プロデューサーとしての在り方   作:COOPER

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お久しぶりです。COOPERです。すみません、遅くなってしまって。
今回の話はこれからに繋がる話ですので、あまり面白くないと思う方もいるかもしれません。まぁ2.5話くらいに思ってください。
それでは第二話、どうぞ。


第二話 疲労が重なる中にも、癒しは微かに存在するだろう。

人間は何故、働くのだろうか。楽しみ?生きがい?そんなものじゃない。生きがいで仕事している人間なんて偽善者だ。誰もが心の中で働きたくないと思っている筈だ。

皆、好きな事をして生きていきたい。至極当然だ。人間とはサボり怠ける生き物なのだから。昨今は「YouTuber」という職も出てきてる。それで稼げるんだから凄い時代だよな…。って、そんな事考えてもしゃあねぇか。俺なれる訳じゃねぇし。

 

「はぁ…」

 

また溜め息を吐いてしまう。全く、俺は何の為に働いてるんだ。いや、生きる為か。この仕事、内容はクソキツいけど給料は良いし。しっかし、使う機会がない。貯金ばっかり溜まっていく。老後には良いかもしれないけれど、何だか他の人に比べてとても損している気分だ。食っていくのには困らないんだけどね。でもさ、ほら、なんつーの?遊べる時に遊んでおきたいっつーの?もう24だけどさ。

 

「はぁ…」

 

溜め息。マジでよくねぇな…リラックス効果とかストレス解消とかに良いっていうけど、同時に幸せが逃げるとも言う。勿論迷信だろうが、気持ちの問題だろう。貧乏揺すりで金が逃げてくってヤツと一緒だ。

そんなこんな考えながら、青になった信号に連動するようにクラッチを繋げる。

目の前に目指してた場所が見える頃には、時は既に12時を回ろうとしていた。幸い撮影は15時からなので、スタジオの下見に来ていたアイドルを拾う。

停車可能なところに車を停め、スマホを開く。

 

「着きましたよ」

 

するとすぐに返信が返ってきた。

 

「了解☆今行くぞ☆」

 

うぜぇ…。なんでわざわざ☆を付ける必要があるんだよ。それ付けたところで言葉のニュアンスとか全然変わらねぇだろ。

などと意見を心中で毒づいてると、唐突に助手席のドアが開かれた。

 

「おまたせ☆」

 

高めのテンションで登場したのは、俺が担当しているアイドルのうちの一人、佐藤心であった。

ウザいテンションとはいえ、挨拶を返さないのは失礼なので返す。

別に嫌いって訳じゃないんだけどね、どうしてもこのノリについてけねぇ…

 

「お疲れ様です。すみません、わざわざスタジオまで来てもらって」

「偶々近くに泊まってたから大丈夫だぞ☆」

「うす」

 

それは幸いだ。わざわざ家にまで迎えに行く必要ないし。ぶっちゃけ東京の朝昼って場所によってはクソ混むんだわ。マジで。

なんてどうでもいい愚痴をまた心の中で呟く。

 

「でも、気を付けてくださいね。変なとこに泊まって変なコトしてると、スキャンダルになりますから」

 

俺がそう警告すると、佐藤さんは少しニヤけてこっちを小突いてくる。

 

「あれれー?もしかして心配してるのか☆」

「当たり前じゃないですか。担当アイドルなんですから」

 

当たり前。担当アイドルがスキャンダルで芸能界引退…なんて事になったら佐藤さんにもダメージはデカいし、俺にも飛び火してくるだろう。それは是非とも勘弁してほしい。

 

「て言うか、そんな相手居ないし…」

「は、はぁ…」

 

嫌味か。佐藤さんは何だかんだ見た目完璧だし、恋人なんてどうとでもなるだろ。別にウチの事務所恋愛禁止じゃないし。

佐藤さんは俺の顔を見つめると、いきなりニコッと笑顔になりまたからかってくる。

 

「この鈍感☆」

「からかわないで下さいよ。てか互いに恋愛なんてしてる暇ないでしょ」

 

俺が佐藤さんにそう言うと、彼女は不貞腐れるかのようにあざとく頬を膨らませ、そっぽを向いて頬杖をついた。その姿を見て、確かにこの人は26歳だ。と納得する。でなければこんな自然に色気を出す事など出来ないだろう。見た目は確かに童顔で幼く見える。だが仕草や艶の付いた唇、どこか儚げな視線を見ると「あぁ、この人はやっぱり年上なんだな」と改めて実感させられる。

 

「んで、時間もあるし。昼飯でも行きますか?奢りますよ」

 

