プロデューサーとしての在り方   作:COOPER

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こんばんは、COOPERです。今回の回は結構気持ち悪い描写多いかもです(精神的な話で)まぁ、許してくださいw
あと、キャラ崩壊も注意なのでお気を付けて……
それでは第三話、どうぞ。


第三話 そもそも、持論は行き過ぎた自意識過剰だったのかもしれない。

少女は灰被りだった。

少女は理不尽に苛まれていた。

『シンデレラ』

それは御伽話。

それは夢物語。

現実ではないが、現実にあって欲しいと願う物語。

『アイドル』

それは憧れ。

それは希望。

この二つはどこか重なる。

合致している部分を照らし合わせると、僅かなズレは存在する。だが、根本を辿れば行きつく先は同義。

つまり、アイドルとは現実に唯一存在する『シンデレラ』なのだ、否。シンデレラだけではない。白雪姫、人魚姫や輝夜姫もそうだ。

ならば、俺たちプロデューサーは姫を輝きへの道へと導く者だろう。馬車は深く姫に関わる必要はない。

だからこそ、アイドルと恋愛をするプロデューサーはクソだと思う。自分を王子様か何かだと勘違いしているのではないのだろうか。俺たちはどう足掻いても引き立て役。主要人物じゃない。

俺はその理念の基、仕事をしてきた。

 

「お疲れさまです」

 

撮影が終わり、バンと言う照明が消える独特の音がスタジオ内に反響して間もなく、俺はセットから出てくる佐藤さんに言った。

 

「ありがとう☆」

 

佐藤さんはウィンクを決め、俺の言葉に反応した。

この人マジで凄い…凄すぎて凄い(語彙崩壊)。今回の収録はバラエティだったのだが、持ち前のトーク力とキャラ立ちでオイシイ機会を何度も獲得してた。やっぱりこの人頭良いわ。

 

「この後は美優ちゃんの収録?」

「はい」

 

汗を拭いながらそう、質問されたので答える。

その様はやはり美しく、どこか艶めかしかった。どう表現したらよいのか分からないが、佐藤さんの周りだけ空気や世界が違う様な…。いや、それとも少し違う。駄目だ、俺の語彙力じゃこの感覚を形容できない。

俺はそんな風に語彙力の乏しさに嘆きながらスタジオの扉を開いた。

出てみるとそこは異世界…などではないが、やはりこの感覚には慣れない。逆だな。スタジオの中が異世界なのか。煌びやかな装飾、高低差含め部屋全体が広いので嫌に音が木霊する感覚。どれを取っても異世界、異空間、異次元という言葉が当てはまる。

取り敢えず、これで佐藤さんの今日のお仕事は終わり。ただ、俺の仕事は終わらない。

しかし、しかしだ。今日は早く仕事が終わる。先程事務所に確認したところ、三船さんのラジオの収録が終わればそのまま直帰していいとの事だった。んで、武内さんにその事を話したらあの人も今日は大丈夫と。これは飲みに行くしかない。久しぶりで楽しみ過ぎる。今日はこれを生きる糧にして頑張ろう。

 

「プロデューサー、何かいい事でもあったのか☆」

 

トントン、と肩を叩かれたので歩きながら振り返り話を聞こうとすると、そんな話題を振られた。あれ、俺顔に出してたか?いかんいかん。楽しみは静かに期待せず。神様はクソ野郎だから幸せそうにしてると不幸にされちまう。これは俺の経験則な。

 

「いえ、特に何も。明日からまた仕事ですよ」

 

俺が変わりようのないクソみたいな事実を言う。

いや、変わるんなら変わって欲しいけどね。はぁ…俺もなろう系主人公みたいに異世界転生してチートで楽できねぇかなぁ…。こんな事考えるとかもう末期だなこりゃ。

 

「でも…なんだか嬉しそう」

 

佐藤さんはまるで高校時代、クラスに一人は居たであろう大人しい内気な少女の様に、珍しく蚊の鳴くような小さい声で話した。

俺はその言動に困惑を隠せず、狼狽してしまいそうになるがすぐに少し長い瞬きをする。それにより心には瞬間、平穏が齎された。

 

「ま、そう見えるならそうなんじゃないすか?」

 

微笑を含みながらそう言った。すると佐藤さんは少しテンション高めで反応した。

 

「もう☆何でそんなに他人事なんだよ☆」

 

