灰色の獅子【完結】 続編連載中 作:えのき
〜校庭〜
真っ暗な校舎の校庭を少し大きな馬車を羽根の生えた黒い馬のような生き物、セストラルが2匹がかりでゆっくりと引いている。その車内では1人の犯罪者が強力な手錠で繋がれていた。
魔法を使用すればどこでどんな呪文を使用したか探知できる能力が秘められており、脱走したとしても一生涯魔法とは縁のない生活を送らなければならない。
ウィリアム・マルフォイは“闇の魔術”を許可なく得ようとしたとして、【魔法法執行部】での裁判を得てアズカバンの刑期を決める。
だかウィルの様子は普段通りだ。頭を窓にもたれかけ、退屈そうに窓を眺めている。まるでホグワーツの汽車に揺られているかのようである。
「マルフォイ家は終わりだ、忌々しい死喰い人の一族め。」
闇祓いの1人がそう言う。彼は手錠をされているウィルに杖を突きつけている、これは不審な行動をすれば攻撃するという警告を意味していた。
「貴方とは意見が違うらしい。」
ウィルはさらりと視線を変えることなく退屈そうに言ってみせる。
「最後のホグワーツだ、よく見ておけ。敷地から出たら飛ぶぞ。」
もう1人の上官らしき男の言葉通りに馬車がホグワーツの敷地を超えると、一斉にセストラルは地面を強く蹴って羽を広げる。そして車体は軽々と持ち上がりそのまま天高く昇る
***
20分後
ホグワーツを飛び立っておよそ20分が過ぎた。目的地のイギリスにはまだ遠く、外の景色は生い茂った山や森の上を飛んでいる。護送する犯罪者がここまで大人しいのは実に稀なケースだ。ウィルに杖を突き立てている闇祓いは、ほんの少しだけ気が緩んでいる。
突然、セストラルが騒ぎ出して車内が激しく揺れ始めた。闇祓いはウィルを解放しようとする者の襲撃なのではと思い、1人が扉から身を乗り出して覗くが天気は穏やかで襲われた形跡は一切ない。
「なにごとだ?」
「いや、少しセストラルが騒いでるだけだ。」
闇祓いの1人はセストラルに落ち着くよう諭すが彼らはどんどん声を荒げる。そして突然、暴れ始めた。一目散に逃げようとしているらしく、綱を引くのを拒否している。
「“ウィンガーディアム・レヴィオーサ”。」
外を覗いていた男が車体を浮かせて安定させようとする。揺れは少し落ち着いたものの未だに激しく揺れている。
「やむを得ん、手綱を切る。」
もう1人のウィルに杖を突きつけていた男は一瞬だけ矛先から外すも彼から目を離すことなく杖を軽く振る。するとセストラルを繋いだロープは切れて、彼らは何処かへ飛んで行った。
「どうしますか?」
車体を浮かしたまま2人は代わりの手段を見つけるために話し合おうとする。
「ひとまず降りて応援を呼ぼう。ありがたいことにコイツは大人し・・・」
すると遠くから何かが空を切るような音が聞こえてくる。まるで巨大な鳥の羽ばたく音だ。車内では不穏な空気が漂うと、男が恐る恐るまた外を覗いた。
「あの、何かがこっちに来ます。赤い波のような・・・」
呑気にそう言った。ほんの赤い点のような物体がこちらに近づいている。
「ばかやろう!早く盾を張れ!」
その怒声が車内に響いた時、彼は初めてそれが巨大な火柱であると気がついた。そしてすぐに杖をその炎に向ける。
「ッ!?“プロテゴ”」
車体の頭を覆うほどの巨大な盾を作りあげる。そしてすぐに豪炎が目の前にやってきて盾へ襲いかかった。
かろうじて青い盾を貼るのが間に合ったらしい、たが勢いの強さから完全には受け止めれず炎は
それを耐え凌ぐと男はその炎を吐いた正体を目の当たりにする事となった。巨大な黒い鱗と羽根を持ち、鋭い牙に棘の生えた尻尾を持つ怪物だ。
「ドラゴンです!」
男はそう叫んだ。
「一頭だけ行方をくらましたと聞いていたが・・・。」
男はすぐにそう思った。どうやらこのドラゴンが逃げ出した後、ここらを縄張りにしたのだと考える。ドラゴンからすれば得体の知れない飛行物体が土足で踏み込んできたようなものだと理解した。
「この場から離れるぞ!“姿くらまし”を・・・
男がそう部下に指示を出そうとした時、自分の膝の上に小さな生き物が現れた。大きな目に大きな耳をしており、とてもみすぼらしい格好をしている。
その生き物が手を振るうと魔法を放って男の意思を奪った。そして素早くもう1人の男も同じように倒してみせる。そしてウィルの方を見て口を開いた
「ウィル坊っちゃま!ドビーが助けに参りました!」
キーキーとした高い声で叫ぶように言う。“屋敷しもべ妖精”のドビーである。この生き物は特定の魔法使いの家で奉仕をする特性があり、隷属の証としてボロボロの服を見にまとうのだ。由緒正しきルシウス家にもこのドビーが仕えており、家の雑用や家事をこなしてくれている。
するとまたもや窓から赤い閃光が反射するように中に差し込んだ。ドビーはそれに驚き慌てふためいた。
「ありがとうドビー、でもひとまず避難しようか。」
