1 ライガーゼロ
東方大陸 とある街
「ふー、気晴らしにこの大陸を旅したが、野生ゾイドはほとんどいないな。大異変の影響がひどかったってことだな」
白ひげを生やした中年男は、宿を探していた。彼がいる街は、地球でいう東洋の雰囲気を醸し出しており、他の地域と比較しても個性的である。戦争がない大陸のため、経済は発展しており、いくつものビル群が立ち並ぶような都市も増えてきている。この大陸では戦争がなく、経済発展も進んでいるため、地球からの移民団が頻繁に訪れている。
「はー、エウロペもこれぐらい平和ならなあ。まあ、そのためにも俺たちが頑張らねば!ただ、今は休暇を楽しむか!」
宿泊するホテルにつき、チェックインを済ませる。
「アーサー ボーグマン様ですね。お荷物は私共がお部屋まで運びます」
「ああ、それなら俺一人で持ってくよ」
「さようでございますか。では、ごゆっくりと」
ロビーには中華風や和風などの飾り物があり、斬馬刀や青龍刀、日本刀のレプリカが置かれてある。
『あれをゾイドにつけたらかっこよさそうだな!』
そう思いながらエレベーターに乗って上の階へと移動し、予約した部屋へ向かう。クレイジーアーサーと呼ばれた男にも休息は必要だ。帝国側の停戦勧告がなされ、自信も若くないとのことで、軍上層部より休暇を勧められた。
「まったく、ハーマンからの希望だな。あいつ、そこまで俺に気を遣わんでも」
鍵を開け部屋に入り、ベッドに寝転がる。顔を横に向けると、
「なんだ、ありゃ?見たこともない像だな」
アーサーの目に入ったのは、見たこともない生き物の像である。首が長いものや、亀のようなもの、そして人間と鳥を合わせたようなものまでいる。
「これが東洋特有の像か。おもしろいもんだな!」
東洋の品物に興味を示したようである。
アーサーの泊まる部屋とは違う階のある一室で、
「ではよろしくな。まだ極秘での協力なのだ。正式に奴らとZOITECが契約するのは、奴らが中央大陸でことを成してからだ。そして仲介役を果たした我々も動くであろう。我々の新技術『BZ』を以てして、わが主、ジーン様のためにも!」
ひそひそと電話で話す男。なにやら怪しい雰囲気である。電話の会話が終わると、
「さて、こいつをエウロペへと送るとするか。あの若造に」
話は変わって、2日後の西方大陸
帝国皇太子ルドルフが亡くなったという知らせは、南エウロペの広範囲に広まった。まだ公式発表はないものの、共和国の暗殺者によって殺されたと帝国は判断している。共和国側は何度も、共和国による暗殺を否定したが、同然のようにプロイツェンは聞く耳を持たない。ルドルフ暗殺を理由に帝国が共和国を攻めるのももはや時間の問題である。危機と判断した共和国上層部は、ある一人の若者を北エウロペのニクシーへと偵察させた。帝国軍の兵器を少しでも把握するためにも。
「ふー!いくらヘルキャットと言えど、帝国の中枢の一つまでバレずに来れたのは奇跡だぜ!上層部も無茶を押し付けやがる」
ニクシーの作業員に変装し、ゾイドの格納庫へと移動する若者。彼の名はレイ グレッグ。共和国軍中尉で、ライガー乗りのエキスパート、レオマスターの一人である。ゼネバス系の出ながら、アーサー ボーグマンにその腕を見出されてここまで出世した。
『さすが、帝国の中枢基地の一つだ!ダークホーンWG、グレートセイバーにアイアンコング、そして決戦用ゾイドのエレファンダーか。こいつらが共和国に一斉に攻め込んできたら手も足も出ねえ!』
レイ自身もロブ基地の戦いで、愛機のシールドライガーDCSJと共に帝国軍を打ち負かし、基地防衛の役目を果たしていた。しかし、その戦いで愛機は中破し戦闘不能となり、引退となった。