あはは、という笑いを返す。

そう、これでいいのだ。これこそが馬車の役目。アイドルが輝けるステージ、つまりは城で実力を存分に発揮できるように。決して深入りせず、必要以上に干渉せず。会話はする。偶には飯にも連れていく。しかし、それに下心などは存在しない。こうは弁明しても納得されないのは理解しているつもりだ。だが、当事者にしか理解できないものというのは必ず存在する。決して王子になろうとする者たちを『誤謬を犯している』と軽蔑している訳ではない。決して彼らを『そんな関係は欺瞞だ』と侮蔑する訳でもない。ただ、彼らを嘲る。それだけだ。

同意義。そうかもしれない。だが、俺はそうは思わない。

彼女たちもいずれは凋叶棕の様に散ってゆくだろう。その時、初めて気付くのではないだろうか。自分が恋していたのは彼女本人ではなく、アイドルとしての彼女だったのだと。若造が何を偉そうに。

確かにそうだ。俺はこの業界に入ってから日が浅い。だが、そういう例を目にした事がある。だからこそ言えるのだ。

「お前が恋してるのは彼女であって彼女ではない」

そう、恋愛しているのはアイドルとしてだ。そして引退後もその幻影に惑わされる。

だからこそ、俺はアイドルとは恋愛をしない。

 

「プロデューサー?どうしたんだそんな暗い顔して☆情緒不安定か☆」

「え…?いや、なんでもないっすよ」

 

暗い事を考えていた為か、自然と顔が強張っていたらしい。それを佐藤さんに察せられて、思わず困惑の声をあげてしまう。

全く、自分のポーカーフェイスがいかにゴミか思い知られる。

そんなこんな考えているとあっという間に玄関に着いてしまった。

 

「それじゃ、お気をつけて」

「おう☆」

 

そう言い合い、佐藤さんと俺は別れたのだった。

さて、これから三船さんの収録だ。さっさとラジオのスタジオに行くか。

 

 

× × ×

 

 

収録スタジオに着いた頃には既に、時刻は17時。あと一時間でスタートだ。普通にやらかしたな…思ったより佐藤さんの撮影が遅れが響いてしまったようだ。はぁ…ただでさえギリギリのインだったのに更に遅れるとかマジで申し訳ない。

スタジオのレコーディング部屋に行くと既に準備が着々と進んでおり、どうやら俺は何もする事はないな。と再確認する。

取り敢えず、する事も無い為一旦収録部屋を出て、近くの自販機へと足を運ぶ。

今日は何を飲もうか。そこで視界にふと、黄色と焦げ茶色の奇抜なカラーリングのコーヒーが目に付いた。某ライトノベルで有名になったアレだ。甘くてMAXなヤツ。だがまぁ、今日は気分ではないので「香るブラック」とやらを押す。

ガコン、というゴキゲンな音が俺の鼓膜を震わせると、それに連動して腰を屈める。取口に手を突っ込み、缶を取る。そしてキャップを開き、少しだけコーヒーを口にした。

ブラック特有の苦さもあるが、同時にどこか飲み易さを感じるそのテイストに感心を覚えていると、トントンと俺の肩が叩かれた。

 

「お疲れさまです、プロデューサーさん」

 

振り返るとそこには女神が。なんて冗談は兎も角。少し上目遣いで、口角を上げながらそう、労いの言葉をかけてくれる三船さんの姿があった。

 

「お疲れさまです」

 

俺もそう、一言言う。その何気ない挨拶のみで大体の状況をお互いに把握し合う。恐らく一通りのリハが終わり、これから一服というところなのだろう。

 

「そこに座りましょう?」

「はい」

 

三船さんからベンチへのご招待が来たので、快諾する。

2、3歩進み隣のベンチへと二人で腰かける。三船さんが腰を下ろす時の動作にまるで現役高校生かのようにどきまぎしながら、俺も隣に腰かける。

腰かけてからもう一回、キャップを開く。そしてまた、コーヒーに口をつけた。ガツン、とくる苦味がまるで俺の意識に警鐘を鳴らしているようだ。必要以上に親密になってはいけない。

しかし、そこである事に気付く。そもそも自分程度がなれるような関係ではない。酷く醜い勘違い。ならば、少しくらい親密になっても大丈夫だろう。女子はイケメンにしか興味を持たない。

つまり必然的に俺はターゲットから外れる。

はぁ、なんと情けない事か。今まで散々雄弁垂れてきたのがまるで無駄だったかのようだ。持論を捻じ曲げるしかないのか。

 

