灰色の獅子【完結】 続編連載中   作:えのき

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完結までちょっと巻いていくので手抜きですみません
解説と後日修正します


息子と母親③

 

 

ロドルファス・レストレンジ・・・

 

その名前を彼女は知っている。ベラトリックス・レストレンジの夫だった男だ。つまりウィルの父親(・・)ということになる。

 

バーのカウンターへ迷わず進む。そして彼女はロドルファスの背後に立つと声をかける。

 

「御仁、少々話がある。」

 

彼女はなんの躊躇もなく声をかける。しかし彼は振り返ることなく返事をする。

 

「おい嬢ちゃん。ここらは一人で出歩くものじゃないぜ。」

 

声から若い女だと知った彼はそう言う

 

「ここらで私より強い奴などいない。」

 

傲慢な彼女の態度を不審に思い振り返ると彼はとても驚いた様子だ。

 

「お前を知ってるぞ、エディアナ(・・・・・)・マクミラン。」

 

エディは顔色ひとつ変えることない

 

「ダームストラングの暴君、だがマルフォイ家の長男に叩きのめされたと聞いたぞ。」

 

彼は本人を前にしても淡々と言い放つ。

 

「今日はマルフォイ家ではなく、レストレンジ家の嫡男について話がある。」

 

その言葉を聞いた瞬間にロドルファスは素早く杖をエディに向ける。しかし彼女は表情ひとつ崩さず立ち続けている。

 

それを見た他の客は酒と荷物を置いてその場から一斉に逃げ出した。死喰い人の一人がいきなり杖を抜いたからだ。流れ弾に巻き込まれる可能性やロドルファスが返り討ちにあった場合に自分達が殺されるかもしれない。

 

 

しばらくの沈黙ののちに彼は杖を下ろして先ほどまで座っていた椅子に腰を下ろす。

 

「いい客払いになった、まぁ座れや。」

 

彼はバーのマスターをちらりと見て、こいつはダチだから問題ないと言った。

 

「お前、そいつのなんだ?」

 

ロドルファスは机の上にあった飲みかけのバーボンを一飲みするとそう聞いた。彼女は彼の隣に座ると、突然杖を抜いた。

 

「俺だよ。本来、ウィリアム・レストレンジとなるはずの男だ。」

 

エディが杖を振るうと一瞬でウィルの顔に変化する。まるでポリジュース薬が霧状になって空を舞う。

 

「そうか。」

 

彼はなんの迷いもなく平然と呟いた。まるで他人からどうでもいい事を報告をされたかのような反応だ。

 

ウィルはあまりの呆気ない反応に戸惑いすら覚えた。

 

「疑わないのか?」

 

「ベラによく似てる。」

 

ウィルはたしかにそう思った。ただでさえ似た系統の顔をしていて更に彼は今、女物の服を着ている。だが初めて会ったロドルファスは自分と似てないように感じる

 

「俺は貴方の妻を殺した。」

 

「アイツが選んだのならそれでいい。」

 

彼はなにも変わらない。

 

「俺達は知ってた。ウチの息子が生きてるってのはな。」

 

「・・・。」

 

ウィルはその言葉を聞いて言葉を失う。別れてから再会した事がないのに両親のその根拠はどこから得たのだろうと思った。

 

「俺たちは純血の一族。愛なんてないのさ。後継が産まれればそれでいい。」

 

ロドルファスは淡々とそう言い放った。ウィルはその言葉に少し衝撃を感じる。マルフォイ家の状況とはあまりに違うからだ。血筋を守るための政略的な婚約とはいえ、ルシウスとナルシッサの間にはたしかに愛がある。

 

「つまり、お前は俺の子とは限らねえってことだ。」

 

「・・・そうか。」

 