『あいつには悪いことをしたなあ。これじゃあ少佐に合わす顔もないぜ!』
愛機に無茶をさせたことを後悔しながらも基地内を探索するレイ。
レイがこの基地に来たのは、他にもわけがある。先日、この基地より一体のゾイドが出撃し、共和国の前線部隊を強襲したのだ。ジェノザウラーである。同様のゾイドが南エウロペでも確認された。おそらく黒のオーガノイドを連れた少年、レイブンの機体だ。そのジェノザウラーは次々と南エウロペの共和国基地を破壊しながら、ニューヘリックシティを目指していた。
『ジェノザウラーのデータも見つけ出さないと。でなければますます共和国は不利になる。なんとしてでも手に入れて見せる!』
無我夢中で基地内のゾイドを確認していくレイ。小型の高性能カメラで対象を撮影していく。
『これで大方この格納庫のゾイドは撮影した。次は下の階だ』
下の階を目指そうとエレベーターに乗ろうとすると、
「おい、貴様!そこで何をしている?そのエレベーターは立ち入り禁止エリアの階に向かうものだぞ!」
後ろから銃をむけられたかのように、いきなり声をかけられた。
「すいません、迷ってしまいまして!ここへ来たのは初めてなもんで」
「作業員の待機部屋は向こうだ!」
兵士に注意され待機部屋へと向かう。
深夜
レイは再び下の階へと移動しようとする。防毒マスクも一応持ち、身の安全をはかる。
立ち入り禁止とあって怪しい気がした。ジェノザウラーのデータか、それとも敵の新兵器があるのか!?疑問を抱きつつ、立ち入り禁止とされた階に入った。その階にはゾイドの格納庫ではなくいくつもの部屋があり、そのうちの一部に立ち入り禁止の表示が電光掲示板に掲げられていた。通路の監視カメラを気にせず、その部屋へと歩いた。事前に協力者のハッカーに連絡し、モニター室に送られる監視カメラの映像を移し替えてくれるように頼んでおいた。
「いかにもって感じだな。こりゃ隠れ家にできそうだ」
だが、部屋には鍵がかかっている。開けるにはカードキーが必要なようだ。入れないかと落胆したとき、エレベーターの音がした。急いで物陰に隠れる。
「一体なんなんだよ、こんな夜に。しかも一般作業員が普通入れないこの階までに運び物なんて。ふわ~、眠いなーしかし」
男はかなり眠そうなようだ。あくびをしながらもカードキーを取り出して鍵を解除した。しめたと思い、持っている小型麻酔銃でその男を眠らした。その場で倒れて、眠り込む。男と運びものを中に入れてその部屋に入り、扉を閉める。中はたくさんの資料であふれていた。どうやら資料室のようである。この中にジェノザウラーの詳細なデータがあるのかと思い探してみた。だが、なかなか見つからない。どうやら目的の試料はないようだ。
その時、扉の向こう側から足音が聞こえてきた。眠った男とともに身を隠し、部屋の明かりを消した。今度は軍人らしき男が入ってきた。後ろ髪を少し結った、武骨な男だ。
「これが奴らからのメッセージか。殿下にお見せしなければ」
男は作業員が運んできたものを持って、扉ではなく部屋の奥の方へと歩いて行った。
『殿下だと?もしやルドルフ皇太子のことか?だが帝国は、ルドルフは死んだと伝えている』
レイもこっそりと後をつけていくと、男は小さな部屋の一室へと入っていった。そおっと扉を開けてみると、男が何かの機器を取り出して操作していた。すると床の一部が開いて、地下へと続く階段が現れた。男が階段を降りると、床が閉まっていく。まずいと思い、咄嗟に眠っている男の方へ付近にあった本を投げつける。
バササッ!
