プロデューサーとしての在り方   作:COOPER

4 / 4
お久しぶりです、COOPERです。すみません、年度末で色々と忙しく存在を忘れかけてました。久しぶりにUAやお気に入りの数を見て「!?!?!?」ってなりました。
UA3200突破、お気に入り67件、本当にありがとうございます!!自分程度の話を見ていただけるとは、なんとも喜ばしい限りです。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
長くなってしまいましたね、それでは早速第四話、どうぞ。


第四話 彼女達は彼女達なりに苦悩する理由があり、また俺も苦悩する理由が存在する。

何故、この職に就いたのか。それは今でも自分で分からない。切っ掛けという切っ掛けはそもそも存在したのだろうか。いや、きっと存在した。毎日変わりなく過ぎていく日常に飽きていた。呆れていた。諦観していた。だからこそ、何か現状よりも輝いたものに惹かれた。

そんな時、テレビに映る人々が見えた。何でだろう、当時の俺からしたらまるで別世界の住人の様な…

それからだ、俺は異世界に行く為に様々な準備をした。あそこには自分の求めていたものがある。そんな気分になったのだ。そこからはトントン拍子。自分がいける一番上の偏差値の大学へ進学した。ここでは特別なにかあったわけでもない。割愛しよう。

話は飛んで飛んで、ついに就職だ。俺は業界最大手と謳われている「三城プロダクション」へと入社した。結局なんで就職したのか分かってんじゃねぇか、と思うかもしれない。だが、残念ながらこれはあくまで切っ掛けなのだ。その時はプロデューサーになろうなんて当然思ってなかった訳だし。そもそもプロデューサー枠に応募したんじゃねぇし。

おっと、話が脱線したな。兎に角、理由が分からないんだ。

笑っちまう話だよな。憧れてこの世界に足を踏み入れたのに、文句しか言わない。結局何がしたかったんだろうな、俺。

 

「乾杯」

 

俺と武内さんの声がハモると同時に、グラスのジョッキがぶつかる音が心地良く響く。すぐにジョッキを傾けて、小麦色の液体を喉に通した。爽やかなのど越しを感じ、意識が先程に比べて覚醒したと錯覚を覚える。

 

「ふぅ…」

 

溜め息と同時に出るのは疲労。ジョッキに映る間抜けな面と睨み合う。睨めっこの勝者はなし。ただ、いつまでもこちらを覗き込む視線を不快に思い、俺はジョッキをテーブルに戻した。

 

「大変でしたね、今日は」

「…へ?あ、あぁ、はい」

 

ジョッキをいつまでも覗いて俯いている俺を不審に思ったのか、そう気遣いの言葉を投げかけてきてくれたのは武内さんだった。

少し微笑み、眉は多少ハノ字に垂れている。いつもはキッとした目元も、何故か緩んでいるように感じる。

 

「でも、武内さんも今日はシンデレラプロジェクトの件で大変だったのでは?」

 

今、新しく始まったプロジェクトの責任者なのだから、やはり一番の苦労を味わうのは武内さんだ。それに比べて俺の仕事量なんざ屁でもねぇ。

 

「まぁ…お互い様です」

 

武内さんはうなじをポリポリ掻きながら言った。

んま、うちの部署もやっと山場を越えたってとこだし。マジで去年の年末は干からびて過労死するかと思った…。挙句の果てには皆さんに無理やり打ち上げに行かされて飲まされるし。特に佐藤さんの悪酔いは最悪だった…

 

「そう言えば武内さん、知ってます?ニューヨークの関連会社からくる会長の娘さんの話」

 

俺が話題を振ると、武内さんはコクリと頷いた。

 

「少しだけは…。物凄い実績を持っている方……と耳にしてます」

「らしいですね。ただ…心配ではありますよね」

「ええ」

 

ニューヨークの関連会社と言っても、担当してたのはアイドルじゃない。

これはあくまで懸念している最悪の事態だが、もし、その会長の娘さんが数でしか人を見ない人だったら。間違いなく今のアイドル部門は滅茶苦茶になる。

確かに今の体制はあまり効率が良くないかもしれない。だが、今の部分から少しでも違うものになった時、果たしてアイドルは輝けるのか。

答えは否だ。必ずアイドルたちの表情には陰が生まれる。

ま、あくまで仮説だ。そうではない事を祈ろう。

 

「まぁ、なるようになりますよね」

「そうですね。ただ、アイドルは笑顔が一番ですので」

 

