灰色の獅子【完結】 続編連載中 作:えのき
お久しぶりです。
1年ぶりくらいですね。
お待たせした人がいたら本当にすみません。
投稿する余裕が本当にありませんでした。
でも必ず完結させます。
かなり人によっては閲覧注意な描写があります。
自分にとっては大事な話ですが、本編とは関係ある最重要な話ではないので、苦手な方はスルーお願いします。
「ジェニス、アンタ、もう限界だねぇ。」
頬のこけた老婆は淡々と言い放つ。ボロボロのローブからは清潔感などなく、どこを見渡しても汚れや解れが目に入る。
ジェニスは昔ながらの知り合いだが、この街において彼女に勝る医者はいないと確信している。この裏の世界で信用できる数少ない魔法使いである。
「あと私はどれくらいもつ?」
彼女はそう質問する。まるでその日の夕食を尋ねるかのように淡々とした態度に老婆はニタニタと笑った。
「もって数週間ってとこかね。」
笑みを浮かべ老婆は嘘偽りなく答えた。そう答えると大抵の人間は取り乱すか、絶句するはずだがジェニスは普通ではない。
「困ったね、まだやり残した事がある。」
彼女の心の中にかつての記憶が蘇る。若い頃、自分に勝る魔法使いなしと風をきって闊歩していた。傲慢不遜で運命など自分の都合が良い方へ捻じ曲げる気概だった。
『呪われた家の忌子はより強力な怪物を産み出すであろう。進む道、そして選択の果てにこの世に破滅か安寧を与える。』
高名な占い師に告げされた預言である。
死ぬ間際であってもまだジェニスを縛り付けている。
「例の弟子かい?あの問題児。」
ケタケタと笑いながら老婆は言った。有望な芽を見聞きするのは彼女の数少ない楽しみだった。老婆もまた老い先短い、未来がどう転ぼうが彼女にはどうでもいい。ただ今を楽しむ、それだけだ。
「昔、もう一人いたねぇ。怪物の弟子。」
これまでで一番彼女はニタリを笑う。好意的なそれではなく、少しばかりも悪意が包み隠されてない。
「なに、昔の話さ。弟子はもうとらないとあの時決めてたんだがねぇ。まぁ成り行きってやつさ。そうすべきじゃなくてもそうなってしまう。運命ってやつなのかねぇ。」
〜40年前〜
<アフリカ>
その時期は何故か数年の間、気温が記録的な低さが続いていた。その寒さの影響かアフリカ大陸は暗い影を落としていた。
独裁者による国民の無差別虐殺、浅はかで思いつきの政策で民を苦しめた。その国の背後にいたのは邪悪な魔法使いであった。
「
中年の荒々しい魔女が並み居るマグルの護衛、側近の魔法使いを薙ぎ払ってここまでやってきた。王室の奥まで侵入し、玉座に座る若者を睨みつける。かつて自分が手塩にかけて育てた弟子である。
妖しく輝く褐色の肌、額の中心で分けられた銀色の髪は艶やかに、紅く吸血鬼のような赤い目に生気は宿っておらず、静かにかつて師と仰いだ魔女を見据えた。
ゆらゆらとゆっくりと長く細い指でローブから杖を掴んだ。
茶色の杖、材料はクルミの木にヴィーラの髪。
その杖はジェニスが与えたこの世で最も強力な
クルミの木は革新的で多様な魔法を繰り出せるだけでなく、一度所有者に服従すると意のままに魔法を繰り出せる。故に闇の魔法使いが手中に収めてしまうと最強の最悪の杖になる。
ヴィーラ、シルバーブロンドの髪、月のような美しい肌を持ち男性を誘惑する魔法生物。そして怒りや自制心を失うと獰猛な怪物へ変身する。これはシルヴィの実の母親の髪である。故に我が子を護る為により強力な魔力を杖へ宿すこととなった。
「国民の大量虐殺、そして次の狙いはマグルの多国籍軍をこの国に呼び寄せる事。」
一歩ずつ我が物顔でシルヴィへ近づきながら語る。
「兵士に服従の呪文で洗脳をかけ国へ返し、情報工作、また各国で化学兵器の暴発を誘導。混乱を招き攻め込むつもりだね。」
シルヴィの策はジェニスの言う通りである。独裁国を掌握。民へ虐殺する事で各国の軍隊を呼び寄せ、兵士を拉致の後に服従の呪文をかけて帰国させる。スパイとして世界へ放ち情報だけではなく兵器を暴発させる。
