荒野の中、南エウロペ国境地帯の町へ向かうトレーラーを引っ張るグスタフの姿があった。それを護衛するアイアンコングとセイバータイガー、並びにヘルキャット数機。ロッドディガー隊の所属機である。
「久しぶりの慈善活動だから、ルドルフも連れてきたかったわ。ただ、公務で忙しいみたいだから仕方ないけど」
「殿下、もうそろそろ国境地帯です。このあたりは紛争が絶えなかったため、治安が悪く、野生化したゾイドもしばしば出没する所です。難民キャンプまではお気をつけてください」
皇太子の姉、エリザベートに注意を促すロッドディガー隊長のクローディア。
先の一件の後、そのまま国境警備に当たっていた。共和国よりあるものを手に入れるために。しかし、エリザベートが国境地帯を訪問するとのことで、急遽護衛に努めることになった。
『殿下の護衛を命ぜられることになったが、まあいい。待ち合わせの日にはまだ十分ある』
護衛に努めながらもマックスは共和国の保有するデータの受け取りを気にかけていた。
すると突然、
ピーピー!!
「警告アラームだとっ!一体なんだ!?」
辺りを見渡すが、敵機の姿はない。
光学迷彩か、と思っていたら。
ズガーン!
「キャー!!」
グスタフが襲撃を受けた。地面から何かが爆発したのである。
「殿下!大丈夫ですか!!」
「えー、心配ないわ。でもこの攻撃は!?」
土の中から襲撃した正体が姿を現した。
ガイサックである。それも、50~60機ぐらいいる。
共和国のスリーパーが国境近くとはいえ帝国領に。しかし、ガイサックならば恐れるに足らないと見ていた。だが、
「気を付けろクローディア隊長!こいつら爆弾を備え付けてやがる!今の爆発はガイサックが突っ込んできて自爆したんだ!」
「何ですって!それじゃあこいつら殿下を狙って!!」
「そういうことだな。いくらガイサックとはいえこの数だ。スキを突かれグスタフが破壊される。ここは逃げた方がいい!!」
ガイサックの群れから少しでも離れようと、必死になる。
グスタフのパイロットは冷や汗をかきながらエンジンペダルを全力で踏む。
「おい、パイロット!殿下を危険にさらすな!そんなに暴走したんじゃ、グスタフはコントロールを失うぞ!」
「しかし、追いつかれては爆発に巻き込まれてしまいます!そうなっては殿下の身が!」
「私は大丈夫です!それよりも皆さんが!」
このままでは追いつかれ、エリザベートを爆発に巻き込んでしまう。
こうなれば仕方がない。
「殿下!トレーラーの殿下のゾイドでお逃げください!このままでは殿下が危険です!」
「そんなことはできないわ!皆さんを見捨てて逃げるなんて!!」
「我々は軍人です。御心配には及びません!時間がありません。今すぐに!!」
クローディアから早くこの場を逃げるように促されると、
「キエ―!!」
トレーラーが開き、一体の飛行ゾイドが飛び出した。
「レインボージャーク、あなたなの!?」
自分の主人の危険を察知し、グスタフのコックピットのエリザベートの前に躍り出る。
そして、自身のコックピットのハッチを開く。
「さあ、早く!お逃げください!」
レインボージャークに乗り換えるようにパイロットがグスタフのハッチを開く。
「・・分かりました。ただ、お願いです。絶対に死なないでください!!」
そう言い残し愛機に乗り換える。
「クエ――!」
勢いよく空高く舞い上がり、全速でその場から逃げようとする。
ドキューン、ドキューン!
しかし、ガイサックのレーザー砲が一斉にレインボーを狙って火を噴く。
そうはさせまいと、ロッドディガー隊が応戦する。
しかし、
ズガッ、ズガッ!
無数のレーザーがレインボーの翼を捉えた。
攻撃を受けたレインボーは地上へと落下していく。
「キャ――!!」
悲鳴をあげるエリザベート。
「まずい、殿下が。クローディア!あとは任せる!俺は殿下を追う!!」
後をクローディア達に任せ、エリザベートを追うマックス。
必死にセイバーを走らせる。だが、そのセイバーに地面から、
ドガーン!
「ぐわーーーっ!」
突然の爆発にセイバーは大きなダメージを負い、システムフリーズした。マックスもケガを負った。
「くっ・・くそっ!で・・殿下を・・追わなければ・ならない・・のに」
セイバーのコックピット内で気絶するマックス。
一方レインボージャークは、コントロールを失い、付近の森林へと墜落していく。
それを遠くより、眺める一人の男がいた。
「共和国に所属してたおかげもあり、多数のスリーパーガイサックを操ることができた。森の方へ落ちたが、念のために死んだのか確認しておこう」
テラガイストのメンバーの一人、レザールであった。
同じころ、帝都では大混乱が起こっていた。
皇太子ルドルフが誘拐されたのだ!
これで二章も終わりです。
今回登場したオリジナルキャラクターのエリザベートですが、以前ハーメルンのゾイド小説での砂鴉様の企画で、私が考え出したキャラクターになります。結果は不採用でしたが、キャラクターや小説を考えるきっかけになりました。
この小説は、ゾイド無印をベースとして、バトストなどの設定を作中の話の中に組み込む形となっております。そこでは、バトストの人物などや他の作品のゾイドを登場させており、このやり方を続けるつもりです。
次章では、物語の本質へ徐々に迫っていきます。エリザベートの運命はいかに!?
そしてバンに関係するある女性との出会い、そしてその人物と帝国の重要人物との初恋、北エウロペの情勢、アイゼンドラグーンの動き、リッツ中尉などについても描いていきたいと思います。