俺がそう提案すると佐藤さんは機嫌を直してくれたのか、今までの態度が嘘のように明るくなる。そしてすぐに話に食いついてきた。

 

「本当?やったー☆はぁとお寿司が食べたいなぁ☆」

「承知しました、姫君殿」

 

皮肉交じりに軽口を言う。まぁ特にそれで場の雰囲気が悪くなるという事もなく、俺はまたクラッチを繋げる。

 

「あ、どうせだから美優ちゃんも誘う?」

 

佐藤さんは既に呼ぶ気満々のようで、スマホでラインを開いて準備している。

しかし、二人かぁ…。うーん…俺の財布が心配だ。今手持ちあんまないし、寿司屋だから恐らくカードも使えないだろう。いや、偏見か?

まぁ別にいいか。俺の職が成り立ってるのもアイドルの皆さんが居てこそだし。

しかし、ある疑問が一つ。

 

「ていうか、三船さん今何処に居るんですか?確か今日のレコーディングは18時からじゃあ…」

 

俺がそう懸念の声をあげると、すぐに佐藤さんはそれを潰す回答を返してきた。

 

「今連絡したら最寄り駅通る電車に乗ってるって言ってたぞ☆」

「了解です」

 

何と言うご都合主義的展開……。しかし、ならば話は早い。すぐに駅に向かおうじゃないか。

俺は駅へと行く為にウィンカーをあげた。

 

「あのさ…」

 

やけに落ち着いたトーンで語り始めた佐藤さん。いつもと違うその声音に少し驚きつつも、すぐに冷静に考える。何についてかを。ただ、何か物凄く嫌な予感がする。

 

「何です?」

 

俺がそう、何気なく返す。

 

「エンガワ、美味しいよね」

「……はい?」

 

エンガワオイシイ?いや、確かに気持ちはわかるけど…何故それをわざわざ溜めて言うんだよ。普通に言えば良いじゃねぇか。

などと心の中で文句を垂れる。

 

「いや、確かに旨いのは認めますけど何故今それを…」

「なんとなく☆」

 

俺の問いに対して佐藤さんは開き直るかのような態度で返してきた。

ほらほら、そういうとこだよ。そう言う事してるといつかマジでウザがられるぞ…

 

「は、はぁ…」

 

俺が間の抜けた返事をすると、佐藤さんはそのテンションに不満があったようで、上目遣いで小突いてくる。

勘弁してくれ…貴女、どことは言いませんがおっきいんですからあんまそういう風に動かないでくださいよ……

 

「あれ?なんか赤くなってる?」

 

佐藤さんはまるでお気に入りの玩具を手に入れた子供の様な態度になると、更にからかってくる。

 

「もういいですから。ほら、そろそろですよ」

 

俺は目的地に近づいていると言う事と同時にこの話題を切り上げると言う意味を含めて言った。それはどうやら佐藤さんにも伝わっていたようで、その後は何もしてこなかった。そして駅に着いて約数分……。三船さんが乗っているという電車がやっと到着し、俺たちはその見慣れた姿を目にする事となったのだった。

 

「お待たせしてすみません」

 

そう言って車に乗り込んできたのは、明るめの茶髪をして子犬の様な円らな瞳を持ち、どこか儚げな雰囲気を纏う女性であった。

 

「大丈夫ですよ、三船さん」

 

三船美優さん。俺が担当するアイドルだ。俺が現在担当しているアイドルは今日会ったアイドル4人。全く、こう見ると武内さんは本当に凄い。10人以上のアイドルをまとめてプロデュースするなんてバケモンだ。略してバケ。

 

「プロデューサーさんがお寿司奢ってくれるらしいぞ☆」

 

佐藤さんは三船さんが乗ったリアシートの方を見ると、綺麗なウィンクを決めてそう、変わりようのない事実を告げる。いや、別に嫌って訳じゃないんだけどね。

 

「いいのですか…?」

「ああ、いいんすよ。偶にはケアも必要ですし」

 

俺も少し身体を反らして後ろを向き、変な遠慮はしなくても大丈夫、という意味をはらませた言葉を放った。

 

 

× × ×

 

 

ほどなくして、俺たちは目的地の寿司屋に着いた。昼からやっている寿司屋は案外少なく、その中から店を選抜するのは大変……と思ったのだが、どうやら俺は佐藤さんの情報収集能力を舐めていたようだった。

 

「此処よ☆」

 

佐藤さんが指さして案内した場所は見るからに高そうな回らないお寿司屋さんだった。やべぇ…銀行で金降ろしてきたけど足りるか心配になってきたわ…

 

「んじゃ、とりま入りますか」

 

