灰色の獅子【完結】 続編連載中   作:えのき

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世界最強

 

 

 

 

 

 

 

 

宴を終えた後にジェニス達はスリザリンの監督生に連れられて彼らは地下牢へ連れて行かれる。合言葉を教えられ唱えると扉が開いた。寮の大広間へ向かうと存在感の薄い中年の男性がソファーにもたれかかるようにだらしなく座っていた。

 

黒のだぼだぼのローブ、上級生が側にいたジェニスにこっそり耳打ちをする。彼によるといつもこの格好らしい。流石に毎日着まわしているのではなく、同じメーカーの同じ製品を何着か持っていると信じたい。

 

肌は青白く、顎の鋭い中年の男だ。くしゃくしゃの茶色の髪に青い瞳だ。神経質そうな銀のフレーム、細いレンズの眼鏡をかけている。なにやら魔力を感じる。

 

「俺はグレオン、スリザリンの寮監だ。元々ダームストラング出身だから別に思い入れはねぇが、任されてる以上、職務は全うする。」

 

やる気のなさそうに頭を無造作に伸びた茶色の髪をボリボリ掻いた。その様子を見たスリザリンの生徒達は不安そうな顔、怒りを覚えている者もいる。

 

ジェニスはグレオンに対して真剣な表情を向けていた。彼の事は知っている。この魔法界で特異な存在である事も・・・

 

「担当は魔法薬学、夕食後のクラブで杖を使わない戦闘術を教えている。護身に興味があれば参加するといい。」

 

彼は気怠げにそういうと新入生達をひと通り眺めていく。

 

「俺の事が気にいらねぇやつはいるだろうが、文句は俺に参ったと言わせてからにしろ。挑戦はいつでも受けるし、罰則はめんどくせぇからナシだ。」

 

グレオンはそう淡々と語る。不思議と彼に挑もうとする気概を持つ生徒はいなかった。威圧されたわけでもない。敵意を向けていた生徒達も不思議と大人しくなってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

一人を除いてである。彼女が隙を見つけて行動を起こそうと考えた瞬間にグレオンは表情1つ変えずに言い放つ。

 

「おい、ジェニス。杖を抜くにゃまだ早ぇぞ。話は最後まで聞け。」

 

彼の指摘にジェニスは驚きを隠せない。行動を読まれた。これは開心術ではない、それだけは確かだ。敵意や殺意は出していない。

 

「気持ちはわかるが、生き急ぐな。答えを見失っちまう。」

 

彼女をたしなめるように語った。それから彼は寮の特色や詳しいルールやマナーについて新入生へ伝えた。

 

「・・・ま、こんなもんか。授業は明日の10時から、お前たちの最初の授業は【闇の魔術に対する防衛術】、マルフォイ先生だな。」

 

その名を聞いて新入生達は浮足立つ。彼らはあの有名なウィリアム・マルフォイの教鞭する科目が彼らにとってホグワーツで受ける記念すべき最初の授業だからだ。ジェニスは涼しい顔をしている、すると隣にいた男子が彼女へ声をかける。

 

「やぁ君のお父様の授業を受けられるなんて光栄だよ。ぜひ一緒に受けよう。」

 

汽車で出会った男の子である。ルドルフ・バーグ、彼もまたスリザリンに選ばれた。あの時、ジェニスは彼を追い払ったつもりだったが無駄だったらしい。むしろ興味を持たれたらしく、しつこく声をかけてくる。

 

大広間での夕食の時間に自分が名家の隠し子であり、遠い親戚がホグワーツに推薦した事で入学が決まったらしい。両親は既に亡くなっているが顔も知らないし、孤児院で育ったとのことだった。

 

ジェニスは無視を貫いたが彼は怯まなかった。目障りになり自分に付きまとう理由を尋ねたが、才能に惚れたとの事だ。

 

彼は孤児院や親戚に引き取られてからずっと魔法に触れ、多少は扱える。自分が今年の新入生の中で一番魔法を知っていると確信していたが、汽車での出来事を受けて才覚を感じたと語った。ルドルフの率直な言葉にジェニスは少し気を良くして警戒心を緩めてしまう。彼女はルドルフが便利だからと理由で側に置くことを許そうと思った。しかしそれは建前であった事に彼女は気がついていなかった。

 

 

 

***

 

 

 

次の日

 

 

 

 

〜“闇の魔術に対する防衛術”教室〜

 

 

 

 

 

 

 

ウィルは初々しい新入生達の前にして自然と笑みを浮かべる。外見はヴォルデモートとの決着がついた日から変わっていない。なぜなら分霊箱が運命の導きで完成した為、不死身の存在となったからだ。しかし肉体は若さを保つも精神は年相応に年齢を重ねている。

 

愛するルーナとの間に娘であるジェニス、恩人から名前を貰った。幼い頃は仕事で忙しくたまにしか会えなかったが、とても懐いてくれていた。しかしいつのまにか娘が激しい反抗期を迎えていた。彼の心情は嬉しさと寂しさが共存している。そんな年頃の娘がホグワーツへ入学した。せっかくなら自分か愛妻と同じ寮へ選ばれて欲しかったが、どこであれ娘は娘だとすぐに感じた。

 

 

自己紹介と名簿を読みあげを終えたウィルは彼らへ忠告を行うべく口を開いた。

 

「僕が守って欲しいことは3点。」

ウィルは彼らへ向けて言う。その際に娘のジェニスと目があった。彼は娘とはいえ他の生徒達と扱いは同じにすると決めていた。それが教育者として当然の事であると考えている。

 

「1つ、ホグワーツでの授業はまじめに受けること。」

 

ウィルの言葉に生徒達は大袈裟にうなづいた。みんな最初の授業だから一言も聞き逃さまいとしている。

 

