灰色の獅子【完結】 続編連載中 作:えのき
数日後
ハリーも医務室にいたようでウィルの次の日に退院したらしい。ハーマイオニーと再会した時、彼女にもの凄く怒られた。危険で思い上がりな行動だと、それについては反論の余地はなかったため素直に謝った。そして自分を助けに来てくれてありがとうと3人に礼を言った。
テストを終えてすぐに寮対抗の優勝杯は校長の粋な計らいもありグリフィンドールが獲得することとなった。
まもなく入学して最初の別れが訪れる。
***
〜列車の中〜
学校からキングズクロス駅へ向かうのは初めてだ。帰りの風景は行きと同じではない。
この一年で生徒達は大きく成長した。大きくなれば見える景色も違う。
だがウィルの景色は来る前と変わらない。強いて言えば机に積み重ねられた本達が分厚くそして古臭くなったくらいだ。
1人でコンパートメントに座り、そして本の中身に深く没頭していた。眺めるのではなく全てを頭の中に叩き込むように。
そして鍵をかけ誰の侵入も許さない環境を作り上げていた。
すると1人の生徒が扉を開けようとガチャガチャする。杖を取り出して鍵をこじ開けた。
その音で初めてウィルは外にいる2人の生徒に気がついた。つい笑みがこぼれる。
「ここにいたのね、鍵まで閉めて。なにを読んでるの?」
ハーマイオニーだ。そして後ろにハリーもいる。ウィルは中へ迎え入れマルフォイ家から定期的に送られてくるお菓子を差し出す。
「えぇっと・・・【古代魔法陣】、【混沌の儀式】、【魔力の後ろめたい使用法】、【危険植物の培養と利用】。」
ハリーはタイトルを詠みあげる。その危険そうな香りに少し引きつつウィルの目を見る。彼は笑いながら口を開く
「“禁書の棚”の本だ。マグゴナガル先生に許可を得て貸し出してもらってね、もちろん闇の魔法に対抗するには知る必要があると思ってね」
これは見なかったことにしてくれとバツの悪そうな顔をする。それらの本を鞄の中へ丁寧にしまった。
ダンブルドアは先日の件からマグゴナガルに対してウィルに禁書の棚を自由に閲覧させるよう言った。
愛を知るウィルは闇に堕ちないと信じる事にしたのかもしれない。
それからは世間話や夏休みについての話をしていった。その中でロンは同じ寮生のトーマス・フィネガン達と一緒にいると聞いた。
列車が半分くらいに到達した頃沈黙が偶然訪れ、ウィルは重い口を開く。
「・・・ハリー、聞くべき事じゃないのはわかってる。」
ウィルはある答えを求めていた。ずっと引っかかっていた。自分にはないもので彼には備わっているもの、
「僕は“例のあの人”と会った時、一瞬で心を折られた。君はなぜ立ち向かえた?」
ひとえに勇気、勇敢と言っても簡単に身につくものではない。持ち合わせないからこそ彼に聞きたかった、惹かれた。
ウィルは現実主義、勝てぬ敵には挑まないし戦わない。力を蓄えたり、間接的に排除する方法を選択したりする。
今まで勝てない敵に挑むのは愚か者のする事だと蔑んでいた。
だからこそ知りたかった。運が良かったのかもしれない、もしかしたら運命なのかも
困難な敵に挑むことしかできない状況下にあればウィルは可能性を捨てて死を選ぶ。無駄に苦しむよりはよほどいいと知っている。生き残る為に戦うという選択肢を捨ててしまう
少なくともハリー達がいなければ自分はどんな目に遭っていたかわからない。
「・・・君がいたからだよウィル。」
ハリーは照れ臭そうに言った。それからハーマイオニーにロンもいたしねと早口で言う。
ハーマイオニーはハリーを見てニコリと笑うとウィルの方を向く。
「ハリーの言う通りよウィル。貴方の選択は愚かだったわ。」
その通りだと言うようにウィルは薄っすら笑顔を浮かべる。
「君には僕らがついてる。」
ハリーは満面の笑みで言った。
「・・・ッッッ!?」
その一言にウィルは瞬時に表情を硬ばらせる。そして戸惑った。自分の心にだ。
ウィルはその言葉で心が澄み渡ったような気がした。打算や駆け引きなど必要のない
(あぁ僕はきっと闇の帝王にはならないだろう。)
ウィルは静かに天を見上げた。
何かをこぼさぬように
一滴でもこぼしてしまえば
また感情が壊れてしまう気がした
僕は強くならなければ
彼らを護れるほどの強い力を
***
〜キングズクロス〜
