チュニスの街にトレーラーを引っ張るグスタフが来た。そのトレーラーに入ろうとするエリザベート達。レオン神父も同行する。
「まさか、あなたが帝国のエリザベート殿下だったとは。宝石店で見せられたペンダントから気付くべきでした」
「本当にすみませんでした。騙したくはなかったのですが」
トレーラーの中に入ると、そこにはレインボージャークが乗っていた。
「レインボー!よかった、無事だったのね!」
「クエ――!」
涙を浮かべ親友によりそるエリザベート。
「すでにゾイマグナイトを与えて、だいぶ回復したようです。あとは安静にしていればいつでも飛行が可能です」
ロッドディガーの兵士が説明する。
「殿下、よかったですね!お友達がお元気になられて」
エリザベートが皇族と知り、口調が堅苦しくなるマリア。
「マリアさん、そうかしこまらなくてもいいわ。私たちも友達になったばかりじゃない」
「いえっ!お友達だなんて、殿下と私では!」
まだまだ慌てふためいているマリア。
「殿下、あと少しでレインボーは敵に見つかるところでした。彼の協力がなければ」
シュバルツがエリザベートにレインボーの保護について話した。
「あの・・シュバルツ少佐・・でしたっけ。助けてくれて本当にありがとうございます!」
「君は・・殿下と一緒にいた。あー・・いやこちらこそ」
シュバルツは顔を赤らめた。
「君が叫んでくれたおかげで奴らが誘拐犯だということが分かった。それで殿下も助けられたんだ。礼を言わなければならないのはこちらの方だ」
「いえ、こちらこそ。あっ、自己紹介が遅れてすみません。私の名前はマリア、マリア フライハイトと申します。こちらがレオン神父。ウィンドコロニーで今暮らしております」
フライハイト。その名を聞いて、思い出す。もしや彼の姉なのでは。
「私は帝国軍第一装甲師団第一大隊長のカール L シュバルツです。殿下を救って頂き本当にありがとう!」
改めて感謝するシュバルツ。
「ところでシュバルツ少佐。レインボーを助けてくれた彼ですが、その方は今どちらに?」
「彼ならレインボーを捕えようとした連中を引き付け、今は殿下がいた森の中にいます。まだ若いですが、最近わが隊に配属されました。彼の名はコウキ デモン、今の階級は伍長です」
「そのような男が少佐の部隊に。いずれ会ってみたいです」
クローディアがその男に興味を抱く。
「そうですか。その方にも、後で私からの感謝を伝えておいてください。本当にありがとう。・・そういえばマックス中尉はどちらに?」
マックスがいないことに気付くエリザベート。
「マックス中尉なら先日の砂漠の一件で、ガイサックの爆発に巻き込まれましたが、今は無事です」
「よかった!よくご無事で!」
安心し胸をなでおろす。
「それと殿下!今は御身を隠された方がよろしいかと思います。殿下を狙ったのはテラガイストと呼ばれる集団です。いつまた狙われるかもわかりません。つい先日も彼らは国境地帯で無断に軍を動かしていました。この背後にいるのは恐らくあの男、プロイツェンに違いありません!」
「プロイツェン摂政が!そんな・・忠義に熱い人物だと思っていたのに!」
エリザベートは耳を疑った。だとしたら、弟のルドルフの身も危ない。
「急ぎガイガロス近くにいる私の知り合いに連絡をします。どうか殿下はご自身の身を案じてください。ルドルフ殿下の身は我々にお任せを!」
シュバルツは急ぎ、ガイガロスへの連絡をしに、通信機の方へ行った。
「殿下、ルドルフ殿下のこと、心中お察します」
「いえ、私もマリアさんのように強くならなきゃ。少佐のお知り合いを信じるしかありません」
心の奥底では動揺しながらも、毅然とした態度のエリザベート。
「そうだわ!裏町のあの子たちは今どうしてるのかしら!?」
急に子供たちのことを思い出した。
「彼らなら、あそこにいたままです。シシリーも」
「そうですか、じゃあ彼らに少しでも食べ物を与えなきゃ!マリアさん、神父さん。協力をお願いしてもよろしいですか?」
「はい、でもどうやって?」
「私に任せてください。食材と費用ならこちらにあります」
裏町の貧しい子供たちのために炊き出しをしようと考えたのだ。
トレーラーの通信機でガイガロスの協力者に依頼するシュバルツ。
「というわけだクーリム少佐。ルドルフ殿下を頼む!」
そう言って通信機を切る。
これで何とかなるだろうと安堵する。
「シュバルツ少佐、やはりテラガイストの仕業だったのですね。だからあの連中あの森の近くをうろついていたんだな」
「というと?」
「私もチュニスでの任務の傍ら、テラガイストの動きを察知していたんです。そしたら奴らが森の近くで不審な行動をしていたので。それで私の部下たちとの小規模な戦闘がおこったんです。そのおかげもあって、あのレインボージャークの捜索が遅れたのかもしれない」