核戦争を起こすのは簡単だ。アメリカの大統領に“服従の呪文”を使い、核兵器のスイッチを押すだけである。
シルヴィは気だるそうに立ち上がった。そして側のテーブルに置いてあるパンを掴んだ。その様子を見てジェニスは眉をひそめた。
「綺麗なパンだ、ここじゃ誰もが欲しがる。」
彼の瞳にはジェニスを映していない。その先の遠くを見据えているようだ。彼の意図の読めない言動は昔からである。
彼は躊躇なくパンから手を離した。それは重力に逆らわず地面へ落ちる。
「ジェニス、このパンはこの世の縮図です。」
彼は屈んで自ら落としたパンを鷲掴みにする。
「相変わらず回りくどい男だ。」
何一つ変わらない姿に懐かしさを覚える。何を考えているかわからない男の子だった。産まれながら閉心術の使い手、意識や無意識という段階ではない。どんな魔法使いでも彼の真意を理解する事はかなわなかった。
ヴィーラのハーフだからなのか、心を探らせないのか、はたまた何も考えていないのか。誰もわからない。
わかるのはただ一つ、シルヴィは怪物である。ただそれだけだ。
霧の中の男、ジェニスはそう表した。
彼は無言呪文で掴んだパンの底を切り裂いた。
「こうやって汚れた部分を切り捨てれば綺麗な状態だ。」
彼はパンをかじり咀嚼を始める。ジェニスはそれを気にすることなく質問を投げかける。
「これが世界だとでも?」
「・・・。」
彼は無言で咀嚼を続ける。食べ終えるまで答える気はないらしい。
彼はテーブルの上に置いてあった鉄のグラスを呼び寄せると一気に飲み干した。中身は好物のココアだろう、猫舌なので冷ましてあるのだろうとジェニスは考えた。
「えぇ、この世は汚れた部分を切り捨てて平和だの、平等だの言います。だがこの汚いパンですら命がけで奪い合う者達がいる。」
やり方はどうであれ、シルヴィなりの正義なのだろう。この魔法使いが預言の子であるとジェニスは確信していた。そして間違いなく彼の存在は世界を破滅に導くであろう。
だから彼女は誰よりも早くここへきた。まだ疑惑の段階から強引に攻め込んだ。まだシルヴィという魔法使いが全盛期を迎える前に命を摘む。今の外見と幼い頃の姿を照らし合わせればなんとなく年齢がわかる。彼はまだ20才を迎えていない。
彼はいきなり激しく切り落としたパンの破片を踏み潰した。土煙が小さく舞った。そして焦点の合わないぼんやりした瞳が、突如として鋭く、まるで視線だけで相手を切り裂くかのように睨みつけた。
「この世は歪です。だから一度壊し、私が選別する。」
スイッチが入った。ジェニスに敗れた側近は主人の様子を見て畏怖した。自分達では太刀打ちできない魔法使いが以前、攻めてきたことがある。しかし当時のシルヴィは敵へ視線をやる事すらなく、蝿を殺すかのようにたった一撃の魔法で斬り裂いた。
その時ですら配下一同は震えあがった。ついにシルヴィが本気で戦うのだと理解した。
「それでいい。」
突如、ニヤリとジェニスは笑った。彼女は己の道は自分の実力で切り開くものと考える。彼の気概が自分の教えからきているのだと思わせられる。
「だが私が思うに、この世を汚しているのはお前だ。杖を構えろ・・・、さぁ殺しあうよ。」
命を持って止めなければお互いは止まらないだろう。エゴとエゴのぶつかり合い、決着は相手より強者であること。ただそれで決まる。
「相変わらず話の通じない人だ。」
シルヴィは手に持った鉄のグラスを真上へ軽く投げた。その刹那、ジェニスの心の中にはかつての思い出が蘇る。
(今更ながら思い出したよ、私とあんたは相性最悪だったねぇ。)
金属音が部屋に響き渡った瞬間に2人は同時に“
***
30分後
激しい土煙の後に決着はついた。舞台は室内であったはずなのに外へむき出しとなった。壁や家具の破片は塵となり、大地は無数の大きな切り傷、無数の隕石が降り注いだかのようにクレーターができている。
