灰色の獅子【完結】 続編連載中   作:えのき

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すまぬ、テスト前なので更新の停滞かつ手抜きです


日記と影

 

〜グリフィンドール寮〜

 

 

 

 

ホグワーツでの消灯時間、それは1つの校則によって守られている。【ベッドを抜け出してはならない】、ただそれだけだ。

 

どこの寮生も目を閉じて1日の疲れを癒している。そしてある部屋では3人がすやすやと寝息を立てている。だがこの部屋にはベッドが4つある。

 

 

真っ暗な部屋の端では小さな蝋燭がゆらゆらと揺れている。その光が美しい横顔を柔らかく照らしていた。

 

【トム、君は召喚術に関する知識はあるかい?】

 

ウィルは真っ白なノートに羽根ペンでそう書き込んだ。すると黒く塗りつぶされた部分が奥へ染み込むようにすっと消えた。

 

【僕も昔興味を持った事があるよ。】

 

滑らかで丁寧な字が浮かびあがる。これはトム・リドルの日記だ。

 

これはページに書き込むことで日記のトム・リドルと名乗る人物が返事を返してくれる。彼は学問に精通しているだけでなく、ユーモアのセンスもある。

 

ウィルはこの日記をとても魅力的に感じていた。それは自分の求める多くの知識を授けてくれている、自身が“禁書の棚”を含む本で学ぶ中で難解なテーマについてよく質問した。まるで彼はその全ての本達を読破し、答えを得たかのようにすらすらと答えてくれる。

 

トム自身も気づいてない点を指摘したり、見解の相違を議論しあったりとまるで友人のように夜通し語り合ったりしている。

 

 

【召喚術は非効率だ。魔力と供給とそれは割に合わない。それに杖で発動するには余りにも弱い生物しか呼び出せないからね】

 

召喚術は魔法族に杖が発明される前の古代の魔法の一種で、本当に優れた術師はドラゴンを召喚し、服従させていたらしい。

 

当時の方法は召喚獣と信頼関係を築いた上で契約を交わす事が前提である。そして魔法陣を地面に描き、そして呼び出すのである。

 

杖で魔法陣を描くのは可能ではあるものの時間と魔力が必要で、実戦においては不向きだ。呪文のように一瞬で召喚するには小型の下級生物しか呼び出せない。

 

【たしかに、非効率だね。】

 

ウィルはその条件を省略する方法がないかとトムに聞きたかったが、彼は召喚術を身につけるのを諦めたらしい。

 

 

【突然呼び出すのだから、召喚獣がもし用を足している時に召喚すると気まずいな。】

 

ウィルは後ろ足をあげた犬が路地にマーキングをしている時に突然呼び出され、戦場に駆り出されるのをイメージしてしまう。

 

思わず声をあげて笑いそうになるが、寝ている彼らがいるため口を押さえながら身体を震わせる。

 

【傑作だよトム】

 

落ち着いた頃に彼はそう返事を書いて日記を閉じる。

 

 

 

 

ウィルの瞳の下には大きなクマができていた。彼はここ最近体調がよろしくない。夜中に日記でトムと会話をしているからだろうとハリーやネビルは言う。だがそれ以上に普段の生活に支障をきたさない彼に2人は強く言うことができなかった。

 

「ふぅ・・・、この程度で折れてたまるか。」

 

ウィルは小さな声でつぶやいた。

 

そして彼はローブのポケットから小瓶を取り出す。中身は金色の液体が入っている。彼はそれを一気に飲み干した。酷い味だ。

 

腐った卵のような香りに甲虫の体液のような苦味が舌を纏わせる。ザラザラとした食感は喉をつたうように流れた。余韻でさえ苦しみを感じるほどの不快感だ。強烈な吐き気に襲われるもウィルは耐えてみせる。

 

そして杖を振るって香りを打ち消した。一息つく頃には全身の血流が活性化され、脳へ流れてゆくような感覚を覚える。気分的な問題かもしれないが目の下のクマが少し軽くなったようだ。

 

これはエナジードリンクのような薬品である。ウィル自ら調合したもので、脳内のアドレナリンを増幅させて眠気を無理矢理覚ます効果がある。

 

そして彼は自分のベッドに入ると目を開けたまま夜を明かした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

数日後

 

 

 

 

スリザリンの継承者にまた一人攫われた。5年生のレイブンクローの女子生徒だ。彼女もまた石となって動かなくなった。ホグワーツはより深く重い雰囲気を漂わせる事となる。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜同日夜〜

 

 

 

 

 

禁じられた森の近くでハグリッドの小屋に2人の客人がやってきていた。1人は校長のアルバス・ダンブルドア、そしてもう1人は背が低く、肥満体型の白人である。魔法界を治める魔法大臣のコーネリウス・ファッジだ。

 

2人はとても暗い表情を浮かべている。

 

「困ったことになった。」

 

彼は疲弊しきった表情でつぶやいた。どうやら日々の過酷な業務に加え、迅速な対策に求められているらしい。

 

「マグル出身者が3人も襲われた。魔法省もなんとかせねば・・・。」

 

「俺は何もしてねぇ、本当だ。」

 

ハグリッドはファッジにそう反論した。するとダンブルドアは彼を援護するように続く

 

「わしはハグリッドに全面の信頼をおいておる。」

 

ファッジはそれはわかっているというような表情を浮かべるも首を横にふる。

 

「だが不利な過去がある。彼を連行せねばならん。」

 

彼がそういうとハグリッドの表情が真っ青になる。

 

「まさかアズカバン?」

 

ファッジはなにも言わない。ハグリッドの家に沈黙が漂う。するとそれを壊すように勢いよく扉が開く。

 

銀色の長い髪にとても白い肌をした細身の中年の男性だ。

 

「ファッジ、もう来ていたのか。」

 

ホグワーツの理事の1人であるルシウス・マルフォイがやってきた。

 

「出てけ、俺の家だぞ。」

 

ハグリッドが声を荒げる、彼は純血思想を強く受け継ぐマルフォイ家を毛嫌いをしているからだ。

 

ルシウスもまたマグルに歩み寄ろうとするハグリッドに対して不愉快そうな表情を浮かべる。

 

「校長がここだと聞いて立ち寄っただけだ。」

 

そしてルシウスはここが家なのか?と嘲笑うような表情を浮かべる。そしてダンブルドアに目線を合わせると彼はローブの中からヒモで括られた書類を手渡す。ダンブルドアはそれを受け取るとヒモを解いて中身を読む。

 

 

「私を含む理事全員が貴方の退陣に賛成した。」

 

ホグワーツには12人の理事がおり、彼ら全員がダンブルドアの退陣を求めたのだ。これはどう考えてもまともではない、すぐさまそう理解したハグリッドはあっけにとられる。しかし当のダンブルドアは表情をピクリとも変えない。

 

「ダンブルドア先生を辞めさせてみろ!次は殺しが起きるぞ!」

 

ハグリッドはルシウスに抗議する。だがダンブルドアはそれを制止するように口を開く

 

「理事が求めるならそれに従い退陣しよう。だが、このホグワーツでは助けを求めれば如何なる時も必ず与えられる。」

 

ダンブルドアはルシウスの瞳の中を見透かすようにすっと見つめた。そしてハグリッドの小屋から出て行った。そしてルシウスは不敵な笑みを浮かべ、勢いよく扉を開けて暗闇に消えた。

 

 


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