灰色の獅子【完結】 続編連載中 作:えのき
プロローグ
ホグワーツで
彼もまたハリーポッターと同じグリフィンドールの生徒。去年は彼と共にバジリスクを退治した男の子だ。
今、彼はこう呼ばれている。
【セブルス・スネイプの後継者】と・・・
その彼は一人でホグワーツの廊下を早歩きで進んでいた。彼は決して群れず孤独に自分の道を歩む生徒だ。
去年まではこんな生徒ではなく人望が厚い生徒だった。なぜか今年に入ってから同寮の生徒だけでなく、かつて友人だったはずの人達ですら隣にくるのを拒むようになった。
今となっては彼が歩けば人は割れるように道を作る。まだ低学年に該当する3年生なのにどんな粗暴な上級生であっても彼が通ると道を譲る。それほどまでに恐れられ、一目置かれている。
一言で言えば才能の怪物だ。容姿は両眼の下の深くて黒いクマ、乱れるように無造作に伸びた髪だ。不潔と蔑まれるだろう。でも美しい容姿にそのマイナスポイントは色気として引き立たせることとなった。
彼の名前はウィリアム・マルフォイ
純血一族の名家の嫡男にして
誰よりも強欲に力を求める者だ
そんな彼に唯一、対等に振る舞う生徒がいる。正確にはウィルが自身の近くに寄るのを許しているといった感じだ。実際はその生徒の気分次第でウィルと隣にいる。それを見た周りの生徒たちは2人の関係を“怪物に懐いた野うさぎ”と呼んでいる。なぜ彼女には彼が足を止める理由は誰も知らない。
今日もブロンド髪の野うさぎはスキップをしながら早歩きの天才の周りをくるくる踊るように回る。レイブンクローの
「はぁーい、ウィル。“ラックスパート”って知ってる?」
「・・・、らっくすぱーと?」
彼は決闘の名手であるフリットウィックに技を伝授してもらえるよう相談をしに行くつもりだったが予定は変更、図書館に戻りラックスパートなるものを調べなければ気が済まない。深く興味があるわけではない。ただ他の生徒は知っているのに自分が全く知らない分野があるという事がなんか気に入らないだけだ。前にも聞いたヤドリギに寄生する“ナーグル”や“しわしわ角スノーカック”について成果が得られなかった。
「つまりルーナ、君は書物より最先端の知識を有しているということだな。」
ウィルは真剣な表情でそう答えた。本とはあくまでも知識人が皆にそれを
ただしウィル以外の生徒は知っている。ルーナ・ラブグッドの言うラックスパート、ナーグル、しわしわ角スノーカックは彼女の
彼女と彼女の父親の創刊している“クィブラー”以外で存在していると主張する人達はいないからだ。他にも奇妙な言動を取ることも多く、彼女の名前を弄って
ただし周りに人を寄せつけないウィルはそれを知らなかった。だからこそ彼女の知っている知識が本物であると信じてやまなかった。
この2人の奇妙な関係の始まりは約2ヶ月前に遡る
***
2ヶ月前
魔法界は前代未聞の事態が起きていた。難攻不落の大監獄“アズカバン”にて初めて脱獄者が現れた。その囚人の名前はシリウス・ブラック、悪名高き“死喰い人”の1人にしてポッター夫妻がヴォルデモートに殺される原因となった男にしてマグル12名と魔法使い一名を呪い殺してみせた。
そんな男が野放しとなっている状況を重く見た魔法省はあらゆる対策を行ったが、未だブラックの居場所を突き止められずにいた
(汽車にブラックが潜んでいると考えての、これか?)
