早朝の森
「おのれ共和国軍め、我々の邪魔を!奴らさえいなければ昨日のうちに捜索できたものを」
苦い表情を見せながらも、部下に探索を命令するレザール。
昨日、エリザベートとレインボージャークを見つけ出そうと森に入るも、遭遇した共和国軍に不審がられて彼らとの戦闘が起きた。何とか退けたものの、エリザベートの捜索ができなかったのだ。
「こんなことをするのは奴しかいない。アルバーンの仕業だな!このわしの動きを逃さなかったというのか。・・・・ええい!まだ見つからんというのか!?おそらくあの状態で無事ではないだろうが、万が一生きていたら邪魔になる!!」
レザールの部下たちはコマンドウルフで探すも中々見つからない。
そのウルフ達の動きを監視するヘルキャット。
「やはり、テラガイストの仕業だったのか。あのガイサック達を動かしていたのは」
「クローディア隊長、殿下と我々を狙ったのはテラガイストのようです。彼らは今殿下を探索しております」
「分かった。何としてでも奴らより先に殿下を見つけて助け出してくれ!私も赴きたいのだが、別件でチュニスに行かなければならない。申し訳ない!」
例のものを共和国より受け取るため、クローディアはチュニスへと向かった。
「チチチッ」
街が朝日に照らされ、スズメが鳴く。
「うーん、あらっ!?ここは・・一体?」
目覚めると、自分がベッドで寝ていたことに気付いた。
陽の光が窓ガラスから差し込み、美しい長髪を映えさせる。
ガチャっ!
突然ドアが開き、神父と自分と同じ年ぐらいの少女が入ってきた。
「お寝覚めのようですね。ご気分はいかがですか?」
少女の方が語り掛けてきた。
「は・・はい・・・・あの、あなたがたは?」
「我々は倒れていたあなたをここまで運び介抱していました。お元気で何よりです」
「あ・・ありがとうございます!みなさんに迷惑をおかけしてしまって」
善良な人たちだと安心したエリザベート。
「いけない!早くあれを手に入れないと!でないとあの子が!!」
すべきことを思い出し、ベッドから出ようとする。
「待ってください!今は落ち着いて。どうしたのですか?」
「大切なお友達を救うためにどうしても必要なものがこの街にあるのです。それを手に入れないと。あっ!いけない!お金をすられてしまったんだったわ!」
「そうですか、だからあんなに慌てて。とにかく今は落ち着いてください。まずは朝食をとらないと」
エリザベートを落ち着かせようとする神父。
「は・・はい。すみません。私ったら焦ってしまってて」
「いいんです。ご友人を助けたい一心なのでしょう。あっ、自己紹介が遅れました。私はレオンといいます。ウィンドコロニーという村で神父をしております」
「私はマリア、マリア フライハイトと申します。自分で作った織物を売るためにウィンドコロニーからこの街に来ました。神父さんは私のお共で来たんです。あなたは?」
「私は・・エリザと申します。・・国境地帯の村の娘です」
エリザは嘘をついた。この人たちを危険な目に合わせまいとついた嘘である。
「クエ―」
遠くから何者かが来る。その気配をレインボージャークは察知した。
野生ゾイドという感じではない。何か、異様なものが近づいてくるような違和感。味方にはヘルキャットがいたが、この気配はコマンドウルフだ。
ゾイドの野生のカンというものだ。
「ククッ、ククッ!」
この場に留まるのは危険だと判断したレインボーは隠れ家を抜けて少しでも気配から逃れようとした。傷はまだ完全には癒えていないとはいえ、だいぶ良くなった。これなら少しは逃げられるだろう。宮殿で長く暮らしてきたとはいえど、野生の本能はまだ残っているようである。
朝食をすまし、宿を出て街の通りを歩く3人。ゾイマグナイトの売っている店へと向かっていた。レオン神父が代わりに購入してくれるようだ。
「まさか、お友達ってゾイドのことだったんですね。エリザさんってなんだか私の弟とそっくりだわ」
「はい、そのゾイドと小さいころからずっと一緒だったんです。とても大切なゾイドなの」
自分とゾイドの思い出について話すエリザベート。
「マリアさんに弟さんがいるんですね。村で帰りを待ってらっしゃるんでしょうね」