テラガイストがまた活動していたことをシュバルツに伝えるアルバーン。
「そうでしたか。であるなら、あなたにもお礼を言わなければ。殿下に変わり、私から感謝します」
結果的にはアルバーンのおかげもあって、エリザベートとレインボーの救出につながったのだ。
「ところで少佐。殿下と一緒にいた少女ですが、彼女には弟がいるそうです。もしやその弟とは・・」
「彼のことでしょう。ただ、彼女には黙っておきましょう。彼女に心配してほしくない。彼の動きも探ってみたいと思います」
「だとするなら、今はガリル遺跡の方に向かっているかと思います。あそこには、ゾイドイブに関する秘密があると言われていますから」
「ありがとうございます。アルバーン隊長!」
礼を言うシュバルツ。
「しかし、少佐。あの娘のことを気にかけておられるようで。もしかして、彼女に惚れているのでは?」
いきなりの言葉にシュバルツは、
「えっ!いやー、そ・・それは別に。ただ感謝されたことに自分もうれしく思って。それだけです」
しかし、どう見ても何か思っているということはバレバレである。
「隠さなくてもいいですよ、少佐。誰にだってそういうことはありますから」
「いや、私は‥」
照れるシュバルツを、ちゃっかりとからかうアルバーンであった。
街で必要な食材を買いそろえ、炊き出しを始めたエリザベートとマリア。裏町の子供たちを連れてきて食べさせた。
「みんな、まだまだたくさんありますよ。急がなくても大丈夫よ!」
温かい食事に喜ぶ子供たち。
子供たちが食べているのはジャガイモのスープに、カツレツ、パンケーキやソーセージなど地球でいうドイツ風の料理だ。
『こんなに美味しいなんて。なんて優しい人たちなの!』
シシリーもその食事に感激し、涙を浮かべている。
「殿下はお料理が上手なのですね。私なんかまだまだで」
「いえ、マリアさんがつくられたジャガイモのスープ、とってもおいしいですよ!」
ジャガイモのスープは彼女の自慢の料理だった。弟や村の人たちも喜んで食べていたものだった。おいしく食べる子供たちを見て、マリアは表情を和ませる。同時になぜか目から涙がこぼれる。
「マリアさん・・泣いておられるの?」
エリザベートが気付く。
「えっ!あっいえ。なぜかしら。多分弟のことを思い出したんだと思います。・・すみません、弟を思うとやっぱり心配で」
「いえっ、誰でも心配になるのは当然です。本当は私もルドルフが心配です。それでも絶対に大丈夫だって信じています」
マリアを慰めるエリザベート。
「ありがとうございます、殿下。私のために」
手を顔で覆うマリア。
「殿下!あまり外におられるのは危険では。そろそろグスタフの方へ」
シュバルツが駆け寄ってきた。
「いえ少佐。レオン神父やロッドディガーの皆さんが見張っておられます。少佐も召し上がってください」
ジャガイモのスープを渡され、それを飲むシュバルツ。
「こんなに美味しいスープは初めてだ。病みつきになりそうだ」
ジャガイモスープを気にいっているようだ。
「それを作ったのはマリアさんよ。マリアさん、よかったですね!」
それを聞き、マリアとシュバルツは同時に顔を赤らめた。エリザベートもまた、マリアがシュバルツに思いを寄せていることに気付いていた。
「えっ!あっ、はいっ!」
「そ・・そうでしたか。マリアさん、ありがとう!」
アルバーンやクローディアも加わり、彼らにも料理がふるまわれた。
夜
炊き出しが終わり、あたりは暗くなり皆が寝静まった。マリア達は宿に、エリザベート達はグスタフに戻った。子供たちには温かい毛布が配られた。
グスタフの前で3人の男が会話をしていた。
「プロイツェンでしたか、殿下を狙っていたのは。以前故郷の村の近くであの男に出会いました。その時マリアさんのお父上がなくなられて・・。当時私は彼の部下の一人でした」
「そうか、やっぱりあんた軍人だったんだな。サイレンサー付きの銃といい、感づいてはいたが」
レオン神父とシュバルツ、アルバーンであった。
「それと、裏町のシシリーという少女が言っていたのですが、以前彼女と一緒にいた少女が青い小型の獣脚類型ゾイドを連れていたと。プロイツェンが私たちを襲撃したのも、それと同種のゾイドを奪うためでした。色は黒かったのですが。そのゾイドは恐らく・・オーガノイド!」
「はい、そうだと我々帝国もにらんでいます。奴はオーガノイドとそのシステムを使って帝国を支配するつもりです。そしてレオン神父の言うその事件でプロイツェンが狙っていたオーガノイドですが、見当がついています。それとレオン神父。マリアさんの家族に弟がいますよね。『バン』という名の少年が。彼もオーガノイドを連れている」
