灰色の獅子【完結】 続編連載中 作:えのき
「それで?」
あまりにも冷たい反応だ。それもそうだ。血も涙もないマダム・レストレンジ、死喰い人の有力な配下として暗躍してアズカバンに15年間幽閉されてた。魔法評議会の裁判にて鎖の繋がれた椅子にまるで玉座についているかのように堂々と座り、他の死喰い人とは異なりヴォルデモートの忠誠を叫んだ。
その強固な意志を持つ女がウィリアムの実の母親だ。杖がそう示したのである。しかし彼女はヴォルデモート以外に愛を示してないらしい。まるで自分の息子を今の今まで忘れていたかのようだった。
だがウィルも同様冷たい反応だった。もう自分に家族はいる。別に今更欲しいとは思わない。でも心のどこかでは期待をしていた。孤児院の部屋の片隅で気配を殺して座り、いつか自分を迎えに来てくれると信じていた。もしかしたら今でも変わらないのかもしれない。彼は父親と弟の愛を知っている、だが母親から与えられる愛は知らない。義母のナルシッサは自分に興味を持たず、ドラコに全ての愛を捧げている。
この時、ウィルは知らなかったが義母のナルシッサはベラトリックスの妹である。彼女は実の姉を恐れていた。ヴォルデモートに忠誠を尽くし、直接闇の魔術を教わるほど信頼されていたのである。その彼女は自分の意志を曲げず、無期懲役の罪を宣告された。それに対して彼女は夫のルシウスと共に“服従の呪い”によって操られていたのだと主張して罪から逃れたのである。
姉への罪悪感と恐怖から、姉と容姿がよく似ているウィルを遠ざけようとしたのだ。
ベラトリックスはにやにやと笑いながらこちらに歩いてくる。
「愛でも欲しいのかい?ウィリアム坊やはママが
唇をすぼめて、まるで幼稚園児をあやすような声で煽る。もはや実の息子と言えど彼女からすれば他人に等しかった。
「別にどうという事はない。俺を産んでくれた、ただそれだけには感謝してる。」
ウィルは無表情でそういった。これは嘘ではない、本心だ。
「だが1つ頼みがある。抱きしめてくれないか?一度きりでいい。」
ウィルはそういうと杖を地面に落とした。ハリーはそれは悪手だと思った。ベラトリックスは嘲笑うように呪いを放つと考えた。だが彼女は不敵に笑う。そして目を大きく開いて女優のように手を開いてウィルを抱きしめた
そして彼女は自分と同じ黒髪を持つ息子を優しく撫でる。彼女は顎を優しくウィルの肩に乗せ、耳元に囁いた。
「お前に愛情なんか感じない、決して。」
ウィルは彼女がどんな表情をしているのか想像ついた。また彼もにやりと笑う。
「なら都合がいい。“
彼は手のひらをベラトリックスの後頭部にかざす。緑色の光が瞬く、そして彼女は息子の腕の中で記憶を失い、ゆっくりと倒れた。
ウィルは倒れた彼女を蔑むように見下す。そして大きくため息を吐いた。ハリーはウィルにどんな声をかけたらいいかわからない。
「ベラを倒したか?」
その通路に恐ろしく冷たい声が響き渡る。どこから聴こえてくるのかわからない。ハリーはすぐに奴だと理解する。
「トム、僕は今機嫌が悪いんだ。話なら後にしてくれ。」
ウィルはまるで友人のように姿の見えないヴォルデモートに声に応える。そしてヴォルデモートはハリーの背後に現れた。
ハリーはヴォルデモートに杖を向けるが、まるで眼中にないと言わんばかりに杖を持たない手で彼の杖を吹き飛ばした。
「弱い奴め」
ヴォルデモートがそう言い放つと同時に彼らの側の暖炉が緑色に激しく燃え盛った。すると中から老人が現れる。
灰色の長い髭を蓄えた偉大なる魔法使い、アルバス・ダンブルドアだ。
「愚かじゃな、まもなく闇祓いがやってくる。」
彼はハリーが未だかつて見たことのないほど頼もしく見えた。
「その前に俺様は去り、貴様は死んでおるわ。」
ヴォルデモートはダンブルドアを見て嘲笑うように吐き捨てる。
ハリーは今ここでヴォルデモートが倒されるのだと確信した。2人が決闘を行いダンブルドアが敗れる未来は見えない。更に自分の知る限り最も優れた才能を持つ青年がついてる
しかしハリーはウィルの顔色を覗きこむと背筋が凍りついた、あまりにも冷たい。そして彼の全てを射殺すように鋭い瞳はヴォルデモートではなくダンブルドアに注いでいた。
「ダンブルドア、これがお前の見せかった結末か?」
すみません、構成上短めです