「もしお前がイギリスで生まれたのなら私を超える魔法使いになっていたはずだ。」
全身の服と皮膚をボロボロに切り裂かれ血が流れて続けている。肋骨も折れているようで左手で庇うように抑えている。
「いいえ、ジェニス。」
地面へ打ちひしがれている美青年は右腕が吹き飛ばされている。腹の肉がえぐられ口からも血が滴り落ちていた。
「もし私があの時、貴方に出会わなければ死傷者の1人にしか過ぎなかった。私もまた歪な世界に選別されていたのだ。だから私が・・・」
シルヴィの脳裏に出会った頃を思い出した。彼がようやく言葉を話せるようになった頃、飢えていた。彼の住む街は誰もがそうだった。
親に捨てられ孤児として生きていた。醜い大人に捕まり物乞いとして生活する日々を繰り返していた。だが誰もが飢えている。同じような子供はたくさんいた。仮に食料や金銭を得たとしても大人へ搾取される。
幼きシルヴィは限界が訪れていた。最後にいつ食べ物を口にしたか覚えていない。地面に横たわり自分の灯火が消えるのを待っているかのようだ。伝染病を媒介する蝿が自分にとまろうともエネルギーの消費を防ぐ為にそのまま受け入れていた。
そんな時、青白く美しい光が街を照らした。まるで全てを浄化するかのようだった。その光を見た瞬間にシルヴィは自分と同じ存在を初めて認識した。
『おい、生きてるか?』
そこには燃えるような美しい天使が立っていた。右手には大量のパンが入った袋、左手には細い木のステッキらしきものを持っている。
シルヴィはかすれゆく意識の中で人差し指を彼女へ向けた。初めてこの世に自分以外の普通じゃない、特別な存在がいるという事を知った彼は幸福から無意識に指先へ先ほどと同じ青白い光を灯した。
彼女は驚き手に持っていた袋を落としてしまう。中からパンが一つ、偶然のにシルヴィの目の前にぽとりと落ちた。
砂利にまみれたパンだったが彼は一心不乱にかぶりついた。枯れたはずの涙がボロボロと流れていく。久し振りに動かした為に顎に痛みが走る、口の中に砂が混じるも気にせず喰らい続けた。
『おい!待て待て!綺麗なパンをやるから!な?だから食べるのをやめろ!』
若き全盛期を迎えていたジェニスは慌てふためくもシルヴィは何度も何度もありがとうと言い続けた。
「後悔しています・・・。あと5年は必要でした。そうすれば世界を浄化できた。」
もはやシルヴィの瞳にはなにも映していない。あの時来ていたはずの死神を受け入れるだけだ。彼に死への恐怖はなかった。あの時、飢えて死にゆく誰かの分のパンを自分は食べた。その経験が彼に命の尊さと軽さを植えつけた。
「先生、ありがとうございます。」
彼は自分が踏みつけて砂利にまみれたパンの破片にそっと触れると息を引き取った。
世界を平穏をもたらすはずだった偉大なる魔法使いの命がはかなく散った。この世でジェニスにだけわかっていた。この弟子に必要な5年という年月より目の前の命の方が重かったのだろうと・・・
ここに来て新キャラです。
シルヴィは完結後に2部として
ウィルのダームストラング編、未来編として
関わってくるキャラクターです。
まずは今の1部を可能限り早く終わらせます。
新キャラ シルヴィについて
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詳しいプロフィールが欲しい
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久々だから あらすじ寄越せ
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とりあえずプロフィールとあらすじの両方
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まぁ好きにやればいい