帝国と共和国の境界地帯を流れる川、レッドリバー
イセリナ山からの雪解け水がもたらされ、南エウロペを帝国と共和国に分け隔てる。
金で雇った賞金稼ぎを利用したマルクスの策略で交戦状態に入ったものの、とあるシールドライガー乗りの少年の活躍で、帝国軍は撤退せざるをえなくなった。軍を引き上げる途中に、そのライガーと交差したシュバルツ。
『あの少年とはまた会うかもしれない。いや長い付き合いになるような気がする』
心の中でシュバルツはそう感じた。
そして何より、共和国の軍人ともわずかだが接点ができた。ロブ ハーマン大尉だ。
『ベレッツァ大尉からの情報が事実なら、共和国がデータを持ってるはず。オリンポス山に関する機密情報は、帝国ではプロイツェンと彼の私軍のPK師団が独占しているだろう。我々国防軍に与えられるはずがない。共和国とは少しでもつながりがあった方がいい。今回のコンタクトだけではまだまだ不十分だろうが。まあ一応、ベレッツァには今回の件を伝えておこう』
共和国との戦闘を回避できたことに安心し、シュバルツは帝国へと帰還した。
北エウロペ ロブ基地 レッドリバーの戦いからおよそ2か月後
「しかしなあ、ゴドスの後継機の開発のためとはいえ、まだ未知の部分が多いオーガノイドシステム(OS)を組み込んだゾイドとは。アロザウラーの方がいいと思うんだが、暴走するリスクがあるんじゃないのか?」
「御心配には及びません、パリス大尉。あくまで限定的に利用しますから、操縦性は若干悪化するものの、従来機とは比べ物にならないくらいの活躍が期待できそうです」
「そうか、それじゃあこの新鋭機に期待するか。これからは頼むぜ、ガンスナイパー!」
新型ゾイド、ガンスナイパーに期待を込めた挨拶をするパリスだった。
その近くの格納庫には、これまた新型のゾイドや強化型のゾイドが収納されている。
演習場
「ぬおーーー!」
ドシン!グアシャーン!
「まだだー!次!」
演習用のウルフが襲い掛かる。素早い動きでゴジュラスを翻弄。
しかし、
「そこだー、ゴジュラス!」
デューのゴジュラスも負けじと、ウルフの機動性に追いつこうとする。そして、
ガシャーン!
強烈な一撃でウルフは飛ばされた。
「これだ、この機動性があれば、あの闘神に勝てる。待ってろよエインガング!次は俺が勝利を頂く!」
エインガングとの闘いに闘志を燃え上がらせ、訓練に励むデュー エルド。軍人というよりは格闘家といってもいいだろう。周りの兵士もその熱心さにあきれている様子だ。もっとも、エインガングも格闘家が向いているのかもしれない。
「少尉、ドリンクです。休憩も入れましょう」
「ああ、ありがとな。助かるぜ」
コックピットから降りてタオルで汗を拭き、ドリンクを受け取る。
すると、
「おう、少尉。調子はどうだ?」
「パリス大尉、ばっちりですよ。これで奴との決闘をつけられます」
意気揚々と自分とゴジュラスのコンディションを語るデュー。
「まあ、あんまりむちゃすんなよ。それに俺たち軍人にはもっと大切なことがある。つい先日も帝国軍が首都目指して攻め込んできたんだ。ロブの兄貴がゴジュラスを起動させてなんとかしのいだけど、またいつ奴らが攻めてくるかわからねえ。その時のために軍人として準備しとかないと」
「分かってますよ。ただハーマン大尉はロングレンジキャノンで追っ払ったんでしょう。俺だったら格闘戦で帝国軍と戦いたかったなあ」
「おいおい、無茶言うな。自軍に損害を出さない戦い方が優先だ」
先の防衛戦について語っていると、兵卒が駆けつけてきた。
「大変です、パリス大尉!帝国海軍がニューヘリックを包囲。帝国上陸部隊も展開されました!」
「なんだって!どうやって首都までいきなり来やがった!?この大陸の東側はほぼ共和国の領域なんだぜ!」
