プロデューサーとしての在り方   作:COOPER

1 / 4
無謀にも新作を始めてしまいました…COOPERです。
この作品はあらすじにも書きました通り、ほとんど自己満足です。不快な点などありましたすみません。
それでは第一話、どうぞ。


第一話 俺はやはり、月曜日が嫌いで仕方ない。

ピピピ、という無機質な機械音を不愉快に感じ、瞼を開く。独特なウザい視界のぼやけを目を擦る事で解消させ、徐々に覚醒していく意識を更に自分で醒ましていく。

昨日も残業で遅くまで働いていたせいで、後頭部が少しギンギンする。

あぁ、平日とは、そして労働とはなんと恨めしいものなのだろうか。学生の頃も十分忌々しかったが、社会に出てからは何十倍も憎く感じてしまうものだな。と、しみじみ思う。

そんな事を考えながらも鳴り続けている目覚ましを止め、ベッドから降りる。そんな動作で眠気は6割飛び、それを全て吹き飛ばす為にシャワーを浴びる。

シャワーを浴び終わった頃には、時刻は7時を指していた。いつも通りの朝。クソ月曜日。憂鬱しかない。某月曜日のたわわだか何だかみたいに苦痛を忘れさせるものは一切なく、そこに存在するのは社会から離脱したいという己の我儘だけ。働きたくねぇ…

と、まぁそんな幻想は放っておき。さっさと職場に向かうべく、俺は足早に家を出たのだった。

俺の職場は車で約20分。まぁまぁな距離だ。今日もその職場へと向かうべく、社用車のクラッチを繋げた。全く、何でこのご時世にマニュアルなんだよ。少しは社員を労えと心の中で会社に文句を言う。

そして数十分後、プロデューサーという世界で最も過酷でブラックでクソな職に就いている俺の職場である、「346プロダクション」が視界に入ってきた。うちの会社は何故か東京駅の様な見た目をしている。全くなんでこんな建物にしたのか。と、そんなことはさておき。俺はさっさと駐車場に車を停め、会社の中へと入った。

 

「おはようございます」

 

俺の鼓膜を震わせたその野太く、低い声の主は俺より1年程前に入社した武内さんであった。

武内さんはその若さで新プロジェクトの総合リーダーを務めると言う、中々の敏腕プロデューサーだ。

はぁ…羨ましい。俺もいつかそれくらいの人になりたいねぇ…とか思いつつも、仕事ができると絶対に仕事量も増えるからやっぱりいいや。と心中で諦めをつけていると、俺は挨拶をされていると言う事をすぐに思い出し、返す。

 

「おはようございます。今日もお疲れ様です」

「はい」

 

武内さんがそう返すと、俺達は歩きだす。そして俺は気になっていた疑問をぶつけたのだった。

 

「どうですか…?新しいプロジェクトとやらは」

 

俺が聞くと、どうやら中々調子が良いようで、武内さんは少し微笑みながら説明してくれた。

てかこの人なんで意図して微笑めないのかなぁ…今みたいに笑えば引かれる事も無いだろうに。と、思っても俺も人の事を言えない様な性格をしているので、そっと心の中で武内さんに謝罪する。ごめんなさい。

 

「はい、この間話していた三人にもアイドルになる事を了承して頂きまして…」

「あぁ、あの一人が中々頷いてくれなかったやつですか…」

 

武内さんが担当している新プロジェクト、通称「シンデレラプロジェクト」。

アイドルは普通、オーディションに来た人達を選考してユニットを組むのが多いんだが、ここ「美城プロダクション」はプロデューサーが個人的に良い、と思った女性をスカウト出来るのだ。よって、武内さんはオーディション枠で余った一人分をどうしようか…と悩んでいたのだが、俺が「高校生とかをスカウトしてみては…?」と提案した所、見事に見つかったようで。と言う事だったのだが、問題はこっから。どうやらそいつは中々アイドルになる事にイエスと言わず、四苦八苦しているようだった。しかし他のアイドルと会わせたところ快諾してくれた、との事であった。まぁ、上手くいったのなら何より。武内さんは一番尊敬している先輩なので、上手くいってるなら俺も嬉しい。

そんなこんな話していると、あっという間に其々の部署の部屋に着いたのだった。

 

「じゃ、続きは次に飲みに行く時に」

「わかりました。お互いに頑張りましょう」

 

と、言って別れる。俺達の部屋は斜め向かいである為、わざわざ挨拶すべきかと言われれば否だが。

 

