灰色の獅子【完結】 続編連載中   作:えのき

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昨日寝ぼけながら書いていたので誤字脱字が多いかもしれません。ミスがあったら教えてください。


穢れた血

ジニー・ウィーズリーは揺れていた。そして自分を責めていた。原因はハリー・ポッターとウィリアム・マルフォイである。

 

元々ジニーはハリーの大ファンだった。

“例のあの人”を撃ち破った男の子、沢山の本に名前が刻まれ周りの大人達も彼の偉業を褒め称えている。

 

それがなんの偶然か兄と同じ寮に入り、親友となったのだ。兄達が空飛ぶ車でハリーを家に連れてきたときは心臓が止まるかと思った

 

それから一家はハリーと共に本屋へと向かった。そこでマルフォイ家と出くわした。

 

 

元々ロンからマルフォイという兄弟の話を聞いていた。優秀だけどいけ好かない兄と自分達を目の敵にしている姑息で口だけは一丁前の弟、そして父親からはあの忌々しい一族だとよく耳にした。

 

周りの大人達もマルフォイ家は純血思想で末代まで腐りきっている。“例のあの人”の有力な部下だったとも聞いた。

 

正直なところ恐れていた。一目見てすぐに悪名高い親子だとすぐにわかった。

 

それからウィルと出会った。嫌味ったらしい親子に恥ずかしい思いをさせられたとき、彼が瞬時にその場を治めてみせた。それどころか兄達のおさがりをコンプレックスにしていた自分に対して優しく声をかけてくれた。

 

まるで白馬の王子様のようだった

 

 

 

周りの上級生達に話を聞いてみたら大半の人達は彼の事を褒め称えていた。ハーマイオニーと並ぶ優秀な生徒だと、クィディッチではハリーとダブルエースとして無敗の活躍で教師陣の信頼も厚い。人格もとても優れており宿題に追われている友人達にヒントや的確なアドバイスをしてくれるらしい。

 

またいつもは図書館で勉強をしているらしく、それ以外の移動や食事中はいつもハーマイオニーと2人で難解な話をしているために仲良くなりたくても壁を感じてしまうらしい。

 

マルフォイ家の次期当主でありながら純血思想を持たないと有名だった。念のために他の寮生に聞いてみたところ話はほとんど同じだった。

 

 

だがほんの一部だけ彼を危険視しているグリフィンドール生達がいた。自分の兄を筆頭にシェーマス・フィネガンやディーン・トーマスなどがいる。特別何かされたわけではないが、あまりにも人として出来すぎているという事、なにか隠しているのではないかと疑っている。

 

上級生にも何人かいるらしく、どうやら親の世代が【例のあの人】や“死喰い人”によって被害を受けた人達が多いようだ。

 

 

 

 

そして彼女はそれを同じくハリーとウィルと仲良くなりたいと考えているコリンに相談をしてみることにした。

 

自分が2人のことを気になっているということで自分の感情が知りたかった。

 

「ん〜それは多分好きっていうより憧れなんだよ。」

 

コリンは話を聞いてみてそう言った。

 

「ほら見て。」

 

廊下を歩いているウィルとハーマイオニーを指差した。箒を片手にグリフィンドールのユニフォームを身につけているウィルに対してハーマイオニーは制服だ。2人の会話を聞いてみると難解な魔法理論について語り合っていた。

 

そばにいた女子生徒はウィルの美しい横顔に見とれたり、ハーマイオニーの事をジッと睨んだりしている子もいた。

 

「本当にウィルと話がしたいなら自分も勉強したらいいんだ。それに彼女達は・・・」

 

そしてコリンはハーマイオニーに嫉妬している女子生徒を不快そうな顔で言った。そして彼の視線はグリフィンドールの選手達が列を組んで移動している。

 

絶対的なキャプテンのオリバーウッド、双子のビーターのウィーズリー兄弟にチェイサーのアンジョリーナ、そして制服のロンの隣にいるシーカーのハリーポッター

 

彼らが歩くと注目の的となる。すると女子生徒は自分の推しの選手を見つけて叫んだり、ひそひそと話し込んだりしている。

 

「ね?好きっていうより憧れだよ。」

 

コリンは少し誇らしげに胸を張る。ジニーは少しすっきりしたようだ。そして彼女とコリンは2人のファンとなった。

 

 

 

 

 

余談だがダンブルドアがウィリアムをグリンデルバルドの再来になる可能性があると判断したのはこのファンにするカリスマ性である。

 

まず前提としてウィルとハリーは2人とも多くのファンを抱えている。だがそれに至るまでの経緯が決定的に異なる。

 

ハリーが偉大だとされるのは過去の栄光で今の姿をもって至るわけではない。事実、魔法使いとしての才能は決して平凡ではないが飛び抜けてもいない。

 

