灰色の獅子【完結】 続編連載中   作:えのき

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“えのき”でございます。
いくつかお願いがあるのでお聞きください

①文章力は他の作者様と比べて劣ると自覚しております。その代わりと言ってはなんですが、一応は読み易さには気をつけているつもりです。文書の改善点や読み易さでの御指摘は是非ともお願いします。

②わたくし“えのき”は感想を欲する物乞いです。気軽に何連投でも、喜んで全てに返信させていただきます。

③矛盾点や誤字脱字などご気軽にご指摘ください。スピーディかつ迅速に対応できるといいなと思います

④原作か映画を既に見た方であるとありがたいです。ちなみに“えのき”は両方とも把握済みです



第1章【賢者の石】
プロローグ


1991年 イギリス

 

 

 

“オリバンダーの店”

紀元前382年創業

 

オリバンダーの店、それはイギリスきっての高級杖メーカーである。

 

額に稲妻の刺青のような傷跡があることを除けば平凡な男の子は静かに興奮しておりそわそわと落ち着かない様子だった。

 

たった今、彼は選ばれたのだ、

不死鳥の羽を素材とした杖に……

 

「不思議じゃ、ポッターさん。儂は自分の売った杖は覚えておる。貴方の杖の不死鳥の羽根と同じ素材の杖がもう一本ある」

 

オリバンダーは少年の額についた傷跡を撫でながら言った。この傷をつけた魔法使いだと。

 

「ある意味では偉大なことをした。恐ろしかったが偉大には違いない。」

 

少年は身震いした。彼はオリバンダー老人を好きになれそうにないと感じた。それと同時にここから早く抜け出したいと思った。

 

少年はマグルである叔父と叔母の家で育ち、お世辞にも普通の生活を送ってこなかった。家主である2人にいびられ、同い年のいとことその取り巻きに虐められてばかりいた。

 

平たく言えば人間不信で人と話すのが少し苦手なのである。

 

自分を不思議な魔法の世界へ連れてきてくれたハグリッドの事は好きになっていたが、“マダムマルキンの洋服屋”で会った“色白で顎の尖った男の子”もオリバンダー同様に好きになれなかった。男の子はどこか気取って小馬鹿にしたような嫌な性格をしていたからだ。

 

魔法界には偏屈な人が多いのだろうか、それとも自分が人付き合いに慣れていないのか、

 

“生き残った男の子”ハリーポッターは憂鬱だ。

そしてそれ以上に慣れない土地で不安だった。

 

少し胸の奥がキュッと閉まるような感覚を覚えていた頃、店のドアの鈴の音が店内に響きわたる。

 

振り返るとハリーより少し歳上であろう男の子だった。黒くサラサラした髪は額の中心でわけており、大きな茶色の瞳に吸い込まれてしまうような魅力を感じた。とても綺麗な瞳に美しく色気のある容姿だ。肌の色は白くスベスベで背が高く、ハリーは見上げなければ目さえ合わないだろう。服装も高価である事はまちがいないようだ。

 

まるで王子様のような佇まいだ。

ハリーは思わず見とれてしまう。

 

 

「おぉ、これはウィリアム様」

 

オリバンダーは先ほどまでのハリーの接客とは違い、とても砕けた笑顔をしている。どうやら顔見知りのようだ。

 

「ごきげんよう、オリバンダーさん」

 

年齢の割には声が高く澄んでいるような印象がある。笑顔を見せるが外見とは似合わない、まるで少年のようにクシャッと笑った。

 

とてもクールな印象だったが彼はフランクな性格のようだ。

 

「今日はどういった御用ですかな?」

 

オリバンダーの問いかけに彼は前へ歩きながら黒いローブの中から黒い杖をスッと取り出した。ハリーは思わず道を避けて店の壁へ張り付く。彼は少しなにか言いたげな表情をしたが何も言わずにオリバンダーのいるテーブルの上に杖を置いた。

 

「まずこの杖を見ていただけませんか?」

 

オリバンダーは杖を天井に掲げてジックリと杖を見定める。口は少し開いており集中しているようだ。

 

「あぁドラゴンの心臓の琴線、ヤマナラシの木じゃな。29センチ、傲慢で頑固」

 

スラスラと杖の特徴を述べるオリバンダーにハリーはこれが魔法界の職人というものかと考える。靴職人や時計職人、マグルの世界にも多くの職人がいるがハリーが直接自分の目で見たのは初めてだ。

 

「この杖は貴方様の杖ではない。そうでしょう?」

「ええ、母の昔の杖です。家での自習用として使ってました」

 

(自習?やっぱり魔法界の子供達は魔法が使えたりするのかな)

 

2人の会話にハリーはまた一つ、ホグワーツでの生活に不安を覚えた。どう考えても自分が落ちこぼれる未来しか見えなかったのである。

 

「そこで新しい品をくれませんか?」

「あぁ、この杖はどうかの?」

 

オリバンダーはそばにあった杖を差し出し、ハリーと同じ時のようにウィリアムは杖を振る。すると天井のランプが爆発し、ガラスの破片が床へ散らばった。

 

その後、オリバンダーは割れたガラスの破片を避けるように奥へ進みながら新しい杖を取り出して2、3繰り返すがうまくいかない。

 

根本的に木材が合わぬようじゃ、と彼は呟くと姿が見えなくなるほど店の奥へ消えていった。その背中を見ながらハリーは完全に店を出るタイミングを見失ったと気がついた。机の上に料金をおけばいいと思ったが値段がわからないため断念する。

 

「ねぇキミ、もしかして並んでた?」

 

ウィリアムと呼ばれた男の子が自分に気を遣って声をかけてくれたのだとハリーはすぐにわかった。この人はとてもフレンドリーで優しそうな感じで友人になりたいと思った。

 

