勇者の谷
かつてここでは帝国・共和国のゾイド乗りたちが腕を競う闘技場が存在した。あのクレイジーアーサーことアーサー ボーグマンも参加しゾイド乗りとしての腕を磨いていた。数あるゾイド乗りの中でも最強と謳われたのが、「伝説の三銃士」とよばれる皇室銃士隊のセイバータイガー乗りたちだ。現在は一線を退き、勇者の谷近くの森の中で隠遁生活を送っているそうだ。
ヴォルフはまず勇者の谷にほど近い風の都と呼ばれる小さな町を目指した。ツェッペリン皇帝の保養地としても有名な場所だった。
「フューラーは目立つから、町の近くの森に隠しておくか。フューラーそれでいいだろう?」
「グゥ~」
愛機は返事として低く唸った。愛機を隠し、風の都へと向かう。
風の都に着いたヴォルフは衝撃を受ける。
なんと村が全滅していたのだ。ゾイドの襲撃を受けたようだ。しかし、この村にはグレン中隊と呼ばれる帝国の部隊が警備をしていたはずだ。それがなぜ。
不審に思い、住民に尋ねる。
「いったいこの村はどこから攻撃を!?」
「村を守るはずの帝国中隊が、村を襲ったんだ。我々にもなぜなのかわからん」
住民を守るべき警部隊が村を襲ったのだ。ヴォルフには信じられないことだった。
『皇帝即位、デスザウラー復活にしか目がいかない父上のせいで、末端の軍隊が勝手な行動とは。これが・・父上が目指そうとする世の中なのか』
父プロイツェンの支配の下ではゼネバスの再興はおろか、民の幸せも作れない。やはり自分たちが成し遂げねば。
「待ってくれ。私も何か手伝わさせてくれ」
「あんた、ありがとう。じゃあ、そこの木材を運んできてくれ」
復興の手伝いをするヴォルフ。
貴族としての生活ばかりだったとはいえ、周りの作業を見て何をすればいいかぐらいは判断できる。
「兄さん、ありがとよ。ところであんたどこから来たんだ?生まれ故郷は?」
「そ・・それは・・・」
すると村の子供たちが声をあげて向かってきた。
「みんなー!三銃士だよ!闘技場で三銃士の決闘が始まるよー!」
「何だって、三銃士だと!そうか!」
作業を止め村人たちは一斉に闘技場のある場所へと向かう。ヴォルフも彼らの後をついていく。
闘技場に着くと、そこには声援が盛り上がっていた。闘技場内には5体のゾイドがいるが内3体がすでに倒れていた。残っているのは金色のセイバータイガーATと見たこともないライガータイプのゾイドだ。
『セイバータイガーが三銃士なら、あのライガーはもしや!?』
そう確信すると、セイバーが背部の装備を外した。飛び道具なしで戦うつもりだ。ブレードを展開していたライガーも、刃を閉まった。二体は互いに接近し、頭部を付き合った。が、ライガーの方が力負けし、弾かれた。倒れこむライガー。そのライガー目掛けてセイバーが飛び込む。だが、
「バ―――――ン!」
観衆の中から大声がした。
『あれは・・ルドルフ皇太子!』
大声に気を取られセイバーが着地し動きを止める。そのスキにライガーがセイバーに牙を向ける。セイバーの牙が折られ、そのまま倒れこむ。
「肉弾戦とは。見事な戦いだ」
闘技場での戦いに感心するヴォルフ。観衆からは盛大な拍手がライガーや三銃士に送られる。
『やはりまだ私には足りない。アイゼンドラグーンのゾイド乗りとしてまだまだ未熟だ』
闘技場での戦いを見て確信した。あのライガーや三銃士に勝てるだけの力は自分にはないと。
「兄さんどうした?浮かない顔して。何か考え事?」
「いや、別に何も。そうだ。すまないが、もうそろそろいかなくては。これは何かの役に立てばいいが。復興にぜひ使ってほしい」
ヴォルフが出したのは少し厚みのある紙幣の札束だった。
「お・・おい、あんた!いくらなんでもこれはちょっともらいすぎだぜ!ここまでしなくても」
「いや、いいから受け取ってくれ。何とか村を復興させてくれ。では、さらばだ」
札束を渡してヴォルフは村を去って行った。
ドラグーンネストへと向かうバーサークフューラー
「バン・・フライハイトか。そしてブレードライガー!いずれ相まみえるときが来るだろう。その時のためにフューラーの装甲を完成させなくては」
父を止めるため、そしてゼネバス再興のためにはバン フライハイトに遅れを取ってはいられない。そのようでは、デスザウラーを倒すことなどできない。フューラーは格闘に特化したライガー系とは違うタイプのゾイド。それに見合う装備を模索しながらヴォルフはドラグーンネストへと愛機を走らせる。