灰色の獅子【完結】 続編連載中 作:えのき
シワ一つない黒いタキシードを身につけ壁にもたれかかる男がいた。中わけでまっすぐ伸びた黒髪を金色の髪止めでくくっており、艶のある隙間から白く透明できめ細やかな顔が覗く。美しい顔でパートナーを連れて通り過ぎる女子生徒は見惚れて前を向けない。
ウィルは早めに待ち合わせの場所でルーナを待っていた。次々とカップルが通り過ぎるのをぼーっと眺めている。時折パートナーの視線を奪われた男子生徒や誘いを断った女子生徒から睨まれるも彼は気にしない。
やがて人混みの奥からぴょこぴょことブロンドが見える。彼はルーナだろうと視線を上げ下げする。すると表情が段々とほぐれていった。
彼女はかぼちゃ色のドレスにティアラの代わりにコルクをヒモで繋げて作られた冠を載せている。どうみてもクリスマスの格好ではない、彼女の感性によって選ばれたドレスはどこで売っているのだろうと疑問が湧く。
「待った?」
「いや、全然。」
ウィルは笑いを堪えきれずにいる。通り過ぎる生徒達はルーナの格好を見てギョッと目を見開く、そしてウィルに同情するような視線を寄越す。先ほどとは大きな違いだ。
ウィルは腕を掴ませると会場へと向かう
***
大広間の壁はキラキラと銀色に輝き、星の瞬く黒い天井の下には何百というヤドリギや蔦の花が絡んでいる。各寮のテーブルの代わりに小さく丸いテーブルが無数に並んだ。
オーケストラがステージに立ち美しい音色を響かせる。まずは伝統に従って代表選手団が踊り出した。一通り終えるとダンブルドアとマクゴガナルが加わり、パートナーがその輪に次々と入っていく。
ウィルもまたルーナと共に踊り始める。彼女の独特なステップやリズムに合わせるのは苦労したが、一番激しく踊れただろう。そうかと思えば天井のヤドリギを見てナーグルがいると大声をあげる。ウィルは君にはナーグル避けのコルクがあるから大丈夫だよ、言った。
終始ルーナの予測できない行動と周りの生徒達の反応が面白くて笑いが止まらずにいた。
「はい、ウィルにルーナ。随分・・・個性的ね。」
とても体格のいいダームストラング生をパートナーにしているハーマイオニーが2人に気がついて声をかけた。よく見たらその生徒が代表選手のクラムだと気がつく。
「多分、ルーナは流行の最先端を行き過ぎたんだよ。」
ウィルは笑顔を浮かべながら返事をする。ルーナはそれを聞いたのか聞いてないのか皆の飲み物を取ってくると言って何処かへ行った。彼はその役目は僕のだろと言ったが彼女はスキップを始めていた。
「やぁウィリアム・マルフォイだ。君達の健闘を祈るよ。」
ウィルはそう言うとクラムに握手を求めた。彼はたどたどしい英語で礼を言ってそれに応じた。
「じゃ僕もルーナを追うよ。彼女の手は二本しかないからね。」
ウィルは魅力的な笑顔を浮かべてルーナの跡を早歩きで追いかけた。
***
〜監督生の風呂場〜
監督生のみが使用できる風呂場の扉に2人の生徒がやってきていた。そして彼らは合言葉を言う。
「“パイン・フレッシュ”」
そう言うと扉はゆっくりと開く、ウィルとハリーは中へ入る。
そこは蝋燭の灯った豪華なシャンデリアが天井から吊るされ、広い大理石の浴室を照らしている。無数の金の蛇口からはお湯が垂れ流しになっていた。
ハリーは第一の試練で得た黄金の卵を片手に持っている。なぜならセドリックが意味深にそう言ったからだ。謎が解けない為にウィルにも付き添いをお願いした。ハリーはウィルとハーマイオニーの2人が仲直りをしたから、すぐに彼の事情を察していた自分もそうした。