「はぁ…」

 

俺は月曜日という事もあってか、それとも労働に対しての絶望からか、クソ重苦しい溜息を吐く。

そしてドアをゆっくり開けた。

 

「おはようございます。黒井プロデューサー」

 

飛び込んできたのは爽やかな女性の挨拶。しかし、全然爽やかな気分になる事は出来なかった。クソみたいな一日の始まりだ。

 

「おはようございます。千川さん」

 

俺はかなりテンションの低い声音で挨拶を返した。

俺に挨拶をしてきた人物の正体は一体全体何処で買ったのかと聞きたくなるような蛍光色のスーツに身を包み、明るめの茶髪をした事務員。千川ちひろ。

 

「大丈夫ですか?」

「はぁ…まぁ…大丈夫です」

 

俺は取り敢えず仕事出来るという事実を告げる為、大丈夫と返答した。しかし、本当は今すぐ帰りたい。マジで。ここしばらく休んでない。多分2週間くらい。

 

「無理でしたら帰っても大丈夫ですからね…?」

 

千川さんはそう言うが、ここで俺が帰ってみろ。俺が担当するアイドルは誰が面倒見るってんだ。それに、今日は撮影とレコーディングもある。しかも二つは違うアイドルで片方の撮影は埼玉に近い場所ときた。

勘弁してくれ…ただでさえクソ忙しいってのに遠方までとかマジでバックレるぞこの野郎…。いや、仕事はするけどさ。

 

「黒井プロデューサー?おーい、黒井望プロデューサー?」

「あ、ああ。すみません」

 

俺は千川さんが話しかけていた事に気付いておらず、そう言われて唐突に意識が冴える。まったく、こんなんなるまで働かせるとか鬼かよこの人は…更に訳の分からないエナジードリンクも売りつけてくるし…。などと思っていると、千川さんは少し目を細めてこう言った。

 

「今、何か失礼な事考えてませんでした?」

「まさか」

 

即答である。いや、なんで自分から死にに逝くんだよ。普通生きたいだろ。生物本能的に。などと心の中で茶番を繰り広げていると、部屋の扉が開かれる。

 

「おはようございます」

 

何もかもを透き通り、しかし何もかもを引き留めてしまうような美麗な声が、そこには確かに存在した。

ふと目をやると、そこには俺の担当アイドルである「高垣楓」さんが。

 

「ああ、おはようございます」

「プロデューサー、また働き過ぎですか?私たちを救うヒーロー…でも疲労は駄目ですよ?」

「は、はぁ…」

 

無理くり過ぎるダジャレに思わず言葉を詰まらせてしまうが、なんとか返答を喉から絞り出す。どうでもいいけど「絞り出す」ってやらしいね。マジでクソどうでもいいけど。

てかなんでヒーローなんだよ。喩えるなら「馬車」とかだろ。武内さんのパクリじゃねぇけどさ。

 

「今日のお仕事は…?」

 

ふと、楓さんから今日の予定を尋ねられたので慌てて手帳を取り出し、すぐに答えを言う。

 

「楓さんは…特に何もありませんよ。ていうか、オフなの分かって言ってますよね?」

 

俺の解は合っていたらしく、楓さんは少しバツの悪そうな表情を浮かべて、返事をしたのだった。

 

「だって家に居ても何もする事が無いんですもん……」

 

拗ねた子供の様に頬を膨らませ、あざとく言う楓さん。

ぐぬぬ…美人にこんな事されてグラつかない男なんているのか?いやいない。全く、そこに存在するだけでも世の男たちを魅了してしまうというのに、なんだってこの人はそういう部分を意識しないんだ。

 

「は、はぁ…。いや、まぁ職場に来たら駄目な訳じゃないんですけどね」

 

そんな事を言いながら、机の上に置いてあった週刊誌を手に取る。

表紙には「プロデューサー アイドルとまさかの熱愛!?」と、デカデカと書いてあった。同職だから気になり、ページを捲る。するとそこには、目元にモザイクをかけられた某有名アイドルが眼鏡をかけたスーツの男とラブホテルに入っていく写真があった。記事を読むと「昨夜、某有名プロダクションのAプロデューサーとそのプロダクションに所属するMが、ホテルに入っていく様子を偶然にも撮影してしまった。これは芸能界にとっては中々由々しき事態なのではないか…?」と記述されていた。

