帝国軍が今にも進攻しようとしていたその頃
中央大陸
「グワオ―!!」
巨大な竜が咆哮をあげる。
「くっ!なんて暴れん坊だ!ディバイソンでもまるで歯が立たない。これが野生体の力なのか!?」
バッファロー型ゾイドのディバイソンに乗った男が相手にしているのは、中央大陸の大型のT-Rex型野生体ゾイドだ。同じ中央大陸にはギガノトサウルス型やトリケラトプス型など強力な恐竜種の野生体もおり、縄張り争いや捕食のため彼らと度々争うこともある。どの種も究めて個体数が少ないものの、あの惑星大異変を生き延びた強力な野生体である。そのなかでもティラノ型はこの大陸に君臨する種だ。戦闘用ゾイドとはいえど、人間に扱いやすい機体が勝てる相手ではない。特に今相手にしている機体は、体のあちこちに傷を負った歴戦のゾイドだ。ちなみに、この種とは別にゴジュラスのベースとなった変種のT-Rex型ゾイドも中央大陸に存在する。
「隊長!ディバイソンやレッドホーンでもこいつには全く歯が立ちません!ここはいったん撤退を!」
「馬鹿もん!奴の金属細胞だけでもいいのだ!それだけあればあの方も・・ジーン様も満足する。なんとしてでも奴の体組織だけでも!」
逃げようとするレッドホーンの部下を男はしかり、乗機の背部に装備された17連砲を暴君の竜に対し向けた。
「くらえ!」
ドドドン、ドドドン
砲弾が雨のように降り注ぎ、T-Rex型は怯んだ。
「今だ!ツインクラッシャーホーン!」
グワッシャーン!!
強力な一撃だ。砲弾を何発も受けたこともあり、T-Rex型のボディーはボロボロだ。いくつか装甲の金属片が飛び散った。だが、ディバイソンの角も歪んだ。鋼鉄製とはいえ相手にした暴君竜の装甲はさらに上を行った。
「急げ!金属片を回収しろ!」
隊長の掛け声に、潜んでいたコマンドウルフが暴君竜の金属片を素早く回収する。
すると、
「ギャオ――――!!」
突然暴君の主が怒り狂った。そして巨大な顎を開き、ディバイソンの背部に迫る。
ガッシャ――ン!!
一撃で、17連砲を備えた装甲が噛み砕かれ、ディバイソンはダウンした。
「グワオ――!!」
雄叫びをあげる暴君。
「隊長!!」
「俺は大丈夫だ。なんとかな。それよりも早く金属片を持って逃げろ!これさえあれば十分だ。俺も後から行く」
隊長と呼ばれた男の命令で、部下たちは暴君竜の金属片をウルフにくわえさせ、その場から立ち去る。
『フフフ・・・ついにサンプルが手に入った。これであの方のための計画が進められる』
笑みを浮かべながら、勝ち誇った様子の暴君竜のスキをついて、男はディバイソンのコックピットから飛び出し、その場を立ち去った。
『今日の祝杯はスコッチウィスキーがいいな』
共和国領 国境付近の基地
「というわけだ。帝国の小隊が奇襲攻撃をかけてくる。その中にはあのジェノザウラーもいる。だが、帝国部隊のエインガングのアイアンコングとわが方のデュー エルドのゴジュラスの力さえあれば、止められんこともなかろうよ」
ベレッツァから受け取った報告を出撃する軍の兵士たちに伝えるのはブルーユニコンのアルバーン隊長だ。チュニスの件以後、北エウロペへ派遣されたのだ。
「ジェノザウラーか。南の方では派手に暴れながらニューヘリックを目指しているようだが、北にもいやがったとはなあ。どう相手すればいいことやら」
「同じ獣脚類型ゾイドとはなあ。だがパワーならゴジュラスが上だ!チタニウム合金の装甲もあることだ。荷電粒子砲の1、2発は耐えてみせる!」
不安そうなパリスを尻目に、デューは意気揚々と語る。
表向きは帝国軍に対する防衛だが、極秘にベレッツァ小隊との共同作戦で、帝国の奇襲作戦を失敗に見せかけて帝国本隊の共和国領への侵攻を長引かせることだ。その間にルドルフが帝都へたどり着ければ、戦争は終結する。
「ただ、我々はいいとして南の方のジェノザウラーに対してはどうしているのだろう?いくら北エウロペが守れても本拠地を攻撃されれば、我々の敗北だ」
パリスは南エウロペの戦力が十分なのかどうかを心配する。
