1 オリンポス山の死闘1
「帝国軍め、一体全体何を企んでいやがる。オリンポス山に軍事拠点だなんて、協定違反じゃねーのか。まあでも興味ありだけどな」
「少佐、別に少佐はうちらの隊所属ってわけでもないのになんでついてきたんすか。ロブの兄貴も止めたっていうのに」
愚痴りながらも、帝国軍の秘密基地に興味津々のレオマスター、アーサー ボーグマンにトミー パリス中尉はあきれる。
「あまり派手にやらないでくださいよ。強敵と戦えるということで我々に同行したのでしょうが、これは極秘任務なのですよ、クレイジーアーサー」
「なあに、心配はかけんよ中佐。もし強敵が現れたらお前たちだけじゃ不安だろう。だからわしが来たんじゃ。もし敵が来たとしても安心せえ」
老齢のシールドライガー乗り、アーサー ボーグマンは年下のハルフォード中佐を和ませる。
独立第二高速大隊は共和国情報部や、衛星電波とプテラスレドームからの位置情報の助けで帝国軍に察知されないように山頂を目指していた。
「しかし、軍もルイーズ大統領もなんで俺たちをオリンポスへ派遣なんかさせたんだ。北エウロペの帝国と共和国の支配域のちょうど境界に位置するオリンポス山に要塞なんて建てたんだから、これをカードにして帝国に文句言えばいいじゃねーか」
「トミー、いくら証拠を示したところであのプロイツェンのことだ。しらばっくれて共和国こそ帝国にいちゃもんをつけて戦争を起こそうとしてるのだろうと言い返しかねない。それに我々が帝国の極秘要塞に気付いたこと帝国側が知ったら、益々プロイツェンは警戒し、それこそ難癖付けて攻めてくる可能性もなくはない。オリンポスで造っているであろう秘密兵器で。そうなる前に俺たちで帝国がもつ技術を奪い取り、あの基地を破壊し戦争を防がなければならんのだ。俺の弟も帝国秘密要塞をネタにしてプロイツェンに圧力を加えればいいと言ってたが、あの男はそんなに甘くはないぞ」
共和国政府と軍の考えは的外れであると思われるであろうが、それは帝国の支配者がプロイツェンでない限りの話である。彼はこのエウロペに国は一つしかないという独善的な思想の持ち主で、共和国を反乱軍としか見なしていない。実際にプロイツェンは4年前、アーサーの友人であったダン フライハイト少佐率いる共和国軍が捕獲したオーガノイドを奪い取るため自ら軍を率いて攻めてきた。そんなプロイツェンに強く追及したところで、秘密兵器が完成してしまえば、彼はそれを持ってして北エウロペを完全に帝国の支配下に置き、ガイガロスからの軍をも動員して共和国の首都ニューヘリックシティを挟み撃ちするだろう。
「帝国軍の持つ遺跡のオーバーテクノロジーを手に入れれば、共和国も帝国に対抗できるということだろう。そういえば中佐、お前さんの弟は古代遺跡の調査部門に所属しているだろう。オリンポス山の遺跡の技術はのどから手が出るほど欲しているだろう。帝国軍の手に落ちていなければ、すぐにでも調べられたのになあ」
「確かに弟は遺跡調査においては優秀ではありますが、人命よりも任務を優先する男で、部下からはあまり信頼されておりません。4年前に当時上官だったダン フライハイト少佐と共に捕獲したオーガノイドを帝国に渡さないために逃しましたが、そのせいでダン少佐は亡くなりました。同時にオーガノイド研究者夫婦殺人事件の捜索中に保護された少年も行方不明です。弟の判断が果たしてよかったのかどうか兄としては疑問です。しかし、ダン少佐の遺族とその行方不明の少年には非常に申し訳ないと思っております」
「そうだったな。あれは悲しい事件だったな。しかしダンの奴、故郷の村を守るためとはいえ無茶なことを。だが俺でも奴とおんなじことをしただろう。奴が今も生きていればなあ」
アーサーは親友であったダンのことを思い出し、涙ぐんだ。
オリンポス山中腹まで敵に気づかれずに部隊を進めたハルフォード。しかし、ふと疑問に感じた。情報部や衛星電波のおかげとはいえ、いくら進んでも全く敵の気配がないのだ。まるで、侵入を許しているかのようだ。しかし、進むしか道はない。帝国の思い通りにさせないために。
すると、付近の岩陰から何かが飛び出したように感じた。
「ん!?何か動かなかったか」
「いえ中佐、何も」
その時であった。
ズガーン!