ウィルは笑顔を浮かべてドビーの手をとる。すると彼は指をパチンと鳴らした。視界がぐにゃりと曲がり、前後左右が激しく揺れ動いたかのような感覚を覚える。
視界がハッキリとすると、ウィルとドビーはドラゴンの背中に乗っていた。
このドラゴンは数ヶ月前に行なわれた第1の試練でハリーと対決した個体である。ハンガリー・ホンテール、世界で最も凶暴なドラゴンとされている。
「ありがとう、君は律儀な子だね。」
ウィルは子供のように自然な笑顔を浮かべた。彼はこのドラゴンと取引をしたのだ。
そもそも未成年の魔法使いには“匂い”というものがつけられており、学校外で魔法を使用すればどこにいても居場所がわかるようにしてあった。だからウィルはその匂いをルシウスの根回しによって取ってもらっている。そのためこの実験や自宅での魔法の使用も今まで魔法省から追及をされなかった。
その匂いと似た方法でこのドラゴンにもマーキングがなされており、これからどこへ逃げたとしても追っ手が必ずやってくる。
ウィルはその匂いを取る方法を突き止めており、理論上は自分の手で取り除くのも可能だと認識していた。
そして彼はこの“匂い”を取り除く見返りとして自分と契約をするよう求めた。自分が召喚を要請すればそれに従い、そして協力すること。もちろんそう何度も呼びつけたりしないとも言った。
ドラゴンが同意したのを確認すると、容易に匂いを取り除いて自由の身にしてやった。それからドビーを呼び出して“付き添い姿くらまし”にて故郷であるハンガリーへ帰したのだ。
つまり彼はついに召喚術において最も大切な使い魔との契約を結び、新たな武器の一つとしたのである。
そして今回、彼は事前にドビーに召喚の術式を描いた紙を渡しており、魔力さえ込めれば呼び出せる状態にしておいた。そしてドビーがタイミングを見計らってドラゴンを呼び出したのである。
「ドビー、頼む。」
ウィルは自分の腕にかけられた手錠を見せた。ドビーはパチンと指を鳴らすとそれはいとも簡単に外れ、ウィルの膝に落ちる
誤解されがちだが屋敷しもべ妖精はそこらの魔法使いより遥かに実力を持っており、そもそも魔法使いの使う魔法とは質が違う。ゆえに人間の張った魔力探知の包囲網を軽々とすり抜けることができる。
「こちらがウィル坊っちゃまの杖でございます!」
ドビーは自分の洋服である使い古された枕カバーに刺していた杖を取り出して、ウィルに渡す。彼は嫌な顔一つせず口を開いた。
「ありがとうドビー、君のおかげだ。見返りにこれをあげよう。」
ウィルは自分の首元に手をかける。そしてスルスルと獅子の紋章のついたネクタイを外してドビーに手渡した。ドビーは感激している様子で言葉にならない。
「君は自由だよ。どこであっても我が家より心地よいはずだ。」
しもべ妖精に服を与えるという事は主従関係の解除を意味する。マルフォイ家に限らず多くの魔法使いに使えているしもべ妖精だが、彼らは過酷な環境でこき使われ、蔑まれている。ウィルはそれを疑問視していた。彼らが望んで世話や雑用をこなしたいのはいい、だがその特性につけこんで彼らに残酷な仕打ちを行うのは気に入らなかった。
事実、ルシウスやドラコはドビーにひどい仕打ちをしている。ウィルはその場面に出くわせば庇いはするものの立場上、強くは出れない。そして前々からドビーが自由を求めていたのを知っていたから服を与えた。
ドビーは何度も何度も頭を下げてお礼を言うと友のために生きると宣言した。
「ウィル坊っちゃまもドビーの友達です!」
とても生き生きとした笑顔で言った。
「ドビー、言うまでもないよ。」
彼もまた無邪気に笑って握手を交わすと、ドビーは姿くらましを使って何処かへ消えた。
(ドビー、僕は君達も輝ける世界をつくりたい。)
ウィルは心の中でそう思った。彼の【整える】という言葉には“不遇な者達の救済”という意味も含まれているのだった。
ウィルは大きく息を吸った。彼は自分の外れた手錠をドラゴンの背中から落とす。ちょうど湖の上を飛んでいたので、それは大きな水飛沫を上げて底へ沈んでいった。
「これで僕は犯罪者だからイギリスに戻れないという動機をつくれた。」
ウィルはにやりと不敵な笑みを浮かべた、全て自分の
そして彼は強く鋭い瞳を遠くの地平線に向けた。自分の野望を確実に叶えるためには2つ不可欠なものがある。
1つは自身の実力を完全にすること、そしてもう一つは自分の
「さて、行き先は北欧・・・
ダームストラング魔法魔術学校だ。」
自分の中で2つ、他の作品では出てこないであろう流れを創りました。1つ目はダームストラング、そしてもう1つは後々に出てきます
ダームストラング編も完成してるんですけどテンポが非常に悪くなるのでスピンオフとして後回しにします。念の為にアンケートを↓
ダームストラングの後回しを・・・
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どうでもいいから早く投稿しろ