灰色の獅子【完結】 続編連載中 作:えのき
神羅さん、誤字修正に感謝します。
数日後
〜とある廊下〜
ドラコは護衛のクラッブとゴイルを引き連れて廊下のど真ん中を我が物顔で歩いていた。周囲の生徒たちは疎ましく思いながらも腫れ物には触らぬよう避けていた。
だが一人の生徒が彼らの前に立ちふさがった。制服についた紋章は獅子、グリフィンドールの生徒だ。
「やぁ珍しいな。」
ドラコは立ち止まり笑顔を浮かべて自分の兄を見た。
「たまには息抜きも必要だと思ってな。」
ウィルは普段、ハーマイオニーと図書館で本を読み漁ったり宿題をしている。しかもウィルとドラコは違う寮生であるためにすれ違うことも少なかった。
「あぁそういえばクラッブ、ゴイル。今日友人から大量の菓子を貰ったのだが食べきれなくてな。お前達の部屋に送っておいた。」
ウィルは護衛の2人にそういった。すると食い意地の張る彼らは鼻息を荒くしてソワソワし始める。
「部屋に送ったんなら誰も盗らないだろ。まぁ先に行けよ。」
ドラコはめんどくさそうに言うと2人は早足でさっさと寮へ引き返す。
「今から図書館へ行くのか?」
「あぁ、マクゴナガルの課題がよくわからなくてね。」
ドラコはウィルと比べれば秀才でも勤勉でもない。しかしルシウスがホグワーツに入学する前から家庭教師をつけたおかげか意外と成績は悪くない。
「そうか、それなら近道を知ってるか?」
ドラコはそんなものがあるのかと食い気味に答えた。ホグワーツには一定時間ごとに移動する階段や隠し通路などが多く存在しており、教師陣ですら全て知るものは少ないだろう。
するとウィルはついてこいと彼を誘導する。そしてどんどん進む。明らかに回り道をしているような気がしてドラコは不安になる。辺りは暗くなり床にはホコリ臭く蜘蛛が壁を伝う。
「おいウィル!本当にこっちなのか?」
だがウィルは無言で先へ先へと進む。そして完全に人気のない細い廊下へとドラコを連れ込むと目にも留まらぬ速さで杖を抜いて彼の喉へ突きつけた。
「ドラコ、今から全て正直に吐き、そして全てに従え。」
ドラコは最初に冗談だと思ってニヤニヤしていた。だがウィルの冷めた瞳を見てそれが戯れだと到底思えなかった。
感情を全て捨て去ったような冷たい表情をしている。1つたりとも彼にほんの一つでさえも不利益を与えたら自分にどんな不利益をこうむるか想像できた。弟でさえ無事では済まないだろう。
だんだんと心細くなり、そして泣きそうになってしまう。兄からこんな事をされたのは初めてで、なおかつ護衛の2人がいない事と来たこともないこの気味の悪い廊下である。
「まずは先日の件についてだ。それは勝手にしろ。お前の
ウィルは吐き捨てるように言った。彼は価値観の多様性を認める事が大切だと知っている。
生まれや育った背景も違うのに1人の生涯で得た1つの価値観を頭ごなしに否定するのは良くないとしている。例えそれが友人や自分自身を傷つけることになっても彼はそれを害すべきでないと思っている。それは傲慢だ。
「だが僕の前で言うな。それは僕にとって不利益になる。」
ウィルは語尾を強めて言い放つ。価値観を否定するのは傲慢だと理解していながら、心の奥で湧きあがる怒りが少し漏れている。
「父上は僕の交友関係をどう言ってた?」
「えぇと、今まで目をつむるって。ただこれ以上は見逃せないとも言ってた。」
自身の感情に反してドラコは不思議とすらすらと答えた。
(そうだ、僕はこのウィルを
さらさらとした中分けの黒髪からは雪のように白く端整な顔が覗いている。氷河のように恐ろしい顔をしていながらも、美しいと思わせてしまう。
(僕は君を
「そうか父上にはこう言え。ウィルはグレンジャーを利用しているのだと。」
「・・・」
ドラコは素直にそれを聞いた。一言一句間違えぬように真剣に聞いた。恐れからではない、単純に彼に協力したいという意志が彼をそうさせたのである。
「彼女といればマルフォイ家の純血思想というレッテルから逃れられ、周囲の信頼を勝ち取り結果として教師陣から特別扱いされる。とな。」
ウィルはその言葉の意味を淡々と言い放つ。ドラコは意味を理解すると抜かりなく父上に伝えると言った。
するとウィルは杖を下ろし、そのまま立ち去ろうと振り返る。ドラコは突然気が抜けたようにその場でへたり込んだ。そしてかすれた声で質問を投げかける。
「1つ聞かせてくれ。君は、君はいつからそうなった?」
ウィルは思いがけない言葉に少し気を緩める。ずっと気になっていた。ドラコは彼がこうなった原因を知らない。
「安心しろ、少なくとも僕は
そして少し迷ったような間が空き彼は口を開いた。話したくないらしく言葉を濁す。
「俺は本当に
ウィリアム・マルフォイは初めて己に隠された
彼にはいくつかの目的が存在する。彼に言わせれば予定である。それらを確実に成せると確信しているからだ。
自身にとって価値のある存在を護れるほどの力は既にあり・・・
そして今は障害になり得る全てを破壊し尽くすほどの力を得ようとしている
その2つを完全に手に入れたとき、ウィリアム・マルフォイはこの世界に干渉を開始する予定である。
振り返る事なく立ち去る彼の瞳と表情には確固たる強い意志を感じさせられた
***
〜ハロウィン・とある廊下〜
『引き裂いてやる、殺してやるぞ。』
ハリーは校舎のどこかから恐ろしい声を追っていた。彼は空飛ぶ車で暴れ柳に突っ込んだ事でマクゴガナルから罰則を与えられた。
そして彼はロックハートのもとでそれを終えるとすぐさま謎の声を耳にした。
それを追ううちにハリーはロンとハーマイオニーと合流した。どうやらパーティに遅れている彼を探しに来たらしい。2人には聞こえなかったようだ。
そして彼らは壁に描かれた赤い文字を見つける。そしてその近くで固まり浮いている猫が目に入る。動かずただ石のように固まっているようだ。
【秘密の部屋は開かれたり
継承者の敵よ、気をつけよ】
血文字のようだ。先ほどの声の主がやったのだろうか、そう考えていると廊下から無数の足跡と騒がしい声が響いてくる。
ここにいるのはマズいと彼らは直感的に理解した。だが既に手遅れだった。
ハロウィンパーティの会場から出てきた生徒たちは3人組と血文字、そして死んだように固まっている猫を見つけた。女子生徒は悲鳴をあげ、男子生徒は唖然とした表情を浮かべている。
「継承者の敵よ、気をつけよ!次はお前達の番だ!」
ドラコは大声で叫んだ。そしてハーマイオニーの方を指差した。