灰色の獅子【完結】 続編連載中 作:えのき
とても薄暗い閑静な住宅街に2人の女性が現れる。1人はブロンドで白い肌の女性だ。少しやつれているように見えた。それに対してもう1人の女性は茶色の瞳で黒髪である。
「シシー、およし。あいつは信用できない」
黒髪の女性はブロンドの女性を追いかけるように歩きながらそう言った。しかしシシーと呼ばれた女は聞く耳を持たず早歩きで進む
「あのお方は信じてる。」
「間違っておられるのだ!」
そして目的地へ到着するとノックをした。するとドアは開き、2人は中へ入る。
奥へ進むとねっとりとした黒髪で鷲鼻の男がいる。とても神経質そうな顔をしており、彼は2人の客人の方へ目をやる。
「アイツのせいです。昔から勘づいてた。この家に入れるべきじゃないって!」
ナルシッサ・マルフォイは声を荒げた。それほど彼女は追い詰められていたのである。夫のルシウスは神秘部の戦いで逮捕され、アズカバンに収容されてしまった。そして犯罪者として家名に泥を塗り、逃亡をし続けている義理の息子は“例のあの人”に敵対するような行動をとった。その反動である事を命じられてしまったのだと確信している。
「ただウィリアムならばダンブルドアに喰らいつく事はできたでしょうな。」
命じられたのは彼女の息子のドラコ・マルフォイがダンブルドアの首をとるというものだ。到底やり遂げられるとは思えない任務であり、ただの腹いせのようだった。
「その名は口にしないで!」
ナルシッサは金切り声をあげて抗議する
「安心しなシシー。私がいつかあの小僧にたっぷりとお返ししてやる!」
そばにいたベラトリックスもウィリアムには強い恨みを抱いているらしい。彼女の敬愛するヴォルデモートの前で倒され気絶するという姿を晒してしまったのだ。
「もういいだろう?誇りに思うべきだ、ドラコも。」
ベラトリックスとナルシッサの考えは違うようだ、彼女いわくヴォルデモートから選んでもらえた事を喜ぶべきだと主張する。
「まだ子供なのに・・・。」
ナルシッサは病んだ様子で息子に課せられた重荷を嘆いた。
「吾輩が見守ろう。」
スネイプはそう言った。彼はドラコの父親のルシウスには学生時代によく世話になった過去がある。そして自分の受け持つ寮の生徒である以上、そう言う選択肢しかない。
「では誓え、“破れぬ誓い”を立てろ。」
ベラトリックスはスネイプに向けてそう言い放つとナルシッサと彼に手を握らせる。“破れぬ誓い”、それは2人で行う誓いのようなものだ。もちろんただの誓いではなく、それを違えれば死が訪れる。文字通り破ることのできない誓いなのだ。
「汝、セブルス・スネイプはドラコ・マルフォイが闇の帝王の望みを果たすのを見守ると誓うか?」
「誓おう」
ベラトリックスはそうスネイプに問いかけ、彼は同意した。
「そして全力で彼を守ると誓うか?」
「誓おう。」
「そしてドラコがしくじれば、お前自身が身代わりとなり、闇の帝王の望みを叶えると誓うか?」
「誓おう。」
スネイプが全てを受け入れると、ナルシッサの両方の瞳から涙が溢れた。
***
同時刻
〜マルフォイ家屋敷〜
空気は重く人の気配はなかった。屋敷しもべ妖精は1人もおらず、寂れた屋敷であると言わざるを得ない。そしてその家に住む息子は重く思いつめた表情である部屋のドアを開ける
ここはドラコ・マルフォイの兄の部屋である。空っぽの部屋で人が生活している気配はない。整理整頓された瓶の隙間に蜘蛛の糸が張り、並べられた本は埃をかぶっている
そして彼は部屋の奥にある小さな篩へ進んだ。神秘的な青い水の張られており、彼はそこに顔をつける。青い視界は素早く霧のように渦巻き、そして彼の記憶を再び呼び覚ました。
広い子供部屋で箒に乗ったクィディッチ選手のフィギュアを手に持ち、縦横無尽に飛ばして遊んでいるブロンドの子供だ。とても幼く6歳から7歳の時のドラコ自身である。
すると彼の方へ足音が聞こえる。ドラコは自分の父親が来たのだと思って振り返ると少し驚いた。そこには父親と見たことのない黒髪の男の子がいる。彼は鋭く冷めた瞳だ。髪はぼさぼさで荒れているもののとても美しい顔をしていた。
ドラコは思った。絵本に出てくる登場人物のようだ。爽やかな王子というより、魔界を支配する魔王のようだ。彼は少年の顔に今まで出会った誰よりも美しいと感じ、視線を釘付けにされてしまう。
「 ドラコ、今日からお前の兄弟になる。ウィリアムだ。」
ドラコはパァッと笑顔になる。一人ぼっちで遊ぶ事はもうなくなるのだ。そして彼と友達になれるかもしれない。
「うん!」
「・・・。」
自分の様子とは異なり彼は相変わらず冷たいままだった。ルシウスは2人きりにしようとその部屋から立ち去ると彼は椅子にもたれかかるように我が物顔で座る。
「ねぇウィリアム!君どこから」
ドラコは人形を床に置くと立ち上がり詰め寄る。そして満面の笑みで兄弟となる男の子に話しかける。
「“
だが彼はポケットに隠し持っていた黒い杖を素早く抜き、ドラコに向けて半円を描くように杖を振るった。先端には小さな炎が灯され、ドラコは尻餅をつく。
「おいお前、ボンボンだがなんだがしらねぇが。俺に舐めた態度をとるな。」
ウィリアムは吐き捨てるようにそう言い放つ。そしてローブの奥に杖をしまった。
「いいか?この杖の事は黙っとけ。」
彼はそういった。青年になった今からすればただ悪ぶった子供が背伸びをして脅してるように見える。でも当時は本当に恐ろしかったのを今でも覚えている。魔王が自分の平穏な生活を乱しにやってきたのだと思った。