「いえ・・弟は村を出ていったんです。あの子とあのゾイドを守るため、そして村に迷惑が掛からないようにするため」
「あの子とあのゾイド?それは一体?」
「女の子と小さな恐竜型のゾイドです。盗賊に狙われてたんですけど、あの子たちを守るために村を後にしたんです。村に彼らがいればまた襲われるだろうと考えて」
「そうなの・・すみません。いやなことを聞いてしまって」
申し訳なさそうにするエリザベート。
「いえ、いいんです。弟のことなら心配はいりません。何度も遺跡を探検して困らせられましたけど、必ず帰って来るんです。今回もきっと無事に戻ってくると信じています」
故郷の村を出ていった弟を思い出すマリア。
「マリアさんってお強いのね。私にも弟がいるんです。ゾイド好きで、いつも庭の昆虫型ゾイドを観察しているんです。でも今は私がいないことに寂しがってるだろうと思います。それを考えると心配でなりません」
表情が少し暗くなるエリザベート。
会話をしているうちに目的の店にたどり着いた。
「ここです。ここでゾイマグナイトが売られています」
店には多くの鉱物が売られていた。アメジストやエメラルド、またこの惑星特有のメタルZiやプラネタルサイト、ぞしてゾイマグナイトもある。ただし、ゾイマグナイトは火山地帯など特定の場所でしか産出せず、価格も高い鉱物である。
「やっぱり、高価な物ね。神父さんにご迷惑をおかけすることになってしまいますわ」
「いえ、お金のことなら問題ないです。大切なゾイドを助けるためなら。ただ、私の今の所持金でもゾイマグナイトの購入は難しいです。もっとお金を持ってくるべきだったかと思います」
落ち込んでしまうエリザベート達。
その時彼女は、自分の持っているペンダントの存在に気付いた。
「そうだわ!これをお金の代わりにしてもいいかしら!?これとなら交換してくれるかもしれない」
取り出したペンダントには開閉式になっており、中には、剣にまとわりついた竜の紋章が刻まれていて、ダイヤモンドなど高価な宝石が飾り付けられていた。
「綺麗なペンダントだわ!でもエリザさん、こんな高価なものどこで手にいれたんです?」
「これは先日亡くなった祖父の形見なんです。とっても大切な物なんだけど」
『これはガイロスの紋章。なぜ彼女の祖父がこんなものを?』
神父は竜の紋章に目をやり、不思議がる。
ペンダントに二人が驚いてると、
「こら、このガキ!やっと見つけたぞ!宝石も盗もうとしやがったな。さあ俺から奪ったものを早く返してもらおう。重要なものだからな」
店の外を見ると、一人の男が少女の手をつかんでいた。
「し・・知らないよ!私があんたから何を盗んだってんだ!」
「とぼけるな!このアルバーン様を騙そうったってそうはいかんぞ!」
その騒動を見てレオン神父が、
「どうしたんです、騒々しい。その子の手を放してやりなさい」
「何だ、あんたは!こいつは俺から重要なものを盗んだんだ。取り返さにゃならん!」
今度はエリザベートが少女に目を向けると、
「あなた・・昨日の女の子?」
少女はギクッと身を震わせた。
「昨日私から財布を盗んだ子・・そうでしょう?」
「こいつめ!他の人間からも盗みやがってたのか!さあ白状してもらうぞ!どこへやった!?」
アルバーンは少女に盗まれたもののありかを教えるよう強く迫った。
「やめなさい!とても脅えているではないですか!」
「なんだよ?あんただって財布を盗まれたんだろう!?こいつをかばう必要はないぜ!」
「怖がっている女の子に強引に接するべきではないわ。・・・ねえ、あなた。どうして盗みなんてするの?家はどこなの?」
エリザベートは優しく少女に問いかけた。
「家なんて・・ない。私たちは裏町の通りで暮らしている。商人や観光客から盗みをしながら」
「そ・・そうなの!?そんなつらい思いを。でもお願い。私とこの人から盗んだものは返して。大事な物なの」
エリザベートから諭されて少女は、
「ご・・ごめんなさい、お姉さん!ちゃんと返すわ!」
と泣きながら答えた。
「よかったですね、エリザさん。・・・ねえあなた、お名前はなんて言うの?」
とマリアが問うと、
「シシリー。シシリー ヴォルタ」
と少女は答えた。
「シシリーね。じゃあ私たちを案内してね」
シシリーという少女は、エリザベート達を裏町へと案内した。