灰色の獅子【完結】 続編連載中   作:えのき

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お待たせしてすみません。インターンやら選考やらでなかなか投稿できませんでした(土下座)

“名無しの権兵衛”さん、“しん宝島”さん、誤字のご指摘に感謝です!


クィディッチ

ウィルとハーマイオニーが校舎を歩いていると目の前にハリーとロンがいるのを見つけ早歩きで2人に追いつく。

 

「やぁ、ハリー」

「あ、ウィル!それにハーマイオニー!」

「やぁ…。」

 

 

 

ハロウィンの事件後、ハーマイオニーとハリー、ロンは仲直りをしたらしい。彼女の性格も少し丸くなり、自分本位さが薄れた。

 

ダンブルドアはある生徒がトロールを制圧したと皆へ報告をした。ウィル達が関わったとは明言しなかったが、同室であるネビルが3人が部屋に戻らなかったのに気づき、監督生に報告し、やがてグリフィンドールの生徒達が探しまわったらしくバレてしまった。

 

取り囲まれ真相を尋ねられた際に隠す事ではないとウィルが事情の原因であるロンの軽口を伏せて話した。

 

寮内ではウィルだけでなくロンやハリーまでの評価も高まった。話を聞きたいと言ってくる上級生らに、ウィルは『これからハーマイオニーと図書館へ行くから』と断った。

 

だがロンだけは未だに懐疑的な様子でこちらを見ていた。

 

 

 

それはさておき、ウィルとハリーの2人は箒を持ってコートへと向かっていた。今日は2人のデビュー戦でもある。

 

表情の硬いハリーはいつもと変わらない様子のウィルをチラリと見る。

 

「緊張してる?」

「いや、全然。ただのお遊びって思えば楽になるさ。」

 

ウィルはさらりと言ってのけるとハリーはクスリと笑った。すると彼の両肩が少し重くなる。

 

「おっとマルフォイ家のボンボン様のおなりだ!」

「やっぱり言う事は違うぜ!」

 

赤毛で少しガタイのいい男の子が片方の肩に2人ずついる。まるで分裂したかのような感じだが双子である。

 

「やぁフレッド、ジョージ。俺は血を裏切る長男らしいぞ?」

 

ウィルは少し悪そうな顔を浮かべて自虐してみせる。そのまま『あまり期待しないでくれ。』と続ける。

 

双子は顔を見合わせ、同じタイミングでウィルを見る。2人はニヤニヤとした表情である。

 

「おやおや、弱気なのかい?」

「それともビビってる?」

 

「結果は出すさ、でも期待されてない方が相対的に僕の評価があがるだろ?」

 

煽ってきたのでウィルは軽く蹴散らした。すると双子はヒューと口笛を鳴らす。

 

「おっとウィリアム、お前には期待してるぞ。もちろんハリーもな。」

 

背後からグリフィンドールのキャプテンであるオリバー・ウッドが背後から追い抜いていった。

 

 

 

***

 

 

 

〜クィディッチ場〜

 

 

 

 

試合開始の宣言と共にクアッフルは宙へ投げられる。ウィルはウッドからの指示で即座にゴール前へ全速力で飛ばした。

 

クアッフルはグリフィンドールのアンジェリーナが掴み、ウィルへとロングパスをした。

 

パスの軌道のズレから箒を少し減速させ、移動してキャッチすると同時にクアッフルを思い切り対角線上の一番左側のゴールへと投げた。

 

スリザリンのキーパーはウィルの素早い動きに驚きつつも比較的、飛距離があったため指先で弾いてセーブをする。

 

グリフィンドール生のがっかりしたような声と反対にスリザリン生から盛大に歓声があがる。

 

 

 

 

スリザリンのキーパーはホッと安心した様子を見せた。だが目の端にクアッフルを掴んでいる人影を捉える。

 

それはウィルだった。彼は今度は正面から見て一番右のゴールへ向けて左手で投げ込んだ。キーパーは反応する間もなくクアッフルを見送ってしまう。

 

 

一瞬で歓声が収まって静けさが漂った。

 

『グ…グリフィンドールの得点!ウィリアム・マルフォイがやりました!!!』

 

そして実況がゴールと叫ぶと大歓声が沸き起こる。寮生は獅子の入った旗を勢いよく左右に振っている者やハイタッチをしている者もいる。

 

 

『先日のトロール制圧のニュース!これがグリフィンドールの期待の新人です!初戦から頭角を現しました!!!!』

 

