灰色の獅子【完結】 続編連載中   作:えのき

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ドラコの記憶②

 

 

再び視界は激しくうねるように変わった。ドラコとウィルとルシウスは同じ部屋にいる。これはさっきの次の日の出来事だ。ドラコがたまにルシウスから受ける魔法の手ほどきである。彼はまだうまく魔法を覚えられず、苦痛だった。

 

「ドラコ、前回やった拘束呪文だ。“インカーセラス(縛れ)”。」

 

ルシウスはそう杖を振るった。すると用意された大きな人型の人形をロープで拘束するように絡みつく。前回、自分がやった時は小さな糸が人形に掛かるくらいしかできなかった

 

拘束された人形へ向けてルシウスが杖を振るうとロープは消え去った。

 

「ウィリアム、お前には私の杖を貸してやろう。」

 

ルシウスはそういうと自分の杖をウィリアムに渡した。ドラコは昨日の彼の発言が腑に落ちた、彼は父上に自分が杖を持っている事を隠しているのだ。

 

父親に言いたくなる気持ちをグッと抑えた。恐怖からではなく、彼に嫌われたくはなかったのである。

 

彼は杖を軽く振るった。

 

「“インカーセラス(縛れ)”。」

 

ドラコは目を疑った。自分が何度やっても習得できなかった魔法が、ウィリアムの口から唱えられるとたった一度で綺麗に発動したのだから。彼は前にこの呪文を習ったことがあるのだと思った。

 

「前にやったことがあるのか?」

 

そして自分とルシウスもまた同じ気持ちだったようだ。

 

「いや、初めてだ。」

 

その言葉を聞くとルシウスは口元を手のひらで覆う。そして隠しきれぬほど大きくにやりと笑みを浮かべた。

 

「素晴らしい、たった一度みせただけで。」

 

少しの間をおいてルシウスはウィリアムを褒めてみせる。

 

「こんなのできて当然だろ。同じ魔力量を込めて同じように振るだけ。」

 

しかし彼は吐き捨てるように言った。褒められて見栄を張ったのではなく、心からそう思っているらしい。

 

「私はその言葉遣いも直して当然だと思うのだがね?」

 

ルシウスは嫌味のように言った。だがウィリアムは怯まない。

 

「染み付いてんだよ、雑草育ちだからな。」

 

強く言い返す。この時からドラコはウィリアムに勝てないと思い知らされた。あの巨大な父親に口答えするなど、自分には到底できない。呪文にしてもそうだ。自分の不得手な事をさらりとやってのける。

 

「ドラコ、お前はどうだ?」

 

父親の視線が自分に注いだ。次は自分の番である。

 

「“イ、インカァーセラス”。」

 

出来栄えは前回より酷かった。糸すら現れなかったのである。目の前で出来の差を見せつけられ、プレッシャーを感じたのだ。

 

「違う、“インカーセラス”。杖の振り方も甘い。コツはイメージ、魔法は創造力だ。」

 

ウィリアムはドラコに教えた。またもや今見たら早く次の魔法を知りたくてうずうずしているだけだろう。でも当時の自分はそれが救いの手だと思った。初めて見た時はあんなに怖く見えたのに、その時はとても輝いて見えた。

 

 

 

 

 

 

再び場面が切り替わる。そして自分とウィルが小さな机に本を並べ、羊皮紙が散らばっている。

 

あれから2年が経った。ドラコが毎日ウィリアムに声をかけていたおかげか、彼の性格が落ち着いてきた。相変わらず才能の差は感じるが、仲良くなったのは全部が全部いい方に転がるとは限らなかった。

 

「違うドラコ、ベゾアール石はヤギの胃の中でできるんだ。」

 

ウィルの手ほどきである。彼は家にあった書物を全て記憶してしまった。そして比べる対象がない為、自分が優れていると気がつかない彼は出来の悪い弟の面倒を見るようになった。

 

「まだホグワーツまであと一年あるんだぞ!」

 

ドラコは抗議の声をあげる。しかしウィルはジッと彼の目を見る。

 

「お前、ずっと前からだ。ホグワーツまで2年、3年って。やらない奴はいつまでもやらないんだ。」

 

反論を瞬殺されると彼は必死にウィルの授業を受けざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

再び場面は変化する。賑やかな市場だ。ダイアゴン横丁である。外行きの豪華な服装に身を包み、ドラコとウィルは父親の背中に着いて行く。すると彼は急に立ち止まる。どうやら知り合いらしい。

 

「おぉアメリア、息子達と会うのは初めてだな。」

 

父親の背中でドラコはウィルの耳元で囁く

 

(おい、ウィル。知ってるか?)