武内さんのモットーと言っても過言じゃない言葉だ。この人は企画を考える時、必ずアイドル達の笑顔を優先する。そんな思想を持つ人だからこそ、俺も憧れて惹かれている。プロデューサー云々の前に一人の人間としてだ。

 

「ですね。笑顔がなけりゃ、アイドルじゃなくても困りますもんね」

 

アイドルとは人に希望を与えるものだ。そんな者が希望を持っていなくてどうする。無表情で踊って歌う者を見て、誰が心躍るというのだろうか。

 

「人に夢や希望を与えるのがアイドルの仕事です。これからも頑張りましょう」

 

そう話していると、テレビでは無情なニュースが流れていた。

 

「昨日の夕方、高校生が轢き逃げに遭うという不幸な事件が起こりました。死亡したのは京都府在住の葉風智幸さん。尚、犯人はいまだ逃走中で名前の公開は保護者による…」

 

「惨い事件もあるもんですね…高校生って…。まだこれからでしょうに」

 

これは普通に可哀想だ。何だかんだ上手くいってる人生ならば尚の事。でもまぁ、この世界はなろう系みたいにファンタジーな世界じゃないし、死後に絶対幸福が待っている訳ではないだろう。

なんであいつら凡人で努力してねぇのにウハウハハーレムしてんだよ。俺と変わりやがれくたばれ。

などと心中で吐いてみる。

暗い話はここまで。こういう場所では明るい話をしてパーッと飲むに限る。

 

「兎に角、今は呑みましょう」

 

武内さんが言った。

その日は日付が変わるまで呑んだ。武内さんとは互いの心情やアイドル達はどう輝かせるべきかなど、様々な事を話し合った。

しかし、終わってから俺はある事実に気付いた。そう、明日、否。今日は仕事だ。俺は慌ててスケジュールを確認する。するとやはり仕事が入っていた。

あぁ、勘弁してくれ。クソみたいな仕事がまた待っていやがる。仕事っていうだけで気持ちが沈んで酔いが醒める。

だが仕事には逝かなければならない。クソが。憂鬱すぎる。てかスケジュール確認しとかない俺が全面的に悪いんだけどね。そんな事を思いながら、床に就いたのだった。

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

おはよう。憂鬱な世の中よ。

偶にだが、朝起きたら異世界に転生してた!なんて妄想をしてしまう。だが悲しいかな、絶対にそんな事在り得ない。クソな世の中はきっと死ぬまでクソで在り続けるだろう。兎に角、布団から身体を叩き起こして無理やり会社に行く準備をさせる。

会社に着いた頃には、時刻は8時近くを指していた。今日は少し遅めだったか。と反省する。

 

「おはようございます」

 

今日もいつも通り部署の部屋に入り、そう気怠げに挨拶した。すると5人、俺の挨拶に反応して返してくれる者が居た。俺の担当しているアイドル達と、千川さんだ。

取り敢えずデスクに鞄を置き、PCを起動させる。独特の電子音が部屋に響き渡ると、どさっと疲労感が増したような感覚に陥った。

さて、仕事始めますか。

 

「はい、皆さん集合でーす」

 

俺が朝のスケジュール確認の為に皆をホワイトボードの前へと集める。

 

「まずはおはようございます」

 

改めてそう挨拶した。

当然、5人分の挨拶が返ってきた。そしてそれに呼応するように、説明を始める。

 

「本日のスケジュールですが、まず午前です。川島さん、今日は9時30分から346プロ内の撮影所Aでモデル撮影があります。そして楓さん。11時から銀座でグルメ番組のロケがあります。俺は川島さんの撮影で少し遅れるかもしれませんが、極力現場を見れるようにしますのでよろしくです」

「分かりました」

「よろしくね!プロデューサー君!」

 

取り敢えず今日の午前の予定を話すと、それぞれが返事をする。

続けて午後の説明だ。

 

「では、午後の説明に入ります。午後は三船さん、佐藤さんが同じ番組での出演、そして346プロ敷地内スタジオでの撮影になります。撮影はスタジオB IIです。なので現地集合と言う事でお願いします。撮影開始予定時刻は18時。最低でも17時にはスタジオ内に居るようにしてください」

「了解しました」

「おっけー☆」

 

俺が連絡を終えると、自然に皆解散する。

さて、取り敢えずは川島さんの撮影があるので川島さんのもとに向かう。

 

「では川島さん、行きましょう」

「分かったわ」

 

さぁ、今日もお仕事頑張るぞい!

