変態亜人異文化交流録   作:テオ_ドラ

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03.竜人族の少女

セレストリアには「共存」をテーマにした教育施設がある。

各種族の中でも有望な若者を集め、生活と勉学を一緒にさせる……

どの種族が「上」など決めることなく、

それぞれが平等に手を取り合う世界を作ってために若者から始めようということである。

 

「彼ら三人は今日から君たちの仲間だ。仲良くするように」

 

教壇に立つのはワーウルフの教師。

2メートルを超す身長に、丸太のように逞しい手足とそこから生えた鋭い爪。

灰色のごわっとした毛並みがその巨体を更に大きく見せていた。

 

「……」

 

その横に並ぶのは王国から追放された三人であつた。

逃亡を図ったが、彼らを野放しにすることは王国にとって限りになく危険な自体。

国王が暗殺されたとしてもそこまでしないであろう厳戒態勢の末、

一週間という時間を要したが捕獲されたのだ。

エルムは町はずれにある修道院のトイレの天井で勃起しながら張り付いていたところを、

フローリアは歓楽街の安宿で娼婦と一緒に裸で寝ているところを捕獲された。

一番手を煩わせたのはカインで、

騎士から奪った鎧に身に着け堂々と捜索隊に紛れこんでいた。

王都から出ようとしていたところを不眠不休の血走った目で張り込んでいた学園町自らが捕縛した。

 

彼らの首には再び逃亡を図らないように位置を特定できる首輪がつけられている。

無骨なデザインは若者たちにとっては異様の一言だった。

 

「ここ、レスティには他に人間はいない。

 彼らも戸惑うことが多いだろう……みなも助けてあげるように」

 

そんな彼らを見つめる目は冷たいものである。

机に座っている亜人は大体20人くらい。

エルフやらハーフリングやら色々な種が混じりあっていた。

姿の全然違う亜人たちではあるが、総じて歓迎ムードではない。

なにせ人間だ。

かつては大陸を統一し、他の亜人達を使役していた存在。

30年前のことでありここにいる若者たちが直接知っているわけではないが、

それでも人間に対する嫌悪感、不信感というのは確かに存在している。

あわせてセレストリアが掲げた理想は立派なものではあるが、

それがうまくいっているのかというと、現実は難航していた。

亜人同士も争っていたのだ……いきなり「お手て繋いで踊りましょう」とはいかない。

特に種族の代表としてここにいる者たちは、プライドが高い者が多いのだから。

 

「カイン=アーライト。よろしく」

 

最初に自己紹介というには素っ気ない挨拶をしたのはカイン。

相変わらず伸びた前髪で顔の半分が見えないため、表情がうかがえない。

 

「フローリア=リクセルです。みなさま、よろしくお願いいたしますね」

 

美しい仕草でスカートの裾をちょんと持ち上げて挨拶するフローリア。

洗練された動きに一瞬、みなが見とれるが……

 

「うふふ……」

 

誰を見つめているかわからないが、だらしなく緩んだ顔からよだれが垂れていた。

 

「エルム=パルムだ。よろしく頼む」

 

偉そうに腕を組んで挨拶をエルムは何故か勃起していた。

表面上は仲良くはしつつも、実際には仲たがいをしている亜人の若者たちだが、

この時ばかりはみなの気持ちが一つになったという。

 

――これはヤバそうな連中がきたぞ、と。

 

「ふんっ、どうせまた一週間でいなくなるんだ。

 わざわざ名前なんて名乗らなくていい」

 

そんな空気の中、馬鹿にするような言葉が教室に響き渡る。

 

「リンカ、仲良くしろと言った傍から……」

 

「事実じゃないか。今まで同じように人間がここに来たのは3回。

 一番短かったのは翌日からもう来なかったしな」

 

最後列に座っていた少女、リンカは嘲笑う。

その少女の存在感は圧倒的だった。

まず一番目を引くのはその大きな赤い翼。

そして凛々しく自己主張する2本の角。

竜人族……単純な戦闘力では最強の種である。

燃えるように艶やかな赤髪は足元に届くほどに長く、

勝気な瞳と他人を見下すような笑みは自信の表れ。

己こそが頂点、人間など取るに足らないと表情が物語っていた。

 

「……さて」

 

カインは視線で二人に問いかける。

エルムは力強く頷いた。

 

「美しい」

 

フローリアは祈るように呟く。

 

「彼女を愛しましょう」

 

口調こそはシスター然としているが、

視線は竜人族の少女の豊満な胸に釘付けである。

 

「リンカ、君が一番ここで強いのか?」

 

カインはいきなり呼び捨てで少女の名前を呼んだ。

プライドの高い少女はそれだけで顔をしかめる。

 

「そうだ。竜人族は一番優れた種族だからな」

 

平穏と融和を掲げるセレストリアの思想とは真逆のことを平然と言う。

これだけでレスティという教育施設がうまくいっていないことを証明していた。

ならば遠慮する必要などないだろう。

 

「なら俺たちと遊ばないか? 勝負をしよう」

 

「……なんだと?」

 

「そうだな。君が負けたら一日、君を好きにさせてもらうという罰ゲームはどうだ?」

 

ただでさえ、彼ら三人もストレスが溜まっていたのだ。

簀巻きにされダサい首輪までつけられて母国から追い出された。

憂さ晴らしをする相手が必要なのだ。

 

「はっ! ならお前たちが負けたらどうするつもりだ?」

 

まさか噛みつかれるとは思いもしなかったのだろう。

一瞬たじろいだが、リンカは鼻で笑う。

 

「俺たちが負けることはないから不要だ」

 

人間は笑いながら一蹴した。

 

ダンッ!

 

「いいだろう! その安い挑発……すぐに後悔させてやるぞ!

 もし私が負けたら何でもしてやる!」

 

机に腕を叩きつけて立ち上がった。

あまりの剣幕に、みなが言葉をなくしてはらはらと成り行きを見守る。

そんな竜人族に、音もなくすすすっとフローリアが近寄ってくる。

 

「今、何でもするって言いましたよね?」

 

教壇から最後列にいるリンカまで距離があるのに、

ひゅっと懐に潜り込んだのだ。

 

「あっ、ああ……」

 

まるでキスでもするかのように近い顔に、リンカはのけぞりながら頷く。

 

「その言葉、神に誓えますか?」

 

「かっ、神は信じていない」

 

「では何になら誓えるのですか!?」

 

目が血走っていた。

 

「心配するな、フローリア。

 誇り高き竜人族が約束を違えることなどない」

 

エルムが助け船……というには微妙だが彼女を止めた。

 

「カリン。ルールはこちらで決めさせてもらう。

 腕に自信のある君ならそれくらい構わないだろう」

 

「ふんっ。これで勝負の内容がカードゲームなどと言うつもりではないだろうな」

 

「安心してくれ」

 

カインは口元をニイッと上げて笑った。

 

「――君が得意そうな殴り合いで決闘をしよう」

 




竜人族の手足が人のようなタイプか、爪が映えてこう鱗っぽいものかは都合のよい方でご想像ください
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