確かに拙いよなぁ…担当アイドルに手を出すって。これが紛れもない事実で、尚且つ色んなとこまで広まれば業界から干されるのは当たり前だし、何より元から知名度のある人間だ。まず日本じゃ暮らせなくなる。まぁ日本で暮らせなくなった元芸能人が行く場所と言ったらハワイくらいか。そんな事はどうでもいい。ていうかどうやってアイドルと恋仲になるんだよ。絶対無理だろうが。と、まぁ考えていると楓さんがいきなり、記事を覗き込んできたのだった。

 

「あらら…。大変な事になってしまってますね…」

「本当です。プロデューサーもプロデューサーですが、アイドルもアイドルです」

 

俺がそう答えると、楓さんは少し驚いたような表情を浮かべた。

 

「てっきりプロデューサーさんはこういうのいいっていう人だと思ってました…」

 

楓さんの中での俺のイメージどうなってんだよ…と、思わずツッコんでしまうが、一応過去の俺の言動を同時に振り返った。

うん。俺やっぱりそんな風に思われるような事してないね。何でそうなったんだよ…

 

「一体どんな言動からですか…。俺普通に職場恋愛苦手っつーか、無理なタイプですよ…」

 

だって面倒臭いじゃん。職場ってただでさえ人間関係に気使って精神ゴリゴリに削られてるってのに、そこに恋愛も…。明らかに無理だね。どう考えても絶望。

 

「あらら、ならプロデューサーさんはまだ結婚願望とかはないんですか?」

 

楓さんはまるで保育士に知らない事を尋ねる園児の様に、興奮しながら話しかけてくる。いつぞや、何処かの誰かがイギリスのジャーナリスト、ジェレミー・クラークソン氏の事を58歳児と揶揄していた。これは揶揄ではないが、楓さんをそういう風に風刺するならば、25歳児という表現が当てはまるかもしれない。いや、それはさすがに失礼か。

 

「何々?何の話?」

 

そこで、部屋に俺たち以外の声が木霊した。

少しウェーブのかかった茶髪を後ろで束ね、パンツスーツを纏ったオトナな雰囲気の女性。川島瑞樹はノリノリでそう、乱入してきたのだった。

 

「職場恋愛どうこうって話っすよ」

 

質問された為、軽くそう答える。

しかし、俺は答えた事をすぐに後悔したのだった。

 

「職場恋愛!?憧れるわねぇ…」

 

ほら、これはどう考えても後悔の要素しかないだろ。

俺は知っている。こうなった川島さんを止められる者はいない。

 

「でもプロデューサーさんはあまり良く思っていないようで…?」

 

楓さんは口元を隠し、眉の角度を少し八ノ字にして、悲劇のヒロインの様にそう言った。今ここでその発言は卑怯過ぎると思う。それじゃまるで、ここにいる俺だけが敵みたいに扱われるでしょう。

 

「あれ?てっきりプロデューサー君はそういうのアリだと思ってたわ」

「だからその根拠はどこに…」

 

だから何で?俺どこでそう思わせる事言った?マジで覚えてねぇぞ…いや、無意識って事もあるな…と考えてみるが、やはり身に覚えがない。俺が自分の言動について見直していると楓さんがふと、俺にまた質問を投げかけてきた。

 

「でも、他の部署でもあるんですよね?職場恋愛」

「ま、まぁ…耳にした事は…」

 

実際、そういう例を見た事がある。アイドルがプロデューサーに恋愛する。その逆も。だが、結果は全て同じ。皆身を滅ぼしていった。

だからこそ、俺は職場恋愛なんてしない。大切なアイドルたちだ。そんなつまらない劣情で人生を台無しにしてほしくない。

 

「でもプロデューサー君、恋愛するにも出会いなんてないでしょ?」

 

川島さんの火の玉ストレートが俺の心にデッドボールゥ!!

ちょっと酷くないすかねぇ…。いや、確かに出会いなんてないんだけどさ。

 

「こんな職場に就職したら、出会いどころじゃないですよ」

 

俺が笑いながら言うと、二人も笑う。確かにクソでブラック過ぎる職場だが、癒しがないと言えば嘘になる。とは言っても、休み取れないのはやっぱりクソだ。

と、そこで俺は最初のスケジュールの時間が近づいている事に気が付いた。

 

「それじゃあ、俺、そろそろ行かないといけないので」

 

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃい」

 

俺が言ったことに対して、二人はそう挨拶を返してきた。その落ち着きのある二つの声音で心が一瞬、安堵する。

さて、今日もクソで遣り甲斐のある仕事をしてきますか。




誤字脱字など御座いましたら、ご報告お願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。