灰色の獅子【完結】 続編連載中 作:えのき
彼は“禁じられた森”へやってきていた。最近夜中に抜け出してある目的を持って訪れていた。ケンタウロスや人狼、ユニコーンなど凡ゆる怪物や生き物が生息していて危険な地域とされているが、彼には関係ない。彼は傲慢だ、どんな怪物であろうとも自分を超える
だが今日も森の奥へ進む中でいつもより騒がしい事に気がついた。まるで地鳴りのような獣の声だ。彼は魔法により音と姿を消して、それに近づく。
すると森の開けた場所に沢山の魔法使いと強固に造られた四つの鉄の檻だ。時折檻の中から勢いよく炎が吹き出しているではないか。彼はそれをジッと見ると檻の中の正体が何なのか理解した。
(ドラゴン。実に興味深い。)
ウィルはドラゴンに目を奪われた。巨大な身体に鉄の鱗、爪を持つ。この世のありとあらゆる怪物の中でも最も強力な種族だ。こんなに魅力的な生物は他にはないと彼は思い、しばらく観察し続けた。
***
数日後
第一の課題はドラゴンが守る黄金の卵を盗むことだ。そして3人の代表選手は3人とも課題をクリアした。残りは最年少の選手の出番である。
ハリ・ーポッターがステージに現れると大歓声が湧き上がり激しい熱気に包まれる。ゴツゴツと岩場で足場は悪い。すると視線の先に黄金の卵が目に入る。それと同時に上空からドラゴンが現れ口を開いた。
するとハリーに巨大な火柱が襲いかかる。彼は反射的に岩場の陰に隠れて難を逃れた。杖を空に向けて呪文を放つ。
「“
すると上空からハリーの箒が飛んでくる。彼はそれに飛び移ると一気に飛翔した。ドラゴンは自分の守る卵を奪おうとした生き物を追いかけようと空を飛ぶ。
ドラゴンは首を強力な鎖で繋いであったが、怒りで我を忘れた怪物を前に鎖など意味はなかった。それはいとも簡単に千切れ、会場から飛び出したハリーを追いかける。
観客席の端に一人でいたウィルはニヤリと笑い、さっと立ちあがり会場を後にした。
校舎を飛び出したハリーはドラゴンの吹く炎を回避して、前後左右に揺れて陽動する。
彼はホグワーツの石の橋に目をつけた。仕切りはとても細く、自分ならかろうじて通れる広さだろう。
彼は一気に加速して隙間を無傷で通り抜けてみせる。それに対してドラゴンはハリーを追うのに夢中に狭い事に気がつかず巨大な羽根を仕切りにぶつけて体制を崩すとそのまま底の見えない谷底へと落ちていった。
ハリーはそのまま会場へ戻ると黄金の卵を掴み、課題をクリアした。
***
数分前
ドラゴンが谷底に落ちる瞬間、箒の上でウィルは透明化した上で遥か上空にいた。石の橋の隙間を利用してハリーがドラゴンを巻くことに成功したのを見届け、彼はドラゴンが落ちた谷底に向けて急降下しながら彼は手早く杖を取り出した。
稲妻のように下へ下へと落ちていくと、すぐにドラゴンの姿を捉えた。どうやらドラゴンは羽根を支える骨が折れたのかバサバサと動かすもバランスを保てない。痛みに苦しんでいるようだ。
「“
ウィルがそう呪文を放つとドラゴンの動きは限りなくスローになる。彼は自分の透明化を解いて、ドラゴンの目の前に姿をあらわす。彼の患部を撫でるように触れる、するとその骨がガチガチという音を立てて元に戻っていく。
「ほら、もう反対も。」
しかしドラゴンは巨大な口を開き、無数の並んだ鋭い牙で彼を嚙み殺そうとする。
「“
ウィルは片手でドラゴンの動きを止めたまま、空いた方の手で盾の魔法を発動して牙を容易く弾く。
「荒いな、だが気に入った。」
ドラゴンは息を吸って火柱を放つ。今度はその火を片手で分断してみせる。炎が途絶えるとウィルは口を開く。
「僕はウィリアム・マルフォイ、君は自由が欲しいか?」
その吸い込まれるような茶色の瞳を前に最も危険とされるドラゴン、“ハンガリー・ホンテール”は大人しくなった。この小さな生き物から計り知れないほどの強さを感じたからだ。そしてなぜかこの人間に魅力を感じていた。