俺が店に入るように促す。そしてすぐに佐藤さんを先頭に入店したのだった。

 

「いらっしゃい」

 

現れた板前さんはいかにも、「The 板前」であった。いや、80%くらい俺の偏見が混じってるけど。ただ、気難しい性格してるだろうな…。と思わせる見た目だった。人を外見で判断するのもアレだが。

俺たちは取り敢えず、と空いていたテーブル席に座る。席は俺が一人、その向かいに三船さん、佐藤さんというものになった。

座ってすぐに店員の女性があがりを持ってきて、注文を聞いてくる。

まずは無難にまぐろとサーモン、はまちとえびであろうか。

 

「ではまぐろ、サーモン、はまち、えびを下さい」

「かしこまりましたー」

 

そう言ってすぐに板前さんのところに注文票を持っていく店員さん。はぁ…なんであんな元気に働けるのか。是非とも知りたいね。

 

「プロデューサー、目死んでる」

 

佐藤さんはあがりを飲んで少し息を吐いてから、そう言ったのだった。

 

「うっさいです。いつもの事です」

 

ほっとけ。俺の目が死んでるのは今に始まった事じゃねぇよ。中学くらいの頃まではこんなんじゃなかったのになぁ……

 

「プロデューサーさん、最後に休んだのはいつ頃ですか?」

 

今度は三船さんが。眉を少しハノ字にさせ心配そうに聞いてくる。その声音には心配や俺の体調を気に掛けてくれる感情が存在した。

 

「えーっと…確か2週間前くらいですかね…」

 

2週間。2週間だぞ。おい、346プロダクション。会社として機能してねぇんじゃねぇのか。なんだって俺はこんなアホみたいに働いてるんだよ。ふざけんな。

 

「そろそろ有給を使ったらどうでしょうか…?」

 

三船さん…心遣いはありがたいのですが、それをやったら貴女含め俺の担当しているアイドル達のスケジュールや仕事の打ち合わせが狂ってしまう。そんなんなるなら俺が過労したほうが何億倍もマシだ。

 

「まぁ、仕事と相談してですかね」

 

今はそれくらいの回答しかできない。とりまサマーフェスと秋のライブまでは休めねぇな。あそこで良い成績を残したら後はクリスマスライブくらいが大きな山場だろうし。

しかし、年末に休息は存在しない。何故なら年末特番、そして年始の特番がある。勘弁してくれよ…去年は地獄を見たからな……。まぁやっぱり大きな部署は可哀想だな。人数が多い分打ち合わせも多いだろうし、何より色々なスタジオに行かなければならないというのが辛すぎる。艱難辛苦とは正にこの事か。

そんなこんなしてると、お目当ての寿司が運ばれてくる。

 

「おおー、美味しそう☆」

「美味しそうですね」

「んじゃ」

 

『いただきます』

 

皆、声を合わせる。日本人特有の風習、今日も食を提供してくれる動物たち、料理人の人々に感謝。

まずはまぐろから攻める。

一口、まぐろを口の中へと入れた。まぐろは特有の鉄くさい味わいがあると思うのだが、ここのまぐろは違った。恐らく冷凍していないものなのか、甘味が口内を支配する。

 

「ふぅ…」

 

思わず安堵の溜め息が漏れる。あぁ…旨味で溜め息が漏れるとか凄すぎ……。とまぁそんな事はさておき。

 

「佐藤さん、今日の撮影どうですか?」

 

俺は懸念していた事を投げかける。佐藤さんはそれを見事にキャッチ。返答をしてきた。

 

「うーん、はぁとは特に何もなかったぞ☆」

 

ならば良し。まぁ何度か撮影した事あるスタジオだしそれが当然かもしれない。取りあえず、上手くこなしてくれればと思う。

 

「三船さんも、6時から高森さんのラジオですが、調子はいかがですか?」

「今日は朝から喉の調子が良くて…大丈夫そうです」

 

ならよかった。調子悪いのに無理に仕事させたら申し訳ないからね。効率的にも良くないのは目に見えてるし。

 

「兎に角、今日は頑張りましょう。俺も何かトラブルがない限り、撮影の際には居ますから」

「あら、プロデューサーったら優しい☆」

「ですから当たり前ですって」

 

いや、マジで当たり前。そっちでも何かトラブルあったら厄介だし。

俺はそんな事を思いながらはまちを口にする。

今日も世界は憂鬱だ。だがまぁ、こうやって飯を食うのは悪くない。労働とは恨めしいものではあるが、同時に必要なものでもある。

さて…。これからの勤務、頑張るとしますか。




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