ZOIDS additional story   作:龍大徳

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2 翼の男爵 アーラ・バローネ

輸送艦ゾイド、ドラグーンネスト艦内

 

ドラグーンネストはロブスター型の巨大ゾイドで、ホエールキングほどではないものの、多くのゾイドを輸送できる。ただし、その存在は誰にも知られていない、アイゼンドラグーン所属のゾイドだ。レイが見た巨大ゾイドがこれである。

「申し訳ございません、殿下!逃げられてしまいました。あの機体を奪われたのでは、我らが不利になるかと思われます」

後ろ髪を結った、軍人が殿下と呼ばれる男、ヴォルフに報告する。

「やむを得ん、ズィグナー。ライガーゼロのデータは我々にもある。共和国に渡ったとはいえど、彼らがあれを有効に活用できるのには時間がかかろう。それに私たちにはこのゾイド、バーサークフューラーがある。ジェノザウラーにも引けを取らない強力なゾイドだ」

先ほどの地下工場でゼロと並んでいたティラノ型ゾイドである。

「秘密の地下工場を帝国軍に知られずに破壊できたことだけでも良しとしよう。あのガイツ少将が疑いだしていたからな」

ヴォルフは、父であるプロイツェンを支持する将校にも隠れて行動をしていた。いかに父を支持するとは言ってもガイロスの軍人だ。自分の組織、アイゼンドラグーン以外の人間を信用できない。

「こちらはヴォルフ ムーロア。諸君にはこれよりニクスへと向かってもらう。私たちの艦は帝都ガイガロスへと向かう。そこで私は直接父上を説得する。それでも父が考えを変えなければ、そのまま帝都を後にし、ニクスで諸君らと合流する!デルポイの同志にはあれの完成を急ぐように連絡せよ!デスザウラーが復活したときのために!」

アイゼンドラグーンは世界各地で活動しているようだ。その内容は、東方大陸のとある民間企業とのパイプ作り、デルポイでのあるゾイドの開発、テュルクの新興勢力との同盟などだ。

東方大陸の民間企業とのつながりは、テュルクの新興勢力の仲介のおかげできたのだ。もちろんその新興勢力も内心は信用してはいない。自分たちに協力をしてきたのには何か理由があるのだろう。

「ヴォルフ、上手くいくのかしら?」

「アンナ、心配するな。きっと大丈夫だ」

ヴォルフの隣にいた若い女が不安げに話しかけた。

「でも、私たちのやろうとしていることはあの人を、エリザベート皇女を裏切るのと同じだわ。だってあの方はゼネバス系住民にも、そして私たちにも優しく接してくれた。なのに・・・・」

「わかっている。だが彼女は亡くなったそうだ。続いてルドルフ皇太子も死んだ。たとえ彼らが生きていたとしても、ゼネバス住民の悲願は達成できない。これからは我々が彼らに代わって平和な世を築かなくてはならないんだ!」

ヴォルフの目的がゼネバスのためを思ってのこととは理解している。しかし、アンナは底知れぬ不安を抱えていた。ヴォルフもゼネバス帝国復活を願うあまり、プロイツェンと同じようにあの魔獣に取り込まれてしまうのでは。その懸念がアンナから消えることはなかった。

「ヴォルフ!あなたが道を誤ろうとしても私がいつでも側についている。だから・・、だから決して無茶だけはしないで!」

「アンナ・・・」

アンナはヴォルフの不安を取り除くために彼を抱きしめてきた。誰もいない一室で、二人は互いを抱擁した。自分は一人ではない。幼馴染であるアンナがいるおかげで自分は自分でいられると感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

南エウロペ レッドリバー基地

 

チュニスでの騒動後、エリザベートはこの基地にて身を置いている。

「殿下!本日は殿下に合わせたい人物がおります」

基地の一室でシシリーと共にお茶を飲んでいたエリザベートの下に、護衛のロッドディガー隊員が伝えに来た。ティーカップを置き、

「それはどなたですか、一体?」

「はい、共和国の元科学者Dr. Dとルドルフ殿下と途中まで行動を共にしていた者たちです」

隊員に合図され、部屋に入ってくる3人。

「これは、これは、お会いできて光栄です、殿下。わしがDr. Dです。でこっちの二人が・・・」

「お初にお目にかかります、殿下!私はロッソ。こちらがヴィオーラです。」

エリザベートに挨拶をするロッソとヴィオーラ。彼らは元々盗賊団のデザルトアルコバレーノを率いていたが、ルドルフを誘拐後に盗賊団を解散させ、ルドルフを帝国の刺客から守っていた。しかし、あるゾイドからルドルフを逃がすために自分たちが身代わりとなったが、奇跡的に助かり、共和国へと逃走してきた。

「結果的に助かったとはいえ、ルドルフ殿下にご迷惑をおかけしたこと、誠に申し訳ございませんでした」

「いえ。もしあなた方がいなければ弟は今頃殺されていました。複雑な気持ちですが、あなた方には感謝をしたいです。その一方で、あなた方の行為は許されるものではありません」

