灰色の獅子【完結】 続編連載中   作:えのき

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例の品

 

 

 

 

〜【闇の魔術に対する防衛術】教室〜

 

 

 

 

 

新入生達は数週間経ち、学生生活に慣れきたようで教師陣の性格や授業の進め方を把握してきた頃だ。

 

【闇の魔術の防衛術】も闇の生物に対する生態や対抗手段を教えている。ウィリアム先生の授業は細かく丁寧でありながらも時折ジョークを織り混ぜる。集中力の途切れた生徒は目ざとく見つけて質問や雑談を振る。眠気に襲われたり、私語をする生徒には鼻を豚鼻に変えてふごふごさせるので皆醜態を晒さない為にも真面目に授業を受けている。

 

今日もスムーズに滑らかに授業を進めていく中で扉をゴンゴンと叩く音が響く。急な来客のようだ。ウィルはどうぞと扉を叩くものへ返事をする。ゆっくりと鈍い鉄の音が響く。

 

そこには腰まであるストレートで長い白髪と同じく胸まで伸びた白い髭。爬虫類のような乾いた瞳にしわしわの頬。ジェニスが初めて見る老人だ。

 

「あれはエムリスさん、エム爺って呼ばれてる。ホグワーツの管理人だよ。」

 

ルドルフがジェニスへそっと耳打ちをする。彼女はやはりこの男は便利だと思った。

 

「授業中、失礼します。ウィリアム先生。」

 

低いクジラのような声だ。背筋をぴんと伸ばし、すたすたと早歩きで闊歩する。灰色のローブから覗く腕は老人にしてはかなり筋肉質である。

 

「昔は相当な魔法使いだった。かなり・・・。」

 

彼はジェニスへそう耳打ちをする。彼女は歴史に興味などない。だから解説はもう充分だと思って話をもう半分しか聞いてない。

 

エムリスはウィルの耳元で何かを囁いている。生徒達には聞かれてはいけない事情があるらしく、彼は口を手で覆っている。

 

「なにを話してるの?」

 

ジェニスはふと疑問が浮かぶ。内容が気になってしまったのだ。あとで一日一度の決闘の後に本人に尋ねるのもアリだが、実父であるために少し気まずいのだ。

 

「サーペンソーティア。」

 

ルドルフは杖を手のひらの上に突きつけ、小さくそう唱えると小さなミミズほどの蛇が現れる。手のひらの上に現れた蛇はチョロチョロと舌を出しており、彼の顔を見る。

 

そしてルドルフはジェニスをちらりと見る。

 

「先生の側へ行けって命じて。」

 

「オーケー、【前の男の近くへ行け】。」

 

ジェニスはルドルフの指示に従って蛇語でシューシューと話す。すると小蛇は任せてと言うとルドルフは地面に手のひらを降ろす。蛇はにょろにょろと蛇行しながらウィルの元へ向かう。

 

そして彼は耳を手のひらで覆って何かをつぶやいた。すると小さな蛇の背中に耳が生える。ルドルフの耳だ。

 

「どこで覚えたの?」

 

ジェニスはルドルフが器用に呪文を使いこなす様子を見て不審に覚える。実用的でも戦闘用ではないのに彼がそれを知っている事が不自然に見えたからだ。

 

「家系が古くてね。ちょっとだけ詳しい。」

 

ルドルフはウィルの足元で待機する小蛇から2人の会話が聞こえ始め、ジェニスへ静かにと言う。頭がキレる男だと彼女は彼を高く評価しているからか、ジェニスは素直に静かに待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「“例の品”がまた(・・)見つかりました。」

 

エムリスは含みのある言い方でウィルへそう報告している。彼の顔が歪んだのを生徒達は見逃さなかった。

 

「場所はどこです?」

 

ウィルはすぐさま彼へ尋ねる。

 

「ある家柄の倉庫に放置され、その者がボージンアンドバークへ売りに出したようで。」

 

彼はそう聞くとすぐに口を開く。

 

「緊急を要しますか?」

 

「えぇ、魔法省から速やかに要請が・・・。」

 

ウィルは溜息を小さく吐く。だが不思議と小さく笑みを浮かべていた。彼は古い友人達を思い出しているからである。

 

「2人とも人使いが荒いな。」

 

「それでマグゴナガル先生に私が自習を監督する様に指示を。」

 

「わかりました、ではお任せします。」

 

マクゴガナルとエムリスの手際の良さを感じつつ、ウィルは彼から少し離れて距離を取り口を開く。

 

「すまないが、今から出張になった。各自で自習をするように。私語は厳禁。わかったね?」

 

ウィルは杖を振るうと中年の男性の顔へ変わる。何処にでもいるおじさんの姿だ。気難しそうで神経質な銀行員といった所だろう。金属の縁の眼鏡がきらりと光る。

 

一瞬の変装に生徒達は驚きの声をあげる。ウィリアム先生の外の姿なのだろう。彼はすぐに“姿くらまし”でその場から消え去った。

 

「前から気になってたんだけど“フィニート(終了呪文)”でバレない?」

 

ジェニスはルドルフへ尋ねる。頭の良さと自分より知識があることも認めている。自分が興味をあまりそそられない分野を彼はカバーできると考えている。

 

「それは防御魔法である程度は防げる、おすすめは“レベリオ(現れよ)”。それすら防ぐのが七変化ってのがある。」

 

外見上の特徴を自在に変化させることができる能力、特異体質のようなものだ。

 

「へぇ、それは習得できるもの?」

 

「いいや、生まれつきの才能だ。後天的には習得できない。」

 

その後、ひとまずは自主の時間を終えてから彼らは大広間での夕食の時間となった。その時にルドルフは周りの目を気にしながらジェニスへ盗み聞いた内容を語る。

 

全てを知った彼女はその“例の品”について興味を抱いた。ウィルへ要請が来たという事は魔法省の手に負えないという事だ。そうルドルフへ告げる。

 

「手に負えない代物かウィリアム先生に思い入れがある品。彼でなければならない理由があるのかもしれないよ。」

 

ルドルフの言葉にジェニスはにやりと笑みを浮かべた。娘としての勘だ。思い入れがある品、そしてその人物は1人しかいない。

 

「もしかして私の“祖父”?」

 

「僕もそう思った。闇の帝王に関する品じゃないかって。“例のあの人”の品。つまり“例の品”。」

 

ルドルフは意気揚々とそうジェニスへ伝える。彼らの推測が正しければ全てが腑に落ちる。しかしそれが正しいかどうか確かめる術が自分達にはない、ジェニスはそう言った。

 

「いいや、ツテがある。“ボージンアンドバーク”。休暇中に聞きに行くんだ。」

 

「部外者にそんな秘密を教えるわけない。他の方法を探すべきよ。」

 

「いいや、僕は部外者じゃないんだ。」

 

「まさか・・・。ボージン&バーグ(・・・)。」

 

にやりとルドルフは笑った。彼の家名はバーグ。ボージンアンドバークの店名の由来は創業者の2人の家名だ。彼はその数少ない遠い親戚なのだと彼は言った。そして2人はクリスマスの休暇に店を尋ねて“例の品”が何か尋ねると決めた。

 

 

 

 

 

 






ジェニス・マルフォイ


年齢→11歳
戦闘力→Bランク
趣味→修行、お菓子作り
特技→蛇語、閉心術
得意科目→全部
苦手なもの→母の気まぐれ、父の存在
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