それに気づいた男は、慌てて引き返し部屋の中を探った。そのスキにレイは階段の方へと走って行った。男は、眠っていた作業員を発見した。その横には本が落ちていた。始めはこの男が資料でも漁っていたのかと考えたが、ふと自分がここへかけ出たときに扉が少し開いていたことに気付いた。もしや侵入者か。だとしたら今のスキをついて、階段を下りたはずだ。慌てて先ほどの部屋へ移動し、階段を下りていった。
長い階段を急いで降りていくと、通路に差し迫った。そこを通り、エレベーターを降り、さらに通路を歩いていくと地下工場にたどり着いた。そこには見たこともない2機のゾイドが並んでいた。一つはライオン型、もう一つはゴジュラスと同じティラノ型であった。だが装甲は身につけておらず、ティラノ型の方はゴジュラスとは違いやジェノザウラーと同じ前傾姿勢である。どうやらゴジュラスと同じ変種のティラノ型ではなく、本種のティラノそのものをベースにしたようだ。もう一方のライオン型も野生体ベースのようである。どちらも惑星Ziの生態系のトップに位置する野生体で、数が少なく捕獲するにも困難を極める。
二体のゾイドに魅入ってると後ろから会話が聞こえてきた。さっきの男と金髪の若者が話をしている。
「殿下、申し訳ございません!どうやら侵入者が入ったようです。一瞬のスキを突かれてしまいました。今部下に捜索させております」
「かまわんよズィグナー。どうせいつかばれることになるだろう。帝国、共和国にばれたところで奴らには何もできん。我々もここを破壊して立ち去る。それよりも例のものはあるか?」
「はい、こちらになります。どうぞ」
先ほどの男は彼が殿下と呼ぶ男に運びものの中にあったものを差し出した。
「あれの復活はもう誰にも止められない。ならばいっそのこと私たちの力であれを止めねばならない。その後に我らの悲願を達成する。父上の本来の目的を・・な」
そう言って、男から手渡された機器を操作し、立体映像をだす。移っていたのは白髪の中年男だ。
「ヴォルフ殿下、お久しゅうございます。ジーンです。あれはお気に召していただきましたでしょうか?加えて本日は殿下にあるものをお見せします。どうぞ、このデータを!」
物陰から殿下と呼ばれた男の様子を見るレイ。いったいこいつらは何者なのか。
「おい貴様!さては侵入者だな。見られてしまっては仕方がない。この基地と共に運命を共にしろ!」
兵士が銃を後ろから向けてきてレイは両手をあげる。
「あーそうかい。それなら!」
素早く小型麻酔銃を取り出し、兵士に投げつけて逃げる。銃弾の雨の中、必死で避ける。
「くそっ、逃げ足の速い奴!」
帝国兵の銃撃をかわしてレイはライオン型のコクピットに滑り込んだ。
「こうなったら、こいつで脱出しよう!」
レオマスターであるレイがライオン型を選択するのは当然だった。先ほどの若い男の会話から、撤収作業中だったのだろう。メインエンジンには、すでに火が入っているからすぐに動かせる。すると、機体の軽やかさを感じた。
「いったいこれは!?」
脱出経路を探し、あたりを見回す。
「あそこか、あそこを通れば外に出られる!」
ゾイドが通れる通路を見つけ、そこへ機体を走らせようとすると、
「グワオ―!」
後ろから何やら雄たけびが聞こえた。振り返ると、そこにはライガーの隣にいたティラノ型のゾイドが動き出していた。
「よくぞここまで侵入できたものだな。だが貴様の好きにはさせん!」
乗っていたのはあの金髪の若い男だった。ティラノ型は牙を向け猛然と迫って来る。やられると思った瞬間、寸前でかわした。レイの感情がこの機体の野生の本能とリンクしているようだ。
「なんて奴だ!あの機体、ライガーゼロを簡単に乗りこなすとは!」
ティラノ型は顎を大きく開き、恐ろしいほどのエネルギー粒子が口腔内で収束していく。
「あれはまさか・・荷電粒子砲!」
身の毛がよだつレイ。その瞬間、レイの本能に反応してライオン型がティラノ型の方へ飛んだ。爪を向けて、ティラノ型に突撃する。今までに体験したことのない瞬発力だ。粒子砲の渦をかわし爪がティラノの左腕に傷をつける。
「よし、このスキにここから逃げるぞ!」
難なくレイは秘密工場からの逃走に成功した。
「むう、逃げられたか。あの男、ライガーと心を通わせたというのか。もしやレオマスターなのか?」
ティラノの若い男は、逃げていくレイとライガーを見ながらそうつぶやいた。
レイとライガーは長く続く通路を走りかける。出口に出ると、前方には海岸が広まり、巨大なゾイドが停泊している。ザリガニ型の大型輸送ゾイドのようだ。物資を基地から持ち出しているようだ。
「何をしているのか怪しい奴らだな。だが一機で行動するのは危険だ。ここは退散するしかない」
機体を共和国へと向ける。その途中、見知らぬ小型ゾイドの襲撃を受けるも、上手くかわし何とか逃げ切れた。
「ここまでくれば安心だ。しかし、あのティラノと言い、さっきのカマキリやディロフォサウルスっぽい奴はなんなんだよ、まったく」
見たこともないゾイドの襲撃につかれているようだ。
「そういやお前の名前を聞いてなかったな。俺はレイ グレッグていうんだ」
「ガオーー!!」
ライオン型は唸り、モニターに自分の機体名を表示した。
「ライガー・・ゼロか。よろしくなライガーゼロ!」