「プロデューサーさん、いつもありがとうございます」

 

三船さんは紅茶から口を離すと唐突にそう言った。しかし、何か裏がありそうな一言だ。今更であろう事を何故今頃。

 

「どうしたんですか?いきなり」

 

俺は微笑しながら言った。まるで持論を今更変えた自分に説教し、問い直すかのように。

 

「いえ、ふと思ったんです。今こうやってお仕事できているのも、毎日ご飯を食べていけるのも、全てプロデューサーさんが居てこそだと言う事を」

 

残念ながらそれは少し違う。俺どうこう以前、三船さん自身が居なければそもそも論どうしようもない。今、ここに俺がいるのは三船さんが言う事の逆。

 

「それは俺じゃないですよ。三船さんが魅力的だからです」

 

俺が率直な感想を述べると、三船さんは顔を赤くして紅茶のペットボトルにまた口をつけ、目を右往左往させた。その様は普段の美麗な三船さんとはまた違う、彼女の可愛らしさを前面に押し出すものだった。何この人可愛い…

 

「取り敢えず、今日は頑張りましょう」

 

俺はこの一言に三つの意味をはらませた。一つはそのままの意。そしてもう一つは切り替え。最後はこの話の終焉。

その事に三船さんも気づいたのか、「ふぅ」と一息吐いてキャップを思い切り閉めた。

さぁ、後半戦スタートだ。

 

 

× × ×

 

 

今まではアイドルとの必要以上のコミュニケーションは駄目だと思っていた。しかし、これはよくよく考えてみると酷く気持ち悪い意見であった。まず第一に、自分に好意を抱くかもしれない、という懸念自体が誤謬だったのだ。先程も述べた通り女子はイケメンにしか興味を持たない。内面で男を選ぶ女など皆無だろう。ならば必然的に俺は違う。一体全体、俺はどこで勝手に勘違いを犯していたのだろう。何度も言うが、

『気持ち悪い』

この一言に尽きる。こないだまでの自分を殴り飛ばしたい気分だ。馬鹿にも程がある。甚だしいってレベルじゃねぇぞ。

 

「はぁ…」

 

溜め息。それには自制も籠っている。落ち着け、何事も本質を見抜くのが最重要。

そんな事今時の小学生でも解る。

 

「大丈夫ですか…?」

「ええ」

 

溜め息に対して、三船さんが反応してくる。ありがたい。こんな俺でも、誰かに気に掛けて貰える。その一言だけで一気に心がクールダウンした気がした。

そして、視界には朝も見た忌々しい俺の会社が入ってくる。

ウィンカーを出し、社員用駐車場に入る。

地下は今日の佐藤さんの撮影時に見たセットの様だ。地上では人が行き交い、常に何かしらの音が鳴り響き、車が後を絶えず行列を作る。それが入って一変。待ち伏せていたのは静寂、停車されている車。鳴り響くのはエンジンサウンドとロードノイズのみ。

適当な場所を見つけ、そこに車を停める。

二人とも無言で車を降り、挨拶を交わす。

 

「それじゃあ、お気をつけて」

「はい、プロデューサーさんも。お気をつけて下さい」

 

そう言って俺たちは別れた。

今日は様々な事があって疲れた。しかし、同時に再確認する事も出来た。醜態はだいぶ晒してしまったが。まぁ兎に角、この後の武内さんとの飲みを糧にもう少し、あと少し頑張ろう。

そう、自分を励まして俺は会社に再び入っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当は気付いていた、自分の気持ちに。しかし誤魔化した。そうすれば今日も世界は順調。自分以外は。本当は曝け出したい。私は…。その先の言葉を紡ぐの事が出来ない。それを言ってしまったら、そうしてしまったら、今のすべてが無くなる。保身だ。だがしかし、私は弱い。だからこうする事しかできない。私は狡い。だから自分の気持ちさえも誤魔化した。私は脆い。だからあの人の傍に居たい。

本当は知ってる。皆さん、プロデューサーさんの事をどう思っているか…。ならば、私はどうすべきか。分からない。ただ、あの人を思う気持ちは誰にも負けない。それだけは断言できる。しかし、その気持ちを表に出すのはきっと今ではない。現状からの逃げかもしれない。だけど、無理に今を変える必要なんてあるのか。否、それはきっと欺瞞だ。私はもういい歳した大人。高校生じゃない。大人には大人の世界、恋愛がある。だから、今は自分の中で理性を働かせる。

だから、今は……




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