「いや、大丈夫だよ。もう杖は貰ったんだ」

「悪いね。帰るタイミングを失わせたみたいだ。君も新入生かい?」

「君も?同い年なの!?」

 

年上かと思っていたハリーは目を見開いてウィリアムを見る。自分と同い年であるなんて信じられなかった。身長や服装からして同年代には見えない。よく言われるよ、お前は老けてるってね。と彼は笑顔で言った。

 

先ほどの白い少年よりもだいぶ話しやすい、ハリーは彼ともっと話したいと思った。だがどう話題を広げたらいいのかがわからない。

 

「君は寮はどこに行きたいとかある?」

 

困っていたハリーに彼は話題を振った。

 

「確かスリザリンはヴォル……“例のあの人”がいた寮なんだよね?僕は多分ハッフルパフだよ。なんか劣等生が多いんだよね」

 

ハリーは先ほどの白い少年とハグリッドとの話から得た微かな知識を一生懸命に話した。するとウィリアムの周りの空気が少し凍り、冷たい冷気が漂った気がした。

 

「悪いね、僕はそういうの嫌いなんだ」

 

急に目を潜めてあからさまに不快そうな表情をしている。もしかしてヴォルデモートの名前を言いかけたからだろうか、それとも両親や兄弟がハッフルパフだったのか、ハリーはすぐに謝ろうと口を開こうとする。

 

「偏見だよ。全ての闇の魔法使いがスリザリンだの。劣等生がハッフルパフだの」

 

自分では思いもしない理由で彼の機嫌を損ねていたのだ。それはとても傲慢で愚直な考え方だ、と彼は続ける

 

「くだらないね。それならスリザリンの寮をアズカバンに、ハッフルパフは退学にでもした方がやりやすい」

「……」

 

ハリーはもう少し責められたら泣いてしまうようだった。自分の些細な一言がとても人間のできている彼にここまで言わせたのだ。返す言葉もない。アズカバンという意味はわからないが矯正施設か監獄のような場所だと想像できた。

 

「僕の価値観だから気にしないでくれ。自分が100%正しいことを言ってるとは思ってない。」

「ごめん……」

 

ウィリアムが会話を終わらせようとしたためハリーは早く謝った。自分が浅はかだったと素直に理解し、なおかつこの程度の事で彼と仲違いをしたくなかったからだ。

 

「なぜ謝るんだい?君にも意見があって、僕にも意見があったから言っただけだよ」

 

彼は意味がわからないと言いたげな表情を浮かべていた。ハリーはウィリアムのあまり怒ってない様子に少しだけ拍子抜けする。

 

「ただ忠告しておくよ。結論の一つに過ぎないことを常識のように考えて、人に押しつけるのは良くない。」

 

やっぱり魔法界の人は強烈だ。ハリーはそう思うと店の奥から物音が聞こえてくる。するとオリバンダーは古そうな細長い箱を持っており、それを開いた。

 

茶色に輝いているその杖を見てウィリアムは満足したような表情でその杖に触れる。すると周囲に金色の輝きを強く放ち、まもなく儚げに杖へ収まる。彼の妖艶な容姿と相まってとても優雅なひとときだった。

 

「ドラゴンの琴線、セコイアの木。28㎝、しなやかで強固な意志を秘める。」

 

「見事な杖ですね、力が伝ってくるような気がします。」

 

ウィリアムはご機嫌な様子で杖を眺める。それからグリップの握り心地も最高だと杖に語りかけている。

 

「これはわしの店ではあまり取り扱っておらぬのでな。ようやくまた一つ、埃にまみれた優れた杖が魔法使いを選んでくれた」

 

オリバンダーも笑みを浮かべて満足そうな表情を浮かべる。そして思い出したように料金を支払うために待っていたハリーを見る。

 

「お代は7ガリオン、あぁポッターさんも同じ額を」

 

2人は躊躇なく財布の中からガリオン金貨を取り出して支払った。お辞儀をしているオリバンダーに良い杖をありがとうとウィリアムは伝えドアを開けて2人は店の外へ出る。

 

 

「あ〜、そんなにオドオドしないでくれ。君は今までマグルの世界で生きてきて判断材料が少なかったのだろう。」

 

ウィリアムは少し申し訳なさそうにハリーへ声をかけた。

 

「すまないね、少し強めに言い過ぎた。こちらから事情を察するべきだった」

 

ハリーは焦りながらそんなことないとフォローをすると彼はオリバンダーに見せたような少年のようにあどけない笑顔を見せる。

 

「聞いただろうが自己紹介をさせてくれ。ウィリアムだ、次からはウィルでいい。」

 

またホグワーツで会えるといいね

ハリーポッター……

 

 

ウィリアム、いやウィルはそう言うと人混みの中へ消えて行った。傷の事も両親の事も何一つさえ聞くことすらなく。

 

 

 

ハリーは自分が有名である事は知っている。

 

“例のあの人”を倒した“生き残った男の子”

 

何故かは知らないがそう呼ばれていた。理由を知ってもなぜ生き残ったかはわからない。急に魔法界に来て、気がついたら周りから英雄のように讃えられていた。

 

だがウィルは初めて1人の人間として見てくれたことに気がついた。彼は生き残った男の子ではなく、ただのマグル出身の新入生のハリーポッターとして接してくれたのだ。

 

そしてまた一つ発見した。

魔法界に変わった人が多いということを。

 

彼ともっと仲良くなりたい。

ハリーはいつのまにかホグワーツや魔法界に対する不安がなくなっていた。

 




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“えのき”の推しはマクゴガナル先生とスネイプ先生です

主人公のモデルは小学生の頃からの友人です。いつかモデルの話も機会があればやりたいと思います

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