 

実況のトークにグリフィンドールは更に盛り上がりをみせる。

 

だが教師陣の専用席でマクゴナガルは冷静にウィルのプレーを分析していた。

 

 

(あえてキーパーにボールを弾かせましたね。やはり天才でしたか…。)

 

 

 

ウィルは少しズレたパスの僅かな隙から確実にゴールを決められないと判断した。だからキーパーの指でかろうじて弾ける場所をついたのだ。

 

キーパーからすれば開幕での好セーブ、油断をしないわけがない。だがウィルからすれば弾かせる事が前提のプレー、それにクアッフルの位置はおおよそ予想できる。

 

 

 

それからもウィルはもう一度ゴールを決めたころ、スリザリンのキャプテンのマーカス・フリントがウィルをマークするよう指示を出した。

 

『あ〜っとクアッフルを掴んだウィリアムに2人がかりで挟み込んだ!』

 

 

同じ世代の中では体格に恵まれているウィルだが、成熟した上級生の左右からのタックルはかなり効く。それに腕を押さえつけるようにぴったりついているので、パスができない。

 

そして片方の選手が手を伸ばしてウィルから奪い取ろうとするのを目の端で確認すると、クアッフルを自分の目の前に軽くトスしてヘディングで前へ飛ばした。

 

パスを受け取ろうと前にいた自分のチームのチェイサーがボールを受け取り、ノーマークのままゴールを決めた。

 

 

試合はどんどん進み、マークを自分に引きつけ味方へパスをするプレーを貫き60対0の有利な状況だ。

 

スリザリンチームからクアッフルを奪ったウィルは自分の周囲にマークがいない事に気づいた。そしてそのままゴールへ向けて前進していると背後から何かが飛んでくるのを察知した。そしてビーターの棍棒を持って微笑を浮かべているフリントがいる。

 

だがウィルは想定内だと言わんばかりに急停止して、飛んでくるブラッジャーめがけてクアッフルを全力で投げつける。

 

ブラッジャーの端へ命中させると、軌道をズラして身を守る事に成功した。だがクアッフルは勢いよく弾かれる。ウィルはそれを取りにいくが間に合わず、コートの外へ出てしまう。最後に触れたのはウィルのため、スリザリンのボールとなる。

 

「チッ…。」

 

ウィルはイラついて舌打ちをするが、観客は拍手をしている。少し冷静に周囲を見るとハリーが左右に振り回されている。まるで人為的に落とそうとしている。

 

「審判!うちのシーカーが妨害を受けている!」

 

ウィルがそう叫んだ瞬間にスリザリンの観客席から大歓声が響いた。どうやらウィルのミスで得たチャンスでゴールを決められたようだ。熱狂している観客のほとんどはハリーへの妨害工作に気がついてない。

 

「はぁ、もう慣れたもんだ。」

 

ウィルがハリーの側へ移動して駆け寄っていると、ピタリと箒は大人しくなった。彼は安心した表情でいる。

 

「ハリー、早く試合を終わらせてくれよ?予習がまだ済んでないんだ。」

「任せて、今スニッチを見つけた!」

 

偶然、ウィルの背後に光り輝く黄金のスニッチがあった。

 

「そうか、行ってこい。」

 

ウィルは軽く手のひらをあげ、そしてハリーはそれを思い切りパーンとタッチしてスニッチを掴まえようと全力で加速をする。

 

 

そしてハリーはスニッチを掴み、2人の鮮烈なデビュー戦を飾った。

 

 

 

 

***

 

 

 

〜図書館〜

 

 

 

 

試合終わりにウィルは図書館での予習に勤しんでいた。だがいつもいるはずのハーマイオニーがいない。珍しい事もあるものだと1人で自習を進めていると、クィディッチの試合を観戦していたらしく興奮した様子の生徒達にヒソヒソと話のネタにされている。

 

噂にされるくらいで自習をやめる理由にはならないので、無視して続けていたが、やがて直接話しかけられるようになった。

 

彼は司書に追い出される前に荷物をまとめ、足早に寮へと戻る。部屋へ戻るとハリーとロンが少し大きな声でなにかを話していた。そしてウィルに気がつくと、ロンは何か言いたそうなハリーを止めるような仕草をする。

 

「安心するといい、何があったかは聞かないさ。」

 

ウィルはロンから信用されていないのだという確信を持った。こういう問題は時間が解決するだろうと考えたため、特になにもしなかった。

 


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