こう」
帝国の科学者、ドクトルFとともに、帝都郊外の研究所へと向かっていった。
『あれの副産物だと。やっかいになってきたな。益々父上を止められなくなる。手遅れになる前に何とかせねば。やはりニクシーでのあの二つの機体の完成が必要だ。それにあの魔物が復活したときのためのゾイドも。デルポイの同志にも秘密裏に頼んではいるが、中々難しく時間がかかる。だがなんとしてでもやらねば』
プロイツェンの話を盗み聞きした一人の若者、ヴォルフ ムーロアは焦りながらもニクシーとデルポイの部下に極秘連絡をした。
「アイゼンドラグーン、完成を急げ」
と。