ルドルフが救われたのはよかったが、誘拐は犯罪である。そこのところを割り切っているエリザベートであった。それでも二人には感謝もしたい気持ちでもある。

「承知しております。そこで償いとは言えませんが、彼らを護衛するため、これから帝国領内へと入ります。あるゾイドに乗って」

ヴィオーラがそう言うと、Dr. Dが格納庫へと案内してくれた。

共和国のレイノスにも似ているが、レイノスよりもプテラノドンの形態に近い飛行ゾイドだ。

「殿下、こちらがわしの開発した新型飛行ゾイド、ストームソーダーですじゃ!とはいっても帝国の設計図を情報部が奪取して、それを元にして開発したもんじゃが」

エリザベートは驚いた。帝国軍がこのようなゾイドを設計していたとは。飛行能力はレインボージャーク以上かもしれない。

「まあ!共和国には優秀なスパイがいらっしゃるのね。ふふふ、私の秘密も知られているのかしら!」

「い・・いやいや殿下・・」

エリザベートはDr. Dを揶揄う。このストームソーダーでルドルフたちをロッソとヴィオーラが護衛するのだ。

「護衛するということは、ルドルフの居場所はどこなのか知っているのね。あとヴィオーラさんが先ほど彼らとおっしゃっていましたけど・・」

「はい、ある少年と殿下は行動を共にされておられるようです。Dr. Dも途中までご一緒でした。オーガノイドを連れた少年と共に」

オーガノイドと聞いて、エリザベートは察する。

「もしかして、その子の苗字ってフライハイトでは!?」

「おや殿下!あのはなたれ小僧をご存知でしたか?」

「はい!彼のお姉さんとチュニスでお会いしたので。全くの偶然だわ。弟同士が出会っているなんて」

ロッソとヴィオーラはあのウィンドコロニーの娘を思い出した。姉は姉同士ですでに知り合いだったとは。

「マリアさんの弟さんだったら頼もしいわ。きっと無事にガイガロスまで送ってもらえるわ」

「はい。あと彼らを陰から護衛している男もいます。殿下のレインボージャークを救ってくれたコウキ デモンです」

「そうですか。すぐにでもお礼を言いたいわ」

多くの人が自分やレインボー、ルドルフを助けてくれたことに感謝しきれない様子だ。

「そろそろ、我々はルドルフ殿下の護衛へと赴きます。翼の男爵、アーラ・バローネとして。では、失礼いたします!」

「はい!よろしくお願いします、バロンさん、バロニスさん!」

格納庫からエレベーターで地上へと運ばれるストームソーダー二機。

アーラ・バローネの二人とDr. Dも地上へと移動する。

3人を見送り部屋に戻ろうとすると、

「あらシシリー、どうしたのゾイドを見上げて?」

シシリーが格納庫のゾイド達を眺めていたのだ。

「私、今までこそこそと生きていた。皆自由や平和のために戦おうとしている。でも私はあの街から出ずにいた。私以外にも苦しんでいる子供がたくさんいる。・・・・だから私もなりたいの!ゾイド乗りに!」

大声でゾイド乗りになるとエリザベートに向かって宣言した。

「シシリー、・・あなたならなれるかもね。皆を助けるためのゾイド乗りに」

エリザベートはシシリーと共に部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

しばらくしてDr. Dが部屋に戻ってきた。

「あらDr. D。お二人はもう行かれたのですね。あとお願いがあるのです。シシリーを立派なゾイド乗りにしてあげるため、共和国軍の方にお願いをしてもいいかしら?」

「なんと!そこのお嬢さんもルドルフ殿下と同じようなことを!まあいいじゃろう」

内線電話でハーマンとオコーネルに連絡して、承諾を得ることができた。

「ありがとうございます!よかったわねシシリー!あと・・Dr. D。ひとつお伺いしたいのですが、ルドルフを襲ったゾイドとは一体・・・」

「ジェノザウラーというゾイドです。わしらも詳しいことは分からないのですが、恐らく生み出したのはプロイツェンですじゃ。それをレイブンという、黒のオーガノイドを連れた少年に与えたのです」

ジェノザウラーの強さと、バンのシールドライガーが倒されたことをDr. Dより聞かされた。

「じゃが、あの小僧のライガーも生まれ変わりました。ジークというオーガノイドの力で。ブレードライガーに!」

「ブレード・・ライガー・・?」

Dr. Dはブレードライガーの誕生の経緯について説明した。オーガノイドが石化したシールドライガーと合体して光の繭をつくり、その中から生まれたのだ。

「不思議な現象ね。私も見たかったわ。でもそのゾイドとアーラ・バローネ、コウキさんがついていればルドルフも安心だわ!」

エリザベートはオーガノイドと光の繭に興味を抱いた。

「でも、そのジェノザウラーというゾイド。なんだか気の毒な気もするわ。プロイツェンが勝手に生み出し、破壊のために利用されているなんて。ゾイドはそのために存在しているのではないのに。そのジェノザウラーも本当は自由に生きたいはず・・・・」

「殿下・・・・・」

例えどんなゾイド、どんな人間であっても悪い感情を抱けない。それが彼女の優しさでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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