灰色の獅子【完結】 続編連載中   作:えのき

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はじめての学生生活

 

 

〜変身術の教室〜

 

 

 

「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法学の中で最も複雑で危険なものの一つです。いいかげんな態度で私の授業を受ける生徒は出て行ってもらいますし、二度とクラスには入れません。初めから警告しておきます」

 

変身術の担当のマクゴナガルは全員が着席し、出席を取り終わるとすぐさま警告をした。この先生だけは怒らせてはならない。皆の心は1つになる。

 

 

その様子を見たマクゴナガルは手始めに机へ向けて素早く杖を振ると一瞬で机は豚に変わった。生徒達が眼を見張るのを確認したマグゴナガルは再び振り元に戻す。

 

そして彼女の説明をノートに取り終わった後、一人一人にマッチ棒が配られ、それを針へと変身させるよう指示を出した。

 

変身させる事ができたのが自分とハーマイオニーだけであることに彼は驚いた。マグルの子はしょうがないとして、魔法家に生まれた子供たちはなにをしているのだろう。

 

その日、彼は昨日のテーブルマナーと同じく初めて普通の家の子は呪文を習わせないのだと知った。

 

それから受けたのはハッフルパフの寮監であるスプラウト先生の薬草学、そしてゴーストであるピンズ先生の魔法史、レイブンクローの寮監であるフリットウィックの呪文学などである。

 

 

 

 

そして今から受ける授業は ウィルが一番楽しみにしていた魔法薬学である。担当であるスネイプはスリザリンの寮監のためかグリフィンドールの先輩達からの評判は最悪だった。

 

彼は父の後輩であることから少しの親交がある。たしかに彼は気難しく皮肉屋な性格だ。

 

だがその知識は間違いなく本物である。ウィルが8歳の頃に彼の専攻である魔法薬についての問題を質問した時、決して資料と本だけを暗記したような内容でなく自分の目で確かめた知識だった。

 

彼の底知れない知恵に圧倒された時、どんなウスノロでも暗記ぐらいはできる。君はその程度の事で得意になっていたのかね?と皮肉を言われた。

 

そのスネイプはただ相手にしたくない子供を突き放そうとしたための態度だったが、逆にウィルはスネイプに懐いた。その日に父親に、尋ねた文献の材料を用意するよう頼み、自らの手で調合した。そしてレポートを作成してスネイプに提出したのである。

 

その態度にスネイプはホグワーツのノロマ共よりはマシな程度だと言いつつも文字数を指定して次のテーマをウィルに与えた。

 

それからはホグワーツの理事である父親がホグワーツへ行くたびにスネイプにレポートを提出し続けた。入学する少し前にはフクロウ便でやり取りをする間柄になっていた。

 

ウィルの父親であるルシウスは気にかけてくれている事を快く思い、スネイプと顔を合わせるたびにお礼と彼の好物の菓子を差し入れた。

 

 

 

 

 

 

魔法薬学の授業は地下牢で行われる。日の光が届かないためヒンヤリしており、ガラス瓶にアルコール漬けにされた動物達が並んでいる。生徒達は気味悪がる中、ウィルは珍しい生き物を見れて喜んでいた。

 

 

大きな鷲鼻で黒くねっとりとした髪をしている魔法薬学の担当のセブルス・スネイプは出席を取っていた。授業はスリザリンとの初めての合同授業だった。彼は出席を取り始める。顔なじみであるドラコとウィルも他の生徒と同様に読みあげ、そして名前のリストを読み終えるとスネイプは冷たい表情でポッターと叫んだ。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるかな?」

 

ハリーは質問の単語すら理解できず、横に座っていたロンへ助けを求めるが彼もわからないようだった。

 

「わかりません」

 

ハリーとロンの後ろの席にいたハーマイオニーは自分なら答えがわかると高く手を伸ばした。隣にいたウィルは彼女の手を降ろさせようとするが、聞き入れることはなかった。

 

スネイプはハーマイオニーを無視して質問を続ける。

 

「それではベゾアール石を見つけてこいと言われればどこを探す?」

 

ハーマイオニーは更に手を伸ばした。だがスネイプにはそれが見えないようだ。

 

「わかりません。」

「ではモンクスフードとウルフスベーンの違いは?」

 

ハーマイオニーは椅子から立ち上がり、スネイプの指名を待つ。ウィルは空気の読めない彼女を止めるのを諦め、静かに時が流れるのを待つことにした。

 

「わかりません。」

「有名なだけではなんの役にもたたん」

 

スリザリンの生徒達から笑い声が聞こえてくる。するとスネイプはハリーの態度が無礼だとしてグリフィンドールから減点した。

 

「ではドラコ・マルフォイ、最初の質問はわかるかね?」

「眠り薬です」

「あぁさよう。」

 

ドラコは少し戸惑いながらも答えを述べる。彼は入学前に家の屋敷でウィルと予習をしていたため答えることができた。

 

「では2問目は?」

「ヤギの胃袋です」

「スリザリンに5点やろう」

 

スリザリンの生徒達の歓声にドラコは勝ち誇ったような顔をして、ハリーの方を見る。

 

「では3問目だ、ウィリアム・マルフォイ。答えろ」

 

ウィルは自分を指名してくれない事が不満でそれが顔に出ていたようだ。それを汲んでくれた事を嬉しく思う。

 

「読み方の違いです。一般的に言えばトリカブト」

「その通り」

 

ウィルは少し嬉しそうな顔をする。その様子を隣のハーマイオニーは恨めしい態度だったが、先生の指示なので何も言わなかった。

 

ドラコとは違いグリフィンドールに得点はくれなかったが、ウィルは自分なら答えて当然の問題だと言われた気がした。

 

それからおできを治す簡単な薬を調合する事になった。スネイプは全員の作業になんらかの注意と叱責を加えたが、ウィルの大鍋には一瞥もくれなかった。

 

そして寮で同室のネビルが大鍋を爆発させ、グリフィンドールは更に減点をくらった。授業後にはグリフィンドールの生徒はスネイプの悪口を口々に言いふらしていた。

 

だがウィルは自分の寮の得点に興味がないため、どうでもいいと聞き流していた。別に寮が優勝するために得点を競うなど何が面白いのか、どう考えても自分の成績さえ気にしてればそれでいいのにと心の中で思った。

 


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