湯船の近くに来ると2人は服を脱ぎ始めた。少し照れながら脱ぐハリーとは対照的にウィルは堂々として素早く脱いだそれを畳む。その様子を見たハリーは自然とウィルの身体が目に入る。
意外と鍛えられた肉体をしているのに驚いた。だがすぐにそれもそうだろうと思い直す。彼はクィディッチで最も動き回るチェイサーの中でもとびきり優秀だ、並みの肉体ではないのは明らかだった。
ウィルは着痩せするタイプのようで、顔と同じように白く肌荒れ一つない綺麗な身体だ。筋肉と骨格をぼんやりとさせたら女の子といっても誰も疑わないだろう。
2人はとりあえずここで卵を開こうと話し合い、蓋をあける。すると耳の鼓膜を引き裂くような甲高い叫び声が部屋の中で共鳴する。ハリーはすぐに蓋を閉じて黙らせた。
「お湯につけるんじゃないのか?じゃないとここに来た意味がない。」
ウィルのその一言で黄金の卵をお湯に浸けて蓋を解放する。すると先ほどみたいな感高い声は何一つ聞こえない。2人は息を吸ってお湯の中に潜った。するととても美しい声が聞こえる。
探しおいで
声を頼りに
地上じゃ歌は歌えない
探す時間は1時間
取り返すべし
大切なもの
息が切れてお湯から勢いよく出る。そして2人の視線は自然と壁に飾ったブロンドのマーメイドの絵へ向かった。
ウィルとハリーはその歌を覚えてハーマイオニーとロンの元へ行った、そして歩きながら一通り話して図書館へと向かう。
ウィルとロンは以前と同じく気まずい雰囲気だが、もう子供でもないし事情を聞いていたので特に互いに拒絶することもなかった。
図書館で使える本を探しているとこちらをジッと見ている男子生徒をウィルは見つけた。クラムだ。
ハーマイオニーはそれに気づいたのかウィルの耳元でそっと囁いた。
「私の横でずっと勉強を見てるのよ、彼って肉体派なのよ。」
「君、とてもいい顔してるよ。」
ウィルは笑顔でそう返した。友達の喜ぶ顔を見るのはとても心地よかった。
***
図書館に「ウィーズリーとグレンジャーはマクゴナガルに呼ばれている」とムーディがやってきて、ウィルとハリーの2人で対策を練った。
ウィルはハリーに水中でも息ができるように“あぶく玉呪文”を教えようとしたが上手くはいかなかった。
いよいよ第2の課題が始まった。昨夜、盗み出された4人の代表選手の大切なものが湖の底に隠され、1時間以内にそれを見つけて持ち帰るという試練だった。
結果として一位はセドリック、二位はクラム、そして三位のハリー。そして水魔に妨害されたフラーは四位だった。
ただし、ハリーは一番早く人質の元へ到着したものの彼は全ての人質を助けようとした為に遅れたらしい。そしてその勇敢な行動を称えて、セドリックと同率首位となった。
***
〜クィディッチ場〜
各校の応援として観客席にびっしりと並び、コートに現れた4人の代表選手に溢れんばかりの歓声をぶつけていた。
「今朝、ムーディ先生が優勝杯を先生だけが知る迷路の奥深くに隠した!それを手にした者が優勝じゃ!」
杖をマイクのように構えたダンブルドアはそう皆に説明すると大砲の音と共にスタートが切って落とされる。今までの試練の成績に応じて選手達は次々と迷路の中へ入った。
そして全員が中に入るとそれぞれは迷宮の中の選手を応援しようと声をあげ続ける。ウィル達も観客席に座りハリーの無事を祈った。
そして約1時間後、優勝者がグラウンドに姿を現した。ハリーとセドリックだ。ホグワーツの生徒達は大歓声をあげて興奮している。しかしハリーの様子がおかしくセドリックは人形のように動かない。そしてその理由に気がついた女子生徒は叫び声をあげた。
生徒たちは次第に熱を冷まして事態の異様さに目を向けた。ダンブルドアは素早く2人の元にいく、そして数多の教師がそれに続く