バンの名を聞いて驚くレオン神父。
「そうです。彼は村に迷惑が掛からないようにオーガノイドと少女を連れて出ていきました。マリアさんは平常を装っていますが、心の中では心配しています」
「彼の活躍で帝国と共和国の戦争の危機が2度も避けられました。彼には感謝してもしきれないくらいです。ですが、マリアさんをこれ以上心配させたくはない。だから、このことは彼女には内密にお願いします。我々の方でも彼の動きを探ってみます」
信頼できる人間と判断してレオン神父にそう伝える。
「分かりました。あなた方によろしくお願いします。・・ふふふ。シュバルツ少佐。マリアさんを心配していただき、また助けてくれたこと改めて感謝します。あと隠さなくてもよろしいですよ。彼女を密かに思っていることを」
シュバルツはギクッとした。アルバーンだけでなく彼にも見透かされて、恥ずかしがる。
「ハッハッハ!少佐、頬がまた赤くなってますよ!神父さんも油断できないなあ!」
「しかし、マリアさんはレオン神父の方を思っているのでは」
「確かに彼女と私は親しい間柄です。けれど、私はカトリックの神父です。心の中では彼女を愛していますが、神父である以上結婚などは考えていません。いつか少佐にマリアさんをお願いする日が来るでしょう」
「レッ・・レオン神父!い・・一体何を!?」
再び慌てふためくシュバルツであった。
翌朝。
身を隠すため、エリザベート達はチュニスを後にしようとした。
共和国からもグスタフが来ていた。裏町の子供たちを保護するためである。
大勢いるためそのうち何人かはエリザベートやマリアが引き取ることにした。シシリーはエリザベートについていくことにした。
「じゃあ、マリアさん。その子たちをよろしくお願いします!」
「はい!この子たちを大切に育てていきます」
「ありがとう!あと、いつか結ばれる日が来るといいですね!!」
それを聞いて再び顔を赤らめる。
「えっ!な・・なんでしょうか?私は別に・・」
「うふふふ。出会えて本当によかったですね。またいつかお会いしたいです。それではごきげんよう!」
そう言って、エリザベートは共和国軍とともに、ロッドディガーのわずかなお供と子供たちを連れて共和国基地へと向かった。マリア達は、アルバーンらの共和国のグスタフと途中まで移動し、ウィンドコロニー付近で別れることになった。
一方シュバルツとクローディアは国境の警備に戻り、引き続きプロイツェンの監視とともにバン フライハイトの消息を探ろうとした。そのために、シュバルツは部下のコウキ デモンに依頼した。
移動中にマリアはあるものを手に握っていた。それは鳥の姿をした人間のような生き物の像であった。買い出しの際にエリザベートと一緒に購入したものだった。この像はどういうわけか知らないが、エウロペの遺跡でしばしば出土されるものだ。
「マリアさん。その像ですが、殿下と購入されたそうですね」
「はい、殿下とご一緒になったという記念で。殿下も昔ある場所でこれと同じようなものを見たことがあると。確か、東方大陸でしたっけ。レインボージャークの故郷だそうです」
その像を見て、ふと思い出した。東方大陸に移住した東洋系の人たちの間で、地球において古くから伝わる『妖怪』と呼ばれる存在の中に似たようなものがいると。それはまるでカラスのような姿をしていた。おそらく偶然だろうが、この惑星Ziにも自分たちの故郷の星、地球と似たような伝承があるのだろうと思った。
「あと、マリアさん。どうやら運命の人と出会えたようですね。私は嬉しいです」
「えっ!もー、神父様まで殿下と同じようなことを!」
恥ずかしがるマリアであった。
それを見てアルバーンは、
『やれやれ、全くだぜ』
と顔をにやつかせた。
一方、警備に戻ろうと帝国領へ移動するシュバルツ
『やはり、黒のオーガノイドとはシャドーのことだろう。そして行方不明の少年だが、もしやレイブンでは』
クローディアとは途中で別れて、国境の基地へと向かう。
後日彼には予定があった。それはブラックレドラーが配備されているエーベネ空軍基地での演習である。士官学校同期のラルフ少佐との演習だ。
ピーッ、ピーッ!
突然、シュバルツに連絡が入った。
「どうした、クーリム少佐か!なにっ!ルドルフ殿下が誘拐!さてはプロイツェンの仕業か!!」
プロイツェンに先を越されたシュバルツ。帝国に動揺が広がり始めた!
三章目が終わりました。
あまりいいできではないですが、今回は恋愛話を取り入れました。予想がつくかと思いますが、ガーディアンフォースのエース二人が後に義兄弟になるという設定も面白いかと考えました。
今回の章は非常に短期間の話になりました。また、ここでとりあげた何気ない話題も後で重要となってきます。
それでは、次回もよろしくお願いします。