「それが、南エウロペの帝国領の軍港より直接攻めてきて、氷山に偽装して共和国海軍の目を欺いたようです。これを仕掛けたのはあのプロイツェンです」
その名を聞いてパリスは舌打ちした。また奴か。帝国にはあの男を止められる人間はいないのかと。
「すぐにでも俺たちが援軍として向かわないと。首都が落とされる前に」
「ダメです!敵はわが方の10倍の数。今から向かっても間に合いません」
何もできずにただ首都が落とされるのを黙って待ってるだけなのか、共和国もこれまでなのかと落胆する。
「くそっ!」
そう言って、拳を壁に叩きつけるパリス。
そうしていると、基地内に警告アラームが、
「帝国軍が接近中!基地守備隊は、出撃せよ!」
なんとこのロブ基地にも陸と海から帝国軍が迫ってきたのだ。
ルイーズ大統領が無条件降伏を蹴ったことを理由に帝国軍は攻撃を開始したというのだ。
「へっ、何もできないよりはましか。首都が落とされたとしてもここは絶対守り通す。いくぞみんな!」
予想以上の敵の数。次々と破られる基地の防衛部隊。
「いくぞゴジュラス!訓練の成果をここで見せてやる」
敵の大舞台の中に猛然と挑むデューと愛機。そこにはモルガやその強化型をはじめ、レッドホーンやダークホーン、アイアンコングなど帝国を代表する機体と見慣れない小型ゾイドの大群が待ち構えている。
「なんだ、あの赤い小さい奴は!?ガンスナイパーに似ているようだが、・・まあいいこのゴジュラスが片付けてやる」
迫りくる帝国ゾイドを撃破しながら愛機を進めるデュー。
すると、あの小型ゾイド達が前足や後ろ足の鋭い鎌のような爪を向けて一斉に飛び出してきた。
「なにっ!このゴジュラスに格闘戦だと!?」
ガシッ!
小型ゾイド達はゴジュラスに軍隊蟻のように群がり、爪を立てていった。まとわりつくゾイド達を中々振り払えないゴジュラス。
「悪いな少尉、今助けてやる、少し我慢してくれ」
ドキューン、ドキューン!
後方よりパリスのガンスナイパーが尾のスナイパーライフルで、ゴジュラスにまとわりついた小型ゾイド達を打ち抜いていった。そのいくつかの弾丸にゴジュラスも被弾した。しかしこれぐらいの傷、ゴジュラスにとってはかゆいぐらいだ。
「やはり手ごわい奴らだな。帝国の新型ゾイド、レブラプター。ガンスナイパーと同じOS搭載ゾイド。帝国もやはり開発していたか。情報部の話の通りだ」
更に、大口径ビームキャノンを装備したカノントータス、コマンドウルフAU、ミサイル強化型のコマンドウルフ、ディバイソンなどのビーム砲やミサイルが火を噴いた。帝国軍の大群に対し守備隊を援護するため、やむを得ずロブ基地のゾイドの大部分が出撃したのだ。
しかし、共和国の猛攻に、後退する帝国軍。とその中の一体のアイアンコングがゴジュラスに向かってきた。
「久しぶりだな、デュー エルド。腕を上げたようだな。早速だが俺と勝負しろ!」
「闘神エインガング、お前か。訓練の成果今こそ見せたやるぜ!パリス大尉!あんたらは帝国軍を追撃してください。俺はこいつとケリをつけますぜ!」
「まったく、勝手なヤローだぜ!無茶すんなよ!」
デュー、エインガング、両者の愛機とも声を唸らせ、一騎打ちを展開しようとする。
一方その頃、追撃する共和国のスキをついて、少数の部隊が密かにロブ基地内部へと潜入しようとしていた。
「ハーディン准将。上手く忍び込めましたね。これで、この要塞も手中にできます」
「ふっ、国防軍の本体は上手く引き付けてくれた。これで両者ともかなりの犠牲が出るだろう。この戦いの手柄は我々PK師団が頂いた」
ハンマーロック、レブラプターPBを引き連れたアイアンコングPKは基地奥へと侵入していった。