しかしウィリアムは明らかに今の姿である。ダンブルドアから見て彼は明らかに天才であり、人格もまた優れている。驕らず、努力もできる素晴らしい心さえも持ち合わせている。

 

だが万が一にでも闇に堕ちたとき、かつてないほどの闇の魔法使いになり得る可能性がある。

 

当人にその気がないのに勝手にファンが大量にできるという現実。もし闇に堕ちた彼が手駒を用意する必要があると判断すれば、その才能を遺憾なく発揮するだろう。そしてそれらはファンではなく信仰者として彼の勢力となり、また世界が闇に包まれるだろう。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ダンブルドアや周りのファン達の気持ちをなんとなく察しつつ、となりの女の子と語り合っていたウィルは目の前から箒を持った緑色のユニフォームを身につけた集団を見つけた。どうやらこちらに向かっているらしい。

 

2人はなにやら不穏な気配を感じて足を止める。やがて後ろにいた仲間達も追いつく。すると測ったように緑色の集団と向かい合う。

 

すると双方のチームのキャプテンが口論をし始める。

 

どうやらグリフィンドールの選手団がコートを予約していたらしいが、コートはスリザリンの選手達が使うと主張した事が原因のようだ。彼ら曰くスネイプが新しいシーカーの教育の為にコートを使う許可を出したため使用するのは自分達だというのが根拠らしい

 

グリフィンドール側は新しいシーカーの存在を誰だと尋ねると、後ろから銀髪の少年が前の上級生達の間から出てくる。

 

もちろんそれはウィルの弟のドラコである。彼は父親に対してクリスマスプレゼントを犠牲にする代わりにある望みを叶えた。

 

「それはニンバス2001じゃないか!」

 

箒に詳しいロンは目ざとくスリザリンの選手達のそれに目をつけた。全員がキラキラと輝いている最新型のそれである。

 

ちなみにウィルの箒は家の中で眠っていたぼろぼろのそれである。

 

得意げに杖をきらきらさせながら、ドラコはロンの方を見て嫌らしくにやりと笑う。

 

「君の箒を競売にかけたら博物館が買い入れるだろうね。」

 

ドラコはウィーズリー家の箒がお下がりであるために旧式であると嘲笑った。言い返せない兄弟達を見てハーマイオニーが前へ出る。

 

「少なくともグリフィンドールの選手は誰一人としてお金で選ばれてないわ。」

 

「誰もお前に意見なんか聞いてない。【穢れた血】め!」

 

吐き捨てるように言ったその言葉にその場が凍りついた。にやにやとするスリザリンの生徒達に対してグリフィンドール側の生徒達は激怒したり、よくそんなことを言えたなと言ったりしている。

 

ロンは庇ってくれたハーマイオニーに対してそんな言葉を吐いた事に激怒して、ウィルの方をちらりと見て杖を構えた。

 

 

「なめくじくらえ!」

 

怪しい緑色の閃光が煌めくも逆噴射してロンは後ろへ吹き飛んだ。よく見るとテープでぐるぐる巻きにされている。どうやら杖が折れていて、それを無理に修復したらしい。

 

 

ロンは強い吐き気を覚えると、抑えきれずにその場に吐いた。するとナメクジが出てくる

 

爆笑しているスリザリンの生徒達に対して同じ寮の人達は心配するように取り囲むがどうにもできなかった。そしてハリーとハーマイオニーはハグリッドの所に連れて行こうと肩を組んで彼を連れて行く。

 

 

 

ハグリッドの小屋に着くと彼はロンを見るなり、止めるより出し切った方がいいとバケツを手渡した。そして経緯を聞くと彼も憤慨した様子だった。マグルで育ったハリーは先程から【穢れた血】の言葉の意味がわからず、ハグリッドとハーマイオニーから聞いた。

 

 

少し悲しんでいるハーマイオニーを見たハグリッドは血の濃さなど無意味で、彼女より頭のいい魔法使いがいるかと言った。そしてマルフォイ一族は骨の髄まで腐っていると声高々に言い放った。彼もまたかつて闇の帝王側の陣営と戦った一人であるためルシウスの事を毛嫌いしている。

 

「ウィルは違う!」

 

ハリーは自分の友人である彼まで貶されたと思って、ハグリッドに修正を求めた。ハーマイオニーもそれに同意するように続いた。

 

ハグリッドはたしかにそうだと思った。教師陣は全員が才能に満ちた努力家であり、人格も優れていると褒めた。

 

だがいつかどこかで似たような感覚を味わった気がして彼はウィルに対して自分から関わりを持とうとしなかった。

 

 

 

「本当にそうかい?」

 

吐き気を堪えたかのように掠れた声でロンは口を挟んだ。

 

「あの時、アイツの顔は普段通りだった。」

 


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