「それについては、ニューヘリック付近に共和国の精鋭ゾイドを揃えてある。いくらオーガノイドとジェノザウラーでもそれを突破できやしない」
ニューヘリックの防衛に当たるのは、どれも精強なゾイドばかりだ。シールドライガーDC、ディバイソン、ゴジュラス。更に旧大戦で活躍したガンブラスターの復活や、ゴジュラスCAと呼ばれるゴジュラスの後継機の開発も行っている。ゴジュラスCAはゴジュラスと別系統の大型純粋種のT-Rex型ゾイドをベースとし、ジェノザウラーと同じく前傾姿勢をしている。
アルバーンはこれらのゾイドによる防衛に期待している。
格納庫
「戦争が終わったら、スコッチを楽しみたいぜ。なあ、ゴジュラス!?」
「グゥ~」
愛機は低く唸った。
「ジェノザウラーか。どんな奴なのか、早く相手にしたいもんだぜ!」
「グゥ~~~!」
唸り声が大きくなった。
彼自身も今回の相手との戦いを待ち遠しく思っている。
「まったく。今までの相手とはわけが違うってのに、お前とお前の愛機は何を期待してんだ」
今にも帝国が攻めてくるといううのに、ノー天気な奴らだと呆れるパリス。
すると、
「敵ゾイド接近中!直ちに出撃せよ!繰り返す。敵ゾイド接近中!直ちに出撃せよ!」
警報アナウンスが鳴り響く。
「ついに来たか。出るぜ!」
共和国軍の前に現れたのはたった1機のゾイドであった。だが、北エウロペの兵士たちにとっては、初めて見る機体だ。頭部は小さいものの、鎌のような爪を持ち、不気味な視線を共和国軍に向ける。その姿はまるで死神であった。
「あいつが…ジェノザウラーか」
初めて見るその機体の姿に兵士たちは今まで感じたことのない恐怖を持った。
こいつとは戦ってはいけない、そのような負の感情が自然と出てくるのだ。
しかし、その中においてもこの男だけは違ったようだ。
「あいつがジェノザウラーか。強そうな機体だが、俺の敵じゃあない!」
初対面の黒い竜に対しても脅えることなく、平然と立ち尽くすゴジュラスと、主のデュー。
両者がにらみ合っている間、最初に動いたのは虐殺竜の方だった。脚部のブースターを吹かしながら迫る。
「来やがったな。いきなりゴジュラス狙いとはな。」
ゴジュラスに到達する直前に、右腕の爪を振り上げ、そのままゴジュラスに向ける。
が、
「そんなひ弱な攻撃、ゴジュラスに効かねーよ!」
ガシッ!!
鎌が迫る直前に強靭な尾でジェノを側面から薙ぎ払い、横倒しにした。
「グアッ!!」
腹部のコックピット内のリッツは声をあげる。いかにジェノザウラーが強力とはいえ、戦闘経験を積んだゴジュラスに対しては分が悪かった。鈍重なゾイドだと甘く見ていたところがあった。
「へっ!新型とはいえ、力ならこのゴジュラスの方が上だぜ。大人しく降参しろ!」
配下のガンスナイパーを引き連れ、虐殺竜へと向かう。
「ふっ、さすがゴジュラスだな。模擬戦でのあの二体とは格が違う。ならば・・」
機体を起こして、再度ブースターを吹かし突進する。今度は背部のパルスレーザー砲を向けながらゴジュラス達に迫る。
ズガン、ズガン!
「こちらも撃て―!」
ガガガガガッ!
ジェノに対して砲弾を放つも、その素早さゆえにことごとく避けられ、ガンスナイパーやコマンドウルフたちが次々と撃破される。ゴジュラスも集中的に攻撃を浴びせられる。
「なかなかやるな。だがそっちがそうなら、こっちも!」
「グワオ―!」
咆哮をあげ、攻撃を受けながらも愛機を突進させる。そして巨大な口をあけ、虐殺竜に向ける。
「くらえ―!」
が、黒い竜を捕えられなかった。上空へと高跳びし、ゴジュラスの背部に立ち牙を向ける。ゴジュラスは振り向いて、今度は力強い腕で阻止しようとするが、ジェノの牙に捉えられてしまう。
「こいつ、離しやがれ!」
必死に振り払おうとするも中々外れない。ゴジュラスほどではないものの、接合力もかなり強い。
すると背後の要塞の方にて、轟音が響いた。
ベレッツァ大尉の部隊による攻撃である。
「やっと来たか!よし、反撃開始だ!」
「グワオ―!」
グンと思いっきり腕を振り上げて、かみついて離れないジェノを叩きつける。
グアシーッ!!
ジェノの牙が腕から離れた。
「これからが本気の勝負だ!」