「あいつが!あいつが
【闇の帝王】ヴォルデモート卿が復活したのだと察しのいい人達は気がつく。
セドリックが死んでいるのだとその場にいた全員はようやく理解した。事態に混乱する生徒たちの中でただ1人、ウィルはそれを聞くとその場から颯爽と立ち去る。
セドリックの父親の泣き叫ぶ声が背中越しに聞こえる。しかしウィルは振り返ることなく足早に去った。
「ついてこい、わしが付いとる。」
泣き叫ぶハリーの肩を抱きムーディはその場から離れる。そして彼の部屋に入るとハリーを座らせて落ち着くのを待つ。
「優勝杯は移動キーで魔法がかかってた。」
ハリーはそうムーディに話した。
「どこだ?」
「夢の中に行ったかのような、」
すると突然、ムーディが苦しみだした。顔が歪んだようだった。彼は素早く部屋に置いてあった箱を開け無数の小瓶を取り出すが全て空のようだ。
「闇の帝王は?墓場には誰がいた?」
ムーディは焦ったように矢継ぎ早にハリーに尋ねる。
「あの、僕は墓場なんて・・・。」
ハリーがムーディの知るよしもない事実を知っていたことを不審に思った。すると彼は残酷に顔を歪め、語り始める。
ハリーの手助けをして優勝させ墓場に導くのが自分の役目だったと伝えた。そして彼はハリーに杖を向け命を奪おうとした。ハリーは次々と訪れる事実に衝撃を受けて杖を手に取れない。
すると扉が吹き飛ばされる。外からダンブルドアら教師が現れて一瞬でムーディを魔法で制圧する。そして真実薬を流し込んだ。これはほんの数滴で真実のみしか語れなく魔法薬である。
「本物のムーディは?」
するとムーディは頑丈そうな箱に視線をやる。ダンブルドアが中をあけると本物のムーディが疲弊した状態で監禁されていた。
そしてムーディの顔が激しく歪みだす。どうやら激しく痛むらしい。
段々と若い男に変化する。整った顔でありながらも残忍で冷酷そうな表情を隠すことができない。
ダンブルドアはすぐにアズカバンに引き渡すために連絡を寄越すよう伝えた。
そして次々と質問をする。どうやらヴォルデモートの指示でハリーを手引きしたこと、そしてポリジュース薬を使用してムーディに化けたのだと白状する。
「協力者は?仲間はいるのか?」
「
ダンブルドアがそう言うと若者はニヤリと愉快そうに笑った。
「危険な男がこの学校にいるはずだ。この魔眼を見るといい。」
***
〜秘密の部屋〜
秘密の部屋の広場はここ2年間で大きく変化していた。
壁にはびっしりと魔法に関する理論や試行錯誤の結果がメモされてる。また様々な薬品やホルマリン漬けにされた小さな動物のものと思われる脳が綺麗に管理された棚、緑色の液体に浸された
「“フィエンド・ファイア”。」
ウィルは杖先から炎を出現させるとこの2年間の実験の成果を燃やし始めた。限りなく制限された炎でありながらも轟々と黒い煙をあげながら燃え続けている。
すると広場の出口の奥からカツンカツンという足音が響いてくる。ウィルが無表情で振り返ると己の師だと気がつき、にやりと残忍に笑う。まるで先ほど捕らえられた“死喰い人”のようだった。
ウィルの師匠であるスネイプは燃やされているそれを一目みてすぐに理解する。かつて自分も彼と同じ事をしていた、だがかつての己の過ちとは規模もレベルも桁違いだ。
「ウィリアム、杖を床におけ。」
スネイプはいつもより険しい表情でウィルを睨みつけている。彼はまさか己の弟子が“闇の魔術”に傾倒しているとは知らなかった。ここで刺し違えてでも弟子を止めなければならないと決心した。
しかしウィルは大きな欠伸をした
「やっとですか。思ってたより遅かった。お陰で
タイトルの2人の羽化とはウィルと誰を指すのか・・・