 

(魔法法執行部の副部長だ。)

 

 

それを聞くと同時にルシウスは2人の肩を優しく掴み、自分の前に立たせる。

 

「ボーンズさん。父上からよくお話を伺ってます。長男のウィリアムです。どうぞお見知り置きを。」

 

ウィルはにこにこと魅力的な笑顔を浮かべて挨拶をする。その姿は孤児院の雑草などではなく一流の教育を受けた男の子だ。

 

「弟のドラコです。」

 

ドラコもまたウィルの後に続く。いつも空気を作ってくれる兄のおかげで自分の役目はこれだけでいい。役割分担だ。形式ばった場所では兄が動き、柔軟に動くべき場所では自分が動く。まるで互いの弱点をカバーしあう本当の兄弟のようだ。

 

「まぁまぁ、確か私の娘と同じ年よね?スーザンも今年からホグワーツなの。」

 

彼女は感心するようにうなづく。そして側にいた娘へと視線をよこす。

 

「やぁスーザン、ホグワーツではよろしく頼むよ。」

 

ウィルはスーザンに握手を求め、優しく握ると笑顔を浮かべる。また1人、彼に魅了された。誰もが魅了されるほどのまばゆい笑顔である。整った美しい容姿に爽やかなスマイルを合わせれば無敵だ。

 

この時の彼はとても丸くなった。でも違う。これは彼の本当の笑顔じゃない。ドラコはその笑顔が仮面のように思えてならなかった。

 

 

 

再び場面は変わる。キングズクロスからホグワーツへと向かう汽車の中だ。ドラコは子分のクラッブとゴイルを引き連れて歩いていた。確かこの時はハリー・ポッターと友達になりたくて声をかけたんだ。でも彼は自分を拒否して赤毛のウィーズリーを選んだ。

 

少しイライラしてた。すると自分達のいたコンパートメントから知らない栗毛の女の子が出てきた。彼はどうせウィルに魅了されただけなんだと思った、バカな奴め。ウィルはどうせお前のことなんか興味ない。

 

ドラコは扉をあけるとウィルは本を読んでいなかった。

 

「なんだい、あの子は?」

 

ドラコは苛立ちを隠せなかった。あの女の子はウィルの邪魔をしにきただけなんだと気がついた。

 

無神経さに少し怒りを覚えたのだ。実際、ドラコは一度たりともウィルが読書をしているときに邪魔をしたことがない。

 

養子であり、家に恩を返すために生きてる彼にとって読書が唯一の至福の時であると知っていたからだ。

 

「頭のいい子だった。逃げた友人のカエルを探していたようだ。」

 

ウィルはそう答える。その時、ドラコはとても驚いた、なぜなら彼が初めて家族以外の人間に興味を示したからだ。

 

そしてそれ以上に嫉妬が芽生え、少し不機嫌になる。だがいい、どうせ僕とウィルは栄光あるスリザリンに入るのだから・・・

 

 

 

 

 

 

 

そして今度は組分けの儀式に変わる。ウィルとドラコは隣に座り順番を待つ。彼は本に夢中になっているのに対して自分は少し興奮してた。

 

 

「グレンジャー・ハーマイオニー!」

 

その名を聞くとウィルは活字から目線を外し、壇上へと向ける。

 

それを見てドラコは機嫌が悪くなる。グレンジャーの名前は魔法族の名前じゃない。なら大丈夫だ。崇高なるスリザリンに選ばれることはない。

 

その子は走るように椅子に座ると、帽子は少し悩みつつ結論を出した。

 