「ギャー!!」
「どうした!」
「いったいなんだ! うわー!」
「どうした、応答しろ!」
「分かりません、何かが襲って・・ぐわー!」
部下のコマンドウルフが次々と撃墜されてしまっていた。
「何だあのスピードは、それにあの赤い影・・・まさか!」
アーサーはそれが何なのかすぐに察した。シールドライガー同様口からはえた2本の鋭い牙に、鋭い爪。間違いない。帝国軍が誇る高速戦闘機械獣セイバータイガーだ。
「ヘリックの諸君。よくぞここまで来てくれた。俺はステファン スコルツェニー少尉。この険しい山道の中ご苦労だった。だが貴様らの運命もここまでだ!プロイツェン閣下の御命令で貴様らを討ち果たす、覚悟しろ!」
赤い暴風が独立第二高速大隊に襲い掛かる。
「ちっ、なんて奴だ。みんな相手はたった1機だ。一斉攻撃だ!」
ハルフォードとアーサーのシールドライガーがミサイルと3連砲を放ち、パリスたちのコマンドウルフがビーム砲を打ち込む。が攻撃の全ては簡単によけられた。
「なんて機体だ。昔戦った3銃士のセイバーに匹敵するんじゃないのか」
元々ポテンシャルの高いセイバータイガーではあるがこのセイバーはチューンナップされた機体で機動性が格段に向上しているようだ。そしてそれを操るスコルツェニーもただ者ではない。
「だめだ、攻撃が当たらない。ぐわー!」
1機、また1機と撃破されていくウルフ。
ならばこちらもと攻め込む味方部隊。しかし、攻撃はかすりもしない。
「おのれ、こうなれば俺が出る」
アーサーのライガーがセイバーめがけて爪と牙を向ける。しかし、寸前でよけられた。
「無駄だ!そんな攻撃ではこの俺を仕留められん。くらえ!!」
セイバーのストライククローがアーサーの愛機の頬を狙う。寸前でかわした・・と思ったら。
「グオー!!」
愛機が悲鳴をあげる。
「なんて速さだ、それにこのパワー。単にチューンナップされた機体じゃないぞ!肩の色も普通のセイバーとは違うような」
「その通り、こいつにはオーガノイドの力も加えられている。肩の色がその証拠だ。それにライガー対策のため俺は幾度もシミュレーションで模擬戦闘を繰り返している。だから貴様らには絶対負けはしない!」
「絶対などありえん!俺が相手だ」
今度はハルフォードがビームやミサイルを放ちながら愛機をセイバーへと向けさせてきた。加えてパリスらのウルフも支援攻撃を繰り返す。
「ふん、雑魚は引っ込んでろ!ストライククロー!」
「ガオー!」
「ラ、ライガー、大丈夫か!?」
ハルフォードの機体の左側のミサイルポッドがセイバーの爪で破壊された。その勢いで、援護射撃をしていたウルフたちにビーム砲を浴びせた。
「グアー!」
「ギャー!!」
部隊はまさに危機的状況だった。
「化け物め、こうなりゃこうするしかない。いったん引くぜ」
パリスはセイバーから逃げるように愛機を走らせた。
「腰抜けが、怖気づいたか。俺からは逃れられんぞ!」
ウルフを追うセイバー。その距離はどんどん詰められる。
「ここで終わりだ、砕け散れー!」
セイバーの爪が襲い掛かる。その瞬間、
ドガーン!