汽車がキングズクロス駅に到着した。ハリーとハーマイオニーに手紙を書くよと伝え、そして名残惜しく別れた。
そしてウィルはドラコと事前に指定していた場所で待ち合わせた。彼からいけ好かないグレンジャーの話は父上にしてないとこっそり囁かれた。ウィルは弟に感謝と共に何か礼をせねばと考える。
事前に手紙で迎えにくると言っていた時間になるとルシウスが“姿現し”で現れた。瞬時に別の場所へ移動できる技術だ。年齢制限や試験などがあり2人にはできない。
「久しぶりだ。では早速帰ろうか。ここはマグル臭くて堪らん。」
そのまるで汚物でも見るかのような表情で周囲を見渡して吐き捨てるように言った。そして2人はルシウスの腕を掴んだ。
空間がねじれるようにうねり、そして内臓が震えるような感覚を覚えた。するとマルフォイ家の屋敷の前へと到着している。ドラコはえずいていて気持ち悪そうだ。
「ドラコ、お前はひとまず中で休め。ウィル、お前には大事な話がある。」
有無を言わせないような圧力が言葉に詰まっていた。
***
〜マルフォイ家の一室〜
ルシウスは妻であるナルシッサに会わせる前にウィルを奥の部屋へと連れて行く。中で“しもべ妖精”が掃除をしていたがすぐに出て行けと命じる。そして出ていく背中に向けて盗み聞きなどするなとも言った。
「ウィリアム、闇の帝王に会ったというのは本当か?」
ルシウスはホグワーツの理事の一人だ。だからこそ学校の事はおおよそ知っている。
「えぇ会いました。」
「あの御方はなんと?」
かなり食い気味に質問する。ずっと気がかりだったのだろう
「私を“死喰い人”にしてくださると、あと父上の事は何もお触れになりませんでした。」
ルシウスは安堵したような、そして期待したような視線をウィルに向ける。後ろめたい行動が不問とされる可能性があると考えた。親の色目抜きにこの才能は素晴らしい。
今ここで“死喰い人”として更なる教育を施せば家を守れるだろうと考えた。
「お前には1つ壁を超えてもらう。」
ルシウスはそう言うと部屋を出た。そしてそれから2日間は元々あった予定を全てキャンセルし、行き先を告げず外出をした。
自室でホグワーツから借りてきた本をフクロウ便で送ろうと丁寧に包装しているとドアをノックされる音と共にルシウスが重く真剣な表情を浮かべて着いてこいと言った。
ウィルは直してあった杖を取りだし父親の背中を追った。
マルフォイ家には入ってはいけないとされる部屋が2つある。1つは倉庫、これは闇の魔術の品が多く存在するからだ。
そしてもう1つは地下にある。なぜなら地下牢だからである。今はほとんど使われていないが昔はマルフォイ家に逆らう者を攫ってきて監禁に拷問や、そして殺害をしていた。
そこの最深部でボロボロの服を着た老人がにこやかに座っていた。ボロ布でつぎはぎにされ所々虫食いにあっている。見るからに浮浪者のようだった。
伸び放題の白の髪と髭に黄ばんだ歯を見せてニカッと笑う。
彼は椅子に座らされて両手両足に手錠がはめられている。この状況を理解していない事から痴呆を患っているように思えた。
「コイツは奴隷商から買い取った、足がつく事はない。」
今の世でも人攫いは存在している。彼らは常に闇祓い達に追われているがそれらを掻い潜り悪事を働いている。ウィルはルシウスが
「
ルシウスは吐き捨てるように言った。彼は心が激しく痛んでいた。元死喰い人の有力者の一人として暗躍していたが人を殺すには勇気と折れない心がいる。年端もいかない息子にできる限り背負わせたくなかったが家の為、そしてウィリアムも理解してくれると考えた
「
彼はなんの躊躇もなく呪文を放った。緑色の閃光は老人の頭を貫き、そして命を奪った。
ルシウスは表情を硬ばらせ動けなかった。
「満足ですか?僕がこれを唱えたのは
そういうとウィルは老人の亡骸に背を向けて自分の部屋へと戻って行く。あまりの躊躇のなさにルシウスは息子と目を合わせることすらできずただ立ち尽すしかなかった。
賢者の石編は終了です。
よろしければモチベ向上のため感想ください。
試しにやってみました、気が向いたらお願いします。
↓
一章を終えてどう感じましたか?
-
文句なし
-
シナリオがわかりにくい
-
文章が下手
-
妥協できる
-
早く続きを