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

今日もいつも通りの仕事であった。

午前の撮影は川島さん、楓さんともに頑張ってくれたお陰で特に目立ったトラブルも無く終わった。そして楓さんのロケが少し巻いてくれた為、会社に戻った頃には15時を回るくらいの時刻であった。

俺は午後の撮影までまだ時間に余裕があった為、今まであまり足を運ばなかったカフェテリアに来た。すると偶然、楓さんとばったり出くわした。

 

「お疲れ様です」

 

そう声をかけられた為「お疲れ様です」と返す。そして楓さんの向かいの椅子を引き、腰を掛ける。

 

「どうでした?私のロケは」

 

珍しい。楓さんはあまり自分の演技や歌の感想を求めないと思っていたのだが。どういう風の吹き回しかは分からないが、以前よりアイドルの活動に意欲的になってくれたと言う事か。ならば嬉しい限りだ。

 

「最高でした。言葉選びから表情から…まぁ演じてるって感じはしませんでしたが」

 

俺が素直な感想を述べると、楓さんは「ふふっ」と笑い、手に持っていたコーヒーを置く。

あ、俺も注文しないとな。

 

「すみませーん」

 

店員を呼ぶと驚き桃の木。やってきたのは「ウサミン」こと、安部菜々さんであった。

この人には佐藤さんとユニットを組んでもらった時に物凄くお世話になったので、挨拶しとこう。

 

「ご注文は…って黒井さん!?」

「ご無沙汰してます。安部さん。いつもウチの佐藤がお世話になってます」

「いえいえ!こちらこそ!!あ、ご注文は何でしょうか?」

 

と、まぁ世間話はそこまで。安部さんが話題転換してくれたのもあり、注文をしないといけなのでそれを伝える。

 

「えーっと…アイスティー一つ下さい」

「かしこまりました!」

 

そういうと安部さんはカウンターの方へと駆けていった。

 

「頑張ってますね、菜々さん」

「ですね。あの人もやっと売れてきてますからね」

 

そんな他愛も無い話をして時間を潰す。そのやり取りが心地良く、ついつい時間を忘れてしまいそうになる。

だが、浮かれた気分を吹き飛ばす声がカフェテリア内から飛んで来た事により、俺の意識は一気に現実へと引き戻されてしまう。

 

「我々は!!………なんだっけ?」

 

何事かと思い声がしたほうに目線をやると、そこに居たのはテーブルを盾にしてカフェ店内に立てこもる少女たちであった。一人は金髪の中学生…?かそれくらいの女の子。もう一人はその少女よりも幼く見える気怠そうな女の子。最後の一人は茶髪のショートボブ?の高校生くらいの女の子だった。

 

「週休八日を要求する!!」

 

パツキン中学生から拡声器を取り、そう休養を要求したのは気だるげ幼女であった。あの子中々分かってるな。マジで週休八日にならないかなー働きたくないなー。

 

「勝手な事言っちゃ駄目にゃ!」

 

どうやら言いたい事が違ったようで、テーブル盾の裏で茶髪の子がそうツッコむ声が聞こえた。

てか待て。アレって武内さんのとこのアイドルだよな…?見覚えがある。

 

「杏ちゃん!みくちゃん!莉嘉ちゃん!」

 

どうやら同じシンデレラプロジェクトの子のようだ。…ん?てかあの子身長デカッ!?待って俺や武内さんよりデカいんじゃね?っとまぁ、今はさておき。

その子が立てこもっている彼女らの名前を呼んだ時、他のシンデレラプロジェクトの子たちも事態を聞いてか、息を切らして駆けつけてきた。

 

「すみません楓さん、ちょっと見てきます」

「了解ですー」

 

俺は楓さんに少し見てくると伝える。すると気の抜けた声で返事を返してきた。

俺は椅子を離れ、彼女たちのもとへと向かう。

 

「君たちシンデレラプロジェクトの子たちだよね?武内さんはどうしたの?」

 

確認したい項目は一つ。武内さんはこの事態を把握、認知しているのか。

しかし、返ってきた答えはそれを否定するものであった。

 

「プロデューサーさん、今打ち合わせに行ってるようで…」

 

あらら、そいつは参った。恐らく、今この事態を解決できるのは武内さんただ一人だ。

そうこうしていると、同じシンデレラプロジェクトの内の子の一人が声を上げた。

 

「お前たちは完全に包囲されている!大人しく投降しろー!」

 

オレンジ色の茶髪のショートの子がそういうと、パツキン中学生がすぐに答える。

 

「しないもーん!」

 

小学生かよ……。と思わず呆れてしまう回答であったが、この場では最強呪文だ。

だが、茶髪ショートちゃんは奥の手を使ったのだった。

 