「何!」
「トミー、お取りなんて無茶するな!そんなに甘い相手じゃないだろー」
パリスの行動を察したアーサーがビームを放った。
「貴様、あの一撃を喰らったのになぜ無事なんだ!」
「へっ、俺を誰だと思ってる。共和国のエースレオマスターだ。なめられちゃあ困る」
「ふっ、だから何だ。今は俺の方が有利だ」
アーサーに向かって攻めようとしたその時、
ギシッ!
「何、どうした!左腕の関節が!」
「俺が適当に撃ったかと思ったか!?ちゃんとセイバーの関節を狙ったのさ。腕が使えないように」
「くっ、まあいい。まだ右腕がある。これでも十分だ」
左腕が不自由でも、まだセイバーは素早く動ける。
「なんて奴だ、これがオーガノイドの力なのか!」
アーサーに襲い掛かろうとするセイバー、
すると側面から
「そうはさせん、くらえー!」
ズゴーン!
Eシールドを展開しながらハルフォード機が突進、
突き飛ばされ地上にたたきつけられるセイバー。
「おのれー、なめおって、貴様から始末してやる!」
怒りに燃えて背中のビームを放ちライガーに迫るセイバー、
しかし、ビームはEシールドに跳ね返される。
「なぜだ!?OSで攻撃力も強化されているのに」
「いくら強力な機体でも、あれだけのダメージを喰らったんじゃあ力も弱まる。今度はこっちから行くぞ!」
ハルフォードも愛機をセイバーへと走らせる。
「これでおわりだー!」
「速い、しかし先ほどに比べれば遅く感じる」
セイバーの爪をかわし、首に牙を立てる。
「グワオー!!」
「くそ、なぜだ!?シミュレーションの模擬戦闘はいつも完ぺきだったのに」
「シミュレーションと実践では違うのだよ。俺の弟と同じだな!」
「おのれー、あの黒のオーガノイドの力はここまでかー!」
「黒のオーガノイドだと!?貴様、いったいどこでそれを?」
「ぐわー!!俺は死なん、死なんぞー!ゼネバスの復活のため、閣下のためにも!!」
ズガーン!
セイバーは大破し炎上、スコルツェニーは戦死、ハルフォード達は辛くも勝利した。
「いやー、何とか倒しましたね中佐」
「あー、しかし、部隊の損害も大きい。しかしあの男の言っていた黒のオーガノイド、気になるなあ。まさか弟が逃がした奴じゃあ。もしやそれがオリンポスでの研究に使われているのでは!?」
「そうかもしれん。あのセイバーの肩の黒い色もその黒のオーガノイドが関わっているのだろう。だとしたら長くは休んじゃおれん」
「そうですね。しかし我々もダメージを負っているので、これ以上は進めません。敵に気付かれなさそうな場所で少し休息を取るのが最善でしょう。岩場の多いここがいいでしょう」
進軍はしたいものの被害状況を考慮し、ハルフォードの判断で部隊はゾイド達の回復を待って出撃することに決めた。
オリンポス山基地
「おい偵察隊より報告があった。スコルツェニー少尉のセイバータイガーが撃破された!」
「なんだって!じゃあ共和国が攻めてくるのか。あいつめ、いくらオーガノイドの力があるとはいえ、たった1機で出撃して全滅させてくるだなんてほざきやがって!俺たちの協力があれば全滅できたかもしれんのに」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろう。スコルツェニー少尉がやられた以上あれが知られるのも時間の問題だ。相手は疲弊しているとはいえ精鋭部隊だ。うかつに攻めて犠牲を出しここの守りを手薄にするわけにはいかん。ここで待ち伏せし一気に叩くべきだ。プロイツェン閣下直々の御命令でここの守備にあたっているのだから」
この要塞の奥深くに無数のパイプが繋がれた一体の巨大ゾイドの姿があった。それは、この惑星に存在してはいけない怪物であった。