もし自分の父親が目の前のロドルファスでないとするならば彼はなんとなく正しいであろう答えを出していた。自分のこの才能がどこからやってきたのか、ベラトリックスはたしかに素晴らしい才能の魔女だ。しかし自分と比べたら見劣りする。なぜ“闇の帝王”が何度も、己の思い通りにならない、敵対する恐れのある自分を見逃していたのか・・・

 

だが確証も証拠もない。あくまでもほんの小さな可能性に過ぎない、調べなければ何も知らずに済む。ロドルファスもそういう考えらしい。

 

「いいか?立場をはっきりするぞ。俺はあの御方の目をかけてるマルフォイ家の長男と話してるだけだ。」

 

あくまでも自分は親子ではなく、互いの立場を尊重すると言った。

 

「それで俺に何の用だ?」

 

「・・・14年前のロングボトム家の事件について教えてくれ。」

 

ウィルは彼にそう聞いた。ロドルファスが親子として語ることはないと宣言したために直接聞くことはできない。ならばせめて手がかりとなる場所を聞くまでだ。

 

「いいだろう。ただし死喰い人になれ。」

 

「断る。」

 

「じゃナシだ。」

 

2人の会話は終わりを告げた。ウィルはロドルファスしかレストレンジ家の場所を知らないわけではないので、早々に立ち上がって酒場を後にしようとする。

 

そして酒場の扉に近づこうとした時、後ろからロドルファスの声が聞こえてきた。

 

「俺の昔の家は燃えちまってな、それを知ってるのは俺とあと1匹だけだ。」

 

彼はこちらに視線をやることなくそう言い放つ。ウィルは自分に興味がない様子だったロドルファスから、彼なりの優しさを感じた。

 

 

「そうか、災難だったな。」

 

少し笑みを浮かべたウィルはポケットの中に忍ばせていた小瓶の中の薬品を飲む。するとまたエディの顔に変身して扉から外へ出た

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜夜の闇横丁〜

 

 

 

 

 

 

 

彼女、いや彼はノクターン横丁をとても懐かしみながら歩いていた。マルフォイ家に迎え入れてもらうまで彼は自由にこの街を散策していたのだ。知っている店に覚えのある傷、シミに至るまで記憶してあった。時折かつてとは異なる部分を見つけては彼は微笑む。

 

 

そして彼は、彼の生まれ育った孤児院へたどり着いた。傷だらけでいつ崩壊するかもしれぬ壁に手入れのされなくて雑草が生い茂る花壇、真っ黒な扉だけはなぜか気品がある。

 

ウィルは扉を開けて中に入ると小汚い廊下が目に入る。ゴミや泥汚れ、食べカスなどを掃除しなかった為に床にこびりついている。独特な匂いは鼻を歪ませるもすぐに慣れる。壁に刻まれた落書きは以前より増えており、もう書く場所がない。

 

やる気のない職員は退屈そうな視線をやるだけでウィルに声をかけない。ここの子供が何人減ろうとも別に気にはしない、むしろ減らしてくれた方が部屋は広くなり仕事も減る。

 

そして広間に入ると沢山の子供達が大暴れしている。遊んでいる子が多いもののウィルの姿を見た瞬間に遊びをぴたりとやめる。そして彼らは恐ろしいほどに冷たく鋭く睨みつけた、ウィルは心が苦しくなる。

 

精一杯の抵抗である。ここの孤児院では稀に大人の魔法使いがやってきて引き取るのだ。だが多くの場合はそこに輝かしい未来などない。虐待などはむしろ幸せなくらいだ。呪いや薬の実験台にされたり、魔法薬を精製する上で必要な材料にされたりする。

 

だから自分達を引き取るべきでないと主張する為に彼らは精一杯威嚇して睨みつけるのだ

 

そしてホグワーツを卒業するまで引き取り手が現れなければ職につき、これまでの学費や教材費として借りた金を返さなければならなくなる。

 

それもまた恵まれている、一番不遇なのはホグワーツから魔法の才を認められなかった場合だ。ここは孤児院、18歳になれば強制的に追い出される。そこで待っているのは憂さ晴らしの日々である。

