灰色の獅子【完結】 続編連載中   作:えのき

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ハグリッドの過去

 

 

 

 

 

生徒達は昼食の時間に大広間で食事を取っていた。ウィルはハーマイオニーだけでなく多くの生徒達に囲まれて食事をしている。普段はハーマイオニーと学問の話をしているが、ウィルは少し体調が優れないらしく会話を控えていた。

 

いつもは近くに座りながらも話しかけられない取り巻きだが、彼とお近づきになるチャンスと考えて話しかける。

 

その中の一つに今日の授業終わりにあるイベントの話を耳にした。

 

「決闘クラブ?」

 

「ほら最近は物騒じゃない?だからよ。」

 

同級生のラベンダー・ブラウンがウィルに熱い視線を向けながらそう言った。さらに近くにいた2学年上のリー・ジョーダンは少し迷ったように口を開ける。

 

彼はクィディッチの試合にて実況を担当しており、それでウィルのプレーに魅せられたようだ。普段はウィーズリーの双子と一緒にいるが今日は離れている。

 

「あ〜、君も来るだろ?」

 

体調が良くないのを察しているらしい。

「すみません、今は気分が優れないので次の機会にぜひ。」

 

ウィルは笑顔を浮かべながら断った。そしてゆっくり立ちあがると静かにハーマイオニーの方を向くと笑って口を開く。

 

「悪いが寮へ戻るよ。体調が優れなくてね。明日、その話を聞かせてくれ。」

 

ウィルは周りの生徒達が目の前の食事に夢中になる中、部屋に戻る。途中で色んな生徒に声をかけられながらも出口へまっすぐ戻る。

 

 

そして誰もいない自分の部屋に戻ると、人目を気にせず思い切りベットに寝そべり、天井をぼーっと眺める。そしてふと視線を横にやると鳥の羽根のようなものが落ちている。

 

「まだ残っていたのか」

 

彼は冷めた瞳でそれを掴むと杖ではらうようにふる。するとゆっくりと腐り果てる。

 

 

「さて、どうしたものかな。」

 

彼は黒い日記を見て嘆いた。

 

 

 

 

***

 

 

 

数週間後

 

 

 

 

 

また1人、マグル出身者が襲われた。どうやらハッフルパフの生徒であるらしい。彼を襲った犯人はハリーである噂で持ちきりだった。

 

なぜなら彼は蛇語を話せる能力(パーセルタング)の持ち主であるからだ。蛇語を使う者は強力な闇の魔法使いの印とされており、偉大なる魔法使い“サラザール・スリザリン”もその能力を持っていたらしい。

 

話を聞いたところ決闘クラブの演習でハリーとドラコが戦った。その中でドラコが蛇を召喚してけしかけた。すると蛇語を使い意思の疎通をはかったとのこと。

 

 

大半の生徒達はハリーに怯えているもののウィルは所詮は迷信だとつっぱね、普段通りに接している。

 

 

 

***

 

 

 

 

クリスマス

 

 

 

雪が舞いあがる中、ホグワーツはとても静かに暗い雰囲気の中でどんよりしている。不謹慎であるとの事だった。スリザリンの生徒は襲われるのが“穢れた血”に限られている事からたかをくくっている様子だ。

 

ウィルとドラコはクリスマス休暇として一時帰宅した。

 

まもなく実家の扉の前に到着した。するとルシウスはウィルとドラコの方を見て口を開く

 

「学校はどうだ?」

 

「不穏な雰囲気です父上、それより頼んでいたもの(・・・・・・・)は届いていますか?」

 

その言葉を聞くとルシウスは不敵な笑みを浮かべる。彼はお前の部屋に届いていると言う

 

「かなり苦労したぞ。だがお前が物を欲しがるのは珍しいからな。」

 

ウィルは感謝の意を伝えると一目散に自分の部屋に向かう。広い部屋なのに物が少なく殺風景な部屋だ。羽根ペンとインクが置かれただけの机、棚には整理されたファイルが数多く並び、そしてその横には魔法薬の材料となるホルマリン漬けにされた標本や魔法植物の小瓶がずらりと陳列している。これらの一部は自分で採取したもので、大半はルシウスに調達してもらった。

 

彼は見慣れたそれらを一瞥すると机の前に置かれたはじめて目にする存在の前へ行った。

 

 

 

 

***

 

 

 

2週間後

 

 

 

 

ハリーにロン、そしてハーマイオニーは幽霊(ゴースト)がいるために誰もやってこない二階の女子トイレで集まっていた。

 

するとハーマイオニーはポケットの中から瓶を取り出して2人に見せつける。

 

「完成したわ、“ポリジュース薬”よ。」

 

そして彼女はそれから変身する人の一部が必要だと言った。そしてウィルとドラコ、どちらに【秘密の部屋】について聞くか、それは既にドラコと決まっていた。

 