ホグワーツ魔法学校へと向かう汽車のコンパートメントの中でウィルはそう考えた。新たな本を読んでいると突然汽車が停止した。するとすぐに黒い布切れのような何かが汽車を取り囲み中へ侵入してきたのだ。
黒いフード、マントを身につけ腐敗したような肌を持つ怪物だ。
アズカバンの看守である
魔法界で最も忌まわしく邪悪な存在とされている。理由は周囲の人々の幸福な気持ちを吸い取り絶望と憂鬱を与える存在であるからだ。彼らは生きているのか死んでいるのかすらわからない。
ウィルはコンパーメントの貸切状態で集中して本を読んでいたので、良い迷惑だった。まもなくして周囲が凍りつくような感覚を覚える。これは吸魂鬼が近くにいるという証拠でもある。
腐敗した細い指が彼のコンパーメントの扉を握ってゆっくりと開ける。もちろん貸切なのでブラックはいない。しかし吸魂鬼はジッとこちらを見ている。
珍しい人間だと思ったのだ。なぜかこの人間からは不思議と自分に対する恐怖を一切感じとることができなかったからだ。
「それはそうだろうね、僕は君達に恐怖ではなく憐れみを感じている。だが良い機会だ。」
吸魂鬼の戸惑いを察知した彼は本を閉じて机の上に置き、ローブの中の杖を掴む。
「“
彼は自分の杖を抜いて吸魂鬼に向けて“守護霊の呪文”を唱えた。これは吸魂鬼に対する唯一の対抗手段とされており、悪霊の炎と対になる高難度の魔法だ。
だがウィルの杖先からは何も出てこない。一筋の光すら灯す事はなかった。
「やはりか・・・。」
天才であるウィルが全力を出しても習得する事ができなかった魔法だ。2年前に挑んだが成功の兆しすら見えず断念した。今でも苦手意識が強く、後回しにしていた。
すると吸魂鬼はブラックがいない事を確認して満足したのか、そのまま隣のコンパーメントへと移動する。ウィルはふとトイレに行きたくなり、席を立ち上がった。
吸魂鬼とは反対方向にあるトイレへ向かうと
「流石にあのおバカさんも杖を失くしたら堪えるでしょ。」
ウィルはすれ違い様に聞こえた言葉を聞き逃さなかった。
「・・・待て。」
不愉快そうに顔を歪めたウィルは2人の方を振り返る。突然声をかけられた女子生徒は近寄りがたいオーラを放つ彼に恐怖しているようだ。返事をする気力もないらしい。
「俺の前でくだらない真似をするな。」
すると彼は手のひらを2人に差し出す。
「早く寄越せ。ここに落ちていたことにしてやる。」
どうしたらいいのかと戸惑う2人に対してウィルは苛立ちを隠せずにいる。
「わざわざお前達の名前を調べて教師に密告するとでも思うか?」
そう言われた2人は顔を見合わせてウィルに杖を渡すと、逃げるように足早に去って行った。ウィルは杖を見て傷が入ってないか確認する。無事らしいのでそれを持って教師の誰かに預けようと進んだ。
するとブロンドの髪をなびかせ、スキップをしている白人の女の子が見える。彼は特になにも考えず進む。
およそ3メートルくらいに近づくとウィルの持つ杖をジーッと見ている。なにを考えているか読めない瞳だ。
「君のだね?」
「ウン、どこに落ちてた?」
ウィルは彼女の名前は知らないが、個性的な生徒なので顔は知っていた。
「もう
ウィルは彼女が嫌がらせを受けているレイブンクローの生徒だと知っていた。今まで関わった事はなかったが忠告はしておく。
「それは違う、
彼女は能天気らしく盗まれたことを認めない。ウィルは彼女にすら少し苛立つ。
「なに?俺はお前を知ってるぞ。自分の荷物くらい・・・」
しっかり管理するよう言おうとしたが、彼女は口を挟んだ。
「私も知ってるよ、グリフィンドールの純血王子。」
「・・・。」
その言葉に対して否定も肯定もせずにいると彼女は無表情で首をかしげて続ける。
「ねぇ前から思ってたンだけど、なぜ
「・・・え?」
ウィルはその言葉に軽いショックを受けた。自分が今までそう思った事はなかったが、今の自分ではそれを否定できない。“生き急いでいる”という発想がそもそも彼に存在しなかったのである。
自分ですら気がつかなかったのに彼女はそれを言い当てて見せた。ウィルは眼を大きく見開いて驚いていた、彼女の観察力は常人の比でないと感じた。
彼はなぜそう思ったかを聞こうとしたが、突然彼女は何かを思い出したような顔をする
「お腹すいた、カエルチョコ食べてくる。」
ウィルが質問をする間もなく、マイペースに彼女はスキップしながら何処かへ行った。
(どういう事だ?俺が“生き急いでいる”?)
ウィルがしばらくその場に留まり、少し物思いにふける。そして彼女が何処かに行ってから2、3分もしない内にスキップしながらウィルの元にやってきた。なにやら頭にサイの角のようなモノをかぶっている。彼女がスキップをするごとにそれは落ちそうになっていた
「ねぇ“しわしわ角スノーカック”って知ってる?」
「・・・なんだって?」
ウィルは聞きなれない動物の名前に戸惑う。すると彼女はあたかも当たり前の事を言ったと言わんばかりの表情をしている。
「“しわしわ角スノーカック”、その角よ。」
「・・・、それってサイの角じゃないのか?」
ウィルは近くで見てもサイの角にしか見えない。よくよく見ると角は本物だが被る部分は手作りらしい味が出てる。
「違うモン、“しわしわ角スノーカック”の角だよ。」
「それは、どういう生態なんだい?」
ウィルがそう尋ねると彼女は急にマシンガンを放つようにその動物がどこに生息していて、どんな生態なのかを説明する。意外と動物好きのウィルはそれを真剣に聞いて質問をしたりする。一通り説明すると彼女は満足したのか、笑顔を浮かべた。
ルーナの口調が難しい・・・、他の作者様で上手な方いらっしゃいませんか?いらっしゃるなら参考にしたいので教えてください(土下座)
少し前のアンケートの結果を見てヒロインを作ってきました。あんなにヒロインが必要派が多いとは思ってなかったので驚きました
ルーナの性格
-
合ってる
-
まぁ合ってる
-
違う気がする
-
出直してこい
-
うるせぇ、続きはよ