「実家のお母さんが泣くぞー!美嘉姉ぇも泣くぞー!」

 

なんと。あの子、城ケ崎美嘉の妹だったのか。凄いな、姉妹そろってギャル…。いや、別にギャルを否定してる訳じゃなくてですねぇ…

 

「じゃあやめる…」

 

おぉ、お姉ちゃん効果すげぇ。さっきまでの威勢の良さが嘘みたいだ。

取り敢えずは一人戦意喪失。残るは二人。

 

「みくたちのデビューを、約束してほしいにゃ!」

 

皆が驚く。皆、というのは立てこもってる幼女も含めだ。おっと、これは仲間割れか?

 

「えっ!?…じゃあ杏も降りるよ…」

「杏ちゃんまで!?」

 

ここまでくるともうコントって言っても過言じゃないレベルだな…。兎に角、二人投降。残るは「みく」とやら一人だけだ。

そこで、この事態の収拾できる人物が現れた。武内さんだ。

 

「武内さん!」

「どうなっているのでしょうか!?」

 

俺は聞かれた為どういう事があったのかを簡潔に伝える。

すると武内さんは眉間に少し皺を寄せた。俺は知っている。この人がこういう顔をするときは大抵自分を責めてる時だ。

 

「みくちゃん!もうやめよ?皆困ってるよ?」

「デビューの事、プロデューサーさんに相談してみよ?」

 

確か、シンデレラプロジェクトはもう全員デビューが仮ではあるが、予定は立っている筈。だが彼女たちは知らない。恐らくは本人たちが外部に情報を漏らす事を無くす為の配慮。デビュー前にそんな事が漏れてしまったら一大事だからな。

 

「したにゃ…何度も!でも駄目だった…。何で…?何で駄目なの!?みくたちも頑張ってるのに何で!?シンデレラプロジェクトのオーディション受かって…凄く嬉しかった。レッスン頑張って、小さいお仕事も頑張ってやってたら、いつかデビュー出来るって信じてた…」

 

そう語る彼女の瞳には、涙が存在した。

いつまでたってもデビューできない事に対する憤り。確かにそうだ。自分よりも後に入ってきた人間が、自分よりも努力をしていないと思われる人間が、自分より先に自分が憧れていたものを手に入れるのは悔しいだろう。情けないであろう。そして何より、理不尽であろう。

 

「でも!どんどん置いてかれて…ほっとかれて…。何が違うの?もっと頑張ればいいの?もっとてどれくらい?みく全然分かんない!このままは嫌…!みくもアイドルになりたい!!デビューしたい!!」

 

これが彼女の本音。心の声だ。

少女は憧れた。輝く舞台で踊る姫に。チャンスをモノにする為に努力もした。しかし、知らせはいつまで経っても来なかった。

 

「武内さん、いいんじゃないんですか?」

「……そう、ですね」

 

重苦しく、喉から締め出したような声で武内さんはそう、静かに返答した。

俺の言葉に返すと少しずつ、店内へと近づいて行く。

それと同時に、俺ももうやる事はないので先程の席へと戻る。

 

「すみません、前川さん!!前川さん、デビューについては…皆さん全員分、考えています!まだ決定ではないので話せませんでしたが、新田さんたちは第一弾、続いて第二弾、三弾と…ユニットデビューしていただこうと思ってます」

 

その事実を聞いてからか、前川とやらは腰を落とし、その場に崩れた。やっと届いた彼女の思い。アイドルとしてのデビュー。

 

「プロデューサー…。なんだ、早く言ってにゃ……」

 

テーブルで見えないが、どうやら彼女はもう立てこもる気はないようだ。無事に一件落着。まぁ俺何もしてないけどね。

兎に角、丸く収まってよかった良かった。

 

「いやー、若いっていいですよねぇ……。あっ、いや!違うんです!菜々も若いんですけどね!永遠の17歳ですからね!」

 

うん。取り敢えずこの人はもっと色んな部分に気を使って話すべきだ。

思わず俺と楓さんも笑ってしまった。そしてその様子を見て安部さんは「何ですかちょっとー!」と口を尖らせる。

あぁ、何だかんだありつつも、この職場は恵まれているのかもしれない。こうやって笑い合える人たちが居るのだから。

分かってくれる人たちに囲まれて仕事ができる。それは仕事をしている人間の中で、最も幸せな事かもしれない。

さて、この後も撮影がある。気を抜かずに頑張っていきますか。




誤字脱字ありましたらご報告お願い致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。