それからクラッブとゴイルに眠り薬を仕込んだカップケーキを食べさせ、ハーマイオニーは決闘クラブの時にスリザリンのミリセント・ブルストロードの髪の毛を入手していたらしい。

 

 

ハリーとロンは護衛の2人に変身してドラコを問い詰めたが、彼曰くマルフォイ家の2人は継承者でないという事が判明した。

 

 

 

 

***

 

 

 

ほぼ同時刻

 

 

 

 

 

“禁じられた森”のすぐ側にある小さな木製の小屋だ。森番のハグリッドが住む家である。

 

その家の扉の前にウィルはやってきていた。そしてノックをする。すると中から野性味溢れる大男が現れる。

 

「俺になんのようだ?」

 

少し気が立っているようで不機嫌そうな顔をしている。もじゃもじゃの髪と髭を持つ彼はギロリとした瞳でウィルを見下ろした。

 

「あれ、ハリーから聞いてませんか?」

 

ウィルは困惑したような表情を浮かべている。するとハリーの名前を聞いたハグリッドはほんの少し警戒を緩めた。

 

彼はマルフォイ家を嫌悪しており、今まではウィルも同じように好きになれなかった。だが数ヶ月前にハリーとハーマイオニーからウィルは別でとてもいい人だと聞いていた為、少しだけ気が緩んでいたのだ。

 

「あ〜今日はウチのドラコに暴言を吐かれたハーマイオニーを元気づけていただいた件でお礼に参ったのです。」

 

ウィルはすらすらとハグリッドに説明をしてみせた。彼はぎこちないながらも笑顔を浮かべて自分の小屋へ招き入れる。

 

「ハリーからは聞いてないぞ。まぁ忘れちまってたんだろう。」

 

そういうとハグリッドは紅茶を沸かそうと彼に背を向ける。

 

「紅茶は結構です。ハグリッドさん、ご無礼を許してください。」

 

ウィルはハグリッドの背中に杖を突き立てている。ちょうど心臓がある部分だ。

 

「なんの真似だ?」

 

ハグリッドはあまり動じる事なく首だけ捻ってウィルを睨みつけている。

 

「50年前、【秘密の部屋】を開けたのは貴方ですね?」

 

ウィルの言葉にハグリッドは言葉を失った。そして口をパクパクさせながらもかろうじて言い返す。

 

「なんのことだ?」

 

「秘密の部屋が開けられた時代のホグワーツの名簿を調べました。」

 

ウィルは父親がホグワーツの理事をしているため学校に関する情報は容易く得ることができる。手紙でルシウスの名前を使ってコピーを取り寄せさせたのだ。

 

「その年での退学者は1人、貴方だけ。」

 

ウィルは名簿を片手にハグリッドに見せつけた。たしかに書類の退学者の欄に彼の名前が一つだけポツンと記載してある。

 

「そして死んだ生徒の名前はマートル。ホグワーツの二階女子トイレにいるゴースト、“嘆きのマートル”だ。」

 

ウィルは事件の情報を完全に掴んでいた。だが不自然な事があった。彼がその事件の犯人とされておきながら、なぜ監獄ではなくホグワーツにいるのか。それを知りたかった。

 

「それに貴方は杖を折られている事はハリーから聞いてる。」

 

「・・・。」

 

ハリーはオリバンダーの店で彼の杖が折られているという話を聞いていた。

 

ダンブルドアの計らいで杖を持っているが、本当は使うのを禁じられている。もちろんその事はウィルにも話してない。

 

「もう時間がないんだ。早く教えてください。扉を開けたのは貴方か?」

 

「俺じゃねぇッッッ!!!」

 

ハグリッドはウィルに自分の鼓膜が破りかねないと思わせるほど大きな声をあげた。

 

そして彼はぽつりぽつりと語り始めた。確かに自分は【秘密の部屋】を開けた犯人として退学処分とされたが、それは冤罪であると

 

学生だった頃、学校でアラゴグという名前の蜘蛛を飼っていたらしい。大きな蜘蛛で知能も高く言葉も交わせた。

 

だが人を殺せるような蜘蛛ではなかった。当時のスリザリンの監督生のトム・リドルがアラゴグを【秘密の部屋】に住む怪物だとして捕まえようとしたのだと、しかし無事に逃げ延びて今は禁じられた森で住んでいるらしい。

 

ダンブルドアは唯一ハグリッドが犯人でないと考えて、彼を森番として雇ったらしい。

 

 

「・・・辛いお話をさせてしまいました。この償いはいつか必ず。」

 

そういうとウィルは杖を下ろして頭を深々と下げた。そして扉を開けて外へ出ていった。

 

ハグリッドはただうなだれて壁の隅をぼんやり見つめていた。






原作にてポリジュースを使用するシーンはクリスマス休暇でしたが、流れの都合上ズラしました。ご了承ください。

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