「グリフィンドール!」

 

グリフィンドールなら大丈夫だ。僕達が入るのはスリザリン。ウィルと奴が関わることはないだろう。

 

そして何人かの組分けを終える。

 

「マルフォイ・ドラコ!」

 

マクゴガナルの呼び声を受けてドラコはウィルの方をちらりと見る。

 

「じゃ、おさき。」

 

ウィルにそう囁くとドラコは名前を呼ばれると偉そうに前に進みでる。帽子は頭に触れるか触れない内に答えをだした。

 

「スリザリン!」

 

僕でも選ばれたんだ。僕より優れた魔法使いのウィルがスリザリン以外に選ばれるなんてありえない。

 

 

「マルフォイ・ウィリアム!」

 

ウィルは本を閉じて前へ進む。ただ前へ歩くというだけで注目を集める。これが僕の兄だ、ドラコは誇らしくなる。

 

あとはスリザリンと呼ぶのを待つだけだ。でもあまりにも遅い。帽子をかぶって数分が過ぎてる。あのウィルの事だ。おそらく適性のある寮が多過ぎて困ってるんだ

 

 

 

「グリフィンドール!」

 

その帽子の叫ぶ声にドラコは激しく動揺していた。彼がスリザリンじゃないなんてありえない。でも帽子がそう選んだのなら本当に適性があるんだ、寮は違ってもウィルはウィルだ。なぜかアイツとだけは関わらないで欲しいと思ってしまう。

 

ウィルの隣を取られてしまうかのような気がしていたのだ

 

 

 

 

 

場面は再び変わる。クラッブとゴイルを引き連れて廊下を歩いているとウィルの姿が見える。声をかけようと思ったがすぐに足が止まってしまう。ウィルの横に栗色の髪の女の子が目に入ったからだ。

 

 

 

 

再び場面は変わる。スリザリンのクィディッチの選手の一員として歩いていた。そしてすぐにグリフィンドールの選手団と鉢合わせ険悪な空気となる。

 

「君の箒を競売にかけたら博物館が買い入れるだろうね。」

 

ドラコはロンを煽って箒を自慢した。僕達のチームの全員は一流の箒を持ち、一流の家系のメンバーだ。

 

君にボロボロの箒なんかふさわしくない。君の周りの連中は傲慢なクズばかりだ。

 

 

「少なくともグリフィンドールの選手は誰一人としてお金で選ばれてないわ。」

 

また忌々しい栗毛だ。お前はウィルの隣にふさわしくない

 

「誰もお前に意見なんか聞いてない。【穢れた血】め!」

 

 

 

 

今度は誰もいない、人気のない廊下だ。ドラコはウィルに杖を突きつけられ、動けずにいた。あまりにも冷たい表情は彼と初めて出会った日のことを思い出す。

 

ウィルはあのグレンジャーを守る為に父上が自分に対してどう思っているかを探った。そしてよく思っていない事を聞いた彼はルシウスにこう説明しろと伝える。

 

「彼女といればマルフォイ家の純血思想というレッテルから逃れられ、周囲の信頼を勝ち取り結果として教師陣から特別扱いされる。とな。」

 

 

それは建前だとドラコにはわかった。そしてずっと気になっていた質問をウィルに投げかける

 

 

「1つ聞かせてくれ。君は、君はいつからそうなった?」

 

 

いつから君の仮面の下にその冷たい表情を隠すようになったんだ!?

 

 

 

 

 

 

過去の記憶が終わり、ドラコは水盤から顔をあげた。水が滴り落ちるのを気にもかけない

 

 

 

「殻を破った君は今、どこでなにをしてるんだい?」

 

ドラコは自分しかいない屋敷で呟いた。彼は不安に駆られ、腕を震わせていた。

 

「僕がやるしかないんだ。ダンブルドアを殺さないと僕達は殺される。」

 

ドラコの瞳には強い恐怖、そしてその中にほんの少しだけ覚悟が宿っていた。

 





記憶の部分は描写不足なので、前に投稿した部分を読み返していただけるとわかりやすいかもです。
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