***
数日後
〜グリフィンドール寮〜
寮室の中でマクゴガナルは生徒達を集めて大事な話を始めた。“三大魔法学校対抗試合”には伝統があり、クリスマスにはダンスパーティーが行われるために各々はパートナーを見つけるよう言った。
女子生徒たちの大半は浮き足立ったが、男子生徒たちの顔色は良くない。なぜならエスコートをすべきなのは男性だからだ。ウィルは無関心な様子だった。しかし彼の視線は他の女子生徒と同じように少しにこやかなハーマイオニーを捉えていた。彼女は周りの友人たちと談笑して盛り上がっていて自分の視線に気がつかない。
その時、初めてウィルは目が合わない辛さを知った。2年生のあの時から人と目を合わせないように心掛け、鍛錬に耐えてきた。彼は自分の進む先しか見てなかった。
彼女の視線は何度も感じており、それに気がつかないふりをしていた。そうでなくては意味がないからだ。
そのうち彼は他者の視線を自分の感覚から外す事にも慣れた。それと同時に彼女が自分自身を捉える事にも気がつかなくなった。ただの第三者として埋れてしまった。
(いつからだ?)
一体いつから彼女の瞳は自分を捉えなくなったのだろう
***
〜魔法薬学室〜
ウィルはスネイプから呪文について話し合いをしていた。どうすればより効率的に、そしてより強力に魔法を放てるか、又は新たな魔法を発明すると言った内容だ。
「“武装解除”は敵の杖を後方に弾く場合と、杖を掴み取る場合がある。そこに魔力差はない。しかし・・・
「・・・。」
スネイプはウィルの表情を見て口を止める。彼はうわの空で集中力がないように思えた。こんなウィルを見たのは初めてだ。
「今日は終わりだ。」
「ッ!?すみません。続けさせてください。」
ウィルはハッとした表情でスネイプの顔を窺う。そこには普段通りの彼である。しかし微かに自分を心配してくれているようだ。
「2度は言わせるな。我輩はお前の感情が鎮まるまで再開する気はない。」
スネイプは冷たく突き放すように拒否する。彼は下を俯く。
「先生・・・僕は昔からこう思ってました。」
少しの沈黙と共に彼はポツリポツリと語り出す。その表情は重く真剣だ。
「僕は
スネイプはその言葉に揺れた。自分を含め誰もがそう思っていたからだ。彼はひいき目抜きにもし彼がスリザリンにくればもっと偉大な魔法使いになれる可能性が高まると確信していた。
「・・・さよう。我輩だけでなくお父上もそう感じておるだろう。」
「・・・。」
ウィルは四年前の組分けの時を思い出していた。もし自分がハーマイオニーともっと語り合いたいと思わなかったら、こんな気持ちにはならなかったはずだ。今の心に残るモヤモヤと組分け、彼女さえいなければただのスリザリン生に過ぎなかった。
「ポッター同様、お前は傲慢だ。しかし連中とは違う。お前は人生が不当なものだと知っている。」
ウィルはスネイプの目をジッと見た。彼が慰めの言葉を使うなんて信じられなかったからだ。
「・・・、お前はお前だ。」
「・・・。」
ウィルはその言葉に心が少し晴れた。そうだ、かつての自分の言葉だ。なぜ忘れていたのだろう。気が緩んでいるのかもしれない。
「だが迷いを祓うには不十分だろう。今日中に解決しろ。」
「・・・失礼します。」
ウィルは頭を深々と下げて部屋から出ていった。するとスネイプは椅子に勢いよく座り、自分の額に手を置く。彼はしばらく過去を振り返ると口を開いた。
「もう充分だ。お前はとうに我輩を超えておる。もはや生き急ぐ必要はない。」
そしてまた長い沈黙が続き、ぼそりと呟いた。彼が言ったのか、心の中でそう思ったのか、それはわからない。
「ウィル、お前は
スネイプの瞳は余りにも弱々しかった。