「2つ、どんな事でも危険を感じたら報告すること。学校でも休暇中でも構わない。相談なら夕食後、僕の部屋へおいで。学業や将来の事でも構わないよ。」

 

出張でいない時も多いけど、とウィルは続けて言う。副校長として迷える生徒達を導こうとする意思を感じさせる。

 

「最後に3つ目、若者よ。どんな答えでもいつか見つかる。大いに道草を楽しめ!」

 

ウィルはくしゃりと少年のような笑顔を生徒達へ向けた。そして最初の授業を始めていく。

 

 

 

 

***

 

 

 

数時間後

 

 

 

 

ホグワーツでの夕食を終えた頃、ウィルの部屋をせっかちにノックする音が聞こえた。彼は入るように言う。今日も生徒が相談にやってきたのだろう。

 

その生徒が中に入ると彼は意外そうな表情を浮かべた。

 

「君が最初にくるとは思わなかったよ。ジェニス。」

 

反抗期真っ最中の愛娘の姿だった。相談に来る生徒は多くいるが、一番乗りにくる生徒が新入生の娘だとは思わなかった。

 

「なに、それがわざわざ出向いた娘に対する言葉なの?」

 

不機嫌そうにジェニスはウィルへ言い放つ。彼女は目ざとく彼の机を一瞥する。整理整頓された机の上に食べ終えた食器が置かれている。そして向かい合うように写真立てが2つ並ぶように置かれている。

 

1つは昔のマルフォイ家一族の家族写真。ジェニスとその両親と叔父であるドラコと妻のアステリアと小さな従兄弟であるスコーピオスが写っている。

 

もう1枚は父親の恩人の写真だ。ウィルがいつも夕食時に大広間にいないのは死んだ恩人の写真と語り合いながら食事をとる為だ。昔からの習慣が抜けないのと約束だからと彼は周囲の人達に伝えている。

 

「ここじゃ君は生徒だ。親子だからといって特別扱いするわけにはいけない。」

 

ウィルはジェニスへ諭すように語りかける。

 

「チッ・・・、まぁ単刀直入に言わせてもらうわ。」

 

ジェニスは舌打ちを聞こえるようにするとウィルへ命令するように言い放つ。

 

「あんたの力を私に授けなさい。」

 

「構わないよ、だが口の利き方も一緒に教えてないといけないね。」

 

ウィルはさらりと答える。片方しかない手で軽く振るうと食器は“姿くらまし”のようにその場から姿を消した。

 

「着いておいで。」

 

ウィルはジェニスを部屋の外へ連れ出す。そして鍵と結界をかけると、【外出中】というプラカードをドアに貼る。

 

それから彼女を城の7階へ連れて行く。ある壁の前で立ち止まる。ジェニスは不審な表情を浮かべてウィルを一瞥する。

 

すると音を立てて壁から大きな扉が現れるとそれはゆっくり開いた。彼女はこの存在を知っている。“あったりなかったり部屋”、正式名称は【必要の部屋】である。

 

中へ入ると部屋の中は決闘場となっており、部屋の端に黒い普通の人間と同じくらいの大きさの人形がポツンと立っている。

 

「ここは僕の修練場でね、普段は強力な仮想の敵と戦っているんだが・・・。」

 

ウィルは部屋を進み杖を抜いた。茶色の杖、長年のウィルの相棒であるセコイアの木にドラゴンの琴線を使用した杖である。

 

「あの杖を抜けよ、あの世界最強の杖。」

 

ジェニスはウィルに対して“死の秘宝”の1つであるニワトコの杖を使うように言った。

 

“死”が創った宿命の杖と呼ばれる世界最強の杖。かつて名だたる魔法使いがこの杖を所有した。最近で言えばグリンデルバルド、ダンブルドア、ヴォルデモートへと受け継いだ。そしてヴォルデモートから杖を勝ち取った魔法使いがウィルである。ニワトコの杖はウィルに対して忠誠を誓っており、彼が世界最強の魔法使いであるという証明になっている。

 

「そう僕に啖呵をきれる魔法使いはこの世で何人いるかな?」

 

ウィルは余裕そうに笑う。その隙にジェニスは一瞬で杖を突き出して魔法を放った。

 

初めから杖を握りしめ、ずっとローブの中で隠し持っていた。その上で意図を読まれないように閉心術を使用していたのだ。更に“武装解除の呪文”を無言呪文で放つ事でウィルの意表を突いたのである。

 

当然のように決着は一瞬でついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ親父、意味わかんねぇ。」

 

地面に倒れているのはジェニスであった。幾重に重ねた策を一瞬で打ち破られた。格どころが次元が違う。その上でニワトコの杖は使用していないという現実にジェニスは狼狽えていた。

 

「これから朝食前に一度だけ相手をしよう。手段を選ばない戦い方は褒めておくよ。」

 

そう言うとウィルはその場から背を向けて歩いていくと、その部屋から出て行った。取り残されたジェニスは激しく歯を食いしばり、自身の弱さを呪った。そして情けをかけられていることに対して屈辱を覚えた。彼は同じ武装解除の呪文、そしてダメージを与えないように加減したのだと今になってようやく理解した。

 

彼女は自分の野望を叶える為にウィルは手助けをしようとしているのだと感じた。そしてその期待に応えるべくジェニスは毎日この必要の部屋で鍛錬を重ねていくこととなる。

 

 






グレオン

年齢→36歳(ウィルの1つ下の代)
出身→ダームストラング魔法魔術学校
職業→ホグワーツ魔法薬学の教授
趣味→格闘技、武術クラブ
悩み→特異体質、昔の出来事を生徒に聞かれること、
戦闘力→X(相手、状況によって変動するため)
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