 

孤児院は子供のヒエラルキーが存在する。一番上は両親が純血の一族であるもの、次はホグワーツで学ぶもの、そして血筋のわからないもの、最底辺に位置するのがスクイブ。

 

最下層の彼らは戸籍上の理由からマグル扱いで職につけず、スクイブとして肉体労働に従事するしかない。

 

だが肉体労働の大半は屋敷しもべ妖精が請け負う為に需要は少ない。

 

彼らが取るべき最も賢い選択肢は自分の手足を切り落とすのだ。つまり人々の同情を引き、路上で物乞いをするしかない。

 

 

 

(やはり・・・なにも変わらないのか)

 

 

ウィルはこの孤児院には懐かしさの一つも感じない。不愉快なだけだった。この孤児院、そして無関心な者、己が恵まれていると知らずに無駄に過ごす者

 

 

(気に入らん)

 

 

ウィルは杖を抜き床に向けると呪文を唱えた

 

「“スコージファイ(清めよ)”」

 

ウィルの魔法がかかり床はちりひとつどころか長年こびりついた汚れをも取り除く

 

 

そして彼は床に落ちていた人形を見つける。この人形をマグルに見たてて踏みつけて遊ぶのだ。ウィルもした覚えがある。

 

 

彼はその人形に変身術をかけて長机にしてみせる。そして杖を振るうと一瞬で豪華な食事が並ぶ。

 

子供達は恐る恐るウィルの様子を窺いながら机に近づき、そして慎重に食べ物を口に入れる。無事なことを確認すると彼らはそれを奪い合うように勢いよく食べ始める。

 

 

(いつも俺は食いっぱぐれてたな。)

 

 

数少ない食料は奪い合う。腐りかけやレストランやパプで出た客の残飯や余り物が食卓ではなく床に並ぶ。それらは全員を満足させるだけの量はなく奪い合いなのだ。

 

 

端っこで気配を殺すように座っている女の子に気がついた。肌が黒く汚れ、服もボロボロで継ぎ接ぎだらけだ。

 

ウィルはかつての自分の姿と重ねると魔法でそれらを肌を清めてやる。しかし服はそのままだ。なぜなら綺麗になれば奪われて金に換えられてしまうからだ。

 

彼はポケットから好物のフィナンシェを取り出して女の子にこっそりと渡す。彼女は笑顔になりウィルを抱きしめる。彼は優しく頭を撫でてやるが女の子はウィルをぎゅっと離さない。自分をここから連れ出して欲しいと思ってるらしい。

 

だが彼にそれを優しく拒んだ。彼女は言葉を発せずに悲しそうな表情だけ浮かべる

 

ウィルは心を激しく痛めた。子供の時に見た景色と今見る景色は同じなはずなのに感じ方が全く違う。

 

「君だけ(・・)を特別扱いにはできない。」

 

ウィルは彼女を助け出してしまうと他の子供達も助けなければならない義務が生じる。そしてもちろん全員を救うことはできない。

 

「だが待っててくれ。いつか必ず俺は君達の暮らしを明るくしてみせる。」

 

彼は自分の理想を果たすと、より一層心に誓った。限りなく恵まれた自分が恵まれない子供達を救う義務があると決めていた。

 

 

ウィルはその子をなだめ、職員の元へ向かう

 

「17年前にここに来たウィリアムの記録が見たい。」

 

彼の言葉に職員は怠そうな顔をして小さな机の引き出しに視線をやる。そしてそれを開けるとバインダーがあり、それを一枚ずつめくっていく。そしてようやくたどりつく

 

 

 

***

 

 

1980年11月15日

 

 

生後数ヶ月と思われる男の子が玄関先に置かれていた。焦げ臭い匂いのする毛布に包まれており、中に黒い杖、そしてウィリアムと書かれた紙のみが入っていた。

 

 

***

 

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